なんかもう色々おかしいと思います。
「ここが、贖罪の街」
「お前今まで外部居住区にいたんだろ?
ここくらいなら別に珍しもんでもないだろ」
「いえ...
ゴッドイーターとしてこの地に立ってみると、やっぱり気持ちは変わるものだと思いまして...
これから、アラガミと戦うとなると尚更」
「大丈夫だ。
なんかあったら俺がフォローする。
リラックスしていこうや」
「了解です、リンドウさん」
あの後、サクヤに指摘されたこともあってか呼び名をちゃんと変えたレンタ。
最初こそ拗ねていたリンドウだが、サクヤからの説教とオペレーターであるヒバリからのツバキへ言いつけるという脅しもあり、丸く収まった。
...当の本人に全く悪意がないことはこの際置いておく。
「命令を言い渡す。
命令は3つ『死ぬな』『死にそうになったら逃げろ』『そんで隠れろ』
『運がよけりゃ不意をついてぶっ殺せ』...あぁ、これじゃ4つか」
っと、本人の癖なのかまたしても頭をぽりぽりと掻くリンドウを、レンタは相変わらず適当だなーとでも言いたげな顔で見つめていた。
「よっし、それじゃあ楽しい任務と行きますか。
気楽に行こうや」
リンドウが肩に自分の神機を担ぎ、段差から降りる。
レンタもそれに習い、いつでも戦闘ができる神機の基本的な構え方をしつつ、リンドウの後を追った。
.........
......
...
「あれが今回のターゲットだ」
リンドウが指差した先には、オウガテイルと呼ばれる小型のアラガミが居た。
一般的に新兵となったばかりの神機使いが最初に狩る相手であり、その他多くいるアラガミの中では最も危険率が低いと言っても過言ではない。
だが、危険率が低いと言ってもアラガミはアラガミである。
初任務の新兵となると、緊張してまともに動けずに死亡するケースも後を絶たない。
その上での、先程の『命令』だ。
「どうします?」
「パターンは二つ。
お前が奇襲をかけるパターンと、俺が奇襲をかけるパターン。
どちらにせよ、奇襲を行った方はそのまま陽動をし、残った方は不意を突くってのがセオリーだ」
「...それで、どちらが奇襲を?」
「普通だったら俺がやってお前が追撃をすもんなんだが...
レンタ、お前演習での成績は?」
「えーっと...3つくらいがSSSで、後はSSです」
「十分すぎるな。
新型ってのは優秀なのか?」
「いえ、どちらも使える分立ち回りがしやすかっただけです」
「まぁどちらにせよ成績はいいんだ。
ここは思い切ってお前が奇襲を掛けてみるか?」
「...どこまでできるかわかりませんが、やれるだけやってみます」
そうリンドウに告げるレンタの横顔は、既に神機使いとしての頭角を現しており、どっかの青フードと重なって見えた。
(...ほぉ...
こいつは面白いかもな)
リンドウはその様子を感心したように見た後、奇襲を掛ける合図を出す準備をする。
(.........)
「...今だ、行け!」
ぞるっ、っとレンタが左足を思いっきり滑らせ、残った右足に全神経を集中させ、勢いよく突進していく。
神機は肩に担いでおり、恐らく突進した勢いを利用して叩きつけるつもりなのだろう。
リンドウはその珍しい突進方法に少しだけ呆気にとられ、だがすぐに我に返ってレンタの引きつけているオウガテイルの追い討ちの為に走り始めた。
「せぇ、のっ!」
「ガァァァァァアア!」
オウガテイルが驚愕と苦痛を伴ったような叫び声を上げ、自身の無くなりかけている尻尾を凝視する。
レンタはそのまま全体重を両腕に集中させ、思いっきり振り抜く。
するとオウガテイルの尻尾は千切れ飛び、辺り一面にオラクル細胞の塊である血液を噴出し、ばら撒く。
レンタは攻撃の手を緩めず、振り抜いた刀身を地面に突き刺すと、そのままの勢いで一回転をし、空中にいる僅かな時間を利用して素早く銃形態に。
オウガテイルと同じくオラクル細胞の含まれた弾丸を頭部に2、3発撃ちこむと、オウガテイルの片目が潰れ、貫通した弾丸がオウガテイルの肉体を、神経を抉り、地面に突き刺さる。
「グギャァアアアアァァアア!」
先程とは比べ物にならない苦痛だったのか、既に半分になってしまっている視界と千切れて無くなっている尻尾を捩らせながら、なんとか距離を置こうと移動を開始する。
...が。
「甘いんだよ!」
そこには、先程追撃をしようとしたリンドウが既にスタンバイしており、引き返そうとしたオウガテイルは無残にも頭部を引き裂かれ、多量の血を撒き散らしながら絶命した。
.........
......
...
「ふぅ...お疲れ様です」
「おう。
お前って中々無茶苦茶な戦い方をするんだな。
正直驚いたぜ」
「そうですか?
やれるだけやってみたんですが...」
っと、何故か少しだけしょぼんとした様子になるレンタを、リンドウが慌ててなだめる。
(しっかし、SSSね...
こりゃ納得だ)
リンドウが先程の戦いぶりを思い出し、納得する。
何か大事なタガが外れているような戦い方だった。
普通の者では、初任務というのは死と隣り合わせになる初めての舞台であり、並大抵の神経を持つ者なら緊張してもおかしくはない、寧ろそれが普通だ。
だが、レンタは緊張している素振りさえあったものの、戦い方には欠片の容赦も感じられなかった。
ただ目の前の標的を駆逐する為に動いている、そんな印象を受けた。
「コア回収作業はしておけよ」
リンドウが促すと、レンタが慌てて作業を開始する。
コア、と呼ばれるものは、そのアラガミが今までどんなものを捕喰してきたかのおおよその見当がつくような代物である。
当然素人に扱えるものではなく、身近な人で言えばサカキ博士なんかが扱うようなもので、神機使いにとってはただの丸い球体にすぎない。
「何はともあれ、二人とも無事だったんだ。
これ以上に喜ばしいことはないぞ」
「そうですね、初めてで緊張しましたが、成功して良かったです」
「よし、帰投するのが遅れると姉上がおっかないからな。
とっとと帰って、美味いビールでも飲もうや」
「俺、まだ17です」
「んな細かいことはいいだろ。
四捨五入すれば20だ、な?」
「ダメです、ツバキ教官に怒られたくはありませんもん」
ツバキという単語が出た瞬間、リンドウが態度を一変させ、未成年が何故お酒やタバコに手を出してはいけないかを長々と語り始めた。
...アナグラ帰投後もその話をし、特にツバキの目の前になると若干声を大きくしたところ『俺は何もやっていません』アピールをしたかったのだろうが。
.........
......
...
「ふぅ...」
レンタが自室に戻り、ベッドに腰掛ける。
手には、まだあの感触が残っている。
肉体を引き裂いた、あの感触が。
「...なんか、結構あっさりきれるもんなんだなー...
気持ち悪くはなったけど、生き残れたほうが嬉しいや...」
誰に言うわけでもなく呟きながら、ベッドに横たわる。
(明日からもきっと任務だ。
けど、不思議と嫌じゃないな)
謎の高揚感...即ち、生き残れた喜びを噛み締めながら、レンタはその日の疲れを癒すように深い眠りについた...
表現が生々しいかと思いますが、R-15です。
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