基本有能と言われる彼女の使用頻度が少ない自分は少数なんですかね?
「新型...ですか」
「ああ。
なんでも、ロシアからはるばる引き抜いてきたらしい。
新型としての先輩はお前だし、しっかり指導してやれよ」
「とはいっても、俺も神機使いとしてはまだまだですよ?
誰かに指導をするなんて...」
レンタが不安そうに言うと、リンドウが可笑しそうに笑いながらこう続けた。
「新型としての経験は俺なんかより上だろ?
そういうこった」
リンドウがレンタの肩を叩く。
レンタは最後まで不安そうだったが、リンドウはなんとなるだろう程度に考えていた。
.........
......
...
「『アリサ・イリニーチナ・アミエーラ』と申します」
長い銀髪を揺らしながら、無愛想に自己紹介をするアリサと名乗った少女。
自分の周りにも第1部隊の面々が揃っているのを見ると、どうやら
「今日から第1部隊に配属されることになっている。
リンドウ、しっかり面倒を見ろよ」
「りょーかいであります、姉上」
「ここでは上官だと言っているだろう、リンドウ」
「はいはい」
「...」
ここまでのやりとりを見て、アリサが明らかに不機嫌そうな顔になる。
嫌な予感を察しつつ、コウタに合図を送る。
(場を和ませ)
(...?)
(なんかしろ!
えっと、なんでもいいから!)
(...!
そっか、そうだよな!
誰かにとられる前にアピールしとかないと!)
コウタが何度もうんうんと頷く。
レンタはその様子を見て安心したのか、ホッとした顔になる。
「君みたいに可愛い子ならいつでも大歓迎だよ!」
(地雷踏みやがったな!)
間違いであったとすぐに思い知らされた。
「...そんな浮ついた考えで、よくここまで生き残れましたね」
「なっ!」
「当たり前だっつの...」
すでに胃がキリキリと音を鳴らし始めている。
リンドウはしつこくツバキと言い合いをしているし、ソーマは完全に無視。
サクヤも困ったように笑っていた。
「...はぁ」
「なんですか、あなた」
「なんですかって?」
「そんなやる気がなくて本当に神機使いですか?
しかも、同じ新型だと聞いています。
...とてもそうには見えませんけどね」
「ちょっとあなた...」
叱ろうとするサクヤを、レンタが手で制した。
サクヤの顔は明らかに困惑の色で染まり、コウタもどうしたらいいのかわからずにオロオロとしているだけであった。
「えっと...アリサ...ちゃん?」
「アリサでいいです」
「わかった。
...アリサ」
「なんですか?」
「ここに入ったからには、ここのルールに従ってもらう...って、ツバキさんなら言いそうだね。
郷に入っては郷に習え、これ日本の古い言葉なんだ。
最初は不安とかもあるかもしれないけど、次第に慣れていくからさ」
っと、努めて優しそうな口調で言うレンタを、アリサはどこか遠くを見るような目で静観していた。
「...まぁ、そういうことでしたらそうさせていただきますけど。
あまり馴れ馴れしくしないでくださいよ」
「はは、そうさせてもらうよ」
アリサの嫌味を軽く流すレンタ。
以前家族のことを聞いていたサクヤとコウタは、妹にもこんな対応をしていたのかと思ったとか。
.........
......
...
「はぁ...こんなんでやれるのかな...
あんな子だなんて聞いてないよ...妹が来たみたいで憂鬱だ...胃薬欲しい...」
とてもグロッキーな顔で廊下を歩くレンタ。
歩いていると、やがて一人の男性とすれ違った。
「ん...?
えっと、どちら様で?」
極東支部では見たことのない顔だったので、少しだけ怪しみながら尋ねると、男性の方は大らかに笑いながら答えた。
「はっはっは、ここに新しくやってきたアリサの担当者のオオグルマだ。
彼女、気が強いだろう?」
「えぇ、まぁ」
「あんな子だが、これからもよくしてやってくれ。
新しい環境で少し戸惑っているだけなんだ」
「わかりました。
そういうことでしたら、協力させていただきます」
お人好しな性格のレンタはすぐに丸め込まれてしまい、二つ返事で了承してしまう。
哀れレンタ、これから胃薬の量が増えていくことだろう。
「それでは、私はこれで失礼するよ。
支部長に挨拶をしてこないといけないしね」
「はい。
これからもよろしくお願いします」
「ああ...これからも、ね...」
オオグルマの顔が、一瞬だけ黒く染まる。
レンタはその様子には気がついていなかった。
.........
......
...
「ふぁあ...
眠いなぁ...」
翌朝、昨日の出来事もあり憂鬱になりながらベッドで横になったレンタ。
枕元には天然水と胃薬のビンが転がっている。
「うぅ...
今日も1日仕事だ...こんなんでやっていけるのか俺...」
段々と不安になってくるレンタだが、その度に自分の目標を思い出しては奮い立たせる。
「っと、アラガミに一泡吹かせるんだったな...
あと、カノンさんの誤射率を最低にして...アリサの指導して...
...胃が...」
立ち直っては折れかけ、立ち直りかけては折られるの繰り返し。
元々あまりメンタルが強い方ではないレンタは、意外とあっさりメンタルは折れてしまうのだ。
「ふぅ...うん、頑張ろう」
部屋を出ると同時に、何かにぶつかる。
「いて」
「きゃ!」
長い銀髪から判断するに、どうやらアリサだったようだ。
レンタは辛うじて踏みとどまったが、アリサは尻餅をついてしまった。
「ご、ごめんごめん...大丈夫?」
っと、レンタが手を差し伸べると、アリサは少しだけ意外そうな顔をしたあと、そっぽを向いて立ち上がってしまう。
「馴れ馴れしくしないでと言いましたよね?」
「あ...ごめんごめん。
立ち上がらせてあげた方がいいかなって...はは」
「...まぁいいですけど。
リンドウさんが招集命令を出していましたよ」
「招集命令...なんだろ」
考え込みながら、エレベーターに向かって歩き、器用にも階指定までやってのける。
ちなみに、ここまで前を向いていない。
「ちょ、ちょっと!」
急に歩き始めたので、アリサが焦ったように追いかける。
「ん?
どうかしたの?」
「いきなり歩き始めないでくださいよ!」
「おっと、ごめんごめん。
馴れ馴れしくしない方がいいかなって...」
「...まぁ...そうですけど...それでも...」
などと何かを小声で呟いている内に、エレベーターが来る。
レンタはすぐにのり、手早い動作で階数を指定すると独り言を呟いているアリサを手招きした。
「行くよ」
「あ...待ってくださいよ!」
.........
......
...
「リンドウさん」
「お、来たな」
堂々とエントランスで喫煙をする上官、リンドウ。
神機使いとしては尊敬できるが、人としてはちょっと尊敬できないなと、そんなことを考えながら呑気に構える。
「今から俺とレンタ、そしてアリサでミッションに向かう。
対象はなんてことはない、シユウだ」
「シユウですか...」
「レンタさん、戦ったことがあるのですか?」
「いや、ないけど?」
「は、はぁ...そうですか」
アリサは半ば呆れ気味に生返事をすると、リンドウが一本吸って満足したのか出撃ゲートへ向かいはじめる。
「さぁて、今日も楽しいお仕事だ。
気楽にいこうぜ」
「俺、シユウはじめてですけどね」
中途半端に終わってしまいました。
なんか半分日常パートみたいなもんですね。
次回からはまた戦闘です。
Next→『新型と新型』