トリオンエンジニアリング!!   作:うえうら

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『雪国』


01 雪国・現実的な死・エンカウント

「国境の長い門を抜けると雪国であった」僕が言って、

「夜の底が白くなった」クーちゃんが言って、

「信号所に汽車が……って、信号も汽車もまったくないですね。というか、絶対そう言うと思ってましたよ、兄さん」

 半ば呆れ気味に凪がそう答えた。彼女の吐息は白かった。

 上を向くと白一色。360度辺りを見回しても、白一色の雪景色。ごうごうと降り続く雪がやむ気配は微塵もなかった。凍えきった空気はしんと澄んでいて、少しの匂いも無い。

 少し歩くと、雪を踏みしだくもそもそとした感触が足裏に残る。降雪量は尋常ではないらしく、30秒もしないで僕の足跡は判別不能になっていた。

「ねえ、どうすればいいと思う」

 黒い髪に綿雪をまばらにつけた凪の方へと向き直り、聞いてみた。

「兄さんは何か計画があって、こっちに来たんじゃないんですか」

「人家の明かりすら見えないのは予想外だったから……。クーちゃん、レプリカ先生は≪キオン≫について、どう言っていたっけ」

「うーん、あまり詳しくは聞いてなかったよね。資源が乏しいことと、略奪経済を得意としていること、このくらいだと思うよ」

 ヘッドセット越しに聞えたのはクーちゃんの悩ましい声だった。

「略奪経済が得意なお国柄のところに、余所者がやって来たってわけか……」

 僕の吐く息は(つか)みようの無い白さで、すぐに降りしきる雪の中へ混ざってしまう。

「クーちゃん、ドローンのトリガー使うから、周回飛行してくれる。あと視覚共有と、一応熱観測もお願い」

「了解、ご主人。……うわっ、結構操縦しづらい。30分たってダメだったら、一度消して再生成した方がいいかも」

 ドローンをなんとか蛇行飛行させながらに、クーちゃんはそう言った。クアッドコプターのローターに絡まる雪が安全な空の旅を妨げている。ドローンによる航空観測はあまり期待できなそうだ。

 じっとしていても始まらないので、僕たちは取り敢えず歩くことにした。寒さや疲れを感じないトリオン体が解けてしまう前に、村や町のようなものを見つける必要がある。というわけで、周囲を見回しながら歩いているのだ。これまでに白いウサギ、白い狐、白い犬を見つけてきたが、そのどれもが凪を喜ばせていた。

「あ、兄さん、あれシロクマみたいじゃないですか」はしゃいだ声で凪は言う。

 楽しげに指をさした先には、白い毛皮に覆われた4本足の生物がいた。全長2mはあろうかというずんぐりむっくりとした巨躯。愛嬌のある鼻先をひくひくと動かしている。ここでは狩る側も狩られる側も、保護色である白に身を包んでいる。白衣を羽織っている僕達も例外ではなかった。

 唐突に、ひくひくと動かしていた鼻先がこちらに向けられる。シロクマの眼光はギラリと光を宿しており、野性を(たた)えていた。音もなく、シロクマは2本の前足をこちらに向けて駆けだした。音を発しないのは雪が衝撃を吸収するせいだ、と分析している暇はない。

「ク、クーちゃん、雪山でクマに遭遇した時の対処法は死んだふりでよかったんだっけ」

 雪を巻き上げ、跳び退(すさ)りながら僕は声を上げた。

「ご、ご主人、ネットに繋がってないsAI(補助人工知能) を当てにされても困るよ」

「に、兄さん死んだふりはタブーだったような気がします。……というか、トリオン体なんだから、慌てなくても大丈夫じゃないんでしょうか」

 悠然と立ったまま、凪は自信ありげにそう言った。トリオン体の腕力にものを言わせて、シロクマの頭を撫でてやろうという魂胆なのかもしれない。これまでに遭遇した白い動物の全てに逃げられてきたのだから、一度は接触したいと思い至ることは自然な流れである。凪は右手をシロクマに差し出していた。

 ガルル! と鋭い咆哮が空気を切り裂く。

 雪煙を巻き上げながら、一直線に凪の方へ近づく。

「凪! 気を付けて、熱観測してみたんだけど、それクマじゃ――――」

 肉を切り裂く(にぶ)くえぐい音。それがクーちゃんの声を遮った。

 凪の上半身は爪で(えぐ)り取られていた。切断面からは黒い霧が勢いよく噴出。

『戦闘体、活動限界』電子音声が木霊した。

 2秒にも満たない無機質な音がやたら引き伸ばされて聞こえた。

「凪! 」気づけばそう叫んでいた。血が沸騰しそう。

 こっちの世界にボーダーの本部何てあるはずもなく、緊急脱出(ベイルアウト)する(すべ)なんて無かった。

 ここにはリアルな死がある。

 シロクマを眼前に、凪の表情は混乱と恐怖で埋め尽くされていた。

 風切音を伴わせ、鋭い爪が振り下ろされる。

 ギンと金属と金属の衝突音。間一髪、エスクードがクマの爪を弾いていた。

「に、兄さん、どうしましょう」生身の姿で凪が言った。声は震えている。

「とりあえず、離れないでいて」

 エスクードを間に挟んで、シロクマと距離1mほどで対峙。そこでようやく、トリオン兵特有の駆動音が聞こえる。どうやら雪の吸音率を失念していたらしい。

 グルルと目の前のシロクマ型トリオン兵は野性味溢れる(うな)り声を上げた。

「ご主人、壊しちゃってもいいのかな」早回しにされたクーちゃんの声。

「関係が悪くなるとか言っている場合じゃないでしょ、クーちゃん」

 通常弾(アステロイド)を生成。変数を入力して、即座にぶっ放した。

 ざっと雪煙が立ち込める。クマがサイドステップするのを視界の端で捉えた。

 僕達2人を囲うように、四方にエスクードを展開。

 突如、クマの爪に白い光が収束。瞬刻にして、それは横薙ぎに振るわれた。4本の白い残影が降りしきる雪を切り裂く。

 それを防ぐべく、弧月を地と垂直に構えた。鋭敏な一瞬の衝撃が躰を揺さぶる。足を雪に埋めて、何とか(こら)えた。

 目の前のエスークードは綺麗に5分割されている。防弾ガラスの比じゃないってレベルで硬いのに。

 これで凪が斬られたらと思うと、血の気が引く。死という概念が嫌でも頭に浮かんだ。

「クーちゃん、このトリオン兵高性能すぎじゃない」

「ご主人、この動きはトリオン兵っていうより、人間っぽいよ」

 トリオンスフィアの無限複製の準備が整ったので、誘導弾(ハウンド)を衛星軌道させる。

 これを察知したらしく、シロクマはバックステップで飛び退いた。巨躯に似合わぬ俊敏なフットワークを持っている。

 余剰分に誘導補正を入力して、シロクマ目がけて一斉掃射。

 トリオンスフィアは鋭角の放物線を描いて、殺到。

 クマは雪を撒き散らしながらにサイドステップ。スフィアは急旋回してそれを追尾する。

 布が無理矢理裂かれるような音が立て続けに響いた。十数の弾丸がシロクマに弾着。それだけの風穴が質量感のある毛皮に空いた。

『トリオン体、活動限界』これも電子音声だった。

 ぼふん、と雪が地面から舞い上がる。そこに目をやると、大の字に寝転がった少年がいた。

「くそっ、やるならやれ、玄界の異星人め」

 真っ黒いコートに身を包んだ少年は口汚く言いとばした。まだ幼さを残した高い声音。白い雪の中に浮かぶ黒い長靴と黒いコートは鮮明であった。

 後ろを振りかえると、凪は大きなバックパックから防寒具を取り出して、着込み始めているところだった。それに安心して、一つ息を吐く。

「別に殺すつもりはない。僕の名前は八宮岬。キミの所属と名前と歳を教えて欲しい」

「……名前はサエグサ、所属は村の自警団、歳は16」

 ぽつりと吐き捨てた。負けた悔しさが表情を歪ませているのかもしれない。

「ご主人、村の自警団だってね」クーちゃんの声は幾分明るい。

「これは朗報だね、クーちゃん。……サ、サエグサって言ったね。そこの村まで案内してもらえないかな。僕たちは、えと、一応、旅をしているんだ。できれば村の人達に話を通してもらえるとありがたい。僕たちは敵意を持っていない、と」

「そこの女と2人で旅をしているのか」サエグサは凪を指さした。

「彼女は妹の凪。あと、sAI(補助人工知能) のクーちゃんと一緒に旅をしている」

「へえ、そうか、お前にも妹がいるのか。いいだろう、案内してやる」

 首跳ね起きで立ち上がり、目にかかりそうな前髪を払いのけてから、サエグサは言った。その声音に今までの刺々(とげとげ)しさは無かった。

 ひと段落着いたと勝手に認識し、先を行く彼に目を向ける。16歳で160cmほど、少し小柄に思える。この国の食料事情は(かんば)しくないのかもしれない、と心に留めておいた。

 

 

簡単な自己紹介を済ませた後、サエグサを先導に雪道を歩く。彼の話によると、徒歩では1時間ほどの距離らしい。

「凪、寒くない」横を歩く凪を心配して、僕は()そういた。

「いや、結構寒いですよ、兄さん。手つないでもらってもいいですか」

「別にいいけど、手袋しているんだし、変わらないでしょ」手を伸ばして答える。

 出し抜けに、ばさり、と音を立てて黒い布が飛来した。凪の方に投げられたそれを、僕は手を伸ばして掴んでいた。黒いコートだった。

「これを使え、寒いんでしょ」ぶっきらぼうにサエグサは言う。

 その気遣いに驚かされた僕と凪は目を見合わせた。さっきまで僕達を殺そうとしていたのに、この態度の豹変ぶりは何だと(いぶか)しむ。

 前を歩くサエグサの上着は白いパーカーのみになっており、気の毒なほどに寒そうだ。対して凪は、黒いニット帽、耳当て、手袋、ロングコート、ロングブーツといったガチ使用の防寒装備である。

「いや、いいですよ、あなたの方が寒そうですし」

 凪が申し訳なさそうに言ったので、僕は手に持ったコートを投げて返した。

「じゃあいい……」

 コートを着直してこちらを振り向かずに、サエグサは言った。

 彼の村への道中、サエグサはチラチラとこちらを振り返った。というより、しきりに凪を見ているような気がする。

「凪、あいつになんか言った」

「いえ、特に、なにも、言ってないと、思いますけど」

 慣れない雪道を生身で歩くのは辛いらしく、凪は肩で息をついている。荷物はこっちが背負っているとはいえ、小柄な凪には(こた)えるはずだ。

「凪、息が荒いけど、大丈夫――――って、額が大分熱い気がする」

「いえ、大丈夫ですよ、兄さん」

 よく見ると、凪の頬には少し赤みがさしていた。目は若干とろんとしていて、声に張りが無い。村に着いたら、まず初めに宿をとる必要がある。

「サエグサ、村はまだなの? 」

「あと、40分程。……ほら、おぶってやる」

 サエグサは凪を乗せろと背中をこちらに向けた。ご丁寧に、コートの雪まで払い落としてくれている。

「いや、いいよ。今は僕がトリオン体だし……。村まで急いでくれる」

 遊び道具が沢山詰まったバックパックより、凪の細身の方が随分と軽かった。凪を背負う僕を見たサエグサは一瞬苦々しげな表情を浮かべ、すぐに踵を返す。

 足に纏わりつく綿雪を諸共せずに、彼は走り出した。

「へへへ、兄さん、暖かいです」首元から凪の声がした。

「ほら、喋っていると舌を噛むかもよ」

「ご、ご主人、躰ができたら、僕にもそれやってほしいな」

「クーちゃんが覚えていたらね」

「いやいや、sAIが忘れるわけないでしょ、ご主人」

 それもそうだと返事をして、雪を蹴りながらサエグサの後を追う。流石は地元民と言ったところで、生身にもかかわらず、彼の足取りは軽やかだった。

「ねえ、サエグサ。≪キオン≫の地図ってないの」何とはなしに尋ねてみる。

「バカ、敵性国家に地図なんて渡せるわけないだろ。それに正確な地図を持っているのは、王家か貴族だけだ」

 サエグサはこちらを振り向きもせずに、つっけんどんな回答を寄越してきた。 

 その回答の内容は、いかにも戦時中って具合だ。仮に僕に地図を渡したとしたら、サエグサが刑罰的な何かに処されてしまうのだろう。シーボルト事件みたいに。もともと地図というのは、国を管理する側が重宝してきたものなのだから、致し方ない。

「……ごめん、聞かなかったことにしておいて。じゃあ、話せることだけでいいから教えて。あれだったら、弧月でばっさりやる用意は一応ある……」

 僕は腰に備えてある弧月の鞘へ視線を落としてから、サエグサの顔を見据えた。

 ゴクリと固唾を飲み込む音。サエグサの顔は若干引きつっている。

「……分かった、オレが言ったとは漏らさないようにな」

「おーけー、じゃあ、いくつか聞かせてもらうね。……クーちゃん、今両手がふさがっているから、代わりにメモ取ってもらっていい」

「了解、ご主人。フィールドワーク調査の基本は友好関係にあるんだから、脅すのはあまりいい選択じゃないと思うけどね」

 やれやれといった口ぶりでクーちゃんがたしなめてくれた。

 

■≪雪原の大国 キオン≫の情勢メモ――date/日本時間2月14日

・政治体制は王政、それを諸侯が支えている。

・サエグサの村は有力7諸侯の内の1つ、キリン家が所領しているらしい。

・宗教は特になし。他国への略奪を是としているが、私有財産制度である。

・私有財産制ということなので、当然貨幣はある。

・おそらく、科学技術は20世紀前半の欧州程度。橙に輝くガス灯が自慢らしい。

・トリガー技術と科学技術の融合は見られない。

・国益の大半を他国への略奪経済が占める。そのため、戦闘用トリガー技術の発達が目覚ましい。

・トリガー使いによる武芸が国技に指定される程、スパルタチック。

・初等教育のようなものは存在しているが、高等教育は貴族の嗜みといった具合。

・平均寿命は40~50歳程度。

・一日の長さは28時間。一年は380日。

 

クーちゃんが作ってくれたメモをAR(拡張現実) し、それに目線を走らせ再確認。

「ふむふむ、なるほどなるほど」

「何がなるほどなのご主人、異世界系主人公みたいに、科学技術を伝えて内政チートでもするつもりなの」

「いや、余計なことに手は出さない。もう藪蛇を突きたくないしね。だから、日本時間で30日分、≪キオン≫時間で約26日分、その間大人しくしておいて、惑星の軌道配置が重なるのを待つ。色々と調べるのは≪貿易都市国家 トランタ≫に着いてからで十分だと思う。ここには図書館があるかどうかすら怪しいし」

 僕がクーちゃんにそう返答すると、

「なっ……それは心外だ。図書館くらい、オレ達の村にある」

 ぷんすかといった調子で唇を尖らせ、サエグサが口を挟んできた。彼にとって、村の仲間はみな戦友であることが予想されるので、その愛郷心も納得できる。

「兄さん、私、雪合戦がしたいです。あと、雪だるま作って、鎌倉作って、おおきな雪像を作ってみたいです」首元から、少し弱った凪の声がした。

「風邪が治って、具合がよくなってからね、凪」

 凪を背負いなおして、優しく声をかける。実際、僕達が住んでいたところは雪が降っても、それが積もるなんてことは滅多にない土地柄だったので、生まれて初めての雪遊びに心を躍らせている自分もいた。

 そんなふうに浮かれていると、

「……早くよくなるといいな」ぼそりと声がした。

 サエグサは僕の肩口から顔を覗かせている凪に視線を向けて言ったのだ。その瞳はどこか悲しげな色を浮かべていたが、その表象から意味を読み取ることは敵わなかった。

 もやもやとした綿雪を踏みしだくこと、10分。雪に白く染め上げられ、まるで代わり映えのしなかった景色に大きな変化があった。

 首を上げると、背の高い石造りの尖塔が見え始める。無宗教とは聞いていたが、いかにも正教会のチャペルのような神聖さを持つ建造物だ。

 次に、家々からにょっきりと生える煙突が見え始めた。赤茶の煉瓦(レンガ)で作られている煙突のほとんどから、灰色に近い煙がもうもうと吐き出されており、それが人々の活気ある生活を教えてくれる。

 サエグサは3、4歩前に進んでから、180度躰の向きを変えて揚々と声を上げた。

「ここがオレたちの村、スノリアだ」

 




ここまで読んでくださってありがとうございます。
書きためが五話分ほどあるので、批判がもらえれば、改善します。
忌憚なくご指導ご鞭撻がほしいです。
お気に入り、感想、評価、どれも嬉しいです。
アドバイスや暴言を下さると、泣いて喜びます。
評価1がたくさんつく理由を教えていただけると幸いです。私ってそんなに文章が下手でしょうか。


※以下はチラシの裏、世界観の掘り下げのつもり、読まなくても影響は全く無いです。

■≪雪原の大国 キオン≫の情勢メモ――date/日本時間2月14日
以下は更新分
・当然、情報革命は迎えていない。
・ネット回線の不存在。
・電信技術はある。
・電話回線も存在するが、原理は基本的には糸電話と同一であるため、あまり数は多くない。仮に日本国民全員が糸電話を持つと7200兆の糸が必要になる。
・王都における回線の冗長性は高いが、それ以外の冗長性は脆弱。
・コンピュータは存在している。論理学は完全であり、ブール代数は普遍的。
・ネットが無くてもコンピュータが存在しうることはENIACやABCが示している。
・窒素肥料の不存在が予想される。
・発電方法は未だ謎に包まれている。ガス灯があるくらいなので、LNGに頼っているのかもしれない


「クーちゃん、トリガー技術はたぶんさ、生産よりも、略奪とか戦闘とかの方にむいているのかもしれないね」

「まあ、合理的な経済人なら戦争はしないって言うけどさ、トリオン体なら戦闘におけるリスクが少ないから、自分で育てるより、奪う方が効率が良くなるのかもしれないね、ご主人」

「おまけに、≪キオン≫は気候条件がかなり劣悪だしね」

「まあ、この雪じゃね。ところでさ、ご主人、主食は絶対ジャガイモだよ、ご主人はジャガイモ好き? 」

「え、特に好きでも嫌いでも、何でジャガイモなの」

「いやさ、寒い所の主食ってジャガイモってイメージがあるでしょ」

「まあ、分からんでもないけどね、アイルランドとかだよね。コムギとかライムギの3倍のカロリーだっけか」

「まあ、そうだね。僕の見立てでは、ジャガイモが独自に進化を遂げているかもしれない」

「例えば、どんなのジャガイモを予想してるのさ、クーちゃんは」

「かぼちゃみたいに大きなジャガイモ」

「げ……」

「ビタミンが豊富なジャガイモ」

「あ、それはよさそう」

「それを毎食、毎食、蒸かしたり、焼いたり、炒めたり、茹でたりして食べるの」

「なんだ、結構よさそうじゃない、クーちゃん」

「たぶんね、気候が悪くて、彩のある野菜がとれなくて、灰色の食卓が待っていると思うよ、ご主人」

「げ……、イギリスさんの悪口はそこまでだ……、クーちゃん。まあ、無宗教っていうし、そこまで、ひどくはないと思うよ。…………香辛料を求めに略奪に走るところ何て……あ、まさに」

「大英帝国だね、ご主人。メシマズの旅を覚悟しておくように……」
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