san値直葬? 何それ美味しいの?   作:koth3

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人によっては気に食わない人もいるかもしれません。


第26話

 ルルイエ? 一体それは何処だ?

 僕たちの疑問をよそに闇の書の主は、目の前の怪物の言葉から何かを察したらしい。

 

 「艦長? 聞こえますか?」

 『……ジ……ザ』

 

 !? 何だ、何が起きている!? 通信が、念話がうまくつながらない!?

 

 「艦長! 艦長!」

 『……クロノ?』

 「艦長!」

 『ごめんなさい。貴方達のバックアップは殆ど不可能になったわ。アースラ内は壊滅状態。全てのクルーが精神を錯乱させて、まともに機能することはできないわ。私は何とか行動できるから、私ができる範囲しかサポートはできないと思って頂戴』

 

 そんな、莫迦な! アースラが、アースラが壊滅した?

 

 「な、何故!?」

 『貴方なら分かるでしょう? 貴方の目の前にいる怪物を見て、精神を守ろうとしたのだと思うわ。映像だけでこうなるのだから、現場で直視してしている貴方にはその恐ろしさが良く分かるはず』

 

 艦長のいう事は納得できる。確かに、僕は今怖い。目の前の怪物が何よりも。その瞳で見られるだけで、その声を聴くだけで、その体を見てしまうだけで。

 唯それだけで恐ろしく、体が強張ってしまう。如何仕様もない、生の執着がそうさせているのだろう。アレに近づいてはならない。アレを呼び起こしてはいけない。そう警告をしている。

 だが、それは既に起きてしまっている。呼び起こされて、活動してしまっているのだ。ならば、どうにかして、アレの企みを壊滅させなければならない。

 

 「分かりました。では、艦長。ナイアーラトテプと言われた怪物が言っていた地点を調べるのは可能ですか?」

 『可能よ。それに既に調べているわ』

 

 そう言って目の前に投影されたのは、荒れる海原だった。

 

 「これは?」

 『海の中で何か巨大な建造物が浮上しているわ。その影響で海が荒れている。それ以上は分からないわ』

 

 そう言って艦長は念話を切った。いや、正しくは念話が持たなくなった。

 

 「おっと、外部に助けを求めるというのは少々ルール違反だぞ?」

 

 目の前の怪物が遮断したのだろう。笑みを浮かべながら、たたずんでいる。

 

 「さて、お前たちは如何するか? このままただ待っていたら世界は、いや人類は滅ぶぞ?」

 

 

 

 

 何で! 何で!

 

 「嫌! 嫌だよ! 死なないで、九頭竜君!」

 

 真っ二つに裂けた彼の体を持って、私はつなげようとする。けど、けど繋がってくれない!

 

 「お願い! お願い神様! 彼を、九頭竜君を助けて!」

 

 けれど、願いは届かない。幾ら私が願おうが、犠牲を払おうが起きてしまったのは覆せない。それは世界の法則なんだから。

 

 「う、ううう! 嫌、嫌ああああ!」

 

 九頭竜君の体に突っ伏しながら、私は泣き叫ぶ。

 血がバリアジャケットに着くけど、そんなのは私は気にしない。気にする余裕もない。

 

 「何で? 何でこうなっちゃったの?」

 

 何処から間違えてしまったのだろう。私たちは。

 

 「うううう!」

 

 ガシッ!

 

 「えっ?」

 

 泣いていた私の腕を、誰かが掴んだ。いや、違う。誰かじゃない。

 

 「く、とぅるー君?」

 

 腕をつかんでいたのは、九頭竜君だった。

 

 「ま、待って! 今すぐ、治療出来る人を呼ぶから!」

 

 けど彼は首を振り、掴む腕の力を強めるだけ。

 

 「な、何? 何を!」

 

 片腕で私を引き寄せ、彼はこれから起きることを私に伝えてくれた。そして、それが限界だったのだろう。動かなくなってしまった。

 

 「く、九頭竜君?」

 

 そんな、そんなこと言われても私には出来ないよ!

 

 

 

 

 そんな! 

 

 『主! しっかりしてください!』

 「はやて! テメエ!!!」

 

 あかん! ヴィータ!

 

 「ラケーテンハンマー!!!」

 

 ヴィータがカートリッジをロードしようとする。けど、

 

 「!? か、体が動かない!?」

 「当り前だ。お前は私が用意して、作らせたんだぞ? 反抗できないように作るのは当然だろう」

 

 そう言ってナイアーラトテプは嗤いながら、ヴィータを見下す。お前がしていることは無駄やと。

 

 「くくく。もうどうしようもないようだな? 後一分でルルイエは完全に浮上するぞ?

 人類はこれで終わりだな」

 

 ナイアーラトテプは嗤いながら、そして残りの時間をつぶすために私たちに話しかける。

 

 「本当にお前たちには感謝しているよ。ジュエルシードは星辰を揃えさせるための道具だ。それをこうまで活性化してくれたのには本当に感謝しているぞ? お前たちのお蔭で、ルルイエを浮上させるのに必要な星辰は揃い、今こうして世界を滅ぼそうとしてるのだからな。人間というのは如何仕様もないほどに、愚かだな」

 

 耳をひっかくような、汚らわしい嗤い声をあげて、ナイアーラトテプは私たちを見る。その目には、嘲りと軽蔑が混ざり、そしてすべてを見下す色が混じっている。

 

 「もはや、お前たちには対処する方法が無いか」

 「まだだ! まだ、最後の武器がある!」

 

 そう言って黄金の鎧の男の子は、後ろの空間から奇妙な道具を取り出す。それは三つのパーツに分かれて、それぞれがそれぞれ回転している。唯、男の様子からそれが切り札なのは私は分かった。 

 

 「いくらお前のような訳の分からない存在でも、世界ごと消滅させてしまえば終わりだ。そうすれば、人類は救われる!」

 

 そう言うと、彼が持っている道具は周りの大気を巻き込んで、唸りを上げる。世界がまるで悲鳴を上げているような音が響く。風が巻き込まれて、私の目の前で引き裂かれていく。

 

 「天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリッシュ)!」

 

 暴風が吹き荒れて、ナイアーラトテプを襲う。

 それはあたりを吹き飛ばして、全てを終わらせる原初の地獄やった。

 

 「これで!」

 

 けど、それが原初の地獄なら、目の前の存在は地獄すらも飲み込む混沌。

 

 「惜しいな、人間。その程度で私が死ぬと?」

 「莫迦、な! 世界ごと葬ったんだぞ!」

 「世界! 嗤わせてくれる! 世界程度が滅ぶだけだろう? 私にとって世界等、あってもなくても変わりはしない」

 

 それだけ。傷一つ付かせられないで、彼の切り札は終わりを見せた。

 それがどれだけすごい技なのかは、目の前に広がる惨状を見れば良く分かる。目の前は全てが吹き飛んで、ビル街だった場所は吹き抜けとなっているのやから。でも、それでも意味が無い。それだけの力を持っていたとしても、人間であるのなら目の前に怪物にはかなわない。それが理であり、決まりきった法則。

 

 『主! 負けてはなりません! 心が弱れば、それだけであの者の餌食です!』

 

 !! そうや。弱気になって何になるん? 私が戦わないで、誰が戦う? 私の騎士たちは動けない。戦えない。なら、私が戦って勝たなあかん!

 

 「はやて? ダメだ! はやて、行っちゃだめだ!」

 

 ヴィータが必死になって止めるけど、私はそれを無視して、目の前にいる存在を睨みつける。もう、決して負けてはならないんだから。

 

 「ほう、今度はお前が私を楽しませてくれるのか?」

 「アンタを楽しませるつもりはない! 私は、私の家族とともに生きる。その為には邪魔なアンタを倒すだけや!」

 「如何やってだ? うん?」

 

 本当に、本当にかの神話の生物が存在しうるのなら、生きた炎の神格も存在するはず。

 

 「Ph'nglui mglw'nafh Cthugha Fomalhaut n'gha-ghaa naf'l thagn! Ia! Cthugha!」

 

 ピクリ、と今まで何をしていようとも唯嗤うだけだったナイアーラトテプは、不愉快そうに顔を歪めた。

 

 「ファーマルハウトは地平線に浮かんでいないぞ?」

 「確かにそうや。けれども、それは私が生きた炎の神格を召還する際の条件や。アンタを滅ぼすためなら、炎の神格は自分から来てくれる」

 「確立としては五分にも満たんぞ?」

 

 今までに、今までにこれほどナイアーラトテプは話しかけてきたか? 今こうして話しかけているという事は、この方法が正しいという事や。

 

 「Ph'nglui mglw'nafh Cthugha Fomalhaut n'gha-ghaa naf'l thagn! Ia! Cthugha!

 Ph'nglui mglw'nafh Cthugha Fomalhaut n'gha-ghaa naf'l thagn! Ia! Cthugha!」

 

 その言葉とともに、世界は一気に燃え上がる。私が今まで見たこともない勢いで、虚空から炎が沸き立っていく。そしてその炎が集まって、一つの形を作り上げる。それは見ているだけで私の精神を汚染して、破滅へと誘う炎。みているだけで危険すぎる存在。

 

 「土の邪神であるナイアーラトテプは、火の邪神であるクトゥグアと明確に敵対している。だから、ナイアーラトテプにはクトゥグアをぶつける。それが正攻法や」

 「……」

 

 燃え上がる炎に力を奪われていく。おそらくは、私が召喚したこと同義やから、私から力を奪っているんやろう。けど、これでナイアーラトテプを倒せれば。

 

 「その程度か(・・・・・)

 

 え?

 世界が、世界を燃やし尽くしていた炎が消え去る。いや、違う。飲み込まれたんや。目の前の存在に。

 

 「高々数合わせの邪神に、私が負けるとでも? くははははっははははは! 小娘! 此処まで笑わせてもらったのは久しぶりだぞ? 外なる神の一角であり、全ての無秩序を司る私が、高々炎を敵対するとでも思っていたのか?」

 

 そんな、ウソや……。

 

 「さあ、タイムアップだ」

 

 その言葉とともに、皆の様子が可笑しくなる。

 

 「あ、頭、に何か……はいって!!」

 「シグナム!」

 「がぁあああ! 出ていけ! 俺の中から出ていけ!」

 「くっ! 何だ!? この声は!?」

 

 周りの様子が可笑しくなっているだけやない。私の頭にも、何かが入り込もうとしている。

 

 『くっ! 主、どうにか、どうにか奴を! 主の中に入ろうとする者は、私が止めますから!』

 「ごめん。ゴメン! もう、もう私にはどうしようも無いんや。これが最後の策やった! 邪神に邪神をぶつける。それでお互いをこの地球上から消滅させる。それが最後の手段やったんや!」

 

 もう、終わりや。

 今の状況は、クトゥルフのテレパシーで引き起こされいるはずや。大海で遮断されていたテレパシーが、世界中に放射されている。世界は終わる。もう、助かる方法はない。

 

 「くくく! そうだ。世界は終わる。だが、人類ではなく、世界そのものがな?」

 

 

 

 

 san値チェック

 

 八神はやて 1D10/1D100

 

 チェック  26 46 失敗

 

 san値減少 26-19=7

 

 状態   終わりのない混沌

 

 

 




ごめんなさい! 私はラブクラフト派で、ダーレスの四大元素に基づいた考えは受け入れがたかったんです。でも、そんなダーレスの設定自体は使っている部分があるという矛盾。救いようがないですね。ごめんなさい。
そして卒業式の次の日にこんな作品を書き上げて投稿するのはきっと私だけでしょうね!

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