魂に残っているのはたった一つの思い。かつて、夢破れて邪神になってしまった男の願い。
たった一つこぼれた思い。『人を救いたい』。世界を作ることも出来る邪神になりながら、僕の父親はそれ以外を望まなかった。望めなかった。狂人として
だけど、僕は思う。僕の父親は邪神でもなく、只のろくでなしだ。お母さんを壊して、独り自分は外宇宙の深淵で眠り続けているのだから。だから、僕は許さない。万物の王を。最悪の邪神を。
けど、それもすべてはきっと無駄。いくら僕が吠えても、父親の力の一部の僕には何もできやしない。できるのは、奉仕種族との意思疎通に、神話生物や、その他の知識だけ。それ以外には何もない。反旗を翻すこともできずに、只終わりを待つだけ。
そう思っていた。
「君は何者だい? 僕を視れるなんて」
歓喜が心の底から湧いた。目の前の、愚かで下らない願いを叶えようとしている哀れな物体を知り、確かに僕の心は揺れ動いた。こいつ等にとって世界は終わりを告げるもの。しかし、それは起きない。起こさせてはならない。
きっと、これは意味のない行為。だけど、少しでも嫌がらせになるのなら、僕は彼らに協力しよう。そう思ったんだ。
「お前は何!?」
「僕が何か? そんな事に何か意味でもあるの? 魔女は狂える踊りを舞い、狂信者は悪意を謳う。僕という存在は、憎しみを伝えようとする存在だよ」
カチャリと額に銃口を何時の間にか突きつけられる。このまま僕を殺そうとしているのだろう。だけど、無駄。何故なら。
「う……そ?」
グジュル。ジュルジュルと肉が集まり、穴をふさいでいく。父親のような無敵の体はないけど、死なない体は持っている。銃程度では、僕の敵には相応しくない。
「お願い、ナイトゴーント」
……逃げられた。ナイトゴーントが出る前に、撤退されてしまった。まあ良いや。種はまいた。絶望は既に芽生えるための水を蓄えた。あとは、時期が来るまで待つだけ。
幾人かの少女たちが集まっている。今まで相手取り、戦い、その内面を知った彼女たち。ああ、そうか。これが
「無駄だよ。君たちは自分で選んだんだ。魔法少女という化け物になる事を」
「っ! お前は!!」
「そんな君たちが倒せるはずがない。アレを」
「試しもしないで負けを認めるつもりはないわ」
彼女たちは強い。だけど、それだけだ。だから、最後に忠告して僕は消えよう。
「無駄だよ。君たちでは勝てやしない。ああ、それと、もう僕は君たちの邪魔はしないよ。これは今までの謝罪だ」
投げるのは、様々なグリーフシード。色取り取りのそれが幾つも地面を転がって、彼女たちの足元に転がっていく。絶望を吸い取るという名の、さらなる絶望を集めるための道具。この程度、集めるのはたやすかった。絶望は、消える。さらなる絶望を知った時に。
「何だよ、此奴は!!」
「嘘。嘘よ! こんなの知らない! 魔女ですらないのに!!」
「くかかかか! 前回は邪魔をされたが、今回は如何かな?」
「そうはさせないよ」
本当に、本当に僕は父親と似ていたんだろう。姿や思想ではなく、その運命が。
「誘いを退けて、正気を取り戻したか」
「ああ、そうだよ。
さあ、僕もまた、戦おう。かつての父親、お父さんのように。
少し前に思った、まどか☆マギカクロス。けど、時間がないため断念です。プロット以下の状態ですが投稿です。