san値直葬? 何それ美味しいの?   作:koth3

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ごめんなさい。原作前にするつもりでしたが原作突入です。


無印編
第4話


 小学生。まあその当時は分からないけど大きくなるにつれていかにその時代がいかに重大な分岐になるかはいつか分かる日が来るだろう。実際脳医学的にも子供の脳は非常に物事を覚えるのに適した成長をする。その為、子供の頃に覚えたことは大人になっても忘れ難い。だからこそ子供の時期にどれだけ役立つことを学べるか、多くの経験を得る事が出来るか。それによって未来も大きく変わる。

 だから俺はこの町の周辺で一番有名で実績のある私学の聖祥大付属の小学校に入学した。確かに俺は邪神の力もあるが心ではまだ人間でありたいと思っている。その為に俺はもう一度小学校に入学することにした。人間として形だけでも良かったから存在した証を残したかったんだと思う。そしてそれは俺にとっては正解だった。

 余り他人と触れ合うわけにはいかないから俺から他者に接触することはないがそれでもこの選択は正直言って正解だった。無邪気な子供たちを見ていると心が休まる。常に邪神に魅かれかけている俺だがこの時間だけは俺という精神を、魂を維持することが容易になる。

 しかし小学生になってから三年。それだけの年月を経て俺はようやくあの時アザトースが言っていた言葉の意味を理解した。

 

 

 

 声が聞こえる。いつものように。あの永遠に闇に飲み込まれて魂が消え去るような夜に聞こえる声のように。ただ今回はいつもと言葉が違う。生贄を奉げるという内容でもなく助けを求める声。その声に俺は目を開ける。

 最初この世界に来た日を除いて俺は一度も眠っていない。眠る必要がなくなったようだ。それでも寝ようと思えば寝ることもできる。しかし一度でも寝ると見たくもない光景を延々と夢の中で見せつけられるためこうして夜は目を瞑り朝が来るのを待ち続けている。

 目を開けた俺は助けを求める声に魅かれるようにその場所を探して夜の街を徘徊し始めた。家々の間を縫うように。家々の間をつぶされるような圧迫感を感じながら。そしてその異常な(・・・・・)異常な(・・・)空間を見つけた。そこだけまるで世界が違う。世界というものを嘲笑ってぐちゃぐちゃに法則を乱しながらその場にそれは存在した。辺りとは違った空間として独立して存在させられて空間が、時空が軋み上げている。だが一番の問題はそこじゃない。こんな空間の中に誰か助けを求める声がする事だ。入ろうとしても体がこの空間を拒絶してしまい、中に進もうとすると足が止まってしまう。恐怖で、いや生存本能だろうか? この先の光景を見てはならない。見てしまっては戻れなくなると体の奥が警告してくるのだ。

 どれだけの時間が経っただろうか? 一分? 一時間? 分からない。けれど一つだけ分かった事が有る。俺は幾ら邪神の力を、地球の神々の力を持っていたとしてもあくまでも俺は人間。矮小で愚鈍で劣悪な存在。悩んで解決することなどはなく愚かな歩を進めてようやく正解へとつながる道を見つける事が出来る。ならここで立ち止まるわけにはいかない。

 一歩踏み出す。ぐんにゃりとまるでゼリーをかき分けるような感触がしたかと思うと次の瞬間には異界に俺は存在していた。

 空は灰色になっていてあたりの風景がまがい物でありどうしようもない偽物であることが分かる。見ているだけでこれ(・・)が人が使って良いものではない事が分かる。それに最大の問題はあの毛むくじゃらの奴だ。まるで意志が存在しない。唯設定された行動をするだけのような。その醜悪さに俺はその場で蹲り吐くのを堪えていた。

 

 「うぇ、おぇ! ゲホッゴホッ!!」

 

 吐き気を抑えて歯を食いしばり顔を上げる。顔を見上げた先には二人の少年と一人の少女、それに鼬のような小動物がいた。

 

 「あれは高町にあの二人か」

 

 普段高町にしつこく絡み続けている一人の少年、御崎統也(みさきとうや)。輝く黄金のような色合いの髪の毛にルビー色の瞳を持つまるで外国人のような少年。そしてもう一人は御崎統也がしつこく高町に絡んできた時にいつも止めようとする少年、七式世闇(ななしきよやみ)。緑がかった黒髪に青い瞳を持った少年だ。その二人が何時ものように言い争いをしておりその横で高町が学校の制服に似た見たこともないような服装で困り切っていた。

 こんな状態であの二人が言い争っているのに対してさっさと逃げろと言いたいが統也は我が強く恐らく俺が言ったところで何も聞かない。そして七式の方も統也を一人にすると何をするか分からないからか警戒して俺の言った事に従わないだろう。

 しかしここで見ているだけではマズイ。あんなものを人間が如何にかできるとは思えない。アレはそう言った類いのものではない。アレの本質は人間の願いを曲解して歪ませた結果から嘲笑いながら自身の願いで滅びを招きよせるための道標だ。何故あんな形になっているかは分からない。あの状態なら何とかなるかもしれないが本来の形になってしまえば人間では如何にもならない。だから俺はアレに対処するために胸元に掲げているエルダーサインを外そうとした。

 

 「お前との話なんて意味が無い。俺は俺のしたいようにする!」

 「待て!」

 

 しかし外そうとした瞬間言い争っていた二人の内統也が急に動きを変えて毛むくじゃらの異形に向き直る。七式の叫び声を無視して彼奴は何か黄金の鍵を手に取り空間に差し込みひねり出した。そしたら彼奴の背後から何かが波紋とともに浮き出てきた。豪華な装飾をされた剣もあれば質素ながらも鋭くとがり実際に戦場でも使えそうな槍などいろいろな武器が飛び出てきた。

 七式は舌打ちをするとともに一振りのナイフを取り出して構える。青い瞳が不気味に輝きだして見ているだけで気持ち悪くなっていく。

 そんな二人を見て今の今まで困っていた高町は慌てて手にしていた杖のようなものを異形に構えだす。杖の先では異形が三人を襲おうと体の形を変えて襲いかかってきたが統也の後ろの武器群が飛び出して異形を突き刺して七式が異形がのばしてきた触手を人間離れした加速と動きを生かして切り落としていく。その中を高町は杖を構えて何か呪文のようなものを唱え始めて異形にピンク色の光をぶつける。光がぶつかった異形はあっけなく最初から存在しなかったかのように消えていった。その消え去った異形の中心から菱形の青い宝石に似た本体が出てきて杖に吸収されていく。

 それを見ながら俺は再びこみ上げてきた吐き気に必死になって耐えていた。あの青い宝石はダメだ。アレは知性ある存在に対する罠だ。その宝石に秘められている悪意に俺は吐き気がこみ上げてくる。人間が、人間を、知性ある同族を滅ぼそうと。あるいは自分と似ている存在をかき消すために狂乱の中作り上げたのがあの宝石だ。アレは此処に存在して良いものじゃない。すぐさま本来あるべき場所に戻すべきか破壊するべきだ。だから俺はあの宝石を回収した三人に立ちふさがらないといけない。立ちふさがり宝石を奪い取り壊さなければならない。

 今日、今の状態で三人の前に出ていくわけにはいかないがすぐにでも高町が持っている宝石を回収して破壊しないといけない。その為の道具を、方法を用意しないと。

 この気持ち悪い空間から出ながら俺はこれから先に起きる事態への不安を抱えながら夜の闇に隠れて三人から離れていった。

 例え俺が人間じゃないと知られてでモ、拒絶サれテモ。それでも俺はあれをハカイシないといけなイのだ。

 

 

 

 

 この世で最も慈悲深い事は、人間が脳裏にあるものすべてに関連付けられずにいる事だろう。われわれは無限に広がる暗黒の海のただなか、無知という平穏な島に住んでおり、遥かな航海に乗り出すべくいわれもなかった。 (クトゥルーの呼び声より)

 

 三人の少年に少女、それにフェレットは人間だった。だからこそ無知という免罪符を掲げて核弾頭のボタンを持ち続けているようなことを続ける。自分が知っている間違った情報を信じて。

 フェレットは発掘した際に得た情報を。少女はフェレットからの知識を。少年たちは生れ落ちる前からの知識で。だからこそ気づくことはない。その知識が間違っていると判断できずに。青い宝石で蠢き続ける黒い悪意に気付くこともできずに只々彼らは宝石を集め続ける。

 

 

 

 

 san値チェック

 

 主人公 0/1

 

 チェック 0%(実質63%) 54 成功

 

 san値チェック -8

 

 状態 宝石の悪意

 




そろそろ主人公の名前も登場します。

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