トラック海軍基地に来て二日目がたった佐渡。
赤城と共に食堂に行き、そこでご飯を食べた瞬間、吐きかける。
トイレで吐いた佐渡は、その場で気絶してしまうのだった。
一方で、提督と医者が佐渡の体の秘密を少し知ってしまったのだ。
病室を抜け出した佐渡は、自室で酔っぱらいに絡まれた後、海側へいった。
果たして、海から聞こえた声とは?
そして、佐渡は一体何者なのか?
「あ、病室を脱け出していたんですね。駄目じゃないですか。」
「赤城さん。なんか、外に出たくなって、脱け出しちゃった。」
司令部方面からきた赤城は、目にくまができていた。
夜中、ずっと探していたのだろう。
「ごめんなさい。私のせいで、ゆっくりと眠れなかったんだから…。」
「え?あ、いや、これは…その…大和さんと一緒に資料室に行って、色々と調べものをしていたから…。」
そう言って、視線を逸らす赤城。
「何か…調べもの?」
そう聞くと、
「え、えぇ…。過去のデータを見てました。」
そう返される。
「しっかりと寝ないと、駄目だよ。」
「そういう佐渡さんだって、ずっと起きっぱなしじゃないですか。…あら?佐渡さん、海に何かあったんですか?目線がそっちに行ってますよ?」
「え?い、いや…気のせい気のせい…。」
じっと見てくる赤城から、目線をずらしてしまう。
海から声が聞こえたなんて、言えない。
「?あ、提督が執務室にまで来いと、おっしゃってましたよ。」
「あ、ありがとう赤城さん。じゃあね。」
そう言って、足早に立ち去る。
「はい。…なんか、変だな。赤城さん、て言われた記憶が無いし…どうしたんだろ?」
そんな赤城の呟きを聞き流して、私は執務室にまで走る。
コンコン
「どうぞ。」
「失礼します。」
そう言って扉を開けると、部屋の中に、子供…あ、違った、駆逐艦の子が4名と、軽巡らしき1名がたっていた。
そのなかには、知っている顔の駆逐艦の子はいなかった。
「佐渡。今日の演習、君が旗艦だ。」
「は、はあ…。」
「艦隊の司令艦ということだ。」
と、いうことは、私が艦隊を率いるということか。
「わかりました。」
「……あ、でだ、佐渡の艦隊の、所属の艦は、軽巡の『阿武隈』。」
「長良型軽巡洋艦六番艦、『阿武隈』です。…あたしに期待してちょうだいね!」
そう言いながら、握手を求めてきたのが『阿武隈』という名の子。
セーラー服を着ていて、前髪が決まっているその子と握手を交わす。
「佐渡だ。…戦艦、佐渡。初めての艦隊の旗艦なので、少々おかしくても多目に見てもらいたい。」
「そう?あたし的には全然OKだけど。よろしくね、佐渡。」
1度、チラッと蒼火を見たが、なにも反応が無かった。
「他に、第六駆逐隊の『暁』『響』『雷』『電』だ。」
蒼火が駆逐艦の子4名をそう紹介する。
「暁よ。よろしくね、佐渡。」
「響だよ。よろしく。」
帽子を被った藍色の髪の子が暁で、同じく帽子を被った銀髪の子が響か。
「雷よ!よろしく頼むわね!」
「電なのです。よろしくなのです。」
帽子を被っていない、赤みの帯びた茶髪の子が雷で、同じく帽子を被っていない、茶髪の子が電か。
四人とも、白いセーラー服の首元に錨のマークが描かれている服と青色のスカート。
四姉妹のようだ。
帽子を被っていないのは触れないで置く。
元からああいうのだったかもしれないし、コンプレックスになっているかもしれない。
「で、これから演習海域に行って貰うんだが、道案内の為に天龍と龍田が近海に待機している。佐渡はその二人についていってくれ。後はそのまま演習をして、な。」
そう言った蒼火は、他の艦娘を見渡して、
「佐渡達六人は、今から出撃だ。汎用艤装で出撃!」
そうな真剣な声でいう。
『汎用艤装』…?
何にでも対用出来る装備一式の事かな。
艤装を装備だとしたらの話だが。
「提督ー。」
「何だ?」
「佐渡の艤装って、あるんですか?」
響のその一言が、その場の空気を凍らせた。
「……。」
「……。」
「……。」
「あ、あれ?言っちゃ駄目だった…のかな。」
戸惑う響を見ながら、蒼火は、
「いや、もっともの話だ。悩まなくてもいいよ。」
そう響を励ましながら悩む。
「どうする?」
その場の空気を変えたいが、どうすれば良いのか。
いっその事、主砲でも展開してしまおうか。
「まさか、艤装が自由に出し入れできるわけでは――。」
全員の目線が、私に向く。
目を見開いて、嘘だろ!みたいな顔になっている。
「………あ、安心だな。」
…まさか、艤装を自由に格納と展開が出来るものでは無いとは。
自分も驚いた。
――演習海域 快晴 一m以下の波――
天龍と龍田という、軽巡の子が案内してくれた。
「艤装が無いのに、どうやって戦うんだ?」
と聞かれたから、主砲を二つだけ、展開して見せた。
蒼火や阿武隈等の、あの顔になっていた。
なんだか、あの顔を見るのが面白くなってきた気がする。
「『佐渡、演習海域に到着しました。』」
無線で誰かにいう訳だけでもなく、そう伝える。
やれと言われたわけでは無いが、完全な不意討ちをしたら相手も嫌な気分にしかさせないと思ったからだ。
すると、意外なことに、返信されてきた。
「『わかりました。それじゃあ、始めましょう。』」
大和の声が返ってきたのだ。
特に驚きはしなかった。
「暁達。対空防御の準備をしてね。佐渡も、三式弾位は撃てるでしょ?」
阿武隈がそう言ったのと同時に、5人に付いていた機銃群が動き出す。
小っちゃくて可愛らしい。
「今から始まるのは、航空機戦よ。私達は空母がいないから、航空機を落とすことしか出来ないけれどね。」
そう阿武隈が説明してくれた。
とてもありがたいことだ。
その数分後、電探で航空機群を見つけた。
数は、およそ40機程度かな。
主砲を出して、三式弾を詰め込んで、来るであろう所に砲角度を合わせる。
「な、何しているの?まさか、この距離で大和達に撃つつもり?」
「それは無理かな。場所がわかれば撃つかも。」
「はあ?何を言っているのかしら。」
阿武隈にばかにされた。
少しショックだ。
「……。」
「ば、爆撃機、接近中なのです!」
電のその声と、電探による航空機接近の報告を受けて、主砲を撃った。
発射した数は八つ。
1つの砲塔で2発で、砲塔数は四つ。
広い範囲を攻撃できる為と、攻撃機を残りの砲弾で落とす為。
そして、黒い花が8つ、考えていたのと同じ場所にそれぞれ咲き誇り、半数以上が火を吹いて落ちていく。
すかさず機銃と高角砲の二種類に切り替えて、残りを狙っていく。
「な、なんなのよ!あれ!」
「す、凄いです…!」
「嘘みたいなのです。」
電と暁、阿武隈が驚く声をあげる。
面白いように落ちていく爆撃機を見ながら、私は、
「3時方向、高度十五メートルから40機程度の航空機。狙いは私のようね。」
最後は呟きだが、回りに攻撃させるように促す。
さすがに、私一人では無理そうだから、そう報告した。
阿武隈達は、私が言ったことに信じられないと言った顔を見せながら、言った通り3時方向に機銃と高角砲を構えた。
その間に、爆撃機を次々と落としながら、主砲を旋回させて、待った。
「3時方向から、敵の攻撃機なのです!」
そう電が言ったと同時に主砲を撃った。
今回は、主砲が上手く旋回を出来ていなかったらしく、数機だけを落としただけだった。
爆撃機を落としたのと同じように、機銃と高角砲に切り替えて撃ち始める。
しかし、低空飛行だからか、高角砲の弾が後作動を起こしてしまって、上手く落とせない。
「お、落として!佐渡だけには任せないで!」
阿武隈の鼓舞のお陰か、唖然していた駆逐艦達は機銃と高角砲を撃ち始める。
次に機銃だけに切り替えて、爆散させていく。
今度は面白いように落ちていく。
敵の航空機は、何機かは生き残って魚雷を放つことができたが、すぐに私に海に落とされた。
その魚雷は、まっすぐに私を向いて水面下を走る。
私は、それらを全て我が身に受けた。
「え?ちょっ―!」
カツカツカツッ
模擬魚雷らしかったが、全て中心部にあたったから、本物でもダメージは無い筈だ。
「はぁ…。本当に、貴方は謎ね。」
阿武隈が呆れたように言う。
「ダメージは無い筈よ。装甲が固いところに当たったから、小破にもならない。」
「それは固すぎるわよ佐渡。まあ、いいわ。次は砲撃戦ね。しっかし、誰も偵察機無しとはね。特に佐渡。貴方位は持っていると思っていたんだけどね。」
チラッと私を見た阿武隈は、
「さあ、指示を出して佐渡。貴方が旗艦なんだから。」
そういうと、黙り込んだ。
「じゃあ、全員阿武隈を臨時の旗艦にして、逃げ回って。私は一人で撃ち合いをしてくる。」
阿武隈が、馬鹿を見るような目付きで私を見ながら、
「そんなことは出来ないの。第一、どれだけ装甲が固いとは言っても、一人では行かせられない。」
首を横に振りながら説明してくる。
「私は私なりに理由があるの。模擬戦とは言っても、戦闘には変わりはないのだから、誰も傷を追わせないようにしたいの。これは誰になんといわれようと譲れない。それに…。」
一度話を切ってから、
「これで私が沈んだということになったら、それこそ装甲が固いだけの雑魚になる。せめて、今だけでも一人で行かせて頂戴。」
そう言い切った。
後は、阿武隈の言葉を待つだけだ。
暫しの沈黙の後、
「…わかったわよ。じゃあ、一人で行ってらっしゃい。頑張ってね。」
そう返した。
すぐに、駆逐艦の子達な声をかけて、私から離れていった。
今日は、阿武隈の優しさに感謝しなければならない。
これで、味方にはだれも傷がつかない。
そう思うと、気分が高揚としてきた。
「『やりますね、佐渡。ですが、砲撃戦では貴方に勝ちます。偵察機がない貴方に、長距離砲撃は無理。運良く近づけても、私達姉妹には勝てない。それでも、私達に挑むのですね?』」
挑発してきた大和に対して、
「『実弾で撃ってきたら?当たってもダメージは少ないし、余程の事が無い限り当たらない。貴方よりも早い私を見くびらないで。』」
そう返した。
挑発してきたから挑発し返したのだ。
それで怒っても、私は知らない。
「『ふぅーん。ならば、どちらが強いか、ここではっきりさせましょう。無論、演習用弾で、ですけどね。』」
まあ、挑発に落ち着いて返せるなら、精神面では強いんじゃないかな?
ゆっくりと、私は動き出した。
それと同時に、主砲の弾を『演習用ペイント弾』に替える。
これは、この海域に来る前に阿武隈が説明してくれた事だ。
私だって、味方になる大和達に傷を追わせたくないのだから、もってこいの話だった。
グーーン、と軽いエンジン音が空から聞こえるのは、大和達の偵察機だろうか。
電探を100㎞の距離迄に広げると、空を翔ぶ偵察機に、味方側の軽巡と駆逐艦4隻の子達、そして、大和達がいた。
編成は、空母らしい艦娘が二人、巡洋艦らしい艦娘が二人、戦艦が二人だ。
一番厄介な戦艦と空母を、長距離から狙う。
速度よりも攻撃半径が広い艦種だ、残しておくと後で辛くなるから、先に沈めておく。
それなりの速度で進んでいるのがわかる。
長距離では普通よりも長く計算しておかないといけないから、動かれると辛いのだ。
それでも計算早い段階で終了して、砲角度を合わせて、撃った。
今度は一斉斉射だ。
耳に響くのが辛いし、それに、狙ったように飛んでいかない砲弾が出てくるからしたくない。
と、12発の砲弾がこちらに飛んできた。
少しまばらだが、意外と正確だ。
水柱が12本上がり、視界が一時的に塞がれる。
すぐに消えるのだが、寒気がする。
それに、何やら壊れる音が聞こえたのだ。
しかし、どこが壊れたのか調べる時間が無い。
―クスクス…クスクス…―
海の声が嘲笑う。
黙ってもらいたい。
と、こうしている間に、ついに大和達が見えた。
「……!」
「…!……!」
遠くからで、何を言っているのかはわからないが、一人で突撃してきたのに驚いたのだろう。
カカッ
大和達六人のうち二人が撃った。
遠くだと、小さい音しかしないんだなあと思いつつ、一砲塔単位で段々撃ちをする。
そして、砲塔は四つ。
4つの4つだから、16発か。
パン パン パン パン
主砲弾が命中でもしたのか、何かが炸裂するような音が聞こえる。
『大和さん武蔵さん、中破判定。翔鶴さん瑞鶴さん、轟沈判定。』
機械がそう告げる。
どうやって調べているんだろうか気になるが、今は装填して次を撃たないと…。
―フフフフフッ…ツヨイワネ…―
えぇいだまらっしゃい!
集中出来んわ!
カカカッ
戦艦と巡洋艦からの砲撃が来る。
これは、ちょっとヤバイな…。
やはり、集団では勝てるかわからなくなる。
「!」
頭と両腕に飛んできた弾を、間一髪かわす。
少し寒気がした。
お返しに、主砲を斉射してやる。
キーーーーン
耳がやられた。
自分のせいだけど辛い。
ガガーン!
今度は巡洋艦に命中。
戦艦が何処に行ったのかわからない。
巡洋艦達がいるところに向かおうとしたその時、
「本当に、貴方は強いわね…。」
目の前から、大和がこちらに砲を向けている。
「強いな…。」
同じく戦艦の艦娘が、同じように砲を向けている。
しまった!これは近すぎだ!
「「けど(だが)…これで終わりよ(だ)!!」」
二人合わせて、四つの砲塔から伸びる12本の砲身から、弾が飛び出す。
「!」
と、周りの時間が止まり、砲弾の先端から光る棒のような物が伸びて私の体を突き抜ける。
まるで、ここに飛んでくるとでもいっているかのようだ。
無意識の内に、その光が体を突き抜けないような位置に動かす。
全てが光の棒のような物から避けるようにした直後、砲弾が後ろへ飛んでいく。
「え?」
「あ?」
二人が唖然とした顔をして固まっている。
そして、私は主砲を二人の目の前に砲を突き出す。
「降参ですか?大和さん。」
息を吐いて、緊張を解いた。
もしかしたら、それがいけなかったのかもしれない。
「あ……ああ……!……ひ……あ………!」
「姉さん…?どうした?」
大和の顔がおかしい。
青ざめていて、体が軽い痙攣をしている。
「う…あ………!……。」
「姉さん!だ――」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
大和が、主砲を撃った。
恐らく実弾だろう。
避けられない距離でうたれた。
まさか…こんなことになるなんて…。
第参話 END
いかがでしょうか。
不定期とは言っていますが、出来るだけ定期的に更新していきたいと思います。
予定よりも遅れてしまいまして、申し訳ありません。
学生な者で、書く時間が少ないので、お許しを。
それでは。