Fleet Combat -Dawn of the horizontal line- 作:大川静真
この度は俺の拙作SSをご視聴いただきありがとうございます。
初SS投稿な上にエタる可能性すらあるなど計画性のかけらもないようなたわけですが、どうか最後までお付き合い頂けるようお願いします。
#1 始まりの波の音
………………
…………
……っ
微睡みのような意識の中、俺の意識は少しずつ覚醒していく。
最初に感じたものは……波の音。そして風のふく感覚。ややあって潮の香り。
ゆっくりと目を開けると、視界に広がるのは雲一つない青空と容赦なく照らす太陽だけ。どうやら俺は仰向けに倒れていたらしい。
腕に力を入ることを確認してから上半身だけをゆっくり起こし、辺りを見回す。
見えるのは前方に広がる一面の青い海だけ。足元は防波堤と思われる足場。
どうやら俺は防波堤のほぼ先端部分に仰向けの体勢で倒れていたようだな…………ってちょっと待て
「……何で俺は、生きている?」
思い出した。俺は意識を失う直前まで海で海水浴を行っていたんだ。その時に足をつり、陸に戻ることも助けを呼ぶことも叶わないまま海に沈んでいった筈だ。あの苦しさと自分が沈んでいく感覚、意識を失う直前のあの水の中の静けさはそう忘れられるものじゃない。
「確かに俺は海に沈んだのを覚えている……まさか俺が意識を失っている間に誰か助けてくれたのか?」
それにしては周りに誰もいないし、というよりもここは……
「どう見ても、俺が溺れた時に来ていた海水浴場じゃないな」
むしろ海水浴場じゃなく埠頭の類だろう。大きなクレーンや船をしまうドックのような施設を見て俺は思った。
「そして服は完全に海水浴中に着ていた水着じゃない……と」
足元を見た時に見えた俺の服装は意識を失う前までの水着ではなく、白いズボンをはいており靴は何やら鉄製と思われるブーツのようなもの。服はボディスーツのようなインナーを着ており、その上にこれまた白い制服のようなものを袖を通さずただ羽織っている感じで着ている。制服のようなものは鎖骨付近から紐のようなもので結ばれてはいるらしい。
「何というか、コスプレの類と言われてもおかしくない気がするなぁ……ん?」
自分の体に異常がないか手で触りながら調べてたら妙な手触りを感じた。俺の背中の部分に明らかに肌の感触とは違う「何か」がある。
しばらく背中周りを手で触り続け、分かったのは手触りの違う「何か」は金属のようなもので輪っかのような形をしていること。今俺が着ている服が背中の「何か」が外に出るように穴をあけられていること。「何か」は取ろうとすると俺の皮膚が引っ張られるため恐らく体内に埋め込まれているということ。そして背骨を中心線として4つ埋め込まれていることだ。
「何なんだよ俺が意識を失っているうちに改造手術の類でも行ったのかよ。というか何でこんな所に放置されてるんだよ。訳分からん……」
最早色々と訳の分からないことが起こりすぎた為か俺は頭を抱え、身を屈めたまま愚痴をこぼした。
そうやって身を屈めたままそこにいたのは数分か、数十分か……どれくらいの時間が経ったかは分からない。だが、ある程度時間を置いた為に自分の頭も冷静になってきた所で俺は立ち上がることにした。
「はぁ……こうやってたところで現状は何も変わらないか」
そうとなると現状を理解するためにも移動するべきであろう。うん、そうだろう。
という事で先ほど見えたドックのような施設に向けて俺は歩き始めた。何か、元の場所に戻れる方法があればいいのだが……まあその可能性はほぼ無い気がするが最低でも現在位置ぐらいは教えてもらえるなりなんなりで分かるだろう。
結論から言えばドックと思われる施設内の人に、現在位置を教えてもらうどころか今いる場所の地図すらありませんでした……うん。十分ほど辺りを見て回り、人の気配の「け」の字すら感じられなかったとかもうね……
施設の状態は外観内部含めて戦闘でもあったのだろうか破壊の痕跡が残されていたが、それもごく一部で何かを作ると思われる機械類は殆どが新品同前の状態で鎮座していた。
ただ電源が入れられてないのかその機械類は全て停止しており、何かが稼働している音すら聞こえない。
しかし今の俺はその人や現在位置を知る手がかり以外にもう一つ気になる妙な「モノ」を見つけたのだった。
「なんだこの……船の模型をばらしてロボットにつけてみましょう的な物体Xは?」
俺の目の前にある「モノ」……それは今俺が言ったように、船の模型と思われる何かをばらしてアームのようなものに取り付けた「モノ」
それがハンガーで固定されており、中央部分にコネクタのようなものが4つついていて、何かを接続できるようになっている。
そう。4つ。
「4つの接続端子……ねぇ」
そう呟いて俺は先ほどと同じく背中を触り、金属の何かを触って数を数える。
うん、4つあるな。
さて、どうするべきか……まさかこれと接続するために俺にあの金属の何かが付けられたのだろうか。仮にそうだとすれば何で俺をこの施設の中ではなく防波堤の上に放置したのか分からないし……うーん。
「まさか……なぁ」
ちょっと怖いもの見たさ的な思考で試してみる。何やってるんだろうか俺は?
俺はぎこちない動きで制服の裾をまくりあげ穴の部分を出し、接続端子と穴すべてが合うように体を動かす。
まさかと思い実行に移したその試みだったが、端子と穴の位置はすべて合致した。これって一体どういうk
「っ!?ぎっがっ!!」
い、痛い……頭が痛い。
突如頭を襲った激痛に俺は反射的に頭を押さえる。だが、激痛は収まることなくむしろ増していく……
「がああああああああああああっ!!!」
今まで比較したことのない、頭の中身を直接焼かれるかのような激痛に襲われ、俺は意識を手放した。
どれくらい時間が経ったのかは分からない。俺はゆっくりと目を覚まし、辺りを見回した。相変わらず人の気配は無いな。
ついでに体にも異常がないか調べる。うん、汗が大量に出てる以外特に「体に」異常は無いな。
頭の痛みはもうほとんど無く、思考はクリアな状態だ。自分の名前も含め、直前まで何をやっていたか等の過去の記憶も問題なくある。
うん、あるのだが……
「深海棲艦……艦娘……妖精……なんだこりゃ?」
俺の知らない知識が頭の中にある。まさかこの物体Xをつけた時に知識が流れ込んだ、とでも言うのだろうか……まあその辺はいいとして。
「突如海の底から現れ、無差別に自分達以外の生命を無差別に襲う敵性存在「深海棲艦」……そいつらに対抗する力を持ち第2次世界大戦期の船としての力を原型とする「艦娘」そして彼女達をサポートするために突如として現れた「妖精」……ねぇ」
つまり俺が装備したこれは艦娘の装備……所謂艤装であるってわけか。で、流れ込んだ知識からこいつの艦名は……
ヒューバート級航空母艦の7番艦ケストレル……だな。
ってちょっと待て。
「聞いたことあるぞケストレルって。確かゲームのエースコンバットに出てくる空母の名前だよな?」
覚えてるぞこいつの名前は。確か昔プレイしたことのあるエースコンバットってフライトシューティングゲームの作中に出て来た空母の名前だ。ある作品で主人公達が一時期世話になり、対艦ミサイルを喰らうもダメージコントロールの不利を承知で主人公達の発艦を優先させ、その結果主人公達は発艦完了するもケストレル自身は沈んだって話だった筈だ。
それが一体何で艤装になってここにあるんだ!?というか何故に俺が艤装を装備できるんだよ?手に入れた知識じゃ艦娘は女性体のみの筈だぞ。あれか?この知識は実はかなり前の知識で今は男性体も存在してるとかって事じゃねぇよな?つーかこれって第2次世界大戦の艦船じゃなくって架空世界の空母じゃねぇか!!一体どういう事だよ!?
「ああもう疑問ばっかりでさっぱり分からん!一体全体何がどうなってやがるんだよ!!」
俺は頭を抱えながら絶叫する。もう分からないことばかりで頭が混乱してきたんだ。絶叫するぐらいいいだろ!
『何ともまあ酷い叫びだなあんた。もっとも気持ちは分からなくもないがな』
「っ!?誰だ!?」
不意に声をかけられ慌てて辺りを見回すも、人らしき姿は見当たらない。
『下だよ下。あんたの足元だ』
「下?」
言われたとおりに俺の足元を見ると、人を小さくデフォルメしたような小さな生き物が3体いた。2頭身とも取れる小さな生き物で何というか、大きな頭をよく支えていられるなと思ってしまった。
俺はこの生き物を知っている。というよりも知識として「先ほど知った」生き物だ。
「あんた……妖精の類か?」
『そうだ。一応そのケストレルに搭載されている艦載機妖精の1人だな』
「やっぱり、この艤装はケストレルのそれなのか?」
『そうらしい。とはいえ俺も詳しい話は聞いていないぞ。「誰が装備するか聞かれたのか?」なんて質問されても俺達は何もわからないから答えられないからな』
妖精の一人が頷きながら言う。その後に俺が聞こうとした質問をあっさりと潰してきた。
「そうか……」
『まあ、その艤装を装備できる以上あんたも艦娘……に、なるのか?』
「一応その類になるのかね。俺は男なんだが」
『とはいえそうやって艤装をつかえる以上艦娘として活動できるということになるわけさ。まあそれでだ……俺の言いたいことは分かるか?』
「深海棲艦と戦え……ってことか」
俺の言葉に妖精は無言で頷く。いつの間にか入って来た知識にある。艦娘の存在は現状深海棲艦と戦うために存在している人類唯一の対抗兵器だと。そして艤装を装備したという事は俺はいつの間にか艦娘(?)になっていたという事になる。
それはつまり、俺自身がいつの間にか戦いに巻き込まれてしまったという事……だよなぁ。
「……戦わなきゃ生き残れないって訳かね。深海棲艦が跳梁しているであろう現在の世界情勢的には仕方ないのかもしれんが」
『だがやらなきゃ深海棲艦どもにやられるだけだ。あんたがなんでここにいて艤装を装備できるか俺達は知らんが、まずは生き残ることから考えたほうがいいんじゃないか?色々考えるのはそれからでも遅くないと思うぜ』
『……(コクコク)』
妖精の一人がさも当然と言わんばかりに言い、もう一人の妖精が無言で同意する。残った最後の妖精は心配そうに俺を見ていた。
面倒くさい事になったものだ。海に沈んだかと思えばいきなり妙な場所に連れてこられて、あまつさえ放置させられた。意識を取り戻して辺りを探索してたら艤装を見つけて興味本位で装備したら妙な知識を入れられた。
……艤装装備は完全に自業自得だが。
しかし、深海棲艦なんて元いた場所ではそんな種族の名前すら聞いたことが無い。おまけに艦娘や妖精の概念すらあそこには無かった筈だ。
いや、妖精と言う存在は確かにお話の中ではわりかしポピュラーなものかもしれんが、現実に存在しているなんて事は聞いたことも無い。
これは、ひょっとしたらひょっとするのかもな。
だとすれば、やるべきことは……
しばし考え、俺は心を決めるつもりで自らの両頬を軽く叩き
「よし、やるか」
自ら戦いに赴くことを決めた。
というよりもだ、現時点で最早この選択しか残ってはいないのだろう。いつ、どこで選択を間違えたかは分からない―――高確率で艤装装備が原因だろう―――が、今ここでこうやって艤装を装備できてしまった以上それ以外の選択肢は存在しないのだ。それに、俺も殺されるなんてのは嫌だから。ならばウジウジしてもいられない。
正直な話をすれば、ここは俺のいた日本……いや世界とは違うんじゃないかって確信に近いものを感じていたし、ここは本当に違う世界で元の世界に戻る手段を見つけたとしても、もうあそこに戻らなくてもいいかも知れないなって思いが俺の中では既に芽吹いていた。
中学を卒業し、いざ高校に上がろうとしていた矢先に両親が事故で死に。その後親戚筋をたらい回しにされて相次ぐ転校でまともな友人を作ることすらかなわず。最後に自分を引き取ってくれたひいおじいちゃんとひいおばあちゃんも既に他界済み。
社会人となってから色々ありながらもなんとかやって来た仕事の方もつい最近ある理由で辞めさせられた。正直あそこに戻りたい気持ちはまだ残っているがそこまで後ろ髪を引かれるほどのものではない。
だったら、右も左もわからないここで自分の生きたいように生き、死ぬのも悪くないなんて考えも少しあったりするが、まあいいか。そのあたりはこれから考えるとしよう。戻るか戻らないかは、手段の見つかったその時になって決めればいい。
とはいえ先も言ったように何もせずに殺されるのは俺も嫌だけどな。
『えらいあっさりと決めたものだな』
「自業自得かもしれんが、こうなってしまった以上深海棲艦と戦う以外の選択肢なんて最初からあってないようなもんだろ。だったら嫌々選ぶよりも自分の意思で選んだほうが気持ち的に楽になると思ってるんでね」
『まあ、やる気があるんならそれでいいさ。これからよろしく頼むぜ。大将』
「大将ぉ?」
『俺達はケストレルの艦載機に搭乗する妖精だ。だから戻る場所であるあんたの指示には従うつもりだよ。だから、大将ってな』
「なんじゃそりゃ?まあ、これからよろしく頼む」
『……(ニコッ)』
『ああ』
『よろしくお願いしますねケストレルさん』
俺の言葉に妖精3人は笑顔で頷いた。
「っと、俺の名前をあんた達に教えておくよ。俺の名前は永瀬圭。ヒューバート級航空母艦の7番艦ケストレルの艤装を使うことになった男で、つい先日まで充実した人生を送ること叶わないただの社会人だった男。それが俺だ」
これが俺、永瀬圭―――エースコンバットに出てくるケイ・ナガセと偶然にも同姓同名なのだ―――がここに来て最初に起こった出来事であった。
いかがだったでしょうか?
途中で出て来た妖精さんは元になったキャラがいますが正体を明かすまで秘密としておきます。
とはいえエースコンバットプレイヤーの中には何となくの予想がつく人はいるんじゃないでしょうか?
尚、他の艦娘の登場はもう少し先になります。
では次回「#2 処女航海、初実戦-Maiden voyage.First combat-」にてお会いしましょう。
以下にケストレルの武装を記載して今日はここまでといたします。
艦娘(?)能力
艦名:ケストレル
装着者:永瀬圭(名前の元ネタはエースコンバットシリーズに名前が出ているケイ・ナガセより)
年齢:23歳
艦種:装甲空母 備考:夜間攻撃可能
装備:艦載戦闘機F-14 トムキャット
艦載攻撃機F/A-18E/F スーパーホーネット
艦載攻撃機A-10 サンダーボルトII 備考:地上施設への攻撃力補正が300%となる。アベンジャーが戦車ごと地面を耕したり燃料気化爆弾を装備してるから仕方ないね。尚、なぜか搭乗妖精の全員がハンス=ウルリッヒ・ルーデルの熱烈なファンだったりする。
電子戦機EA-18G グラウラー 備考:制空優勢以上の時にジャミングを使用。敵艦船の命中、回避、カットイン率を大幅に下げる。夜間発動可能。
偵察機E-2 ホークアイ
艦載戦闘・攻撃機F-15C(????) 備考:艦載機数3機強制固定、演習時使用不可、機種転換任務あり(どのスロットに装備しても艦載機の最大数が3に固定される。装備して演習を行った場合、自動的に装備なしの扱いとなる。特定の装備を手に入れると自動的に機種転換が行われる)
艦対空ミサイルRIM-7 シースパロー
近接防空ミサイルRAM
ファランクス20mmCIWS3基
圭の服装は細部の違う第2種軍装を上着だけ肩にかけた状態で白無地のインナーを下に着ている。
艤装の見た目としては大鳳改の飛行甲板や艦橋構造物がケストレルのそれに代わり、腰周りにファランクスを2基装備、大腿部にシースパローとRAM、ファランクスの残り1基が手持ちサイズで切り替えられるようにセットされている。
なお、圭自身は軍事や航空機に全く詳しくない(知ってるのはエースコンバットで使用した機体のみ。それも現実での性能を知らない)ため艦載機の中に本来なら空母発着艦不可能な機体があることを知らない。
何故A-10やF-15みたいな艦載機じゃない機体が空母に装備で来ているかは妖精さんパワーもあったりする。
後はエースコンバット5で緊急事態だったとはいえケストレルが実際にやったのもある。