Fleet Combat -Dawn of the horizontal line-   作:大川静真

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どうも皆さんおはようございます。こんにちは。こんばんは。大川静真です。
今回は前話の時雨視点でのお話と帰投後の一幕となります。

それではどうぞ。

2015/12/20 F-15C妖精トリオの会話と地の文の一部を修正しました。


#9 再会の海-Sea of reunion-

―――Side 時雨―――

 

 

 

 時雨の目の前にいる女性。艦娘としては初対面ではあるが、かつての船として面識がある艦娘。

 

 あの日、運命のスリガオ海峡に突入し……敵の猛攻を受け沈んだ彼女。

 

 艦娘として生まれ変わった後も再会を願い、出来る事なら今度こそ守りたいと1人心の奥底で願っていた。

 

 

 

 その彼女が今、自分の目の前にいる。

 

 

 

「山城、助けに来たよ」

「時雨……なのよね?」

「うん。スリガオ海峡に突入する時に一緒にいた白露型駆逐艦2番艦の時雨だよ」

 

 「事情があって武装が違うけどね」と付け足しながら時雨は山城の前に躍り出る。そして、前にいる深海棲艦達にオート・メラーラ76mm砲を構えた。

 

「あの時は守れなかったけど、今度は絶対に守るから!」

 

 

 

 自身の決意を込めた砲撃を放ち、ハ級を爆散させた。

 

 

 

 

 空の制空権争いが圭の艦載機部隊の圧勝―――1機撃墜されたみたいだが―――に終わると時雨達の傍を人影が2つ、横切って前に出て来た。時雨が確認するまでもなく分かる。ケストレルの艤装を装備した永瀬圭と白露の2人だ。

 

「時雨はそのままその山城って艦娘の撤退を護衛!俺と白露と艦載機達で残存している敵を迎撃する!行くぞ白露!」

「うん!」

「いっちばん多く敵に攻撃するよ!」

 

 圭の指示に時雨は力強く頷き、山城とともに撤退を始める。山城は圭の姿を見て何か言いたそうな表情だったが、現状を鑑みたのだろうか無言で時雨の後ろについて彼女も撤退を始めた。

 

「今の2人は?」

「一応僕の艦隊のメンバーだよ。仔細は無事に撤退が終わってからでいいかな?」

「え、ええ……」

 

 空返事ではあったものの納得したと思われる山城の護衛を時雨は開始する。彼女を自分のいた基地の近海まで送るだけの仕事ではあるが、敵の襲撃が無いとは限らない。油断は禁物だ。

 

 しばしの間、双方に沈黙が訪れる。しかしその間も時雨は周囲の警戒を緩めない。このまま敵が現れないまま基地まで戻ることが出来たのならそれが一番いいのだが、そんな旨い話などそうそうあるとは思えない。

 

≪こちらホークアイ。時雨、聞こえますか?≫

<うん、聞こえるよ。何かあったの?>

≪接近する艦隊を発見しました。数は4。駆逐イ級が2と重巡リ級が1……そして空母ヲ級を1体確認しました!≫

「っ!?」

 

 案の定、敵の増援が来た。圭の艦載機であるホークアイが発見したようだが、相手の艦隊編成に時雨は驚愕する。

 こちらの戦力が揃っている状態なら大した問題は無さそうな相手だが、肝心の圭と姉の白露は向こうで戦艦級を含む艦隊と交戦中。こちらは艤装が損傷していて戦力としては期待できない山城を護衛している状態。状況としては最悪だ。

 

 

 

 だけど、負けない。負けるわけにはいかない!

 

 

 

「ヲ級の艦載機が来る……山城、急いで逃げて!」

「時雨はどうするの!?」

「可能な限り僕が食い止める!ミサイル発射!」

 

 接近している艦載機を対空ミサイルを発射して迎撃する。兎にも角にも鬼門のヲ級艦載機を何とかしなければならない。だからといってリ級やイ級等の他の相手を無視する訳にもいかない。

 落ち着いて一つ一つ対処して切り抜けるしかない!

 ミサイル発射機から発射させられた対空ミサイルはヲ級の艦載機を数機ほど撃破したものの、時雨から見て随伴艦達の奥に立っているヲ級は気にすることなく次々と艦載機を発艦させて来る。

 時雨は可能な限り前進して主砲を兎に角乱射して敵の注意をひきつける。

 

 命中弾は期待しない。何とかして山城に攻撃が向かないように自分に注意を引きつける!

 

「もう一度!」

 

 対空ミサイルを再び発射しヲ級の艦載機を破壊していきながら敵艦隊に砲撃を行い足を止めさせていく。

 だが、艦載機が目に入ればその都度対空ミサイルを発射して迎撃するも、ヲ級は気にすることなくその都度新しい艦載機を発艦させて来る。

 

 

 

(きりが無い……このままじゃ……)

 

 

 

 オート・メラーラ76mm砲を発射して近くにいたイ級を牽制しつつ再度対空ミサイルを発射してはいるものの、相手の打ち止めが見えない現状にやがて最悪の結末―――弾切れによる対空攻撃手段喪失―――を感じ始めたその時。

 

≪FOX2!FOX2!≫

 

 唐突に聞こえた声。そして圭達のいた方向から放たれたであろうミサイルがヲ級の艦載機を直撃し、爆散させた。

 

「今のは……」

 

 時雨はミサイルの飛んできた方向を見る。ヲ級もまた突然の乱入者が現れた方向を見やる。

 

 

 

 飛んできたのは……3機編成の部隊。時雨が新しい艤装を装備した時に得た知識で理解したその戦闘機の部隊。F-15Cの部隊。

 

≪駆逐艦時雨、ヲ級の艦載機隊は俺達に任せてあなたは敵艦船の撃破を!≫

<っ!?う、うん!>

 

 入って来た通信―――圭が自身の中で妖精Cと言っている妖精からの通信だが時雨は知らない―――に時雨はすぐに顔を引き締め主砲を構えなおす。

 ヲ級の方も乱入者を優先して始末するべき脅威と認定したのか一気に多数の艦載機を発艦させ、迎撃にあてる。

 

≪作戦開始!このまま敵艦載機部隊を撃破する!≫

 

 そのままF-15隊は散開し、ヲ級艦載機部隊と戦闘に入った。

 

「これなら!」

 

 航空機からの攻撃が目に見えて少なくなった今ならいけると思い、時雨は先ほどまでの牽制狙いの砲撃とは違い狙いをつけて主砲を発射して接近していたイ級の1体を仕留めた。

 

「残り3!」

 

 そこへもう1体のイ級とリ級が時雨に狙いをつけて砲撃を行ってくるも、時雨は圭の動きを真似てジグザグ走行や急旋回を行い回避していく。

 時々上に視線を移しつつも敵の攻撃を何とか回避する。

 

 時雨が特に警戒しているのは妖精達の撃ち漏らしたヲ級の艦載機による上空からの航空攻撃……

 

 だが、彼女の警戒しているそれが来ることは無く、ヲ級の艦載機達の悉くがたった3機の戦闘機により蹂躙され、叩き落とされていた。

 

 

 

(何だろう……圭がよく使う他の艦載機達と動きが違う気がする……)

 

 チラチラと見ていた為に彼らの断片的な動きしか見ておらず、漠然とした感覚だったが時雨はそう感じた。

 圭の艦載機達も腕は良い方だと思うがこの3機は明らかに何かが違う気がするのだ。

 

 

 

 まるで、敵の全てを容赦なく焼き尽くさんとしているかのような……

 

 

 

 だが現状そんな事を気にしている暇は無い。時雨は前方の敵に意識を集中させる。

 相手はリ級とイ級が並行して主砲を発射しつつ前進して来ている。

 

「ハープーン発射!」

 

 背中のバックパック状の艤装から対艦ミサイルを発射し回避する素振りすら見せないリ級に直撃、爆散させた。

 

「残り2!」

 

 一撃でリ級が爆散した事実に思考が追い付いていないのか、呆然としているイ級に時雨は容赦なく砲撃を叩き込む。イ級は攻撃をかわそうともせずに直撃を受け轟沈した。

 

 これで、残るはヲ級のみ。鬼門だった艦載機の方も圭が飛ばしてきたであろう艦載機達の活躍により壊滅状態だ。

 

「行ける……これなら!」

 

 時雨は1人確信する。油断や慢心があるわけではない。山城を守るためにも気を引き締めて行くのだ!

 

 

 

 そうだ、彼女達を守ることが出来なかったあの日とは違う。今度こそ守り抜いて

 

 

 

 生きて帰って

 

 

 

 ―――…………の…………めに…………れ―――

 

 

 

「…………えっ?」

 

 

 

 動きが、止まる。自分の中で何かが出てきそうになった。

 自分は駆逐艦時雨。今は太平洋戦争と呼ばれるあの戦いに参加し、最終的に敵の攻撃を受け沈んだが、艦娘として生まれ変わった自分。圭が救助したという艦娘。漂着したのを助け出されたと言っていた。

 

 それはいい。そこまではいい。

 

 

 

 だけど……だけど……

 

 

 

 今

 

 

 

 自分は

 

 

 

 自分は一体

 

 

 

 自分は……一体……ナニヲ思イ出ソウトシテイタ?

 

 

 

 何を思い出そうとした?何を忘れている?何が出てきそうになった?何が何が何が何がナニガナニガナニガナニガ

 

 

 

≪おい!時雨!何をしている!?足を止めるな!≫

「っ!?」

 

 妖精Bからの通信で時雨は我に返る。慌てて視線を元に戻すとヲ級が敗北を悟ったのか撤退を始めていた。

 

「くっ!逃がさない!」

 

 思考を戦闘モードに戻し、ヲ級に向けてハープーンミサイルの発射管を向けて発射。ミサイルは吸い込まれるようにヲ級の頭部に直撃して大爆発を起こし、撃沈させた。

 

 

 

≪周辺海域に敵影なし。作戦成功です≫

<…………うん>

≪やったぜ!どうだい?俺の飛び方は!≫

≪まったく……あの時から相も変わらずだなこいつは≫

 

 偵察機のホークアイからの通信で戦闘の終了を時雨は実感する。だが彼女の思考は未だ先程思い出しそうになった「ナニカ」に囚われていた。

 

≪駆逐艦時雨、大丈夫ですか?何かトラブルでも?≫

<……あっ。うん、心配してくれてありがとう。僕は大丈夫だから>

 

 自身の身を案じたのか妖精Cが通信してきたが時雨は笑顔を向けて返す。しかし、その笑顔がかなり無理をして作られたものであるのは誰の目に見ても明らかだったが。

 

≪……了解した。俺達は帰艦するが無理はしないでくれよ≫

<うん……>

 

 彼女の様子に不安の拭えなかった妖精Bだが、時雨の意思を尊重して帰還を始める。時雨はそのままF-15C隊を見送った後、山城の撤退した方向に自分も向かっていった。

 

 

 

 今もなお、彼女の記憶の奥底で渦巻いている「ナニカ」を感じながら……

 

 

 

―――Side out―――

 

 

 

―――Side 圭―――

 

 

 

 危ない所は数あったものの、俺達は無事に山城のエスコートを完遂し基地に戻って来た。

 その山城だが少なからずダメージを受けていた為現在入渠中だ。最初は遠慮していたのだが時雨の説得もあって首を縦に振って入渠施設の方に向かって行った。現在俺はその山城を待つ為入渠施設の入り口にある休憩施設のベンチで大絶賛暇を持て余し中である。

 

 覗き?する訳が無いだろう?現状彼女はあくまでもゲスト、お客さんだ。そんな相手に不謹慎な行為とかやる方がおかしいし、そもそも犯罪行為だからやるわけにはいかんだろ。

 

 とはいえ当面の問題は彼女の処遇だよなぁ。深海棲艦達の襲撃を受けて逃走していたとはいえ彼女は恐らく人類側の戦力の筈だ。ならば彼女の仕える人が上にいる筈。傷が治り次第その彼女の上官のいる場所に帰還させるのが妥当かねぇ……

 

 まあその辺りは彼女が入渠から戻ってきたらでいいだろう。

 おっと、ちょうど主任が戻って来たな。とりあえずは彼女の状態を聞いてみるか。

 

「お疲れさん主任。ちょっと聞きたいんだが、あの山城って艦娘の状態はどうだ?」

 

 立ち上がった俺の呼びかけに主任はこちらに振り向くと笑顔を浮かべやって来る。そして俺の近くに来ると口を開いた。

 

『お疲れ様です圭さん。件の艦娘ですが、多少の傷はありましたが入渠していれば跡形もなく消える程度の傷でした。彼女の方はそうあまり時間がかからずに完治するでしょう。まあ主な被害が艤装の方に行ってたのでそちらの修理に時間がかかりますが』

「どれくらいかかりそうかな?」

『まあ……2日もあれば問題なくできますね……』

 

 俺の質問に返答する主任だが、何故か目が泳いでおり気が気でなさそうな状態だ。

 これは……恐らく……

 

「艤装の魔改造は禁止だぞ。彼女は俺達の仲間の艦娘じゃないんだからな」

『グハッ!』

 

 俺の釘差しに主任は吐血したかのような悲鳴を上げ落ち込む。やっぱり考えていたか……

 

『うう……まさかどこぞのニュータイプもかくやと言わんばかりの予測で止められるとは……』

「いや、あんたが分かりやすいってのもあると思うぞ」

 

 前科があるってのも主任の思考が分かる原因のひつとだしなぁ……

 

 

 

 そういえば艦載機妖精達はどこへ行ったんだ?俺達が基地に帰投した瞬間A-10やF-15を持って行ってたが何かあったんだろうか?

 

 

 

 山城が入渠施設から戻って来たのはそれから数分ほど経ってからだった。

 外見は上は巫女服のような和服のような服装に下はミニスカートを穿いた黒髪をボブカットにした女性。出るところは出て、締まるところは締まっている俗にいうグラマーな体系だ。

 それよりも特徴的なのは頭の右側についたどー見ても違法建築に見えるタワーのような何かがついているのだが……何だあれ?

 

「貴方はあの時、時雨に指示を出してた……」

 

 山城は俺の顔を見るなりそう呟いた。ああ、やっぱり気付いたか。

 

「そうだな。とりあえずは初めまして。あんたも事情があるみたいだし、こっちも色々事情があってだな……っておいおいどうした?」

 

 ベンチから立ち上がり、どう切り出そうか悩みながら言ってたがいきなり山城が力なく地面に座り込んだため慌てて近づく。何やらブツブツと呟き始めたため耳を傾けてみると……

 

「ああ……とうとう艦娘に男性個体まで出て来たのね……欠陥戦艦とか艦隊にいる方が珍しいとか言われてたあの時から生まれ変わった今度こそ活躍してやると思ってたのに私は結局碌に使われずにあまつさえ偵察とは名ばかりの廃棄任務に就かされるしどうせ帰っても今度は性欲処理とかに扱われ奴隷のような未来しか待ってないんでしょうねだって見るからに性能よさそうな男性体が来たし私なんて日陰者を使う必要性ないものねああもう不幸だわ」

 

 とんでもない事を早口で呟いていた。いやいやいや!

 

「おいおいちょっと待てどうしてそうなる?奴隷扱いとか色々酷い言い草してないか?というか後半妄想入ってないかあんた?」

「そうよどうせこうやって最初はいい人ぶって接して来ても私の能力とか船の経歴見たら手の平を反してぞんざいに扱う気よ」

「いやだから……」

 

 俺の静止すら聞かず山城のマシンガンウィスプはなおも続く……

 

「所詮私なんて「貴様らには肉奴隷がお似合いだ」なんて言われて真っ当な扱いされないのがオチよどうせこの後私に酷い事する気なのよエロい本みたいにエロい本みたいにエロい本みたいに!」

「おい……」

「ああもうやっぱり私生きてる価値無いのね不幸だわ……」

「……ふんっ!」

「はぶしっ!」

 

 あまりにひどい妄想ばかりだった為に俺はとうとう山城の頭に拳骨を喰らわせた。いやもうこうでもしないと止まらないと思ったんだよ。

 山城は頭頂部を押さえて悶絶していたが、やがて立ち上がりいきなり暴力を振るった俺に涙目ながらも怒りの眼差しを向けて来た。

 

「ちょっと何するのよ貴方!痛いじゃないの!?」

「痛くしたから当然だろ!妄想も大概にしておけよあんた!」

「ふーんだふーんだ!鎮守府のただ飯くらい何て不名誉なあだ名もらった私よ!こうやって現実逃避する手段ぐらい用意したっていいじゃないの!」

「その後ろ向きな思考じゃ悪化の道しか存在しねーよ!見苦しいわお前!」

「一々うるさいわね!一体貴方は何なのよ!?」

「そういうお前も何なんだよ!?」

 

 「ガルルル……」なんて呻き声を上げながら睨んできたためこっちも山城を睨み返す。

 そのまま暫く無言の睨み合いが続く。

 

 

 

 …………しまった。こんな事してる場合じゃない。

 

「やめよう。不毛すぎる」

「……そうね」

 

 山城の酷い妄想につい感情的になってしまった。とりあえず冷静さを取り戻した俺の提案に山城の方も自分を取り戻したようで素直に従う。

 

「まあお互いに分からないことだらけだろうから、まずは双方の事情を説明するって事でいいか?質問はお互いの説明が終わってからって事で」

「分かったわ」

 

 さてさて俺の成り行きやこの島の状態を山城に伝えないとなぁ。

 いかに彼女に分かりやすく説明するかを考える為、俺は自分の頭を全力で回転させ始めたのだった。

 

 

 

「……これが私がここに来るまでの経緯よ。質問とかはあるかしら?」

 

 あれから数十分ほど経過した。俺と山城は休憩施設のベンチに座りお互いの成り行き等を説明していた。俺は先ほど説明し、今山城の方の説明が終わったところである。

 とりあえず彼女の経緯を聞く限り俺が第一に思ったことは

 

「……何というか、軍部は皆こき使う事と自己保身しか頭にない連中ばかりなのか?」

「現状そんな事やってるのが発覚したら憲兵隊や特高が押し寄せてくるから本来は駄目なのよ。それに私達艦娘は現状深海棲艦に最も有効打を与えられる存在みたいだから戦力としてしっかり管理、運用するのが提督達の役目になってるの。だから基本的には真っ当に扱ってくれる人間の方が多い……筈だけどね」

「つまり、山城のいた場所とこの基地の提督ってのが偶々糞野郎な提督が管理する場所だったって訳か」

「恐らくは」

 

 山城は頷く。

 彼女の話を要約するとどうも放棄以前のこの基地の司令のように、自己保身しか能のない糞提督が山城のいた基地の艦娘達をこき使っていたらしい。

 彼女が基地にいる間に見た感じだと艦娘達はここで主任を含む妖精達から聞いた扱いと殆ど変らない状態だったようだ。

 で、この辺りの海域に深海棲艦の数が少なくなっているという異常が見られた為「単独で」偵察任務を与えられたものの、深海棲艦の襲撃を受けて傷を負い、逃げてはいたが追い付かれて殆ど諦めていたところに俺達が救助に来たとの話だそうだ。

 

 もしかして深海棲艦の数が少なくなっている異常って、俺達が原因かね……

 

 しかし、彼女に与えられた任務ってのがな……連絡手段も与えず単独行動をさせるってのが体の良い始末手段に思えてくるな」

 

「まあ、そうとしか考えようが無いわよね……」

「…………もしかして、口に出てた?」

「思いっ切り口に出してたわよ」

 

 アウチ。何やってるんだ俺は。

 思わず口に出ていた俺の呟きを聞いたせいでそのまま山城は「再認識させられるなんて不幸だわ……」とぼやいて深い溜息を吐いた。だからその不幸不幸言うのをやめんかい。

 

「そういう貴方も貴方よ。何よ興味本位で艤装装着したら使えるようになりましたって?しかも艤装装着したら最悪即死する事実すら知らなかったって、阿呆でしょ?」

「言うな。俺も当時の自分を殴りたいくらいなんだ」

 

 俺の成り行きに大体想定していた反応が来たため大した精神的ダメージにはならなかったが、それでも応えるものがあったために俺は頭を抱えながらこぼした。

 

「それにしても……ミサイルにジェット戦闘機に私達の時代以上の大きさを持つ空母って……私達艦娘は大東亜戦争時代の兵装を扱う筈なのに……どうして貴方だけそんな、貴方の言う別の世界の空母や近代兵装が搭載されているのよ?」

「それに関しては俺も妖精達も分からないよ。この基地の修復がある程度終わった辺りで何故か艦娘の艤装の製作に移ったところ、何故かこいつが出来たって話らしい」

「何よそれ?意味が分からないんだけど……」

「安心しろ俺も分からん」

 

 ハァ、と。2人の溜息が重なる。おっとそうだ、聞きたいことがあったんだ。

 

「まあ双方共に分からないことは置いといて、だ」

「今度は何?真面目な顔でこっち見て」

「お前はこの後どうするんだ?元いた基地に戻るのか?」

 

 俺の言葉に山城は押し黙る。まあ仕方ないか。

 ほぼ捨て駒同然の任務に就かされ、基地との交信手段も無しの現状だ。

 戻ったら戻ったで色々根掘り葉掘り聞かされるに違いないだろうし、そして何よりそこから芋蔓式に俺の存在がばれかねない。

 

「なあ山城……俺の意見を正直に言っていいか?」

「……どうぞ」

 

 当人の許可が出たので俺は続ける。

 

「山城。俺としてはあんたにここにいて欲しい。理由としては2つあるんだがな。まず1つはあんたをこのまま返したら恐らく何故生きて帰ることが出来たのか、今まで何をしていたのかを根掘り葉掘り聞かされると思う。下手をすると拷問やら何やら受ける可能性も俺は考えた」

「……」

 

 山城は口を挟むことなく俺の言葉を聞き続ける。

 

「それで最悪、俺の存在をばらした場合、そのまま人類に存在の確認されなかった艦娘の男性個体がいると発覚するだろうからな。その場合、最悪俺は艦娘達への技術を移植させるという名目で実験動物扱いされる可能性も考えたんだよ」

「じっk……」

 

 山城は驚愕し、実験動物とオウム返しに言おうとしたのだろうが言葉として出てこなかった。

 

「まあこれは一番最悪の可能性だな。本題なのは理由の2つ目なんだ。はっきり言うぞ山城……俺は、俺達はあんたを戦力として迎えたい」

「えっ……」

「この基地は以前深海棲艦の襲撃を受けて工廠機能が破壊されていたんだ。とは言え大きな破壊は無かったことと、妖精達が必死に修理してくれたおかげで殆ど修理は終わっている。だけど肝心の艦娘を生み出す建造機械の修理が遅れているんだよ。だからそれの修理が完了するまでは現状あんたみたいな「訳アリ」な艦娘でもない限り艦隊の増強が出来ない状態なんだよ」

「……」

「まああんたが戻ると決めたのなら俺は引き止めないよ。何だったらあんたのいた基地の近海まで護衛しても構わない」

 

 山城は何も答えない。どうするべきか悩んでいるんだろうか……

 

「それに、さっき言った事もあくまでもしもの話だ。特に何も聞かされないって可能性も普通にあると思うし、な……最終的な判断はあんたに任せるよ」

 

 俺は言葉を切り、彼女の答えを待つ。彼女は依然として視線を下に落としたまま何も言わない……

 

 

 

 時間にして数十秒程経ったところで山城は視線を上げて言ってきた。

 

「多分、このまま帰ってもあの基地に私の居場所なんて無いと思うから、貴方の提案に乗るわ」

「そうか、それなr「ただし!」どうした?」

 

 山城は俺の顔に右の人差し指を向けて続けた。

 

「条件があるわ。まず一つ目はちゃんと私を戦力として扱ってほしいのよ。実艦時代は碌に戦闘に出れなかったってのもあるし、艦娘として生まれてからも貴方に話した通りの状態だったの。分かるかしら?戦うために生まれてきた筈なのに戦う事に使われない気持ちってのが……」

「その辺の気持ちはすまんがあまり分からない。だが先に言った通りこの基地は慢性的な戦力不足だ。あんたの力には期待はさせてもらうよ」

「分かったわ。それじゃあ二つ目」

 

 山城はさらに中指を伸ばす。

 

「まだあるのか?」

「これで最後よ。二つ目は建造施設が完成してからでも構わないから……扶桑姉様……私の姉妹艦で扶桑型戦艦の一番艦よ。その姉様とちゃんと会わせて欲しいのよ」

「OKだ。いつになるかは分からないが必ず会わせると約束するよ」

「……契約成立ね。貴方の言葉、信じたからね」

 

 コクリと頷きながら山城は言う。

 

「さて、それじゃあようこそ当艦隊へ。戦艦山城、あんたを歓迎しよう」

「よろしくお願いするわ……ええっと……」

「圭。永瀬圭だ。何故なのかヒューバート級航空母艦7番艦ケストレルの艤装適合者となった男だ。呼び方は好きなようにしてくれて構わんよ」

「そう。それじゃあ圭でいいかしら?これからよろしく頼むわ」

 

 俺と山城、お互いは同時に立ち上がり、握手を交わした。




はい、という事で山城が圭の艦隊に加わりました。
そしてあんな性格設定に山城が嫁の提督諸氏から石を投げられるんじゃないかと戦々恐々しております。
しかもあのマシンガンウィスプの所に限ってすっげぇ筆が進んで数分ぐらいで書き上げる始末……何でこういうところで俺は本来の能力を天元突破できるんだか……

そして時雨のイベントですが、これは今後のお話なのでノーコメントとさせていただきます。

それでは今日はこの辺で。次回にてお会いしましょう。
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