Fleet Combat -Dawn of the horizontal line- 作:大川静真
みなさんおはようございます。こんにちは。こんばんは。大川静真です。
秋イベですが進捗いかがでしょうか?既にクリアした方もいればドロップで悪戦苦闘してる方、果てはリアルの事情で碌に参加できてないという方もいるかと思われます。
自分の戦果は……聞かないでください(爆死
それではどうぞ。
まずい。
まずいまずい
まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい!
敵の乱入、それも姫クラスでさらに特異個体と思われる個体がやって来たという最悪の状況に俺の頭は完全に混乱していた。
「落チロ!!」
空母棲姫が俺達を捕捉したらしく一気に大量の艦載機を発艦させて来る。
空母ヲ級達が搭載している黒い艦載機とは違う、白い球体に肉食動物の牙に見える物体が付いた「金色」のオーラを発し口から「青白い」オーラを放つ艦載機と思われる物体。
それが十、二十、三十、四十とどんどん増えていく。
「え、あ、う、あ、ど……」
≪ケストレル!しっかりして下さい!≫
どうするどうするどうするどうするどうするどうする!?
ホークアイ妖精からの通信も碌に俺の耳に入らず俺の思考はなおもまとまることは無かった。
どうする何をするどうすれば勝てるどうすればいいまず何をするのがベストか何をすれば時雨達の被害を最小に抑えられるかどうするどうするどうする……
『大将!いいからさらに追加で艦載機を発艦させろ!このままじゃいい的だぞ!』
「え、あ、う、あ、か、艦載機発艦!」
妖精Bに言われ慌てて俺はトムキャットとホーネットを7機ずつ追加で発艦させる。
ええとええと次はどうすればいいどうすればうああああああああ……
≪糞っ、ダメか!ホークアイ!大将の思考が完全に麻痺している!緊急事態として艦載機達の指揮を頼む!≫
≪り、了解!緊急事態として今回戦闘機隊は私の指揮下に入ってもらう!トムキャット隊はこのまま接敵!≫
<時雨と白露は私が圭の代わりに指揮するわ!時雨は圭の傍で彼を守って!白露は私と一緒に行動して兎に角敵の数を減らすわよ!>
<う、うん!>
<わ、わっかりました!>
混乱状態にある俺を置いてホークアイ妖精と山城が指揮を取り始め、時雨が俺の傍に寄って来て俺の前方をガードするようにオート・メラーラ76mm砲を構える。
白露と山城も砲撃を行い始めそのうちの一発がニ級を直撃、爆散させる。
しかし
「ヤレ!」
「うげっ!」
「拙っ!」
「くっ……ミサイル発射!」
空母ヲ級の奥に陣取っていた空母棲姫がその隙を逃さず艦載機達に命令を下した瞬間、艦載機達は一気に編隊行動を取り白露と山城に攻撃を開始する。2人は慌てて回避して事なきを得たものの、ル級とリ級が攻撃を開始して2人は回避に専念せざるを得なくなった。
そんな中で時雨のみ慌てることなく冷静に反応してVLSを起動させてミサイルで空母棲姫の艦載機を迎撃していた。
≪糞っ!この艦載機共他の空母級が出す奴より動きがいい!≫
≪ジェット機じゃ旋回性能は勝てないのは分かってる。それだってのに反応が良すぎるぞ!こいつら何なんだ!?≫
≪後ろに2機つかれた!ええい!≫
上空で戦っている妖精達も慄き始めている。
これはどうすればいいどうすればいいどうすればいいどうすればいい
『圭さん!ここは一旦下がって体制を立て直しましょう!』
『それが出来そうにないなら俺達を出せ!早くしないと死ぬぞ!』
「どうして!?」
妖精BとCの提案にすら俺は半ばヒステリックに返す。
こいつらを出すだって!?
『いいから早く!出撃s「出来る訳ないだろ!!」っ!?』
そうだ出す訳にはいかないんだ!出したくないんだ!
こいつらを使って……
「他の皆に恐れられたくないんだよ!」
こいつらの力は圧倒的過ぎるんだ!こいつらを乱用すれば力に溺れてしまう!そんなのは嫌なんだ!
怖いんだ怖いんだ嫌だ嫌だ嫌だ死ぬのは嫌だ恐れられるのは嫌だ嫌なんだ!俺の前から皆が離れていくのが嫌なんだ!死ぬのも嫌なんだ!
本当に手段はないのか他にいい手段はないのか何か手は無いのか!?何か何か何か何か何か!
そんな錯乱と言える思考状態の中、俺は
「…………えっ?」
「圭!お願い!しっかりして!くっ……やらせない!!」
時雨が何か言っていた気がするがそれどころでは無く、返事が無い事に悪態を吐きながらも迎撃の為に前に出ていく。
しかし、俺はもはやそんなことを気にしている状態ではなかった。
「沈メ!沈メ!沈ンデシマエ!」
偶然の賜物か、空母棲姫と……目が合った。目が合ってしまったが為に理解した。
「……」
気迫に呑まれるとはこういう事だろうか……
その瞳の奥から発せられる怒りを、憎しみを、殺意を、およそ考えられるありとあらゆる負の感情を感じてしまった。
この世の全てを憎むと言わんがごとき憤怒の炎、それを宿した深紅の瞳。黄昏よりも暗き瞳。血の流れより紅い瞳。
その目を見、空母棲姫から発せられる負の感情を感じてしまったが為に俺の思考は先ほどまでの混乱は収まることとなった。
だが、変わりにすぐさま襲ってきたのは……
「…………う」
今まで自分の中で燻って来たものを遥かに超える……恐怖。
今まで戦ってきたどの深海棲艦をも凌駕する恐怖。足元にも及ばない程強大な殺意。
挑めば、殺される。
いかなる抵抗も空しくただただ嬲り殺される。自分がどんな力を持っていたとしてもそれが意味を成すことなく殺される。
怖い。
怖い怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!
≪ケストレル!緊急回避を!!1機抜けてそっちへ向かっている!!≫
「う……あ……えっ?」
通信が入り無意識の内に上を向くと……
空母棲姫から出て来たであろう白い球体の艦載機が
俺に向けて
『敵機直上!圭さん!逃げてください!!』
急降下してきた。
(しま……った……)
そのまま、恐怖により動くこともかなわないまま衝撃と共に俺の視界は赤い爆炎に染まった。
―――Side out―――
―――Side 山城―――
「圭!」
恐らく空母棲姫の殺意に中てられたのか、まともに動かなかった圭に白い艦載機の爆弾が彼の目の前で爆発したのを山城ははっきりと見た。
恐怖で竦み上がったのは仕方ない事だろうと思う。こんな最悪の状況での乱入、しかも姫クラスがこんな近海で遭遇するとは誰が想定できるか。
そういったイレギュラー要素満載の状況に、圭の思考がパンクしてしまったのは想像に難くない。だからこそ自分が白露と一緒に行動を取り始めたのだ。
追い打ちをかけるかのように不幸は続き、圭が空母棲姫の放つ殺意を受けた。外野の自分ですら背筋が凍ったような錯覚を感じる程の強力なものをだ。
その姫クラスの殺意を、慣れてきていたとはいえ戦場をあまり知らない素人の圭がもろに受けた。恐らく歩みの一歩どころか指一本すら動かすことすら叶わなかっただろう。
動こうとすらしない相手など最早「鴨が葱を背負っている状態」でしかない。
致命的なのはこの姫クラスとの遭遇戦という最悪の状況で、相手に有効打を与えられるであろう戦力が潰れたという事。
上空の艦載機達も性能では深海棲艦の艦載機程度に後れを取るはずが無いのだろうが、如何せん数の差が数倍以上ある。おまけに艦載機達も非常に動きがいいらしくかなり苦戦している。
海も空も完全にこちらが不利の状況。
拙い!非常に拙い!何とかしてこの状況を打破しなければ最悪の事態になる。
一旦圭を回収して離脱するべきか……山城がそう作戦を練り始めたその直後。
「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!圭ぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
悲鳴のような叫びが、上がった。
そちらを向くと迎撃のために前に出ていた時雨が走りながら圭の下へ向かっている。その顔は最早いつもの時雨のそれではなく完全に錯乱状態とも取れた。
「って拙い!急いで2人を連れて逃げるわよ!」
「ふえっ!?え、あ、う、うんっ!」
白露に告げるも彼女も思考が現状についていけなかったらしく慌てて返事を返してくる。
が、そこへ深海棲艦達が狙ったかのように砲撃を行い進路を妨害して来た。
「っ!この、どきなさい!」
山城は苛立ちを隠すことなく砲撃を行い近づいて来ていた雷巡チ級を撃破する。しかし、すぐに空母棲鬼の艦載機が近づいて来る。
「迎撃して!」
「うんっ!」
山城の言葉に白露は対空ミサイルを発射して艦載機を迎撃、艦載機達の足並みを乱す。数機ほどミサイルを喰らい撃墜に成功するもその程度と言わんばかりに空母棲姫は艦載機を追加で発艦させて来る。
いま撃沈した分を引いて、ようやっと敵艦隊の残りは4……否、5。
対するこちらは頼みの綱でもあった圭が倒れ、時雨が突然の発狂を起こしている。
戦況は圧倒的不利……覆しようのない絶望的な状況が、ここにあった。
戦局をひっくり返すかのような圧倒的な「ナニカ」でもあるならばそれに縋りたい程。
だが、そんなご都合主義的なもの……例えるならば「どんな劣勢であれども自分達に勝利をもたらす英雄」とも「敵の全てを破壊しつくす鬼神」とも取れる「ナニカ」を自分達が持ってる訳もないのだ。
何をすればいい何をどんな手順で行えば生き残れる何をどうすれば現状を打破できる何を何を何を何をなにをなにをなにをナニヲナニヲ……
(って私まで混乱したら駄目!)
慌ててかぶりを振って思考をクリアにする。兎に角焦ったら駄目だ。焦りは隙を生み隙はそのまま死を生む。だが現状思考する時間は全く与えられていない。
迅速かつ冷静に対応しなければ生き残ることすらできない!
(ああもう本っ当こんな役回りをさせられるなんて不幸だわ!)
生きて帰ることが出来たらちょっとぐらい圭をひっぱたいでもバチは当たらないだろうと毒づきながらも山城は進む。
自分の選択が生き残る手段だと信じて。
―――Side out―――
―――Side 時雨―――
その瞬間、時雨の周りの世界が一気に遅くなった。すべてがゆっくりと動いていくスローモーションとなった世界で時雨ははっきりと、圭が敵艦載機の爆弾の爆発に巻き込まれるのを見た。
目の前で守るべき相手が爆発に飲み込まれる映像。あの時と同じ、守ること叶わず沈んでいく。
萩風も、嵐も、江風も、扶桑も、山城も、最上も、満潮も、山雲も、朝雲も……みんなみんなミンナミンナジブンヲオイテシズンデイク……
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だイヤダイヤダイヤダイヤダ皆沈んで行って自分だけ生き残るのは嫌だ!
もう「3度も」守ること叶わずみんな沈んでいったのに「4度目も」守れなかったなんて……そんなのはイヤダ!!
「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!圭ぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
叫びながら時雨は圭の元へと向かう。
爆炎が晴れるとそこには煤塗れとなり左腕があり得ない方向に折れ曲がっている圭がいた。
イヤダイヤダイヤダイヤダ目の前で沈んでいくのを見るだけなのはイヤダ。
「嫌だよ圭お願い死なないで僕を置いてかないでよ!」
時雨は必死に圭の体を揺さぶるが反応は無く、それがかえって時雨の思考を混乱させる。
そんな状況を深海棲艦達が黙って見ている筈もなく2人に向けて砲撃や航空攻撃を開始する。
「っ!この、どきなさい!」
少し離れた場所から山城の苛立ち気味の声が聞こえる。2人がこちらに近づこうとするも他の深海棲艦達に邪魔されて思うように動けないようだ。
≪時雨!敵機接近しています!≫
「っ!うわあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
艦載機妖精の通信に慌てて振り向くと空母棲姫の艦載機が数機、こちらへと接近しているのが見えた。時雨は半ば錯乱状態になりながらも迎撃を行う。
「足掻クナ!沈メ!沈ンデイケ!」
空母棲姫の艦載機が彼女の指示に従うかのように編隊を組んで突撃して来る。時雨もミサイルや主砲で牽制するが狙いが甘かったのか砲撃が当たることは無く空を切った。
しかしめくら撃ちの砲撃が当たったのか山城達の攻撃が当たったのか、空母ヲ級が突如として爆散したのが見えた。だがが今はそんな事を気にしている場合ではない。
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!」
必死に砲撃を行い敵を少しでも近づけさせないようにする。しかし碌に狙いをつけていない攻撃が当たるわけもなく艦載機達は悠々と攻撃を回避していく。
嫌だ嫌だ嫌だ圭を失いたくない嫌だ嫌だ嫌だナニカを掴めるかもしれないのに嫌だ嫌だ嫌だここで失うのは嫌だ!
≪敵機直上!回避を!≫
「嫌だあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
時雨のあらん限りの叫びが、響き渡った。
―――Side out―――
―――Side 圭―――
暗い……
寒い……
何も見えない……
周りの景色は完全な黒一色。何も見えず何も聞こえない。まるで泥の中にいるような感覚。
何で俺はこんな所にいるのだろうか……
そうだ、俺は「みんな」と「敵」を迎撃するために出撃して……
…………アレ?
………………「敵」ってドンナ奴ダッタッケ?
そもそも俺ハどウシてココニいルンダロウ?
俺ハ「永瀬圭」……ソレは分カル。だケど俺ハナンデ今まで戦ッテイタンダロウ?
―――ちっ……何故俺達があんな子を引き取らなきゃいけなかったんだ?―――
―――私だって知りたいわよ。葬式が終わってたらいつの間にか決まってたんだから―――
―――生活費だの食費だの実の子じゃないあいつに支払わなきゃならんのか全く……いっそあの時一緒に死んでたら良かったのにな―――
―――駄目よそんなこと言ったら。もし聞かれてたらどうするのよ?気持ちはよくわかるけど―――
ッ!?
―――知ってるぜてめぇ。本当の両親がいないんだってな―――
―――両親が死んだってのにてめぇ1人死に損なったって訳か。そりゃまた大変だねぇ―――
ヤメロ……
―――てめぇか、永瀬圭って野郎は―――
―――前の学校で暴力沙汰起こして転校したらしいな。まあそんなことはいいとして、大人しくしたいんだったら俺の言う事を聞いた方が見の為だぜ―――
ウルサイ……
―――てめぇ!何しやがる!―――
―――人が下手に出りゃあ調子に乗りやがってぇっ!!親無しの癖によおっ!!―――
ヤメロ!
ナンダヨナンダヨ俺ガ一体ナニヲシタッテ言ウンダヨ親ガイナイダケデ何デ俺ダケコンナ目ニアウンダヨ俺ノ事情ヲ理解シヨウトモシナイデソンナ目で見ルナヨ俺ヲチャント扱ッテクレヨソレナノニナンデソレヲシテクレナインダヨ!
…………イ
憎イ
憎イ憎イ憎イ
憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ!俺ヲチャントシタ目デ見テクレナイ奴ラガ憎イ!
―――……ソウ。……アナタモソウナノネ―――
アアソウダ。何モカモガ憎イ!!
スベテガ…………ニクイ
―――ソウヨネ。私モ同ジ気持チヨ―――
…………ソウナノカ?
―――ソウ。コノ世ノスベテガ憎イノヨ。見ツケタ……同ジ気持チヲモツヒト―――
…………
―――貴方トナラ……一緒ニ行ケル……―――
アア、ソウカ……オマエモ同ジ……人ニマトモナ扱イヲサレナカッタンダナ……
―――ソウヨ……ダカラ……コッチニ来テ……私ト一緒ニ行キマショウ……私達ヲ捨テタスベテノ憎イ奴ラニ、復讐スルタメニ……―――
ソウダナ……
―――全てを憎んだところで、何も帰ってこないし何も得られんよ―――
っ!?
聞こえて来た声全てが、エコーのようなもののかかった声。全てが俺を真っ当に扱ってくれなかった声。
そして俺を水底に誘うかのような声。
そんな中で、はっきりと聞こえた声があった。聞き覚えのある……いや、決して忘れることの無い声。
「じいちゃん……」
俺は誰にともなく、1人呟いた。
そう、かつて俺を対等に見て、俺に自身の経験から多くの事を教えてくれたひいおじいちゃんの声が、確かに聞こえた。
いかがでしたでしょうか?
色々詰め込み過ぎた感はありますがとりあえず自分が書きたいと思った事は書けたかと思います。
トム猫がレシプロ機性能の艦載機に劣勢に追い込まれるわけないとか思うかもしれませんが、その辺りは数の差と相手の動きが異常に良かったと思ってもらえればいいです。
それ以外にも一応の理由はありますがこれはこの先のネタバレになるから控えさせてもらいます。
それでは次話にてお会いしましょう。
2015/11/29 感想に指摘コメあったためちょい本文を修正。まあ旋回性能の差で追い込まれたという感じに台詞辺りを変更しました。
俺ってばほんっと勉強不足だな……orz