Fleet Combat -Dawn of the horizontal line- 作:大川静真
前回の感想コメありがとうございました。
嫉妬コメは来るだろうと予想していたので皆さんの反応を見てニヤニヤしてはいました……してはいましたが
それ以上に爆発物がとんでもねぇものばかりで驚愕すると同時に笑わせてもらいました。
今後ああいうイチャイチャ展開が出てくることもありますがどうかお付き合いしていただけると幸いです。
それではどうぞ。
窓から差し込みつつある光を浴びて、俺の意識は次第に晴れていく。
重い瞼を開ければ視界に入るのは最近になって見慣れ始めた天井。
いつも通りの朝が来たという訳だ。太陽の明るさから予測していつも俺が起きている時間だろうと推測する。
とは言え、今日の朝に関してはいつも通りとは言い難いのだが。具体的に言えば右腕に感じる心地良さを感じる重さの正体こそがその原因なのだが。
「……まだ寝てるのか……」
俺は横になったまま頭だけを右に向け、重さの正体を確認して誰にともなく言った。
重さの正体、それはお察しの通り俺の腕を枕代わりにして全裸で寝ている時雨の頭部だった。
まあぶっちゃけた話、あの後時雨を美味しく頂きました。
お互い初めてだったのもあっておっかなびっくりな本番だったわけだが……前の場所で仕入れた知識を基に前戯もきちんと行ってから挿しました。
仕方ないとはいえ時雨が初めての痛みに顔を歪ませ、痛々しい表情を見せてはいた。しかし、それ以上に時雨は満たされている幸福感を感じているなんて可愛い事言ってくれた為に……抑えが効かなくなりました。ハイ。
最初は必死に痛みを堪えていた時雨だが、段々と痛みに慣れて来たらしく途中辺りから少し感じているような反応もあったような無いような……
しかしまあ、俺も暴走が過ぎた訳だ。だってなぁ……時雨は両足で俺の腰をガッチリホールドしたまま大好きとか離れたくないとか連呼して来たんだよ。色々溜まってたというのもあっただろうけど、それ以上に燃え上がったのもあって抜かずの連発とかやっちまったよ……
まあ……うん。時雨も健気で可愛かったけどさ……っていかんいかんいかん!このまま思い出していってたらまぁたムラムラして来る!ただでさえ朝の生理現象が収まりかけてたのにまた復活させちゃ不味い!
「……ん……」
「おっと、起きたか時雨。お早う」
「……あっ……お、お早う圭……えっと、あの…………あっ…………はう……」
意識が戻り、俺への挨拶を覚醒しきってない状態で行ったままボーっとしていた時雨だが、自分の現在の状況と昨夜の痴態を思い出したのかガバッと起き上がりそのまま俯く。周りがまだ暗いせいもあって顔色を窺う事は出来ないが、何となく恥ずかしさで真っ赤になってそうだなぁ……
「まぁ、なんだ。お互い色々と初めて同士だったから仕方ないさ。少しずつ上手くなって行こう……ってこれは不味いか」
「う、うん」
落ち着かせる為に俺は時雨と向かい合い、いつも通り彼女の頭を撫でる。この行為に色々と問題あるかもしれんが時雨自身拒絶するどころか俺の手の感触を堪能している様で今の所特に何か言われたことは無い。
「……ちょっといいかな?」
「どうした時雨?俺の手を握って……」
「うん、ちょっとね」
そう言って時雨は撫でていた俺の左手を両手で持ち、自らの右頬に当ててその感触を確かめ始めた。
時雨は俺の手の感触を無言で確かめるかのように頬に当て続け、そのまま無言の時間だけが過ぎていく。
「……うん、温かい……やっぱりこの手の温もりだ」
時間にして数十秒ほどか、俺の手の感覚を確かめていた時雨はふとそう呟いた。どういう事だ?
「どうかしたのか?」
「実を言うと……この手の感覚がね、圭の手から感じるこの温もりが僕の記憶を呼び起こす切っ掛けになったんだよ」
記憶……恐らくはそういう事なんだろうな。
時雨と最初に出会った時、彼女はここに来る前の記憶を失っていたのだ。それこそ駆逐イ級に取り込まれていたという記憶すら持っていなかったのだ。
その記憶が、俺の手が時雨に触れたことによって記憶を取り戻すきっかけになることが出来たのだろう。
それから、時雨は自身の過去を、この基地に来る前の自身を話し始めた。
「思い出したんだよ。僕がいた場所の事を」
そう言って時雨の過去話は始まったのだが……
「僕と白露は昔、1年くらい前かな?この基地……竹ヶ島基地で建造されたんだ」
「…………は?」
いきなりの爆弾発言に俺は絶句するしかなかった。
なんだよそれ……島の名前もここに来て初めて聞くが……ここで生まれただと?
「圭はこの島にいた提督の実態は知ってるのかな?」
「ある程度はな。自分の権力を笠に着て横暴三昧、無謀な進軍当たり前、セクハラ常習な糞提督って位だが」
「概ねそれで正解だよ。提督自身艦娘を自分が甘い汁を吸う為だけの道具にしか思ってなかったみたいで、僕達を建造したり、艤装を修復する資材とかも限界近くまで溜めこんでは出し渋っていたし、こっちの疲れとかも無視しての出撃は茶飯事だった」
遠い目をして話す時雨の表情を俺は全く読み取ることが出来なかった。時雨の話はそんな俺を見ながらも尚続く。
「僕と白露も何度も疲労を背負ったまま戦って来たし、艦隊の子が沈んだって情報が入ったことも一度や二度じゃなかった。でも僕と白露のいた艦隊は奇跡的に轟沈はゼロのまま行くことが出来たし、何より僕の艦隊を守ることが出来たって事は僕にとって凄く嬉しい事だったんだ。僕の来歴を知らない圭に教えてあげると……僕は駆逐艦時代に何度も、艦隊が僕を残して全滅した事を経験してたんだ。白露が沈む瞬間を見たし、山城を含んだ西村艦隊を目の前で失った事もあった。僕を残して沈んでいくのは嫌だったから……だからこうやって艦娘として生まれ変わることが出来たから今度はせめて僕の所属している艦隊だけは誰も沈ませないと思って……だから、あの提督の元でも頑張ることが出来たんだ……」
そこで時雨は「だけど」と言って言葉を区切った。
「ちょうど今年に入って間もない頃にこの基地が深海棲艦の奇襲を受けたんだ。いきなりの襲撃に対応しようにも艦娘達の殆どが日頃の疲労がたたって十分な実力を発揮できなかったんだ。そんな中僕と白露は一緒に行動していたんだけど……そこに船に乗って逃亡する提督が現れたんだ」
「って事はお前は……その提督の……」
俺のその言葉だけで時雨は理解したのか無言で頷く。
「僕達を見た提督は有無を言わさずに護衛を命令してきたんだ。「儂の未来の為に死んでも守れえっ!」って命令をね……」
そんな……事を……命じて来たのか。艦娘という人でなき者達とはいえ……見た目は少女である相手に平然と言える言葉なのだろうか?
「僕と白露は必死に提督の乗る船を守っていたけど、深海棲艦の数が多くて多勢に無勢、勝ち目なんて無い状態だったんだ。それでも守って見せようと戦っていたんだけど……僕達も度重なる出撃が故の疲労とかあったし、色々な条件もあったけど……一瞬の隙を突かれて提督の乗る船を守ることが出来ずに目の前で沈めてしまったんだ……その時に聞こえた提督の最後の言葉は今も耳に残ってるよ……「この役立たず共があぁぁぁぁぁぁっ!!」ってね……」
「何だよそれは……」
無意識の内に、言葉が漏れた。そんな、そんな事を死の間際に叫ぶなんて……まるで人を人とすら思っていないみたいじゃないか……
そんな俺の心境を他所に時雨の話が終わることは無かった。
「その時の僕はショックで動けなくてね。どうしようもない提督だったのは確かだけどそれでも自分の周りで誰も沈まなかったのが誇りだったんだけど……守るべき対象を守ることが叶わず沈めてしまったのが……凄くショックだったんだ。そのまま呆然としていた僕に何があったかは覚えていない。多分深海棲艦の砲撃が当たったと思うんだけど、何らかの衝撃を受けてその時はそのまま意識を失ったんだ……だけど」
そこで時雨は一つ区切る。だけど?
「だけど……その先はなんだか微睡みの中のような感覚でよく覚えていないんだ……こう、真っ暗な海の中を浮いているような感覚で……だけど僕は「敵」を倒さなきゃならないって使命みたいなものだけははっきりと感じていて……その使命のまま「敵」を倒していったんだ。傍には「白露」がいて、共同で戦っていったんだ。そんな感覚がずっと続いていたんだ」
「それは……」
まさか……時雨の言っている事は……
「多分、ううん間違いなくあの特異個体の中での記憶だよ。そんなある日ね……いつも通り「敵」を見つけた僕達は攻撃を行おうとしたんだ。見たことない空母が1隻相手で「白露」と連携して倒そうとしたんだけど……物凄い衝撃を受けて、攻撃を受けたと理解した僕はここで沈むのかなって思ったんだ……でもね」
ドンピシャ。そのものズバリだったか。
そして時雨が言っていた見たことない空母とは……ケストレルの艤装を付けた俺だったという訳か。
話を区切った時雨は再び俺の左手を取り、自身の右頬に当てた。
「意識を失う直前に感じた感覚がね、洞窟の入り口から差し込む光を浴びたような感覚と、その光をさえぎる誰か……そして、この温かい手の感覚だったんだ」
「そうか……」
「それが、僕がここで意識を取り戻す前の出来事で覚えている限りだよ」
そういう事だった訳ね。
つまり時雨は特異個体の中にいて俺が触れたその時まで意識が僅かにあったんだな。
その時に感じた俺の手の感覚が、時雨の記憶の奥底に眠っていて俺が頭を撫でる度にその記憶が呼び起こされて行って……そして昨日のあの時に、被弾した俺と時雨の言う提督の船が沈む瞬間と重なって……って事なんだろうな。多分。
「成程ね。そういう事だった訳か……ありがとうな時雨、つらかった過去の事をわざわざ教えてくれて」
「いいよ。僕は僕が話したいって思ったから圭に話しただけだし」
そう言って微笑む時雨は何処か達成感に満ちているかのような……そんな感じがした。
「さて、そろそろ朝練の時間だから起きようか」
「あ、そういえばそうだったね。おきnひにゃんっ!?」
ベッドから立ち上がろうとした時雨は何を感じたのか反射的に自分の股間を押さえる。っておいおいおい何があった!?まさか昨夜の!?
「ど、どうした時雨!?まさか昨夜のあれがまだ痛むのか!?」
時雨は無言でぶんぶんと首を横に振る。段々と日が昇り始めてはいるが、時雨は顔を俯かせている為表情がよく見えない。
「は?え?いやそれ以外となると何があったんだ!?」
「……………………た」
時雨の口から辛うじて聞き取れたのはそれだけだった。
俺は耳を近づけると時雨はおずおずと耳元で呟いて来た。
「圭が……昨夜僕に補給してくれた白い燃料が……漏れてきちゃった……」
「…………」
たったそれだけ。それだけだったのだが、時雨のその言葉は……今の俺の理性を吹き飛ばすには十分すぎる破壊力を秘めていた。
俺は何も言わずに時雨の両肩を乱暴に掴み、そのままベッドに押し倒す。
「え?ええっ!?圭っ!?んんっ!」
慌てる時雨だったが問答無用で彼女の唇を俺の唇で塞ぐ。しばし無言でキスを続け、やがて息継ぎも兼ねて時雨の唇から俺の唇を離した。
そして……
「するぞ」
「ええっ!?圭!?朝からそんなっ!」
「……すまん。もう無理だ。これ以上我慢できん」
「駄目だよ圭!これから朝練があるよ!付き合えないよ!「今日は休め」えええっ!?」
だって……だってあんな……
「お前が……あんな扇情的過ぎることを言うから……挑発と取れる事を耳元で囁くから……完全に復活した」
「あっ……」
ゆっくりと時雨は俺の下半身に目を向けると……そこにはまあ、臨戦態勢を取っているマイサンがあった。
「そっか……いいよ……何でもしてよ。ちょっと怖いけどね」
「その何でもって台詞は色々不味いぞ時雨。まあ、出来る限り優しくするつもりだが、保証はできない。正直辛抱たまらん」
「うん。おいで、圭」
我、夜戦に突入す。
何故かそんな言葉が脳内をよぎった気がした。
「あらお早う圭」
「おっと山城、今起きたのか?」
あれからまたしても時雨と事に及んだ後、2人時間差で入渠ドックにあるシャワー室へ向かいその後俺が体を洗い終えて戻って来た時に食堂へと続く廊下で山城と遭遇した。
時間差で向かった理由としては一緒に行動してて誰かに見つかった時にまあ……色々詮索される可能性を考えてだったんだが……とりあえず時雨は大丈夫だろうかね?
時刻は既に6時半と言った所か。この分だと全員起きてるだろうな。
「今訓練の終わりなの?」
「ああ、シャワーを浴びて今から朝飯だが……」
「……んんん?」
「……何だよ?」
「別に何でもないわよ。違和感を感じただけよ」
とりあえず山城は訝しんではいるようだが核心には至ってないようだ。大丈夫かなこれは?……仮にバレたらバレたでこいつの事だ……主砲とか叩き込んできそうで怖いんだよなぁ。
気付かれないように平常心平常心……いつも通りに会話すればいいんだ。クールになれよ永瀬圭。
「ふむ、こういう時は確か……」
と、見ると山城は呟きながら何か思い出そうとしている。一体何を考えているんd
「……昨夜はお楽しみでしたね」
「んにょわひょえっ!?!?」
な、な、な、な、なななななななななな……
何故ばれたし……
「え、あ、う、あ、ど……」
「うわぁ……流石にここまで分かりやすいとは思っても無かったわ……」
完全に頭が混乱状態となっている俺を見て山城が頭を抱えながら呟いた言葉がそれだった。
……………………は?
「…………どゆこと?」
「ちょっと違和感を感じていたからもしかしてと思って鎌かけて見たんだけど……もういいわ。貴方の反応で全てを理解したから」
「オウフ……」
十秒ほど思考がフリーズしていたが復活して問いかけた俺に山城はご丁寧に伝えた。つまりは山城の鎌かけにものの見事に引っかかったという訳か……俺の馬鹿……
「まあ、時雨と白露どちらと夜戦したかはあえて聞かない事にするわ」
「……何故に?」
「気にする必要が無いからよ。彼女達が自分の意思で貴方に抱かれたのなら何も文句は無いから。それに貴方は自分の欲望の為に無理矢理行為を行うような男じゃないでしょうし」
「そうか……ああよかった……」
「……何よ貴方。もしかして私にバレたら主砲が飛んでくるとか思ってた訳?」
「めっそうもございません!」
聞こえないように小声で呟いていたつもりだったが、どうやら聞こえていたらしく山城に睨まれて俺は両手を上げて勢いよく首を横に振る。確かに思ってたけどこういう時に言ったら本気で飛んできそうだからあえて嘘を吐くことにする。
艦船時代は欠陥戦艦とか言われてた山城だが何だかんだで戦艦だからな……主砲喰らったらマジで痛いんだよ。
「とはいえ、仮に貴方が何らかの要因で彼女達を泣かせたらその時に容赦なく主砲を叩き込むからその辺りは覚悟しなさい」
「あ、ああ。そんなつもりは毛頭ない。それは断言する」
「信じさせてもらうわよ。それにしても、ホント反応が分かりやすいわね貴方」
「うるせぇ」
言ってんじゃねぇよ……一昨日お前に言われてから気にしてるんだから……
あ、そうだ……
「ああそれと山城、今のうちに言っておく」
「どうかしたの?」
調度いい。今まさに潮時という奴なのだろうな……
「朝飯を食い終わったら俺の事でちょっと主任を含めた全員に話したいことがあるから」
「……何かしら?」
「まあ、俺の来歴とでも言うべきか」
それを聞いて視線を強めて来た山城だが、多少表情を崩して睨んできた先程とは違いその目は真剣そのものだった。
あの時微睡みの中のような場所で彼女達を信じると決断した以上、俺の来歴を伝えておくべきだろう……
色々と驚かれるかもしれないが、何よりこれ以上皆に隠し事をするのも気が引けるのだ……
俺はいうなれば深海棲艦だの艦娘だの全く存在しない世界から来た男性の艤装適用個体という相当な異物なのだ……異物の筈だ。
そもそもあの世界においてそんな存在が現れたら何らかの情報が嫌でも耳に入ってくる筈だし日常生活も大きく変化している筈だ。仮に国や軍、自衛隊等が情報をひた隠しにしていたとしても何らかの影響が出たりするはずだろう。
そういった日常の大きな変化があの時は全く存在せず、制海権を奪われた的な話も聞いたことが無い。
戦争は確かに起きてはいたがそれは日本から遠く離れた場所でだ。日本の領海で不穏な動きがあるとネットや新聞で見たことはあれど、日本近海でドンパチ賑やかにやってるなんて聞いたことは全く無い。
そういった推測から俺はここが自分のいた世界とは違う世界と踏んだ訳だ。
そんな異世界から来た俺が、そこにおけるお話の世界に出て来た空母の艤装を使う。
これを異物と言わずして何と言う?
だからこそ……伝えるべきだと心の底で思ったのだ。俺という存在がどこから来たのかを。
彼女達がどう受け取ってくれるかは分からない。だが、分からないというだけで結果を恐れてひた隠しにしていては結局彼女達を信じていないと同義だろう。
ならば、皆が一堂に会して行動する朝食時。このタイミングで全てを伝えるのが妥当だと今思ったからだ。
「……まあ何を言いたいのかは分からないけど聞くだけはしてあげるわ」
「ああ」
さて、俺も覚悟を決めるか。大層な事じゃないと思うかもしれないが、この件は俺的には少しばかり勇気がいるのだ。
皆は―――特にあそこまで俺を好きだと言ってくれた時雨辺りは―――受け入れてくれるだろうとは思ってはいるが、どうしても拒絶される可能性を考えると……な。
「とまあ、これが俺がここに来た経緯って訳だ……」
「「「『『…………』』」」」
その後、時雨や白露が集まり、朝食を終えて俺が主任や妖精トリオ―――もうガルム隊妖精でいいか―――を集めて食堂で椅子に座ったのを確認して―――妖精達はわざわざ専用のミニサイズの椅子を持って来ていた―――俺の来歴を話した。
自分が海水浴を行っていたら溺れてそのまま死ぬのかと思ったら。この島―――時雨は竹ヶ島と言っていたか―――に流れて付いていた事。恐らくこことは違う深海棲艦や艦娘が存在しないであろう世界から来た事。
そして、俺が装着できる艤装の元となった空母ケストレルが存在していた世界を、俺はお話として知っている事。
ゲームと言わずお話と言った理由は彼女達がビデオゲームを知らない可能性を考え、そちらの方が分かりやすいと判断したためだ。
自分の来歴を洗いざらい話し終えた俺以外の全員が判断に困っているのか、誰一人として何も話すことは無かった。
そのまましばしの時間が過ぎていく。
「つまり、圭はこことは違う世界から来たって事?」
「概ねそうだと思う」
沈黙を破ろうと対面に座っている時雨が口を開いて出て来た問いに俺は頷きつつ答える。
「どうしてそんな結論を出せたのかしら?」
「少なくとも、俺がここに漂着する前にいた場所では深海棲艦だとか艦娘の存在なんて全然知らなかったし、制海権を奪われたが故の弊害すら存在しなかったんだ。仮に情報統制が徹底されていて表沙汰になっていなかったとしても何らかの供給制限とかあったっておかしくない筈だ。俺のいた場所はそう言った事は一切存在しない平和そのものな場所だったんだよ」
「つまりは圭さんは異世界の住人って訳?」
「むしろ並行世界と言ったほうが早いかもしれない。以前あそこにいた時に何かで耳にしたことあったんだよ「極めて近く、限りなく遠い世界」って言うのを。多分それの類なんじゃないかと思う」
俺の言葉に全員は首を傾げる。
「恐らくだがこれはいうなれば似て非なる世界って感じだと思う。選択の数だけ結果があるんだから選択の度にそう言った世界と分岐して行って、そうやって世界が分かれていって俺のいた深海棲艦や艦娘何て存在しない世界があったり、ここの世界があったりするんじゃないかって思うんだ」
「そして圭が何故か装備できたケストレルの実艦が存在していた世界もまたどこかに存在すると言うのかしら?」
「恐らくな。ケストレルの活躍は俺の世界ではお話として存在していたというのは事実だ。だけどそのお話の世界だって「そこ」に存在していて、俺のいた世界ではお話として認識している可能性だってあってもおかしくないと思うんだよ……」
俺の右隣に座っている山城が問いかけて来たので俺はそちらを向いて頷きつつそう返す。それを聞いた後に白露は何か思うことがあったのかガルム隊の妖精達に視線を向けて問いかけた。
「ガルム隊の妖精さん達は何か知らないの?」
『残念だが白露、俺達も自分が何故ここにいるかさっぱり分からん。事情があって陸で兵士として活動していたのは覚えているんだが、気が付いたらこの妖精の姿でいた上にベルカ戦争以後会ってなかった相棒と死んだ筈のPJまでもが一緒にいたんだからな。ここに来た当初は相当混乱したぜ』
『俺なんて撃墜された瞬間を今もはっきりと覚えてますし、何故か意識が戻ったと思ったらこんな所で妖精の体とこの世界の知識の一部を手に入れているなんて状態ですからね』
『……(コクコク)』
サイファー妖精だけは相変わらず言葉を発する事無く頷くだけで対応する。
『それが大将がやって来る……確か数時間ぐらい前だったよな相棒?』
『……(コクリ)』
『その間俺達はここの妖精達との事情説明で何とか落ち着くことはできましたけどね』
「そう言えば昨日貴方達は自分の事をクロー……ン?とか言ってたけどそれはどういう経緯でその結論に至った訳?」
山城が疑問に思った事を口にしてきた所ピクシーは何やら微妙な表情を見せた。
『正直に言うとあれは現状可能性として一番あり得るものを俺達と主任で推測していた奴だよ。あれが本当かも分からんしもしかしたら本当に異世界転移の可能性だってあるんだからな。これはそこの大将にも言える話ではあるがな……』
「そっか……まあ俺やガルム隊がクローンか転移の類かは今は置いといてだ。実際俺とこのガルム隊妖精の存在はこの世界において異物以外の何物でもないと思う。何せかたや艤装を装備できる男、かたや元となった空母がいた別世界のトップエース達だ。この先生きている人間達との交流もあり得る話だけど、相手が真っ当な人間ならそれでいいんだが外道である可能性も決してゼロじゃないと思うんだ」
『そうなった場合……最悪大将や俺達が実験台にさせられる可能性もある……か』
「俺達だけじゃなく……時雨達もそうなる可能性も……な」
「「どうして?」」
時雨と白露は全く同じタイミングで首を傾げつつ聞いて来た。相変わらずこういう時のタイミングはバッチリだな。事前に打ち合わせでもしてたのかと思うくらいだ。
しかしその答えを2人が知らないってのはなぁ……俺と関わった結果、山城にはまだ無くて時雨と白露にはあるもの……
「艤装」
「「……?」」
「主任に改装という名の何をされた?」
「「…………あっ」」
そこでようやっと気づいたらしい。
「そういう事だ、あの魔改造だよ」
「確かに。あんな艤装が作られていると欲望塗れの提督が知ろうものなら例え艦娘の1人や2人を犠牲にしてでも解析しようと企むでしょうね……」
山城が顎に手を当てながら呟く。
「そういう事だ。以前山城には話したがその糞提督達に目をつけられた場合、最悪俺や時雨、白露達は艦娘達への技術を移植させるという名目で実験動物扱いされる可能性も考えたんだよ」
皆は、何も答えない。
「何と言うか、こんな事に皆を巻き込んでしまったのに対して、済まないとしか言えない。ただ、正直に言うとこんな話をした理由としては、色々と事情があったとはいえ異物である俺達の一件に皆を巻き込んでしまった事への詫び……と言うべきかな?まあそれも含めて、自分の事を現時点での隠し事抜きで話しておきたいと思ったから今回のこれを切り出した訳なんだ」
それで俺は言葉を区切り、時雨達や妖精達も何も言葉を発そうとせずしばし沈黙が辺りを支配する。
動きがあったのはそれから数十秒ほどしてからか。椅子に座ったまま俯いていた時雨が顔を上げ、白露の方向を向くと白露もまた時雨の方に顔を向ける。
「時雨」
「うん」
お互いに顔を合わせてから一言放って頷きあうと俺の方を向いて口を開いた。
「大丈夫だよ圭さん!私達は全然気にしてないから!」
「そうだよ。それに圭は以前お話の言葉として僕達に言ったよね?「大きな力には大きな責任が問われる」って。その言葉の責任の一つに圭が今言ったもしもの可能性への覚悟も含まれているというのなら、僕も白露も覚悟はできているよ。でもそれ以上に僕達の気持ちは同じ……圭や今圭がいるこの場所を守りたいって気持ちがあるから……僕達は大丈夫だよ」
2人の言葉はそれはもう……嘘偽りない真っ直ぐな言葉のように感じられた。
やっぱり、こういう風に信じてもらえるというのは嬉しい事だな。
そして、もう一つの問題は……
俺はゆっくりと山城の方に視線を向ける。彼女も俺の視線を感じて目を合わせた後に軽くため息を吐いた。
「まあ私一人だけ魔改造されていないから関係ない……何て都合のいい理由がまかり通る訳が無いし、そもそも私だって気にしてはいないわよ。それに、貴方は私とした扶桑姉様に合わせる約束を反故にするような真似はしないでしょうし私も自分から言い出したのにそうするつもりはないわ。こうなった以上は一蓮托生、乗り掛かった舟という奴よ」
「艦娘の私が船に乗るというのもあれかもしれないけどね」と山城は付け加えてくる。
「ガルム隊は?」
『それに関しては俺達の考えは一つだぜ大将。俺達もあんたがどうしようもない外道にならない限りは付いて行くつもりだ。こんな体となってしまったのは仕方ないが、また相棒と空を飛べるのは素直に嬉しいのもあるしな。それに、異世界から来て妖精となった俺達という存在を真っ当に扱ってくれそうな奴らが大将以外にいるとは思えないからな。だったらここで世話になるだけさ』
『(コクコク)』
『そういう事ですよ圭さん。俺達は俺達の意思で共に戦っているんです。今更謝る必要なんて無いんですから』
「…………ありがとう」
ただ、そうとだけしか言えなかった。だけど嬉しさで、心がいっぱいになるという感覚を俺は感じていた。
これから先、もしかすると帰る方法が見つかるかもしれない。だが……その時までは、皆の為に俺が出来る事を出来うる限り頑張って行こう……俺を信じてくれる皆がいるから、俺も皆を信じよう。
そう、心に誓った。
―――Side Out―――
―――Side ??―――
圭達が食堂にて話をしていたその時、入渠ドックの奥にある集中治療室。
その中のベッドの一つにかつて空母棲姫特異個体として戦っていた彼女は今もなお眠っていた。
僅かに上下している胸部から生きている事だけは窺えるものの、それ以外の反応は一切表に出ることは無くまるでマネキンのように取れる程に安らかな眠りを続ける女性。
周囲に妖精達の姿はおらず、静かに時が流れるその場所。
変化が訪れたのは何時からか、一切の動きが無かった女性の口が僅かに開いた。
「…………ず…………を…………る」
開いた口から洩れた聞き取ることすら出来ない程の小さな寝言は、誰に聞かれるともなく消えて行った。
いかがだったでしょうか?
とりあえずはこの話の時点で自分の中で第1部が終了したという感覚です。
とはいえ次話以降の第2部の大まかなあらすじ及び登場艦娘は決まっているのですがそれ以降はどうするか、第何部まで行くのかは全く見えない為行き当たりばったりな状態ではあります……
しかし、現状エタらせるつもりは毛頭ないためこれからも高度な柔軟性を保ちつつ臨機応変に書いていきたいと思います。
それではこの辺にて失礼します。