Fleet Combat -Dawn of the horizontal line- 作:大川静真
前話からまさか一月も間を開けてしまうとは思ってもいませんでした。
そしてまさかのお気に入り登録が200件越えという……
このような自分の拙作小説をお気に入りに入れてもらえてもう感謝してもしきれません。
至らぬ点が多数ございますがこれからも応援よろしくお願いします。
それではどうぞ。
#16 運用と浪漫-All or Nothing-
俺の来歴を話して、全員が俺に付いて来てくれるという事が決定したあの日。
それから3日ほど経過した今現在。今も尚ケストレルの艤装の修理が完全には終わっていない為、俺はこの竹ヶ島基地にて暇を持て余している状態だった。
その間は山城主導で3人で出撃を行っており、俺は留守を預かってはいる……と言えば聞こえはいいよなぁ。
白露や時雨、山城達3人は俺の代わりに出撃を行い近海の哨戒と深海棲艦の残骸回収を行っている。無事に戻って来れるのか、敵の突然の襲撃を受けてないか等不安要素があるが彼女達の無事を祈ることぐらいしか今の俺には出来ない。
いやでも、先の暇を持て余しているってのは語弊があるか。ここ最近は空いた時間はトレーニングを行って何とか時間を潰しているような状態ではあったな。
そんな、ある意味怠惰とも取れる時間が流れていたある日の事。俺は工廠妖精の1人に連れられて工廠にいた。
で、俺のいる工廠には俺が最初に来た時と同じ場所に未だ修理中の建造機械―――それでも9割近く修理は終わっており、最終調整を行って異常が見られ無ければそう遠くない頃に再稼働できるようになるらしい―――や武装開発用の機械。そして深海棲艦の残骸を精錬する精錬機が並んでいる。
だが、今の俺はそれに気をかける状態では無かった。
具体的に言えば妖精の1人の言葉が俺の思考を停止させたのだった。
「資材が……残り少ないって……どういう事?」
『正確に言えば当初まだ余裕のあった資材ですが、ここ最近の出撃や損傷の修理で赤字続きなんですよ。現状すぐに無くなる量ではありませんが、このまま行けばいずれ底をつくといった状態ですね』
工廠妖精の1人が沈痛な表情で伝えてくるが、俺の思考はそれどころでは無かった。
「ち、ちょっと待ってくれ。確か俺達は毎日深海棲艦の残骸を持って帰ってきてるはずなんだが……それでも足りないっていうのか?」
『確かにその分の収入はありますが……それ以上に弾薬やボーキサイトの消耗が大きすぎて……特にあの……ミサイル類の弾薬が』
「…………」
『燃料や鋼材の方はそれほどでもありませんが、それでも前述の2つに比べたら比較的少ない状態ですのでこちらも赤字が少なからずあります』
「なんてこった……つまりは俺達に原因があった訳ね……」
『きつい現実を押し付けてすいません圭さん。ただ、先日圭さんが私達を信じて自分の事を話してくれた事に感銘を受けまして……自分達としてもこれは伝えねばと思った次第なんです』
ううむ……まさか……こんな事で資材運用という現実的な問題に直面する羽目になるとは思ってもいなかったなぁ。
「ミサイル類の使用を制限する程度じゃ駄目なのか?」
『むしろ弾薬消費の大半がミサイルのそれなので、使わないというだけでも弾薬費がかなり浮くのは確かです』
「要するに平時は使用を控えて弾薬費を浮かして、いざという時に使ったほうが良い訳ね……」
俺は誰にともなく言う。
要するに、これまでエースコンバットシリーズみたいなノリでバカスカ撃ちまくってたのが悪かったわけか。
…………んん?となると?
「なあ、ちょっと聞きたいんだが……ボーキサイトって確か艦載機を作るためだったり修理するのに使うんだったよな?」
『ッ!……はい……』
俺の問いかけに妖精はビクッと一瞬震え気まずそうに頷く。これは何か隠してるな……
「確か艦載機の損耗ってそんなに無かった筈なのにどうしてこれも消費が多いんだ?」
『…………』
だが、俺の問いかけに帰って来た返事は沈黙だった。
「すまんが正直に言ってくれないか?」
『じ、実は…………』
やがておずおずと妖精は口を開き事のあらましを伝え始めた。
一通りの言葉を聞いた直後。
「主にいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!!貴様あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
俺は工廠施設から飛び出し、主任のいる研究施設に向けて一直線に突撃して行った。
「見つけたあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
『おや圭さんどうしましたあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
研究施設に走りながら突入して数分ほど。研究施設の廊下にて主任の後ろ姿を見つけた俺は、スピードを維持したまま主任の頭部を右手で鷲掴みして俺の顔の高さまで持ち上げる。重さはちゃんと感じるがそれほど重くはないため比較的楽に持ち上げられた。近くに妖精がいて何やら会話していた気がするが、ちょっと待ってもらうとしよう。
「さぁて、唐突かも知れねぇがボーキサイトの異常な消耗に関して納得のいく説明をしてもらうぞ主任!!」
『ゲッ……あだだだだだだだだだ痛い痛い痛い痛い!割れる割れる割れるうぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!』
一瞬主任は絶句したが、俺が腕に込める力を段々と上げていった為に激痛を訴えてくる。しかし、今回に関してはそれでもお仕置きをやめるつもりは無い。
なぜならば……
「さあ、激痛をこれ以上味わい続けたくなけりゃあ、F-15やA-10が着艦するたびに損傷が発生していながらそれを俺に話さずひた隠しにしていた理由を話せ!!」
『あだだだだだだだだだだだ割れる割れる割れる割れるうぅぅぅぅぅっ!!!へるぷうぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!へるぷみいぷりぃぃぃぃぃぃぃぃぃづっ!!』
そう、先程工廠妖精に聞かれたボーキサイト消費の原因がまさにこれなのだ。
以前ピクシーから聞いた艦載機じゃない筈の戦闘機。発艦の度に妙に衝撃が強かった機体だったが、どうやらかなり無茶な着艦を行っていた為、その度に損傷していたらしく俺達が帰投するその都度に資源を使って修理していたとのことだ。
工廠妖精は何度かその件を俺に伝えようとしていたらしいのだが、その都度主任に物凄い剣幕で口止めされていたらしく今の今まで俺にいう事が出来なかったらしい。
で、先日俺が自分の出自を伝えた時に皆を信じて隠し事抜きにしたいという言葉に心打たれて今日の内部告発(?)に踏み切ったらしい。
『分かりました分かりました言います言いますからやめて頭が割れるうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!』
『大将、その辺でやめてくれないか?主任が再起不能になったら俺達どころか大将も話を聞けなくなるだろ?』
「っと」
主任の悲鳴の横から、意外な相手からの言葉の横槍が入ったので俺は右手を離す。
俺の右手と言う支えを失った主任は重力に従い落下し、地面に激突したがそれを気にするつもりはない。
とりあえず『びみゃっ!!』なる妙な悲鳴が聞こえたから生きてはいるだろう。生きてるかの根拠?そんなものは無い。
しかしそれよりもだ。
「というか、ピクシー達じゃないか。何かあったのか?」
『いやな大将、俺達もそこの主任に用事があったんだが……』
『どうやら俺達と聞きたいことは一緒みたいですね……』
振り向いたそこにはいつものガルム隊妖精の3人が立っていた。つまり、2人の言葉を聞くに主任への要件は俺と同じという事か……
「そういう事ね。よし、全員で主任を囲もう。万が一の逃走防止だ」
『了解だ大将』
『……(コクリ)』
『り、了解』
3人は首肯し未だ頭を抱えたまま痛みで震えている主任の周囲についた。配置は俺が正面でピクシーが右側でサイファーが左側、PJが後ろに陣取っている。
輪形陣、という単語が脳内をよぎったが気にしないでおこう。
さて、と……
「『さて主任、本来なら艦載機じゃないそれを、どうして損傷すると分かっていながら使わせてたかキリキリ話してもらうぞ』」
『ハイ……』
偶然にも俺とピクシーの言葉がかぶったが主任は正座をして小さく頷いた。
廊下のど真ん中で周囲を囲まれて正座ってのも色々ヤバい気がするが今回は許してもらおう。主任のやったことは下手をすれば記録の隠蔽工作になりかねないレベルの事なのだから。
『えっとですね……理由としましては……そのぉ……』
「『『『…………』』』」
言い悩んでいるのか目をひっきりなしに左右に動かす主任。何を考えているんだろうかね。
まあいい、どういう理由でこんな真似をしたのか聞かせてm
『浪漫があるじゃないですか!!!』
「『『………………は?』』」
どゆこと?
意を決して放った主任の言葉に俺達全員、何を言っているか理解が追い付かなかった。そしてそんな俺達を尻目に、彼は目を煌めかせてなおも続ける。
『そう!現実の空母ならば絶対に発着艦不可能な陸上機を空母に乗せ、いくつもの問題を抱えながらもそれを発艦させる!本来ならばあり得ない事を実行に移して敵に動揺を誘う言うなれば切り札!そしてそこから得られる戦果!しかしその代償として付与される数ある問題!扱い辛い!?使う度に不都合が出る!?そんなもの!浪漫の前には霞む!かっこいいは正義です!必殺は素敵です!浪漫は王道です!私の思う浪漫が空母艦載機としてのA-10とF-15というある意味矛盾に満ちた編成にあります!故にd「ガルム隊、攻撃を許可する」ええっ!?』
『了解!行くぜ相棒!』
『(コクリ)』
『え、ちょっ!?2人とも!?』
主任のまくし立てに思考が復活した俺は、彼の言葉をさえぎるようにサイファー達に攻撃許可を出す。
即座にピクシーが応答し、サイファーもまた無言で同意して主任の左右の腕を2人でそれぞれ掴み、そのまま主任を逆さまに抱え上げて後方へ投げた!一方PJは反応できずに慌ててるだけだった。
『ほびぇっ!!』
主任は反応する暇もなく背中から地面に叩きつけられ、カエルが潰れたかのような?……兎に角また妙な呻き声を上げた。しかし、そこでサイファーとピクシーが止まることは無く、ピクシーは腕を、サイファーは足をそれぞれ掴んで今度は関節技を極め始めた!
『お前は少し自重と言うのを知っておこうなあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』
『あだだだだだだだだだだだだ痛い痛い痛い痛い折れる折れる折れる折れるうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!』
うん……プロレスの投げ技や関節技の類は殆ど知らないから分からないが……すっげぇ痛そうだ……
そういえば空手にも関節技があるという話は聞いたことあるが、その辺あまり覚えてないんだよなぁ……
だがまあ、主任のそれは完全に自業自得だ。暫く放置しておこう。
あ、今なにかが折れるような音がした気がするが……気のせいか。
『うう……ごめんなさい……きちんと今度からは説明します』
「全く……浪漫を追い求めるのは構わんが、起きるリスクやらの弊害なんかも考えないといかんぞ」
今回の場合は過剰な資材消費がそのリスクに当たるよな。
『暴走に付き合わされる俺達はたまったもんじゃないがな』
「まあ、その主任の暴走のおかげで、時雨達の艤装が本来ならあり得なさそうな魔改造されて戦力増強に繋がった……っていうのもあるんだがな」
ピクシーの愚痴に俺は溜息を吐きながらつぶやく。
あれから数十分が経過したか。俺とガルム隊に未だ囲まれたまま、泣きながら正座で謝罪する主任。そして腕組みをしたまま主任から目を離さない俺とピクシー。相変わらず無言のサイファー。そして苦笑いしかできていないPJという妙な光景が、今なお研究施設の廊下にあったりした。
とりあえず既知の白露達の艤装魔改造を含む、主任の独断専行の数々が明るみに出たのだが、まあ全部彼自身が俺達が戦闘で優位に立てるように良かれと思ってやったのが事実だ。
それに、俺やガルム隊が来る前まで実質彼がここの指導者だった為、その名残的な行動の結果が今回の騒動だったという訳だ。
ふむ、そうだな……
「とりあえずここで艦載機の運用に関する形を決めておくとしようか。現状事故は起きちゃいないが、この先着艦機能に問題のある機体を着艦させ続けていていつ事故が起きるか分かったものじゃ無いからな」
『そうだな大将、それがいい』
『とはいえ、F-15やA-10はいつの間にか主任が改造を施してたお陰で発艦に関しては大きな問題も無いんですけどね。ただ現状のままの着艦だと圭さんの言う通りいつか大事故につながるでしょうからね』
『全く……本来なら陸上機のそれをいつの間に、しかもどうやって目に見える範囲を変えずに改造したんだか……ベルカの技術者じゃあるまいし……まあいい。さて大将、どうするんだ?』
「そうだなぁ……ちょっと食堂でその件に関して他の艦載機妖精達も集めて会議しようか」
俺の提案にガルム隊妖精の3人は無言で頷いた。だったら今日の予定は決まりか。
俺達はそのまま足を食堂の方へと向けていった。
『えっ?ちょっ……圭さーーーーーん!私はどうすrオッゴッ!?』
「お前はしばらくそこで反省してろ」
『……意外と酷いなあんた。妖精達からしたら大将の拳骨でも相当な威力があると思うんだが……』
とりあえず主任に拳骨を叩き込んでおくのを忘れない。
苦笑しながら呟くピクシーだが、この程度で済んでる分処罰としてはかなりましな方じゃないのかねぇ?
何と言うかもう……主任の暴走発言の対応に気力を使い過ぎたのか、これ以上声を荒げる労力も無い。
さてさてあれから俺の艦載機妖精達を食堂に集めて、今後の艦載機運用についてミーティングを始めた訳だが……
とりあえず自分の考えとしては着艦の度に損傷しているF-15やA-10を本来の用途である陸上機として使う事にして、遠方に向かう場合は搭載し、発艦させたら基地まで戻すという感じで運用する案を出そうかね。
言うなれば1回の出撃に対しての使い切りの武器とかそれに近い奴か。
陸上機として使う場合滑走路とかどうするんだと思ったのだが、妖精サイズの艦載機専用滑走路は直ぐに敷設可能らしい。
ミーティング前に質問した所、そう言ったのは先程俺に資材の赤字が続いている事を教えてくれた工廠妖精だ。
滑走路とかすぐに出来るものなのかと疑問に思ったが、最悪基地内の平たくなっている部分を使えば行けるらしい。
大丈夫かと思ったが、妖精達や彼ら専用の艦載機のサイズを思い出して納得した。
「そうか、そのサイズが故の強みか」
『そういう事です。別に人間達が普段使っているサイズの滑走路をわざわざ用意しなくてもいいんですよ』
俺達人間には無い強みを理解した俺の言葉に工廠妖精が笑顔で頷く。
そのまま特に問題も無く会議が進行して行き、最後にガルム隊やA-10隊の出撃を控える案を出した訳だが……
「取りあえずは資材消耗を少しでも浮かせるためにガルム隊とA-10隊の出撃を控える方向でいいか?最悪ケストレルに乗せて出撃しても、発艦しない事もありえるかもしれんが……」
『俺達は特に異論はないぜ』
『『『否!断じて否!我らに出撃を!爆撃神様のような大量の出撃を!!』』』
ここに来てA-10隊からとんでもない反論が出て来た。おいおい……
「いや、さっきも言っただろ!着艦時に損傷ばかりして資材消費が馬鹿にならないから消費を抑える意味合いもあるんだよ!」
『だが!だからと言ってその程度の理由で出撃を控えては我らが爆撃神様に申し訳が立たない!あの方は片足を失っても数週間後には特注の義足を持って出撃したくらいなのです!そのくらいやらねばあの方には届かぬのです!!』
「おい待て資材消費をその程度とか言ってんじゃねぇ!つーかどんだけ出撃馬鹿なんだよその爆撃神は!?というかなぁ!そんだけ出撃したいのだったらホーネットが新しく開発で来たらそっちに転換して出撃させてもいいんだが」
『我らが爆撃神の思想を受け継いでいる崇高な機体を捨ててあんな磯臭い紙機体に乗れというのですか!?』
ちょっ!?お前今ホーネット隊の妖精に喧嘩売る発言してない!?
『ンだとゴルァッ!テメェ今何つった!?俺達の乗るホーネットを磯臭いだとぉ!?』
ああ、案の定ホーネット隊の妖精がブチ切れてA-10妖精に思いっ切り食って掛かったよ。どうもあの2人がそれぞれの部隊の隊長っぽいな。
『ああ言ったぞ!あんな磯臭くって少しの被弾で落ちるような紙装甲機体なぞ乗っていられるか!』
『テメェ!A-10なんて鈍足のイボイノシシじゃねぇか!単にあんなトロい機体ばっか乗ってるからスピードに振り回されるだけじゃねぇのか!?』
『貴様!爆撃神様の魂が宿りし傑作を愚弄するか!』
あーあーあーあー、罵倒の応酬。周りの妖精達も睨み合いを始めてるし、どうしようもなく険悪な雰囲気が漂い出したよ。こりゃ大喧嘩になるのも時間の問題か……
『あーあ……こりゃ一触即発だ。ヘタをすると大乱闘になるぞ』
「まさかこいつらの仲がこんなに険悪だとは思わなかった……」
ホーネット隊とA-10隊が睨み合いを行っている光景を遠い目で眺めるピクシーに、俺は頭を抱えて溜息を吐きつつ呟く。
『そ、そんな事より止めましょうよ!』
「了解PJ、乱闘が始まったら直ぐに止めるとするよ」
と、思っていたのだが何やら妖精達は2人を中心として円を作り始めた。まるでこう、コロシアムよろしくな1対1での対決に持って行こうとしているかのようで……
って…………あれ?乱闘は?
『来いよベネット、武器なんか捨ててかかって来い』
『誰がテメェなんか!テメェなんか恐かねぇ!野郎ブッ殺してやらぁ!!』
オイ待てこの妖精達今物騒かつすっげぇ聞き覚えのある会話をした気がするぞ!というかよく見ると円の中央で構えている妖精は先ほどまで喧嘩していたA-10隊の妖精とホーネット隊の妖精じゃねぇか!しかもホーネット隊の方の妖精って「ベネット」って名前があったんかい!!
あー、そうこうしている内にノーガードの殴り合いが始まったよ。
「……なあ、これってどう対応すればいいんだろうか?」
『いやいやいや止めましょうよ!殴り合いやってるのにどうして諦観してるんですか!?』
『だってなぁPJ、殴りあってるのは2人だけで他の奴らはむしろ双方を応援してる状態だぞ。確かに乱闘になれば俺も止めようと思ってたんだが……』
「A-10隊とホーネット隊全員での大喧嘩が始まるかと思ったら、まるで双方合意の上としか思えないような殴り合いが始まった……この場合どうすりゃいいんだろうな」
流石にピクシーも想定していない事態だったらしく半ば諦め気味にうなだれながら呟き、俺の誰にともなく言った事にサイファーですらも遠い目で肩をすくめるだけだった。
あ、クロスカウンターがきれいに決まった。
「と言う訳で、しばらくミサイルの使用は控えよう」
「ちょっと待ちなさい圭、何が「と言う訳で」なのよ?私達にも詳しく事情を聞かせなさい」
あれから日が沈み始めた頃に出撃から帰還した山城達3人に手っ取り早く伝えたが、当の山城に突っ込まれた。
調度帰還し、艤装を外し終えた所だった為俺は手っ取り早く伝えたのだが、さすがにこれだけじゃあ伝わるわけ無いか。
仕方ない。
「まあ実はかくかくしかじかな訳で」
「それで私達が普通に理解すると思う?というかどうしたのよ貴方、今日はなんか変よ?」
「……あ、ああ済まん。ちょっと色々あってな」
まあ……なぁ……主任の暴走発言とかA-10隊とホーネット隊のサシでの殴り合いとか。
身体面の疲れは無いんだが精神的に何か疲れた気がするんだよ……お陰で妙なテンションになってる気がする。
「えっと、圭……大丈夫?」
「大丈夫だ時雨、問題無い」
「……どうしてかしら?その台詞は不安しか感じない気がするんだけど?」
傍にやってきて心配そうに問いかける時雨に俺は答えるが、山城がジト目で突っ込みを入れて来た。安心しろ山城、その不安は俺も感じている。
―――青年説明中―――
「つまりは資材の消費が大きいため、最大の消費要因であるミサイル類の使用を控える訳ね。それならそうときっちりと説明しなさい」
「それと実は着艦の度に損傷していたF-15とA-10の使用も控える事になったがな。一応妖精達の了承は得たが……」
「何かあったの?」
「艦載機妖精達の一悶着」
遠い目をしながら呟いた俺に3人はそれ以上聞いてこなかった。
まあ、あの殴り合いからのクロスカウンターの後、A-10隊妖精とホーネット隊妖精は双方起き上がると無言で握手し、さらにはお互いの肩を組み、ものすごくいい笑顔でサムズアップをしていた。
そしてその光景を見た周りの妖精達は何故か歓声を上げ、中には涙を流しながら抱き合う奴らまで現れる始末だった。
もうあの時はね……「八百長試合の類かよ!!」と頭を抱えながら立ち上がった位だよ……
まあ、その八百長擬きな殴り合いのお陰もあって、A-10隊は出撃自粛に何故か賛同してくれたのだが……何故に考えが変わったんだあれは?
「取りあえず白露と時雨、ミサイルの使用を控えることもあって戦力面で結構なダウンがあるが、危険だと判断したらその時は個人の判断でミサイルを使用してくれて構わない。出し渋りでやられましたじゃあ寝覚めが悪過ぎるからな」
「はーい!分かりました!」
「うん」
時雨と白露の2人は笑顔で了承する。さて、それともう一つ頼んでおくことがあるんだよな。具体的には山城にだが。
「それと山城」
「何かしら?」
「とりあえず現時点で決めておきたいんだが、現状皆に指示を出すのは俺になってるよな。それで俺が指示が出せない場合の緊急措置としてお前がその時は暫定的な指揮を頼みたいんだ」
「…………へっ?」
彼女にとって突然の話だったのか、何を言っているのか分からないかのような呆然とした表情の山城。
「まあ簡単に言うとだ、この前の空母棲姫戦で俺が戦闘不能な状態になってただろ?あの時みたいな状況になった場合、お前が皆に指示を出すんだ」
そこに来てようやっと俺の言葉の意味を理解したのか山城は思いっ切り慌て始めた。
「ち、ちょちょちょちょちょっと待ってよ私がどうして指揮を執らなきゃいけないのよ無理よ私実艦時代碌に艦隊にいなかったのよドックに入り浸ってばかりだったのよ欠陥戦艦だったのよそんな私が指揮とか絶対無理だからこの先建造施設が完成して戦艦が来たらその娘に頼めばいいと思うから私じゃ役不足よ絶対無理よ!」
「それがどうした。俺は「
「いえいえいえいえそんな白露や時雨だって了承してくれるとは限らないし私は撃ち合いできるだけでも十分だからそんな大役任されても絶対いい結果なんて出せる訳ないわよ絶対私のせいで不幸にさせてしまうから!」
「とは言ってるがお前達はどう思ってるんだ?」
「かつて」の彼女の境遇ではなく「今」の彼女の実力を俺は買ってはいるのだがなぁ……
俺は白露と時雨いる方向を向きながら2人に問いかけてみる。
「私は圭さんの言ってた山城さんの臨時指令は賛成だよ!この前だって山城さんのお陰で逃げ延びることが出来たし!」
「僕も異論はないよ」
「だそうだ」
双方共に俺の意見に賛成だったのを聞き、山城の方に向き直る。
山城は自分の指をいじりながら未だにおどおどとしてはいるが、やがてこちらをチラリと見て呟いた。
「…………本当に私なんかでいいの?」
「ああ」
「本当の本当よね?」
「お前の実力を買ったからな。本当だ」
「本当の本当に本当なのよね?」
「しつこいぞ。これを変える予定は無い」
しばしの沈黙があったがやがて山城は口を開いて
「分かったわ……やってみる……あまり、期待はしないでほしいけど」
「OKだ。まあ、そういった事態にならないのが一番いいんだろうけどな」
「面倒な役割を与えられたものね……不幸だわ」
「おー頑張れよー」
「他人事のように言うわね貴方……まあいいわ、私は上がらせてもらうわよ。食事が出来たら呼んで頂戴」
山城はそのまま溜息を一つ吐いて自分の部屋へと向かって行った。
「じゃあ私も部屋に戻るね圭さん!お疲れ様ー!」
「はいよお疲れー」
白露は元気な声で手を振りながら走り去って行った。元気なのはいいことだが、ぶつかりそうで怖いな……
しかし、今の白露は何だろう……何か違和感を感じたのだが……気のせいか?
「圭、本当に大丈夫なの?」
「色々あってな……精神的に疲れた」
妖精達も個別の作業に移りだして行き、周囲には俺と時雨の2人だけとなった。
そんな折に時雨が問いかけて来たのでつい本音が出てしまう。こうして本心をさらけ出してしまうのは時雨とコトに及んだ所為なのかねぇ……
「まあ、艦載機妖精達の件でだからな。こればっかりは俺が対応しなきゃならんから大丈夫だ。心配かけてすまないな」
「僕もお手伝いが出来たらいいのに……」
「そう言ってくれるだけでもありがたいよ。さて、戻るとしようか」
そう言って歩き出そうとしたところ、時雨に服の裾を掴まれた為、足を止める。
「一体どうした時雨?」
振り向いて聞くと時雨は目を逸らしたまま何も言わない。
明後日の方向を向いてはいるが……心なしか、顔が紅くなってるような……
「一つ、圭の精神的疲れを紛らわせる方法……思いついたんだけど……ただ体の方が疲れる方法なんだけど……圭が嫌だったら別にしなくてもいいんだけど……」
おいおい待て待てまさかまさかお前の考えていることが何となく分かってしまうんだがその口ぶりだと……
「圭が良かったら……夕食が終わったら……この前の事…………する?」
ドンピシャでした…………ハイ。
そして、その問いに対して俺には拒否するだけの理性は存在せず……
「する……」
そうとだけしか答えられなかった……俺の理性って弱いね……
それを聞いた時雨は顔を真っ赤にしながらも笑顔を見せ、俺の右手を握って来た。
これは……このまま一緒に行こうという事なんだろうな……何か恥ずかしいな。まあ、いいか。
この時、俺達は知る事はなかった。
手を繋いで歩いて行く俺達を、見続ける影が一つ……寮の窓にいた事を……
―――オマケ―――
「しかし、あのホーネット隊の妖精って「ベネット」って名前だったんだな」
『違いますよ』
「は?じゃあそのベネットってのは誰なんだ?」
『誰なんでしょう?』
「…………」
なら何故俺が聞いたことのある台詞を言ったんだろうか……
いや……待てよ?……まさか……元の台詞が言われたであろう「モノ」と同じのがあるとか……?
さすがに無いか。ただの偶然だよな?
主任に見せてはいけないもの
とっつき
オーバードウェポン
VOB
TEAM R-TYPE
ガンランス
ミニ八卦炉
その他浪漫武装やピーキーな性能持ちの兵器全部
いかがだったでしょうか?
今回は自分なりに考えだしたガルム隊及びA-10隊の制約付加及び主任や艦載機妖精達の暴走回となりましたが……
A-10とホーネット隊の殴り合い直前の会話はみんな大好き「コマンドー」のアレからです。
因みに
サイファーとピクシーが叩き込んだ技はタッグ版のブレーンバスター、その後ピクシーは腕ひしぎ十字固め、サイファーはアンクルホールドを極めてると思ってください。
まあ、プロレスを碌に知らない作者が検索をして、これいいなと思った技なだけですが
それではこの辺で
次回にてお会いしましょう。