Fleet Combat -Dawn of the horizontal line-   作:大川静真

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艦これアーケードでも提督デビューを果たした大川静真です。みなさんおはようございます。こんにちは。こんばんは。

そしてここまで小説の投稿が遅れた事を謝罪いたします。
色々と仕事でミスが重なり精神的に落ち込んでいたというのもあってか、書く気力があまり湧かなかったのが原因の一つであったりしますが……

それではどうぞ。



アーケードでの文月のモーションは神。異論は許す。


#20 その感情の行く先-The sorrow-

 朝。

 

 微睡みの中に置いて段々と覚醒しつつある意識。

 

 目を開ければいつもとほぼ同じ、暁の水平線から太陽が出てき始め、空が明るくなり始めた時間帯。

 そんな時間に俺、永瀬圭は目を覚ました。まあいつもの朝練を行うために目を覚ました訳だが……もう慣れの領域だなこれは。

 

 そしていつもと違うのは……まあご存知の通り両隣で眠っている全裸の白露と時雨の姿があった。こう言った状況にはまだ完全には慣れないものの、まあ時雨と初めてを経験した日よりは少し、落ち着いてはいる。

 

「…………っ」

「うーん……圭さん」

 

 俺が上体を起こしたところどうやら2人の意識も覚醒したのか、両方から何やら動く気配がした。

 ゆっくりと左側の方で何かが動いている。まあ言うまでも無く時雨が目を覚まして起き上がった所だ。

 

「おう、お早う」

「お早う圭。もしかして朝の鍛錬の時間かな?」

「そうだな、今日はどうする時雨?」

「僕も行くよ。とは言え一度部屋に戻って着替えてからになるかな」

「分かった。じゃあ着替え終わったらいつもの場所で待ち合わせだな」

「うーん……圭さんと時雨何処に行くのー?」

 

 ベッドから抜け出して着替え始めた俺と自室に戻ろうとした時雨が会話していた所、白露が寝ぼけ眼を擦りながら聞いてくる。

 

「ああ、毎朝行ってる朝の鍛錬だよ。そう言えばお前は知らなかったな」

「僕も少し前から圭に頼み込んで参加してるんだ」

「あっ!私も行きた…………っっっっ」

 

 時雨の言葉を聞いた瞬間白露はガバッっと言わんがごとき勢いで上半身を起こすが、不意に自身の股間部を抑えて悶絶する。

 

 

 

 あー、これは……恐らく。

 

「おい、白露大丈夫か?まさかとは思うが……」

「う゛う゛う゛……アソコが痛い……圭さんのがまだ入ってる感じがする~」

「……やっぱりか」

 

 半分涙目で呻く白露。その口から出て来たのは俺の予想通りのものだった。

 まあ、初めてだったのが原因だな。破瓜の痛みがここに来て出て来たという訳かね……白露自身は朝練参加の意気込みがあるみたいだが、今回ばかりは仕方ない。

 

「今回は仕方ないさ。傷を癒やして次回に参加しようか」

「う゛う゛う゛……思い立ったその時に実行する事こそが一番の秘訣なのにー……行きたいけどこれじゃあまともに動けないし……でも圭さんと行きたいし」

 

 白露はそれでも参加を諦めきれないようだ。中々強情だな……

 

 さて、恥ずかしいが彼女の体調も考えて手を打たせてもらおうかね。

 

 

 

 これをすれば確実だろうが……代償は俺の羞恥心と言った所か。

 

 

 

 俺は着替えを終えると白露の傍に近づいて彼女の顎を引いて……軽く白露の唇にキスをした。

 完全な不意打ちだった為、白露は完全に思考が停止してされるがままとなっている。

 

「…………ふえっ?」

「まあ、今回はこれで手を打ってくれ……朝練参加は次からでいいからさ」

 

 直ぐに白露から離れて説得する。そのまま俺は白露を尻目に部屋を出ていく。

 

 うん……自分から女の子の唇を奪うってのは……凄く恥ずかしいな……

 

「それじゃ痛みが引いたらシャワー浴びて来たがいいぞ」

「え、あ、い、て、キ……」

 

 何やら意味不明な言葉の羅列を機械のように呟いているがそれを無視して俺は自室を出る。

 

 

 

 そして

 

「……うあ……自分からするってすっげぇ恥ずい。昨夜も実行に移したが今になって自分の行動が恥ずかしくなってきた……」

 

 頭を抱えて悶絶し始めた。いや、だってなぁ……

 

「いいなぁ白露……僕にもしてくれないの?」

「すまんが勘弁してくれ時雨、自分でもすっげぇ恥ずかしくってもう一度やったら思考がオーバーヒートする」

 

 ああもう自分の顔が真っ赤になってる気がするなぁ……

 

 

 

 因みに、復活した白露はあの後俺のベッドの上で悶絶し恥ずかしさで体をバタバタと動かしていたらしく、朝食前まで完全に思考がオーバーヒートしていたらしい。

 

 

 

 

 

 

 さてさてあの後俺達は朝練を行った後、朝食をする為に食堂に集まった。

 食堂前にて同じく朝食の為に食堂に向かっていた山城と出会ったが……俺達は何もしていない。特に大した会話もしていない。していないったらしていない。

 

 まあ、それは置いといて。

 現状この食堂には俺、白露、時雨、山城の他に、昨日救出に当たった艦娘の文月が同席している。とは言え文月は部外者である為か落ち着かなさそうに周りを見回している。

 

「あの~、あたしも同席してもいいんですか?」

 

 気になって仕方が無かったのだろう、俺の向かい側、白露の隣に座った文月がおずおずと手を上げて問いかけてくる。

 

「まあ構わんよ。飯ぐらいは一緒に食ったほうが楽しいというのもあるからな」

 

 しかし目的はもう一つあったりするんだがな。

 

「でも、あたしはお姉ちゃんの治療を待ってる部外者ですし……」

「だったらこうしよう。ちょっと頼みたい事があるからこの場を借りて文月にお願いするからそれで妥協してくれるか?まあお願いの件は食後になるが」

「う~ん……分かりました~」

 

 多少納得いかないところはあるようだが了承したようだ。

 

「それでは」

「「「「「いただきます(~)」」」」」

 

 この基地にて俺が食事毎にやっていた事。食事前の「いただきます」

 前からひいおじいちゃんに躾けられていた為特に何も感じることなくやっていたのだが、この基地に来てそう時間も経たない頃に白露達も真似し始め、さらには山城まで参加してきたのだ。

 これが完全に習慣化し、最近では基地にいる全員が集まりこれをしてから食べるという不文律がいつの間にか出来上がっていたりする。

 しかし、何故か客人の筈の文月も参加してきたのは何故だろうか……俺と同じく躾けられたか或いは無意識の内にやってたか……まあ、それはいいか。

 

 そのまま俺達は食事を開始した。今日のメニューはパンと野菜サラダだ

 

 パンは原材料の小麦をこの基地の農園で作り、妖精達が加工を行ってから焼いているらしいが……野菜類と言いどうやって原料を作ってるんだろうか?

 こう……詳しくは無いんだが、季節とか区域によって野菜類が作れたり作れなかったりするんじゃないのかね?

 あれか……以前言っていた土地の力を糧に妖精達は生きているみたいだから、その土地の力の一部を操って対象の野菜を作れる土壌にしているとかかねぇ?

 

「はむはむ……おいし~い♪」

「口に合ったようで何よりだ。後で食堂妖精達に伝えておくよ」

 

 パンを一口食べ、満面の笑みで返してきた文月に俺は言う。しかし、ホント子供みたいな性格だなこいつは……

 何と言うか、こう……近所の小さくて元気いっぱいな女の子を相手にしているかのような……まあ俺にはそんな子はいなかったのだが、そんな奇妙な感覚を覚えたのだ。

 

「文月ちゃん、お口にパンのかけらが付いてるよ。ほら、取ってあげる」

「あ、ありがと~……えっとぉ」

「白露だよ。白露型駆逐艦一番艦の白露♪」

「ありがと~ね~白露お姉ちゃん♪」

「……うんっ」

 

 食事中に口元にパンの欠片が付いていたらしく、文月の隣に座っていた白露が自分のハンカチを取り出して文月の口を拭いてあげている。

 というかオイ白露。文月の口元の汚れを取ったのはいいが「お姉ちゃん」の言葉でドヤ顔するんじゃない。

 しかし、あれだ。こうして見ると時雨には悪いが白露と文月の2人は年が少し離れた姉妹のように見えてくるな……髪の色が近いという意味でだが。文月って白露型の駆逐艦って訳じゃ無いと思うが……

 まあいいか。朝食を続けるとしようか。

 

 そのまま俺達は何事も無く食事を続けていった。

 

 

 

「あの空母の艤装の事は秘密に……ですか?」

「ああ。それと艤装を装備できる俺の事やこの基地の事もだな」

 

 あれから食事を終えて俺達はこの基地や俺達のあらましを文月に伝えた。そして以前山城に言ったように、彼女に元の鎮守府に戻るか否かを問いかけてみた。

 問いかけと同時に仮に鎮守府に戻る際に俺達の事を内密にしてもらいたい旨もまた彼女に伝えることとた。俺が説明している最中、文月は首を傾げながらもこちらの言葉をしっかりと聞いているようで表面上は真剣に考えているようではあったな。

 

「そういう事だったんですか~」

「そういう事だな。すまないが鎮守府に戻った場合は俺の事を内密に頼めるか?」

「あたしは神通お姉ちゃんと一緒にいたいですから、お姉ちゃんの答えを待ちたいです」

 

 という事はお姉ちゃん―――あの艦娘の事だろう。名前は神通か―――の意識の回復待ちという訳か。

 

「ふむ……仮に、神通とやらが戻る意思を持っていたとしたら……その後はどうするんだ文月?」

「う~ん……う~ん……戻った後ですか……」

 

 文月は首を傾げて考え始める。

 

 

 

 そして、その首を傾げた体制のままいきなり涙を流し始めてええええええええええええっ!!!

 

 

 

「ふ、ふえっ、ふえぇぇぇぇぇん……みんなぁ~~~~」

「ちょちょちょちょ文月すまんかった俺が何か悪い事言ったみたいで悪かったほらハンカチ貸してあげるから涙を拭いてくれ俺に原因があるのなら謝るからな」

 

 いきなり大泣きを始めた為、俺は大慌てで彼女をあやし始めた。周囲で黙って聞いていた白露達も驚いた表情のまま動きを止めていたが……

 

「泣ーかせたー泣ーかせたー」

「けーいさんがー泣ーかせたー」

「山城白露てめぇら何ジト目で歌ってんだよっ!!」

 

 いきなりジト目で低いテンションで歌いだす2人に俺は声を荒げた。

 こういうタイミングでンな歌うたってんじゃねぇよまったく!!

 

「君には失望したよ……」

「時雨頼むその台詞は精神的ダメージがでかいからやめてくれ!」

「えぐっ……えぐっ……ごめんにゃしゃいぃ……沈んだみんなの事を思い出しちゃって……ふえぇ……」

 

 ああやっぱりか……

 文月が涙を拭いながら言ったその言葉だが、ある程度の予想が出来ていたので特に気にすることなく文月の言葉を待つ。その間に彼女にハンカチを渡して涙を拭わせるのを忘れない。

 

「まあ、文月の気持ちは分かったし、これ以上は何も言わないよ。それと、嫌な事を思い出させてしまって悪かった」

「ひぐっ……いえ、あたしが勝手に思い出しただけなんで……大丈夫です。でも、ありがとうございます」

「そうか……」

 

 まあ何はともあれ文月の意思は分かった。後は意識が戻ってきていないあの神通という艦娘だな……

 

 

 

 ―――Side out―――

 

 

 

 ―――Side 神通―――

 

 

 

 微睡みの中にいるような感覚。自身の体がまるで水の中で浮遊しているかのような感覚を神通は何処か他人事のように感じていた。

 

 そして、ある時を境にゆっくりとだが「上」へと上って行くような「光」へと向かって行くかのようなそんな感覚に襲われて行った。

 

 

 

 神通はそんな感覚を感じた後、ゆっくりとだが目を開けた。

 僅かに開いた瞼から映るぼやけた世界。真っ白い、だが完全に白一色と言う訳でも無く所々に違う色が見受けられる。が、今の神通にそんな違いを理解する思考は存在しなかった。

 

(ここは……私はあの時……)

 

 目に入ったのは、知らない天井であった。鎮守府にいた時に偶然読んだ小説にあった一文だが、まさか自分が実体験をするとは夢にも思ってなかった。

 ある程度の時間を置いて自身の記憶が段々と浮かび上がって来た。

 そうだ、自分は確かにあの時敵の潜水艦からのものであろう雷撃を受けて「ナニカ」に体を叩きつけられ、意識を失ったのを思い出した。

 何故自分は生きているのか。まさか文月が戻ってきて自分を助けたというのだろうか。

 すぐに神通はその可能性を否定する。何かもう一つ忘れているか、思い出せないものがある気がする……

 

『っと、目が覚めたようですが、大丈夫ですか?』

 

 そこへ、声がかけられたので神通は首を横に向ける。そこには白衣と思われる衣装を着た妖精が一体、医療機器の上に立ってこちらを心配そうに見ていた。

 

『私の声が聞こえますか?聞こえているのなら首を縦に振ってください』

 

 無言で神通は首を縦に振る。

 

「あの……ここは?」

『大丈夫です。ここは入渠ドックの奥にある集中治療室です。あなたが大破した所をこの基地の艦隊が発見して救出を行ったのです』

 

 神通の問いかけに彼女の担当となっていると推測される妖精が丁寧に答える。

 彼(?)の言が事実だとするならば自分が意識を失った後にその艦隊が自分を救出するために海域に到着し、深海棲艦達を撃破して戻って来たという事になる。

 

「あの……私以外の生存者はいませんでしたか?」

『その……ここの艦隊が現場へと向かう途中で遭遇した文月と言う艦娘がいるという以外には……』

 

 神通から見て何処かバツが悪そうに妖精は言う。

 

「そう……でしたか」

『申し訳ありません。私も詳しい話は聞いてませんし……何よりあなたに辛い事実を突きつけてしまって』

「いえ……むしろ教えてくださって、ありがとうございます。あの状況で生きていただけでも、僥倖と言うべきでしょうし……」

『分かりました。それでは責任者に伝えて来ますね』

「はい」

 

 お辞儀をして妖精は扉の方へと向かい、そのまま扉を開けて退室して行った。

 神通1人だけが残され、部屋には静寂が降りる。

 

「生き残ることが出来たんですね……いえ、生き残ってしまったんですね……」

 

 そうだ。生き残ってしまった。確かに心の奥底では出来る事なら生きたいという意思はあったが、同時に自分はあの場所を死地とし敵を少しでも多く討ってから死ぬ事こそすべてと思っていた。

 だが、運命の悪戯か分からないがこうして生き残ることとなったのだ。

 

 死を覚悟しながら自身の奥底では生きたいと思う矛盾した思考……それがあの時の神通だった。

 

「私は……どうすればいいのでしょうか……」

 

 その問いかけに答える相手は今ここに存在しなかった。

 

 

 

 時間にして十分ほど経過したか、自分以外誰もいない部屋の、一つしかない扉が唐突に動いた。そしてその開いた扉から2人の男女が姿を現した。

 

 女性の方の外見は上は巫女服のような和服のような服装に下はミニスカートを穿いた、黒髪をボブカットにしている。

 女性の体形も俗に言うグラマーと呼ばれる体形だが、それ以上に目につくのは頭の右側についた誰がどう見ても違法建築に見えるタワーのような何か。恐らくかつての船の艦橋を模したものだと神通は推測する。

 もう一人の男性はその女性より少し身長が高い第2種軍装と思われる服を着た黒髪黒目の、細身ながらも無駄な脂肪が殆ど存在しない引き締まった体形の男。

 

「あなたは一体?」

「目が覚めたようだな。俺はまあ、この基地の責任者の永瀬圭って男だ。こっちは、秘書艦を担当してもらっている山城だ」

「どうも」

「そうですか。始めまして、私は川内型軽巡洋艦の二番艦の神通です」

 

 自身の問いかけにしどろもどろになりながらも答える男―――永瀬圭と言ったか―――と会釈する山城に神通は上半身を起こしたままの状態でお辞儀する。体を動かしはしたが痛みなどは感じなかった為恐らく完治してるのだろう。

 

 圭とやらの口調に違和感を感じたが今は気にしないでおこう。

 

「それで、ここは一体何処なのでしょうか?」

「ここは竹ヶ島基地の入渠施設奥の治療施設だな。ここの艦隊があんたを救出した時あんたは意識を失っていた……らしくってな。帰投し……させた後にここに妖精達に頼んで連れて来させたんだよ」

 

 そこから続いた圭の話を要約するとこういう物であった。

 

 どうやらこの竹ヶ島基地の艦隊が索敵中、遠方に何やら襲撃を受けたかのような煙を見つけた為確認の為に向かっていた。その途中で文月と遭遇して事情を聞きその襲撃現場へと急行、付近の深海棲艦を撃破して探索を行っていた所自分を発見し、連れて帰った……との事だそうだ。

 

「……そういう、事でしたか」

「すまない。あんた以外の生存者は……見つからなかったとの報告だ」

「いえ、あの状況下に置いて文月さんだけでなく私も生き永らえることが出来たのは僥倖と言うべきでしょう」

 

 神通はそう返して微笑む。それが作り笑いだという事は自覚していたが、それでも助けてくれた彼女らに感謝の意を見せたかった。

 その間にも圭を観察することを忘れない。

 しばしの沈黙の後、圭が口を開いた。

 

「それで、何か聞きたい事とかあるか?答えられる範囲なら答えるが」

「そうですね……では聞かせて欲しいのですが」

 

 そこで一旦区切り、神通は言葉を発した。

 出会った時から感じていた違和感を……そして観察して得た自分なりの結論を……

 

 

 

「永瀬圭さん。あなたは提督の類ではありませんね」

 

 

 

 

 

 

 ビクリと圭の体が動いた。誰から見ても明らかに動揺している圭。よく見れば山城の方も気まずそうな表情をしており、図星であった事が手に取るようにわかる。

 

「な、何で……」

「最初の会話で違和感を感じました。本来の提督なら「責任者」という単語は使いません。それに、竹ヶ島基地は今年に入って深海棲艦の奇襲により放棄されたと聞いています。この辺りで疑念は感じていました」

「「……」」

「とは言え確信に変わったのはあなたの服の細部の違いです。あなたの服は第2種軍装のそれではありますが、階級章がアメリカ海軍のそれに酷似しています。肩章も日本で使用されているものではありません」

「うぐ……」

「以上の2点から永瀬圭さん、あなたが提督では無い誰かと言う結論に至りました。そこで質問です。あなたは一体「何者」なんですか?」

 

 2人はそのまま何も答えない。しばしの沈黙が続く。

 と、そこへ唐突に圭が溜息を一つ吐いて続けた。

 

「確かに俺は提督じゃない。正直この案もとある妖精の悪乗りに半ば強制的に実行させられたものだからな。とは言え俺が誰なのかって言われると、少し言いにくいものがあるんだ。仮にこの事実が人間勢力に発覚した場合、少なからずの影響を及ぼす可能性があるからな」

「どういう……事ですか?」

 

 神通は目を細めて圭に聞く。いつの間にか出ていた殺気が山城にも向けられていたのか、彼女は身じろぐが圭の方は殆ど表情を変えずに続ける。

 

「正直な話、あんたがこのまま拠点に戻ってから俺の事が人類側にばれた場合、俺の事を知る神通や文月にまで影響を及ぼす可能性があるんだよ。文月の方は事情があってこの秘密の事は知っているんだが、これに関しては自分は知らないと通すと約束はしてくれたんだ」

「……あなたに、何があるというのですか?」

「それについては現状答えられない。文月の口を無理矢理にでも割らせる可能性も考えたが、文月はあんたをかなり信頼しているみたいだしな。無理矢理口を開かせるような奴にあそこまで懐くことはないと思うし、強硬手段に出る可能性は低いと判断したんだよ」

「……」

「選択肢としては2つある。このまま何も見なかった何も聞かなかったとして元いた鎮守府……だっけか?そこに帰るか、文月ともどもここの艦隊の一員になるかだな。勿論どっちの選択を取ってもあんた達を無下に扱うつもりはないと誓うよ」

 

 圭に与えられた選択肢に神通は黙る。

 正直この圭と言う男から与えられた選択肢はどれもこれもかなり「甘い」選択だ。自分が鎮守府に戻り次第があっさりと口を割る可能性を考えているのか。自分が彼らを取り押さえて無理やりにでも口を割らせる可能性を考えているのか。色々と彼の選択肢以外の可能性を考えて見たが、やめにした。

 

(そうでした……)

 

 

 

 そこで、1つの事実を思い出したが故に……

 

 

 

 だとするならば……この状況での最善手は……

 

「…………」

「それで、どうするつもりなんだ?」

「1つ条件があります。あなたがそこまでして自分の事を内密にする理由を洗いざらい聞かせてください。正直に言えばここで私達を始末すればいい話でもある筈なのに、何故生かしておくのかの理由もですね。それが出来るのであればここにいても構いません」

「……念のために言っておく。多分聞いたら後戻りできなくなるぞ。別に俺はこの件に関しては内密にしてくれるというだけでも構わないんだが……」

「人の口に戸は建てられないとも言いますよ。仮に私達が口を閉ざしていたとしてもいつかは発覚すると思われます。そのためにも私達を傍に置いておいた方があなたも安心できると思われますが」

「その辺は理解しているよ。この先本土の人間達と交流せずに済むなんて事はまず不可能って事もな。だが今はそれを少しでも先延ばしにしたいんだよ。対策を考えなきゃいけないのは重々承知しているがな」

「理解はしているようですね。とは言え私の選択を変えるには説得力が弱いですね」

「……ねえ圭、これはもう説得は無理だと私は思うのだけど?」

「ハァ……OKOK分かったよ俺の負けだ。洗いざらい話すが準備をしてくるから少し待っててくれ。この件に関しては現物を見たほうが手っ取り早いからな。山城、しばらく任せた」

「分かったわ」

 

 山城が横から耳打ちした事により説得を諦めたのか溜息を一つ付き、圭は山城に指示を送り部屋を出ていった。一体何の準備を行うつもりなのだろうか……

 

「さて、まずは艦娘としては初めましてかしらね。私は扶桑型戦艦二番艦の山城よ……あの夜間演習時は色々とお世話になったわね」

「はい。艦娘としては初めまして、実艦としては……お久しぶりと言った所でしょうか?先程も伝えましたが川内型軽巡洋艦二番艦の神通です」

 

 山城は微笑みながら自己紹介してきた為自分も笑顔で挨拶を行う。

 

「それにしても……ここに残る選択を取った事には何か理由があるのかしら?」

「正直に言いますと……私達の提督が実はあの船に……」

「……ああ」

 

 問いかけに帰って来た答えに山城は全てを理解した。つまりは、そういう事なのだ。

 

 

 

 そう、あの時襲撃を受けた船。最近になりあの海域の深海棲艦の数が明らかに減って来た事を受けて急遽展開された物資輸送作戦。その護衛を受けた神通達の鎮守府の水雷戦隊。

 そしてその船に上からの指令で乗船し、南方の基地へ物資の輸送ついでに自分達と共に異動が決まっていた提督。

 

 深海棲艦の襲撃も無く、順風満帆に思われた航海は突然の奇襲により全てが海の藻屑と消えたのだった。

 

(仮に脱出していたとしても……)

 

 脱出用のボートの類が取り付けられていたのは確かだ。航海中に船を一通り回って船内のマップを頭に叩き込んだのだから。

 だが、そのボートに乗って脱出出来ていた所で深海棲艦達が見逃す筈も無し。艦娘以外で海を漂流する物など奴らにとってはただの餌でしかない。

 それ以上に奇襲を受け、自分と文月が迎撃に出た所で船が大爆発を起こしたのだ。そんな状態で助かる可能性など万に一つもありはしない。

 

(私は……どうすればいいんでしょうか?)

 

 優秀とは言えない凡人。だが、同時に艦娘達をこき使うような外道では無く、こちらをしっかりと見てくれるお人好しとも取れる優しい男。それが神通達の上司であった提督の神通なりの評価だった。

 深海棲艦との戦闘時に追撃を行おうとしたところで即断できない優柔不断な面もあった。傷ついた艦娘が出たら即撤退を視野に入れる程の臆病な提督であった。

 そんな性格を修正しようと彼女なりに意見を出したこともあったが、結局ほとんど変わらなかった。

 

 だが、常に自分達の状態を気にかけてくれたし、悩みなどを抱えていたら提督の出来うる限りアドバイスをしてくれた。ベストアンサーには程遠いようなアドバイスもあったが、それでもこちらを気にかけてくれているのは神通にも十分に理解できた。

 

 そんなお人よしとも取れる提督だったが、それでも神通は嫌いには思う事は無く、文月や他の艦娘達もまた彼を慕っていた。

 

 

 

 だが、そんな彼はもういない。

 深海棲艦の襲撃により亡き者となった。

 

 仇を討つという事も考えた。考えはしたのだが……

 

(弔い合戦なんてあの人なら望みはしないでしょうし……私はどうすれば、いいんでしょうか……私は……私は……ワタシハ……)

「その……泣く程気に障ることを言ってしまっていたのなら謝るわ。御免なさい」

「……あっ。いえ、違うんです。少し考え事をしてましたから。気にしないでください」

 

 いつの間にか自分の目から涙が流れてきていた。口を閉ざして俯いたまま涙を流している自分に気を悪くしたと勘違いしたのだろう、山城は頭を下げてきた。

 神通は目の涙を拭いながら気にしないように伝えた。

 

 その会話を最後にお互いの言葉が途切れ、辺りに沈黙が訪れた。

 

 

 

 時間にして数分と言った所か、唐突に入り口のドアが2回、ノックされた。

 

「永瀬圭だ。中に入ってもいいか?」

「どうぞ」

 

 返事を返すと扉が開いて圭が現れた。

 

 しかし、そこへ現れた彼の姿に神通の目は驚愕に見開かれることとなった。

 

 

 

 圭の服装。それは先程と変わっていない、細部が違う第2種軍装と思われる服装を上着だけ袖を通さずただ羽織っている感じで着ていたが、何よりも目を引いたのは彼に付いている「それ」だった。

 

 付いていた「それ」は艤装の類。それは理解できる。艤装の形から空母系のそれかと推測する。

 

 しかし、その形は艦船としても艦娘としても見たことも無い明らかに大戦期の空母のそれとは違う形状をしている。

 

 そしてそれ以上に……

 

「あなた……その艤装は……」

「見ての通りだよ。一応俺は性別は男だがな」

 

 掠れるような声で辛うじて出た神通の言葉に圭は答える。

 少しして落ち着きを取り戻した神通は圭の姿を再度確認し、それと同時に圭が自身の事を何故言いよどんでいたかを理解した。

 

「成程そういう事でしたか……確かに男性が艤装に適合したとはそう易々と外に漏らす訳には行きませんからね……あなたが今まで言葉を濁していた理由が分かりました」

「それ以外の事もあるんだけどな。今からそれも含めて話すよ」

 

 そうして圭は話し始めた。自身の来歴とこの艤装の事を……

 

 

 

「とまあ、以上が俺の来歴な訳だ」

「……」

 

 あの日、白露達や妖精達に洗いざらい話した事を神通にも話した圭は一息つく。神通の方はというと余りにも突拍子の無さ過ぎる話であったが故に言葉が出ない状態だった。

 

「艦娘や深海棲艦の存在しない世界からやって来て、そこでお話として知られている空母の艤装を装備できたと……何と言いますか……にわかには信じられない事ですね」

「まあ、いきなり信じろなんて言っても無理があるのは百も承知だよ。俺だって同じような事を言われたら普通は信じないだろうし。だが、こればっかりは信じてくれとしか言えん」

「……」

「言っちゃ悪いがこの話を聞いた以上、やっぱり帰りますなんてのは通じないと思ってくれよ」

「その辺りは理解しています。こうなったからには一蓮托生です。道連れの追加とも取れますが、あなたに付いて行きますよ。あなたが力に溺れて外道になり果てた時はその限りではないでしょうけど……」

「その選択を考えさせないよう肝に銘じておくよ。じゃあ決まりでいいんだな」

「はい。それでは改めまして、川内型軽巡洋艦二番艦の神通です。水雷戦隊の指揮ならお任せください」

「ヒューバート級航空母艦七番艦ケストレル……の艤装を装備できるんだがな、永瀬圭だ。まあ好きなように呼んでくれ」

「分かりました。それでは圭さん、よろしくお願いします」

「ああ」

 

 圭は神通のベッドの傍に寄り右手を差し出してきたので神通もまた右手を差し出し、お互いに握手を交わしたのだった。

 

 

 

 ―――Side out―――

 

 

 

 ―――Side 圭―――

 

 

 

 さてさて神通との会話も無事終わり、俺は一息つく。

 

 しかし、いきなり俺が提督じゃないと言って来た時はホント心臓が止まるかと思ったぞ……2,3会話しただけなのにあそこまで推理してくるとはな……神通が少し恐ろしいと感じると同時に自分の演技の拙さに内心少々落ち込んだな……

 

「あの~、入ってもいいですか~?」

 

 と、そこへ扉がノックされ扉の向こうから独特の伸ばし方をした声がする。この口調は文月かな。とはいえうちの艦娘や妖精に似たような喋り方をする子はいないから消去法の予測になるが。

 

「文月さんですか。どうぞ」

「失礼しま~す」

 

 予想通り、文月だったらしく神通は許可を出すと扉が開けられ文月が入室してきた。

 

「あっ、お話し中でしたか」

「ああ大丈夫だ文月。今終わったところだから」

「それと文月さん。私達は今日からこの基地にお世話になろうと思っていますが、その辺りは大丈夫ですか?」

「はいっ♪あたしは大丈夫です~」

 

 そうして文月はペコリとお辞儀をして続けた。

 

「あたしは睦月型駆逐艦の七番艦の文月です~よろしくお願いしま~す」

「扶桑型戦艦二番艦の山城よ。よろしくね文月」

「ヒューバート級航空母艦七番艦ケストレルの艤装を何故か装備できる永瀬圭だ。好きなように呼んでくれて構わんよ」

 

 俺も山城も自己紹介を改めて行った。

 そして……

 

「は~い、よろしくねおに~ちゃ~ん♪」

 

 

 

 

 

 

 文月の爆弾発言に……何やら空間が割れるかのような音の幻聴と共に……全ての者が、呼吸を止めた……

 

 

 

 …………はいぃ?

 

「圭……」

「圭さん……」

「「何てことを言わせているのよ(ですか)っ!!」」

「やましい事は何も教えてねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!」

 

 山城と神通の両方向から同時に放たれた言葉に俺はただ叫ぶことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 何でだよ…………




圭「艦隊に新しい仲間が来たようだな」(by 建造完了ボイスっぽく

いかがだったでしょうか?
神通と文月の艦隊入りの回でした。

分かっている方もいらっしゃるでしょうが神通と山城の「あの時」とは実際の2艦が演習時にチキンレースをかました一件があり、そこからだったりします。詳しく知りたい方は調べてみたらいかがでしょうか。

それではこの辺にて。次回をお待ちください。

現状次回はあの艦娘が目を覚ます回を予定しています。
予定は未定とも言いますが……
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