Fleet Combat -Dawn of the horizontal line-   作:大川静真

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えー、まず3カ月も投稿を行わなかったことに関しての謝罪を。
本当に申し訳ありません。年末辺りから色々精神的にダウンしておりまして、執筆作業も碌に進みませんでした。
最近になり持ち直してはきたのですがそこで気が付いたら既に前話投稿からここまで経っているという始末でした。

現時点でちまちまと書いていた分を今回投稿させていただきます。

それではどうぞ。

どうでもいい話ですが、途中からBGMとして、After Burner2よりAfter Burnerを推奨します。
理由は単にとあるキャラの視点を書く時に作業用BGMとしてかけていたというのがあります。


#25 急行-After burner-

―――Side ???―――

 

 

 

 圭達が神通からの緊急通信を受ける少し前の事。

 

 

 

 竹ヶ島沖合の海上。神通達水雷戦隊が移動している場所からある程度離れた所。

 何もない海面から小さな波が立ち、その波の中心部から一つの物体が浮かび上がって来た。

 まるで亡霊のような異常に長い髪を垂らし、人間で言う口元と思わしき場所にシュノーケルに酷似したパーツが付いたその存在―――潜水カ級エリート―――は、静かに神通達を凝視していた。

 カ級は冷静に彼女達の戦力を把握する。彼女達の艤装や装備している主砲類を見て、恐らく軽巡洋艦を旗艦とした水雷戦隊であろうと推測する。

 気になるのは彼女達の上空に、2機ほど自らの記憶にある偵察機とは毛色の違う飛行物体が浮遊しているが、どうやらこちらには気付いていないようである。

 こちらに気付いていないのなら好都合。静かに息を潜め、必殺の雷撃を奴らに叩き込むだけである。

 

 

 

 全てはただただ純粋に、人を……人に与する同胞に似て非なる艦娘共を根絶やしにする為に。

 

 

 

 そうしてカ級は再び潜ろうとした矢先。

 

 

 

≪神通さん!敵艦の反応を検知しました!≫

<分かりました。敵の仔細はどのようになっていますか?>

≪そ、それが……≫

 

 

 

 

 

 

 「何者か」が突如として与えてきた衝撃に潜水カ級はその意味を、その衝撃の元凶を理解する事無く沈んでいった。

 

 

 

―――Side out―――

 

 

 

―――Side 神通―――

 

 

 

<……それは事実ですか?>

≪はい。細部に違いはありますけどほぼ間違いありません≫

<分かりました!>

 

 白露の搭載している60の妖精が敵を捕捉したらしいのだが、敵の艦種に神通はもしやと思い念の為に聞き返してみた。

 しかし結果は変わらず。彼らが見間違えるはずも無く事実が告げられていた。

 

「敵艦の接近を検知しました!」

「相手の戦力はどうなの神通さん?」

 

 白露が問いかけてくる。しかし、このイレギュラーな事態を伝えるべきか僅かながら戸惑うも神通は意を決して伝える。

 

「……重巡……重巡ネ級が単艦にて接近中との事です。しかしネ級個体としては確認されていない筈の改フラッグシップ級と同じオーラを出しているとの事です。恐らく……特異個体と推測します!」

「「「「「ええっ!?」」」」」

 

 全員が驚愕の声を上げてくるが今はそれどころでは無い。

 

「いくら相手が単艦とは言え、敵の戦闘能力が未知数な以上私達水雷戦隊で相手をするのは分が悪いと判断します。よって急遽任務を中断、撤退を行います。皆さんよろしいですね!?」

 

 神通の言葉に皆が慌てつつも頷く。そして白露が時雨とお互いを一瞬見やると同時に頷いて、手を上げる。

 

「神通さん!私と時雨が殿を務めます!艤装が魔改造されちゃってるけどその分性能がいいからもしかしたら対応できると思いますので!」

「分かりました白露さん。深雪さんと舞風さん、文月さんは中央に位置しておいてください。くれぐれも離れすぎないように!」

「り、了解です」

「分かったよ神通さん!」

「は、はい!」

「やります!頑張るよ時雨!」

「うん!」

 

 舞風、深雪、文月、白露、時雨の順で返事をする。

 

<竹ヶ島基地、応答願います!こちら当基地水雷戦隊旗艦神通です!緊急事態発生!応答願います!>

 

 撤退を行い始めてすぐに神通は竹ヶ島に緊急通信を送る。すぐに通信から声が聞こえた。

 

≪こちら竹ヶ島です。神通さん、何かありましたか?≫

<哨戒任務中に単騎行動中の敵深海棲艦を捕捉しました!同時に該当個体もこちらを捕捉した模様で現在撤退中です!>

 

 通信を受けたのはどうやら主任と圭が呼んでいる妖精のようで、神通は単刀直入に報告を行う。

 

≪単騎行動中の深海棲艦ですって!?≫

<はい!重巡ネ級個体ですが改フラッグシップ級と同質のオーラを放出している為、恐らく情報にある特異個体と推測されます!その為私達水雷戦隊での戦闘は不利と判断して撤退を行っています!>

≪分かりました!直ぐに圭さん達に報告を行いそちらに向かわせます!≫

<お願いします!私達の現在位置は……>

 

 現在位置を主任に教えて通信を終了してから暫くの後、神通は撤退しながらチラリと重巡ネ級の方を見やる。

 

 相手は自分達が会話している途中にこちらを捕捉したらしく、真っ直ぐに近づいてきており遠目にだがその姿が分かる程に接近している。

 見た目としては大体の姿かたちは報告されている重巡ネ級と大差は無い。違いがあるとすれば体全体を金色のオーラが覆い、左の目から青白いオーラが鬼火のように浮かび上がっている事。

 

 

 

 そして……左手に何やら盾のような物を所持している事……

 

 

 

(…………えっ?)

 

 その所持している盾のような物に神通は違和感を感じる。

 

 何故深海棲艦がそんな物を装備しているのか。

 砲撃戦が主体の深海棲艦達に防御の概念でも生まれたというのか?だが盾などは砲雷撃戦では殆ど役に立たない筈だ。普通の深海棲艦ならそんなものを装備するよりも砲を増やすなりしている方が手っ取り早い筈ではなかろうか。

 盾の無意味さの部分は憶測ではあるが、だがそれを無視してでもあれを装備しているだとすれば……あれは盾以外の何か(・・・・・・)なのだろうか……

 

 

 

 そしてネ級特異個体と思われる個体は、その盾のような物をこちらに向けて水平に(・・・)構えた。

 

 

 

 それはまるで……特定の艦娘が飛行甲板を構えている姿に酷似しているかのようで……

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 神通の中で一つの可能性が浮かび上がり、同時に彼女の中の「第二水雷戦隊旗艦神通」としての経験と、艦娘としての経験の二つから来る直感が、全力で警鐘を鳴らし始めた。

 

 

 

 そう、飛行甲板(・・・・)

 

 

 

 神通の中で一つの可能性が浮かび上がる。単なる憶測……まさかの領域な可能性だが、もしもそれが事実だとするならば……

 

「まさか……あれはっ!!」

 

 言うなればあれは重巡ネ級では無く……

 

 

 

「航巡……ネ級……」

 

 神通が力なく呟いたその言葉をネ級は肯定するかのように……

 

 

 

 航巡ネ級の飛行甲板から……書類上とは言え見覚えのある白い球体状の艦載機が数機、放たれた。

 

 

 

 

 

 

「迎撃開始!」

 

 神通はほぼ反射的に随伴の艦娘達に命令した。それを聞き時雨と白露は素早く冷静に、深雪と舞風、文月はやや遅れて主砲をこちらに向けて飛行して来る艦載機に向けて砲撃を行う。

 

「最大船速でこの海域から離脱します!」

「「「「「はい!」」」」」

 

 一通り撃ち終わり、一旦撤退していく艦載機達を見て、牽制は出来たと判断した神通は全員に向けて再度、命令を下す。

 せめて牽制にでもなればと思い撤退しつつ砲撃を行うも、ネ級は他の深海棲艦達とは明らかに一線を画す素早い動きで砲撃の悉くを回避していった。神通は続けざまに数度砲撃を行うも結果は変わらず、最小限の動きだけで全て回避された。

 

(圭さんの情報通りですね。この特異個体であろうネ級。今まで私が遭遇したことのある他の個体と比べて明らかに動きが違う……まさかこれ程とは)

 

 随伴の子達に心配をかけないように表情は変えず、また口にも出さずに内心で悪態を吐く。

 

 しかし神通は実際に重巡ネ級をこの目で見たことは無く、情報だけでしか知らない為実際のネ級の動きを知らない。

 だが、仮に今ここで、彼女がこれまで出会った中で最も機敏に動いていた深海棲艦は?と問われれば間違いなく今相対しているネ級特異個体を挙げる。

 

 そのネ級特異個体が単騎。大してこちらは軽巡である自分が1人と駆逐艦娘が5人。しかもその内2人は艤装に改造が施されていて非常に高い能力を有している。

 そんな数的有利を持っていながらも神通が撤退を判断した理由はまさに航空戦力の差であった。

 

 こちらの現時点での航空戦力は時雨と白露の魔改造された艤装に搭載されているSH60Kがそれぞれ1機ずつ。それも偵察及び対潜が主任務の為、空対空能力はあまり期待できないのだ。

 対する航巡ネ級は一部空母級や鬼、姫クラスが搭載していると情報としてのみ聞いている白い球体状の艦載機を、詳細な数は不明とは言えそれを装備している。

 

 彼我の航空機の性能差がどれ程あるかは分からないが、まともにぶつかろうものならば制空権を失うだろうと神通は推測する。そして、その結果自分達がどのような状態に陥るかは考えるまでも無い。

 

 

 

 どうする!?どうする!?

 

 どうやってこの状況を切り抜ける!?

 撤退する!だが何処へ!?竹ヶ島に誘き寄せて援護に来るであろう圭達と共に迎撃する!?だがもし他に敵が隠れていたらどうなる!?

 何が正しい!?何が正解か!?

 

 いくつもの選択が、いくつもの考えが神通の頭の中をよぎるが、最善と取れる選択に行きつかない。

 

 不味い不味い不味い。

 思考が珍しく混乱して来ているのが神通自身にも分かった。だが、かつての軽巡神通としての経験か、或いは艦娘神通として弛まぬ訓練の賜物なのかは分からないが、敵の艦載機への対空砲撃とネ級への砲撃を織り交ぜながらも攻撃の手を緩めることは無かった。

 

「神通さん!また来る!」

「くっ!!迎撃再開!」

 

 白露の言葉に慌てて我に返り、再び迎撃を行う。

 砲撃はこちらに攻撃を行おうとしていた艦載機隊に吸い込まれるように向かって行き、叩き落として行く。

 

 しかし、1機……自分達の対空砲撃を掻い潜り急降下を行ってくる個体があった。

 神通達はその個体に向けて砲撃を行うも、艦載機に搭載されていた爆弾が切り離され、その直後に神通の放った弾丸が直撃した。

 

「どわあっ!?」

「ふええっ!?」

 

 投下された爆弾は深雪と文月の傍に落下し、大きな水柱を上げた。2人にダメージは無かったものの、大きく体勢を崩したために動きが止まる。

 

「2人とも大丈夫ですか!?」

「な、何とか!」

「こ、怖かった~」

 

 神通の問いに2人は答えるものの、このタイムロスは非常に痛い。ただでさえ空からの攻撃の可能性がありえるのに足を止めてしまう事が良いはずも無いのだ。

 

「神通さん!敵の航空機、来ます!」

「っ!」

 

 舞風からの報告を聞いて神通はネ級の方に向き直る。

 案の定、来た。おまけに今度向かって来ている数は先程までとは違い、倍近い数が見える。動きの止まった今をチャンスと思ったのだろう。

 

「迎撃!」

「時雨、ミサイル行くよ!」

「うん!ミサイル発射!!」

 

 だが、殿を務めていた白露と時雨が対空ミサイルを発射する。艦載機隊は想定すらしていなかったであろう反撃に反応が遅れ、叩き落とされて行った。

 

「今のは……」

「ごめん神通さん。ここは使うべき状況だと思って勝手に使っちゃった」

「謝る必要はありません。今のは良い判断です白露さん」

 

 呆然としていた所を白露が独断による使用を謝って来た為神通はフォローを入れる。

 とある一件から来る艤装の魔改造によりこの2人は対空ミサイルを装備してはいるが、資材消費の面から使用を自粛しているのは出撃前に圭から聞いていた。それと同時に厳しい状況となった場合、ミサイルの使用不使用は2人の判断に委ねているとも聞いたのだが……

 現在の状況においても冷静かつ即座に判断、対応出来ているのは流石と言った所であろうか。

 神通は内心で2人の評価を上方修正したのであった。

 

 だが2人がミサイルを使用したという事は裏を返せば現状が厳しい状態という事の現れでもある。

 そして、この現状を打破する手段が今の自分達には一切無い事もまた神通は理解していた。

 

 今の自分達に出来るのは、ひたすら敵の航空機による攻撃から逃げることだけ。

 

(このような選択しか取れないとは……華の二水戦と呼ばれた水雷戦隊旗艦の自分が、こんな無様な姿を晒すなんて……)

 

 悪態を吐きながらもそれがただの八つ当たり的思考でしかない事を理解できない程神通は愚かでは無い。だが、対応する手段が存在せず、ただただ逃げ惑う事しか出来ないというのも気持ちのいいものではない。

 

 只管に現状を打破する手を考えては却下して、また別の手を考えては却下する。

 

 

 

 そんな追撃が暫く続き……

 

 

 

≪じ、神通さん!前方に敵艦隊を発見しました!重巡リ級と軽巡ヘ級が1ずつに軽母ヌ級と輸送ワ級が2ずつ!計6隻の部隊です!まだ距離はありますがこのまま進めば挟み撃ちの状態となります!≫

<なっ!?>

 

 最悪の状況で前方を警戒させていた60から最悪の通信が入る。しかもこの先の相手には軽空母とは言え空母級がいるようだ。

 

 そんな状況で、神通の中で一つの結論が出る。本来ならあり得ない事なのだが……もしそれが事実だとすればあのネ級の役目は……

 

(まさか……あのネ級の目的はこれだったとでもいうの!?)

 

 頭の中に浮かんだ一つの可能性。ネ級は実は陽動であり、本命は撤退させた後に挟撃の形を取り撃破する。その可能性が浮かび上がって来た。

 

 情報ではこういった戦術的行動は上位個体の鬼クラスや姫クラス以外に行わず、通常個体は基本的に哨戒を行い敵を発見後は只管に敵の撃滅のみ行うとも聞いている。

 そう、情報が正しければ本来通常個体がそのような事を起こさない、あり得ない可能性。

 だが、現在神通達を狙っているのは推測とは言え、そういった常識が通じない特異個体だ。自分達の深海棲艦に対する常識から外れた行動を取ってもおかしくは無い。

 

 もしかすると自分達は誘い込まれたのかもしれない。まさに前門の虎、後門の狼と言えるこの状態に。

 

 

 

 最悪、あの時と同じく自分を囮にして駆逐艦の皆を逃がそうと考えが頭をよぎり始めたその時。

 

 

 

≪作戦領域に到達!ガルム隊、あんたたちは水雷戦隊の援護に向かってくれ!手前側の敵艦隊は俺達トムキャット隊とホーネット隊で対応する!≫

≪了解しました!≫

≪よし、作戦開始!≫

 

 

 

 丁度竹ヶ島のある方向から戦闘機の部隊が飛んできているのを神通は確かに、見た。

 

「あれは……」

「もしかして圭さんの空母に搭載されている機体じゃないんですか?」

 

 神通の言葉に横にいた舞風が返す。

 

≪こちらガルム隊2番機、そこの艦は竹ヶ島基地所属の神通だな!?これよりあんた達を援護する!≫

≪こちらガルム3!空の事は自分達に任せてあなた達は撤退を!≫

<は、はい!竹ヶ島基地水雷戦隊旗艦の神通です!援軍感謝します!>

 

 通信が送られてきたのは前方のF-15の3機編成による部隊―――ガルム隊と言ったか―――からだった。神通は突然の事に慌てつつも返事を返す。

 

 

 

 どうやら、最悪の選択を取らずに済むみたいだと神通は他の者に気付かれないように肩の力を抜いたのだった。だからと言って戦闘態勢をとく事はしない。まだ戦闘は終わっていないのだから……

 

 

 

―――Side out―――

 

 

 

―――Side ピクシー―――

 

 

 

≪敵艦隊を発見!前方に6と神通さん達を挟んで後方に1です!≫

≪不味いな、挟み撃ちにされているぞ!≫

≪兎に角急ぎましょう!≫

≪ああ!≫

 

 PJの言葉に自分を含む艦載機妖精達は首肯し、ホーネット隊妖精の1人が口頭で応答する。

 

≪作戦領域に到達!ガルム隊、あんたたちは水雷戦隊の援護に向かってくれ!手前側の敵艦隊は俺達トムキャット隊とホーネット隊で対応する!≫

≪了解しました!≫

≪よし、作戦開始!≫

 

 トムキャット隊の隊長であろう妖精が的確に指示を出して散開。トムキャット隊とホーネット隊は進路を変えて手前の敵艦隊に向かって攻撃を開始する。

 ガルム隊の相手は後方にいる単艦の敵だ。

 たった一体を相手に逃走するのは何事かと一瞬ピクシーは訝しんだが、即座に何か逃げざるを得ない理由があるのだろうと推測する。その理由がなんなのかまでは分からないが。

 

 しかし、サイファーは通信を聞く前から既に進路を後方の敵に向けて加速している。このまま行けばサイファーが突出する形になるが、問題は無いだろうなとピクシーは内心で結論付ける。

 

 瞬時に今の戦況を見極める戦いの申し子と呼べる男。サイファーの戦い方はあのベルカ戦争の時からそんな感じであり、今も大して変わっていないのだ。

 並んで飛ぶこっちは苦労するのもまた相変わらずである。

 

≪こちらガルム隊2番機、そこの艦隊は竹ヶ島基地所属の神通だな!?これよりあんた達を援護する!≫

≪こちらガルム3!空の事は自分達に任せてあなた達は撤退を!≫

<は、はい!竹ヶ島基地水雷戦隊旗艦の神通です!援軍感謝します!>

 

 通信を終えてピクシーは周囲の状況に集中する。

 とは言え、周りの反応は後方で戦闘を行っている自分の所属する基地の飛行隊と敵艦隊によるドンパチの反応と逃走している神通達、そして前方にいる個体だけなのだが。

 その前方の個体にピクシーは訝しむ。

 

≪あれは……重巡ネ級か?≫

≪そのようですね。違いがあるとすれば情報にない改フラッグシップ級個体であることと左手に該当する部分に盾のような物を持っている事ですが……≫

<相手の盾のような物体はどうやら航空巡洋艦の飛行甲板に該当する部位の様です。そこから艦載機が発艦されたため私達は撤退を選択したのです>

≪成る程、そりゃ撤退を選択して正解だな≫

 

 神通の言葉を聞き、深海棲艦艦載機達の妙な偏りに違和感を感じていたピクシーは納得する。

 確かに今の水雷戦隊だけでは航空戦力の相手など分が悪過ぎる。

 時雨と白露、そして神通が航空機を持ってはいるものの所詮偵察がメインのヘリと水上機だ。対空能力を当てになど出来ない。

 

 しかし気になるのは何故こんな所にいるのかという疑問だ。

 

 可能性として考えられるのは2度に渡り遭遇した「特異個体」の可能性が濃厚だろう。単独ないしは2艦で行動している強力な個体と言われればそれが真っ先に浮かぶ。

 

 

 

 だがまあそんな事はどうでもいい。自分達のやる事は命じられた任務を遂行する事。神通達を撤退させる為に敵の航空戦力及び敵艦隊を撃破する事だ。

 かつて「国境なき世界」に所属していたあの時とは違い、今の自分は妖精の姿になったとはいえ1人の兵士なのだから。

 

(まあ、相棒とまた飛べる事になったのは兎も角、まさかPJとも一緒に飛ぶことになるとは思いもしなかったがな)

 

 かつて自分が撃墜した男の顔が頭をよぎりピクシーは苦笑する。

 

≪さて、どうやら敵艦載機はあの白い球の奴らしい≫

≪ええ、ですが俺達のやる事をやればいい。あいつらの土俵である巴戦に付き合う義理は無い≫

≪そういう事だガルム3、行くぞ相棒!≫

 

 相変わらず無口なサイファーだが肯定の返事が来たのを何となく理解してピクシー達は自分達の戦場に向かって行った。

 

 

 

―――Side out―――

 

 

 

―――Side 圭―――

 

 

 

「糞っ!まさかこういう時に特異個体と遭遇報告があるとは!」

「こればかりは予想のしようがありませんから仕方ありませんよボス。今は航空機隊の力を信じて少しでも早く戦闘エリアにたどり着くことが先決です」

「それぐらいは俺も分かっている!愚痴りたい気分なだけだよ!」

「愚痴を漏らしたところで何も変わりませんからねボス」

「ぐぬぬ……」

 

 霧島の正論に俺は口籠る。分かっちゃいるんだけど、どうしても漏れてしまう。

 

 現在俺、霧島、赤城の3人は海の上を神通達のいる場所へ向けて全速力で進んでいる。速度差による落伍が出るんじゃないかと考えもしたがそんなことは無く2人とも問題なく付いて来てくれている。

 一瞬霧島の艤装の機関部分も魔改造を行なわれたんじゃないかと考えてしまったが、今はそれを考えているところじゃない。

 

「赤城の方も付いて来てはいるな」

「とは言え出撃時から一言も発してはいませんが……」

「何と言うか……深海棲艦を撃滅出来ればそれでいいと思っているんじゃないだろうかねぇ……」

「あり得ない話ではありませんね」

 

 最後尾を行く赤城をチラ見して呟いた俺に霧島が口を挟む。赤城の方は俺と霧島の会話もどこ吹く風と言わんばかりにただただ前方を見続けているだけだ。

 一体何が彼女をこんな状態にするまで追い詰めているのだろうかね。最初に会話したあの時に聞こえた言葉が関係しているのだろうか……

 

 さて、向こうはどんな状況になっているのだろうか?

 

<ホークアイ、神通達の状況はそっちから見えるか?>

 

 予め飛ばしておいたホークアイに通信を送る。因みに俺の艤装に本来搭載している艦載機達はホークアイ以外はいつもの半分も無い状態だ。時間が無かったのもあるし航空隊として先に飛ばしたというのもある。

 ややあってホークアイから返答が来た。

 

≪こちらホークアイ。たった今神通さん達を確認しました。どうやら進行方向に重巡リ級を旗艦とした艦隊、神通さん達を挟んで後方に重巡ネ級の改フラッグシップ個体が単体でいます。恐らく挟み撃ちの状態に追い込まれたようです≫

<挟み撃ちにしたとなると姫や鬼クラスでも無いのに戦術的行動を取ったという事ですか?>

≪その辺りは分かりません≫

 

 霧島が横から問いかけてくるが、ホークアイも分からないようだ。

 

「兎に角急ぐぞ。赤城、俺の指示と同時に艦載機隊を神通達の前に陣取っている艦隊に向けて発艦してくれ」

「分かりました」

 

 赤城は表情を変えずにただ頷いて返事を返しただけ。

 さてもう1人、霧島に向けて俺は口を開く。

 

「霧島は砲撃準備。ただし、俺の合図があるまで出来る限り撃たないでくれ」

「何か作戦でも?」

「まあな。とは言え相手が引っかかってくれるかは賭けになるが……」

「失敗すれば賭けでも成功すれば作戦です。その心意気で行きましょうボス」

 

 それで大丈夫なのか?

 まあいい。やるだけやってみるか。

 

<聞こえるか神通!?こちらは竹ヶ島基地の永瀬圭だ!そちらの状況を教えてくれ!>

<圭さん!救援感謝します!こちらは現時点では全員無事です!>

 

 神通から返信が来る。一拍置いて俺は意を決し、作戦を簡単に伝えた。

 

 

 

<分かった!指示を簡潔に伝える。神通、今から行う俺の合図と同時に前方の艦隊に向けて突撃してくれ!>




いかがでしたでしょうか。

とうとう半分オリジナルの深海棲艦まで出してしまいました。言うなれば航巡ネ級改フラッグシップとでも言うべきでしょうか。
単なるレ級の下位互換になってしまいますが水雷戦隊のみで相手をしろと言われれば地獄を見そうな相手でしょう。

そして申し訳ありませんが変な所でぶつ切りとなってしまいました。
とは言え現在も執筆を続けていますのでどうかお付き合いくだされば幸いです。

それではまた。
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