Fleet Combat -Dawn of the horizontal line-   作:大川静真

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皆さんどうもおはようございます。こんにちは。こんばんは。大川静真です。
2カ月以上も待たせてしまい申し訳ありません。
今話は相当な難産でした。

ある程度話の流れは決まっているのにいざ文字として書こうとしたら全然筆が進まず……
書いては消してを何度か繰り返してようやっと出来上がりました。

それではどうぞ。


#26 退き口-Escape point-

<分かった!指示を簡潔に伝える。神通、今から行う俺の合図と同時に前方の艦隊に向けて突撃してくれ!>

 

 意を決して言った俺の言葉に案の定、神通から反論が飛んできた。

 

<し、正気ですかあなた!?この状態で敵に向けて突っ込むなんて自殺行為です!>

<話を最後まで聞いてくれ神通!赤城、お前は合図と同時に艦隊の方に向けて艦載機を発艦させろ!神通は敵艦隊に進撃しつつ横方向に進行方向を変更して横切るんだ!上空のトムキャットとホーネット隊も赤城艦載機部隊が発艦したら敵艦の攻撃に切り替えるんだ!敵艦隊が空に気を取られた隙を突け!>

≪わ、分かりました!≫

<な、何て無謀な……>

<俺の貧相な脳みそじゃ現状を打破する手はこれ以外に思いつかねぇ!愚痴は帰還してからいくらでも聞く!できるか!?>

<分かりました!無事に帰投したら覚悟をお願いします!>

 

 

 

 この作戦、参考にしたのは以前ネットで見た関ヶ原の合戦に置いて島津家が行った島津の退き口と呼ばれるあの手段だ。

 あの時西軍に所属していた島津義弘は西軍の敗戦が決定的になると自分達の前方に布陣していた徳川家康の陣に向けて突撃をかけ、しかし家康の陣の目の前を横切ったと言われる、俗に言うダイナミック帰宅というあれである。

 あの時徳川の軍勢は死すらも恐れずに突撃して来る島津家に混乱状態となり、島津家は戦場からの撤退に成功したのだ。だが今回の場合、深海棲艦の奴らが心を乱すのだろうかという疑問がある。

 そこで今回俺は赤城の艦載機部隊と航空機隊で敵の注意を逸らしているところを神通達が横切る予定だ。

 霧島の出番はどうしたのかと問われればそれはもう少し先と答えるだけだが。

 

 正直ガバガバで穴だらけな作戦だが……上手く行くだろうかという不安は今もある。

 まあ、霧島の言葉を信じたつもりはないが彼女の言葉のようにポジティブシンキングで行くとしよう。思考をネガティブな方向に持っていけば成功する作戦ですらも成功しなくなる!

 

 さて、神通達の姿が小さいながらも見えて来た。そして彼女達の前方に深海棲艦らしき影を6つ確認した。

 件の特異個体の姿は小さすぎてよく見えないが恐らく神通達の後方に位置しているのだろう。

 

<圭さん!それともう一つ!敵の重巡ネ級改フラッグシップですが飛行甲板を装備しており航巡ネ級と言うべき個体です!>

<何だと!?>

 

 噂をすれば何とやらとでも言うべきだろうか。だが神通から入って来た報告に俺は驚く。まさかネ級の特異個体(仮)が実は航空巡洋艦の能力を持った個体だったとは流石に予想できねぇよ……

 

<航巡ネ級の艦載機達はガルム隊の皆さんが対応してくれている為被害は少ないですが現状予断は許されないと判断します!>

<分かった。とはいえ何か起こらない限り作戦に変更はない……すまんが力を貸してくれ>

<ええ。もう覚悟は決まりました>

 

 神通は納得いってなさそうではあったが腹は括ったようだ。

 

「霧島、神通を追跡している敵艦がお前の砲撃の射程に入ったら教えてくれ」

「何故です?前方の艦隊に向けて砲撃を行うのでしたらもうすぐ射程圏内ですがあえて行わない理由を聞いても?」

「確かに前方の敵を潰せば挟み撃ちの状態に埒を開けることができるだろうが、今回はそれが目的じゃない」

「……成る程、了解しましたボス」

 

 俺のこの言葉だけで理解したのか霧島は?だとするとかなり頭の回転がいいな。インテリなのは見た目だけじゃないという事……なのかね?何処かで聞いたことのある台詞を言うせいであまりそうは思えないんだが……

 まあいい。

 

「よし、赤城は攻撃隊を発艦!神通達の前方を塞いでいる艦隊に攻撃を!ただし、無理に当てなくていい!」

「第一次攻撃隊、全機発艦!」

≪やってやる!やってやるぞ!≫

≪はっ、丸見えじゃないか!≫

≪ハハハハハ、真打ち登場だ!≫

 

 相変わらずどこかで聞き覚えのある口調で赤城の艦載機達が発艦、前方で艦隊を組んでいる奴らに飛んでいった。

 見た感じ攻撃機ばかりに思えたが制空権はホーネットやトムキャット隊が確保しているので問題はあまりないと判断したのだろう。

 

<神通、そのまま前方の敵艦隊に砲撃開始!無理に狙わなくてもいい、撃ちまくれ。それと後ろのネ級も無視してくれ>

<成る程合流が最優先という事ですか>

<そうでもあるしそうでもないとも言える。状況は違うが島津の退き口の再現と行こう>

<……色々と言いたい事はありますが分かりました!>

 

 その通信の後、神通達の砲撃が開始され、敵の艦隊に向けて砲撃が降り注いだ。水柱がいくつも上がっているのが俺のいる場所からでも見える。

 

≪投下、投下≫

≪この俺から逃げられると思うなよ!≫

≪主役面するんじゃない!≫

 

 ホーネット隊と赤城の艦載機部隊が速度差を利用した時間差攻撃を行う。そこへ海の方からは神通達が砲撃を行っていく。

 

 空と海、両方からやって来る攻撃にさすがの深海棲艦達もどちらを狙うべきか判断が遅れ、動きが乱れていく。

 ここまでは順調。だが何が起こるか分からないのが戦いだとも聞くからな。

 

 

 

 頼むから何も起こらないd

 

<文月危ねぇ!>

<ふえっ!?>

 

 唐突に通信機越しに響く深雪の声と文月の驚いたような声。そして直後に来る爆発音。

 

<おい、何があった!?>

 

 通信機から聞こえた音に……深雪が文月を庇って被弾し、撃沈したという最悪の可能性を考えてしまい……俺は思わず彼女達のいる場所に向かおうとする。

 

「ボス!」

 

 が、そこへ霧島に肩を掴まれて俺は動きを止めた。

 

「何故止める!?」

「あなたが混乱してどうするんですか?今の通信内容からして恐らく深雪さんが文月さんを庇ったのでしょうが、その程度の事で取り乱さないでください!」

「いやだが深雪が「だがも何もありません!ここは戦場ですから被弾なんてものは茶飯事です!」うぐ……」

 

 珍しく声を荒げる霧島に俺は言葉に詰まる。そんな俺を気にする事無く霧島は続ける。

 

「今回の作戦はボスが考えたのでしょう?でしたら慌てることなく彼女達を信じる事です。そりゃあ霧島も沈むのは嫌ですが、だからと言ってそんな理由で任務を放棄するつもりも毛頭ありません。無論彼女達も同じはずです。だからこの艦隊のトップを務めてるボスならば、味方の些細な被弾一つであーだこーだせずどっしりと構えておくことです!」

「……分かった」

 

 要するに彼女達の被弾一つ程度で目の色変えるなって事ね……俺もまだまだ甘いって事だな。

 とは言えども状況が気になる俺は神通に通信を送ることにした。

 

<神通、状況は?>

<こちら神通。偶然文月さんへの直撃コースの弾丸があったのですが、それに深雪さんが気付いて文月さんを庇った事により被弾しました>

 

 やっぱりか……

 

<深雪の方は大丈夫なのか?>

<健在ですが艤装が損傷しています。航行の方は多少速度が落ちる程度ですが、戦闘への参加は厳しいでしょう>

<す、すまねぇたいしょー。文月を守ろうとしたんだ……>

<言いたい事はあるがそれは無事に戻ってからだ。まずは生き残る事を優先しろ。とは言え深海棲艦連中も混乱しているみたいだから進路の変更は無い。頼むぞ>

<分かりました!>

<りょーかいたいしょー!>

 

 さて神通達は問題ないか。っとそうだ。

 

<ガルム隊、そっちはどんな状況だ?>

 

 敵艦隊上空に彼らの機影が見当たらなかったので念の為に確認してみる。撃墜されたという可能性は限りなくゼロに近いだろうが万に一つがあり得るかもしれないのだから。

 

≪こちらガルム3、航巡ネ級の艦載機部隊を壊滅させてネ級の方へと攻撃を行っています。全機健在です≫

≪こちらガルム2、このネ級だが無駄に動きがいい!以前大将が遭遇したイ級特異個体並にキビキビ動きまくるからUGBじゃあまともに当てられん!≫

 

 言われてそちらの方を注視すると、確かに従来の深海棲艦達とは明らかに違う、何と言うか「キレのある」動きを行っているのが遠目にでも分かる。ピクシーの言葉は遠回しにネ級相手へのミサイルの使用を解禁してほしいとも取れるな。

 

 神通達の前方に位置している艦隊は早くも輸送ワ級2体と軽巡ヘ級が航空機からの攻撃を受けたのかあっさりと撃沈しており、残るはヌ級2体とリ級1体だけの状態だ。

 制空権をこちらが奪ったとはいえ、あのネ級のように攻撃を回避できる深海棲艦を俺は通常確認される個体では知らない。

 

 無誘導の爆弾とは言え攻撃をああも回避できるものなのだろうか?この前のイ級といい今回のこいつといい、もし本当に特異個体ならば、かつて艦娘としての動きをおぼろげに覚えていて、それが行動に出ているのかもしれない。

 

 だが、現状の作戦に変更は無い。

 

 それに、見た感じでは当の航巡ネ級もガルム隊からの攻撃を回避する事で手いっぱいらしく、散発的に砲撃を行ってい入るものの神通達には至近弾すらも無い。むしろ深海棲艦達の方に向かう弾が目立っていて……

 

 

 

 んん?

 

 

 

 深海棲艦達に向かう弾?

 

 どういう事だ?あのネ級は同族に攻撃を行っているとでもいうのか?

 仲間割れでも起きたとでもいうのか……っていやいや流石にそれは無いか。狙いが定められないから偶々向こうに行ってるだけだろうな。

 っと、だからって今はそれを沈思している状況じゃない。ネ級があんな風にマトモに狙えないという事はそれだけ思考が混乱している可能性がある。神通達の方もかなり相手に近い位置にいる。この状況はチャンスとも取れる。

 

 ならば

 

「<神通!進路変更!そのまま敵艦隊の横を通り過ぎて相手の横っ腹を撃ち抜きつつ移動!>霧島!ネ級に砲撃!よく狙えよ!OK?」

「OK!距離、速度、よし!全門斉射!!」

<分かりました!>

 

 やはり俺の作戦を理解していたのだろうか、霧島の行動は早かった。

 俺の言葉を聞き霧島は即座に主砲を一斉に発射したのだ。うん、今度はちゃんと狙ってくれたね。

 

 霧島の放った砲撃は吸い込まれるかのようにネ級へと向かっていき、空からの攻撃を回避する事で手いっぱいだったネ級もこれには対応が遅れ直撃を受けることとなった。よっしゃ!

 

「お見事。完璧な射撃だ」

「感謝の極みです」

 

 眼鏡の位置を調整しつつ霧島は笑顔で返してきた。

 

 

 

 今回俺の考えた作戦は前述の島津の退き口を元に即興で考えた作戦だ。

 内容として簡単に言えば神通達が敵の艦隊に向けて突撃しつつ砲撃を乱射する。その間に俺と赤城の航空機隊で空からも攻撃を繰り返す。

 空からの攻撃はジェット機の速度とレシプロ機の旋回性能を利用して、速度を生かした一撃離脱による長い間隔による攻撃と、旋回性能を生かした短い間隔による攻撃を織り交ぜて可能な限り休みなく相手を攻撃に晒させる。

 そこで混乱状態に陥った敵の横を神通達が通り過ぎつつ包囲状態から逃げ延び、接近してきたネ級を敵艦隊と合流させる前に叩くという考えだ……考えだったのだが。

 ガバガバで穴だらけな作戦だったこともあり結果は碌なものでは無かったが……まあ、深雪が被弾した以外に大きな損害がなく行けただけ良しとしようか。

 

 

 

<よく、狙って!>

<行っけぇっ!!>

<それ1,2!>

 

 神通、白露、舞風の声が通信機から聞こえ、そちらを向くと放たれた砲弾が放物線を描いている真っ最中だった。そのまま砲弾は軽母ヌ級に直撃し、その体を海へと沈めていった。これで艦隊の方は残り2か。

 

 

 

 そのまま俺は神通達の方へと向かって行く最中……何かを感じた。

 

 

 

 いや、視線のような物を感じた。とでもいうべきか。

 どういう事だ?と疑問に思い辺りを見回すが、俺の艦隊と最早壊滅状態の深海棲艦以外には何も見当たらない。

 

 はて?今のは一体何だったんだ?気のせいって訳でもないし……深海棲艦達から時折感じる純粋な殺意の視線とも勝手が違う。

 

「どうしましたボス?」

「いや、視線のような物を感じたんだよ」

「気のせいでは?それかボスに向けられた殺気を勘違いしたとかでは?」

「少なくとも後者は無い。深海棲艦共から感じる奴は嫌でも身に染みてるからある程度判別する事は出来るんだよ」

 

 その辺りの察知能力に関して段々人間辞めてる気がしているが口には出さない。

 

「今回はそれを感じなかったという訳ですか」

「そういう事だ」

「ふむ……」

 

 納得したのかしてないのか、霧島の顔からは判別できなかったが彼女はそれ以上何も言わなくなった。

 しかし、何だったんだ今のは?

 

 気になっていたので俺は周囲の探索も兼ねて見回していき……

 

 

 

 偶然、「そいつ」と視線が合った。

 

 

 

「…………っ!」

 

 そいつ、航巡ネ級。霧島の主砲の直撃を受けて殆ど撃沈寸前の状態になってはいるが、未だ海の上に浮いたまましかし動くことすら叶わないと思われる状態のそいつ。

 偶然にもそいつと目が会い、そこから感じ取れたのは怒りでも殺意の類でもない……つい今霧島に話したようにかつて深海棲艦達や、特に空母棲姫の時に感じた怒りの感情のような全てを燃やし尽くすかのようなものや、こちらを殺しつくす意思のようなものは全く感じられない……

 

 

 

 だとするならば……あれは……なんだ?

 

 

 

「……ス……て……か!?」

 

 怒りでもない、殺意でもない……それ以外の何かがあるというのだろうか?

 分からない分からない分からない分からn

 

 

 

「ボぉス!!聞こえてますか!?」

「のぉわっ!?」

 

 頭の中で疑問がぐるぐる渦を巻いていた所、いきなり霧島が耳をつまんで大声を出して来た。

 

「な、何だよ霧島?耳元で怒鳴るなよ……驚いただろ」

「どうしたもこうしたも、戦闘終わりましたよ?先程からボスに声をかけてたんですが棒立ちで上の空状態だったんですから」

「…………マジ?」

「マジです」

 

 アウチ。戦闘中に足を止めるとか何をやっているんだよ俺は……

 

「えっと、あの後どうなったんだ?」

「航巡ネ級という後方からの脅威が消えた神通さん達が、前方に陣取っていた艦隊へ上空の航空隊と共に砲撃を行いました。それにより、空と海からの同時攻撃に相手は成す術なく……といった所ですね」

「えぐいなぁ……」

「ここは戦場ですよ。迷ってたら私達が沈みますから」

「まあ、その辺りは分かってるよ」

 

 さて、敵も壊滅状態だし、後気になるのは……

 おっと、念のために。

 

<全員攻撃止め。そのまま待機していてくれ。ちょっとネ級の様子を見て特異個体ならば回収する>

<大丈夫ですか?>

<だからこその待機だよ神通。もし相手が俺に向けて攻撃するような素振りを見せたら奴を撃て>

<分かりました>

 

 神通の了解の返事を聞いて通信を切った俺はゆっくりと航巡ネ級の所に向かう。進路はそのまま。だが変な動きを見せたらいつでも対応できるように警戒は怠らずに。

 

 近づくにつれて、遠目にしか見ていなかったネ級の姿が段々はっきりと分かるようになって行く。

 件のネ級。それは人間で言うところの腹部から尻尾のような物体が生えている。

 しかしその尻尾の先端にあったであろう艦娘で言うところの主砲は霧島の砲撃を喰らい物の見事に吹き飛んでいる。

 左手に装備している飛行甲板のような物体は健在だがそこから艦載機が発艦されることも無い。

 最早戦闘不能と呼ぶにふさわしい状態だ。

 

 

 

 そして、特徴的な青い炎のようなオーラが出ている左目と、その左目から一本の筋が頬に垂れる涙のような線を辿っていて……

 

 

 

 涙?

 

 

 

 はて?

 

 深海棲艦に悲しみの感情があるとでも言うのだろうか?

 あいつら憎しみを原動力として動いているような感じがするからてっきりそれ以外の感情は欠落していると思っていたんだが……どういうことだ?

 

<神通、ちょっと聞きたいんだが深海棲艦達に憎しみ以外の感情が出るって事があるって聞いた事とか無いか?>

<少なくとも聞いたことはありません。上位個体である鬼や姫級ならば或いは、という仮説はありますが信憑性の薄い説ですし……それが一体どうかしたのですか?>

<いや、このネ級だが、目の部分から縦に一本線の模様みたいなのが出てて、それが涙に思えて来たんでな。来てみるか?>

<……接近した所を奇襲を受ける可能性が……という事を考えましたが、圭さんが近づいても問題ないようですし……分かりました。相手に戦闘行動を行う余力は無さそうですし近づいてみます>

 

 神通はそのまま通信を切り、こちらに来る前に駆逐の子達に指示を出している。多分合流するよう伝えているのだろう。

 まあ神通の言った通り接近した所に奇襲を受ける可能性も考えたんだがな。それらしい動きは一切無し。まるで刑の執行を静かに待っている罪人のようにも見える。さしづめ俺は死刑執行人とでもいうべきか。まあ無理に相手を始末するつもりはない。

 

 

 

 

 

 

 ―――…………―――

 

 

 

 

 

 

 ん?

 

 はて?

 

 何やら声のような物が聞こえた気がしたが……気のせいか?

 

「何かありましたか圭さん?」

 

 周囲を見回していると近づいて来た神通が俺の行動に疑問を持ち問いかけて来た。

 

「……いや、うん。声が聞こえた気がしたが気のせいだと思う」

「幻聴の類ですか?」

「恐らくは」

 

 頷きつつ俺はネ級にさらに近づき、神通もまた俺に追従する。

 

 

 

 そして……

 

「これが……特異個体ですか……」

「ああ」

「一回り大きいネ級の体が中の艦娘と思われる女性を取り込む殻のような状態になっていたんですね」

「どちらかと言うと宇宙服とかその辺りが近いかもしれんな」

 

 俺は視線をネ級に向ける。

 

 航巡ネ級の体は最早あちこちがボロボロの状態となっており、人の体の部分も数か所ほど表層部分が爛れ、特に右腕の方は霧島の主砲直撃の余波によってか損傷がひどく、そこから「中にいる誰か」の腕が露出している。

 

 

 

 そして、人で言うところの顔の部分、その右半分に仮面のような物が覆われていた場所からも人の顔が出てきており、そちらからも一筋の涙のような痕が付いていた。

 まるで、涙を流しながら戦っていたかのように……

 

 

 

 このネ級の体内に「誰か」が入っている事はもう確定事項だろう。

 

「さて、こいつを引っ張って帰るぞ<全員帰投するぞ。いいな?航空機隊はそのまま帰還を、トムキャット隊だけ俺に着艦してくれ>」

≪了解、そちらに着艦します≫

≪ガルム隊了解、これより基地に帰還する≫

<その個体は撃破しないのですか?>

 

 妖精達は各自行動を開始し、帰還する者やケストレルに着艦するものが出て来たところに、今の今まで碌に喋っていなかった赤城から通信が入った。だがこれの答えは決まっている。

 

<却下。深海棲艦の艤装部分は主任に渡して調査対象とするし、中に人間が入っていたから救出するだけだ。まかり間違えても狙おうとするなよ>

 

 それっきり赤城から返事は帰ってこなかった。まったくあいつは……

 おっとそうだ。

 

<深雪、そっちは大丈夫か?>

<大丈夫だよたいしょー。移動だけなら問題ない>

<あたしも傍にいるから大丈夫だよおに~ちゃん>

 

 深雪の方は大丈夫の様だな文月も一緒にいるみたいだし問題は無し、と。

 

<霧島、先頭を頼む。何かあったら直ぐに連絡してくれ>

<了解ですボス>

「さて、俺達も帰るぞ神通」

「はい」

 

 一つ返事を聞いて俺は移動を開始。後ろに曳航されるネ級の残骸(?)とそのネ級の横に神通が随伴する形で帰って行った。

 

 

 

 

 

 ―――………………―――

 

 

 

 あの時聞こえた、その声の発信源に終ぞ気付くことないままに。




いかがだったでしょうか。

戦闘が微妙に思えるかもしれませんがそれは純粋に作者の力量不足が原因です。申し訳ありません。

航巡ネ級と言うオリジナル深海棲艦の中にいた艦娘の正体は追々書いていきます。
まあ艦娘が誰なのかは相当限られてくると思われますが……

それではまた次回にて。
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