Fleet Combat -Dawn of the horizontal line- 作:大川静真
しかし大淀や長良も捨てがたい……
瑞穂?海風?風雲?照月?知らない子ですね……(白目
それとこの話からになりますが、会話における通信機越しの台詞の時の鍵括弧を
人間、艦娘:<>
妖精:≪≫
としています。
かつての俺は、特に目立った何かを持たない平々凡々な家庭で生まれ、特に大きな事故や事件を起こすことなく俺は幼少期を過ごしていた。
父親はどこかの会社のサラリーマンであったが多少の残業を行えども家庭を蔑ろにするような人間では無く、母親もまたそんな父親を信頼していて家族関係は良好ととれた。俺、永瀬圭はそんな家庭の一人っ子だった。
小学校に入学するころに父親から「やってみるか?」という提案で近所にある空手道場に通うようになった。体を動かすことが好きなほうであった俺は空手の魅力を知り、また才能があったのかめきめきと実力をつけて行き、中学に上がるころには同年代では頭一つ抜きん出た体力を持つようになっていた。
中学に入ってからは学校にあった空手部に入り、部活に励み、また地区大会とはいえ優勝することもあり、いじめに会う事も無くすべては順風満帆に事が運んでいるかに思われた。
だが、スポーツ系の高校に推薦入学が決まり、中学を卒業したその翌日。俺の目の前で両親が死んだ。
運よく休みを取ることができた父が俺の卒業及び入学祝いと称して家族で食事をとろうと言い出した時に……交差点の横断歩道を渡ろうとした両親に居眠り運転をした大型トラックが突っ込んできてビルに衝突する大事故にあった。
先に渡りきっていた俺は奇跡的に難を逃れたのだが、両親は即死だった……後で聞いた話によるとそのトラックの運転手もまた搬送先の病院で死亡が確認されたそうだ。
そこから先は、転落していくだけの人生だった。両親が死んだ為、俺は親戚筋に引き取られることとなった。
推薦入学した高校は僅か数か月としないうちに転校する羽目となった。
俺への選択肢なんてものは与えられることすら無かった。ただただ、自分たちの意向に何も言わず従えと言わんばかりに突然だったのだ。
その後も自分を厄介払いするかのように他の親戚に渡されては転校し、数か月すればまた別の場所へというまさにたらい回しと言われる状況が続いた。
親戚達の勝手な事情で振り回される俺もまた段々と落ちぶれていき、絡んできた不良達を逆に叩き潰すという暴力沙汰を転校する先でしばしば起こすようになってしまった。
そんなお先真っ暗な状況に待ったをかけ、真っ当な道に戻してくれたのが最後に俺を引き取ってくれたひいおじいちゃんとひいおばあちゃんだった。
俺がやって来た時には既に年齢90に迫ろうとしているほどの高齢だったが、まだまだ若い者には負けないと言わんばかりに背筋を伸ばして元気に行動していた。マンション暮らしではあったがひいおじいちゃんなんかはエレベーターを使わず階段を平然と上がってたし。
どうやら太平洋戦争に陸軍として参加していたらしく、体は衰えどもその眼光は鋭いままであり、厳格ではあったがちゃんと俺を一人の人間として見てくれたひいおじいちゃん。
そんなひいおじいちゃんに笑顔で接し、俺にも優しく接してくれたひいおばあちゃん。
俺はそんな二人の口からとはいえ多くの事を教えてもらった。あの2人がいなかったら俺は今頃もっとひどい道を歩んでいたかもしれない。
今にして思えばあの二人は自分に残された時間が少ないことを理解していたのかもしれない。だからこそ俺にできる限り自分達の体験し、身につけて来たことを教えていったんじゃないかって思ってしまうのだ。
ともかくそんなひいおじいちゃんとひいおばあちゃんから様々な事を教えてもらう充実した生活は、俺が高校を卒業してすぐに終わった。
俺がアルバイトを始め、初任給を手に入れて二人に見せたその日、突然ひいおじいちゃんが倒れ、救急車で病院に運ぶもそのまま眠るように死んだのだった。
そして、ひいおじいちゃんの葬式の日に斎場へと向かい、タクシーから降りた瞬間にひいおばあちゃんも倒れ、彼女もまた眠るように死んだ。まるで自分たちの役目は終わったと言わんばかりに突然であり、そして二人とも安らかな顔で死んでいった。
それから俺はひいおじいちゃんの残したマンションの部屋で一人暮らしを始めた。とはいえ一人で家賃の支払いは大変で、アルバイトを掛け持ちすることとなったのだがこの時に幼少時から鍛えていた体力が役に立ったな。
それから一年ほど前にアルバイトをやめて別の会社に社員として就職することができたのだが、そこがまた酷い所だった。俗にいうブラック企業と言う奴だな。
上司からの暴言やパワハラは当たり前、ノルマを達成できなければ凄まじい激が飛んできた。酷い時には物が飛んでくることもあった。
残業は毎日のように日付が変わるまで行い残業代もゼロ。しかもその上司たちは何も言わずに定時で上がり自分たちのタイムカードを勝手に押して帰る始末。
唯一日曜日は休みではあったが突然出勤命令が来たことも一度や二度ではなかった。
そんな中で俺は少しでもやりやすいようにしようと率先して他の社員に指示を出していた。お蔭で俺は上からはあまりいい目で見られなかったが、他の社員からは信頼されてはいたらしい。
本当に、自分でもよくあんな会社に勤め続けていたなと思う。
ただ、そんなブラック企業勤務も突然に終わりを告げた。
ある日、市内のとあるアパートで男性の首吊り死体が発見されたとテレビで報道された。事件性のかけらも無いただの自殺だったのだが、その自殺した男性が俺の会社の人間だった。
現場に残されていた遺書にはどうやら俺の会社の激務が事細かく書かれてあったらしく、それが原因で捜査の目が入ったのだ。
だが、その会社の状態を作り上げた上司たちはある日突然消えた。非難を浴びるのを恐れて高跳びしたんじゃないかとは同じ会社にいた人からの話だが真相は分からない。
そのままあれよあれよと言ううちにいつの間にか俺は職無しとなっていた。
職無しとなってから一週間ほどして海開きが近場の海岸で行われたことを知り、気分転換も兼ねて一人で海水浴に向かい……そして……
「……知らない天井……ってわけでも無いか。しかし、何とも懐かしい夢を見たもんだなぁ」
目を開けて最初に見えたのは最近になって見るようになった俺の寝室の木目天井。そのまま上半身だけを起こし夢の内容を思い出す。ほとんど消えてしまったが自分の今までの人生を見ていた気がする。
少しして俺はかぶりを振って窓の方を見る。外は既に空が明るみ始めている。推測するに現在時刻は午前五時前といったところかね。
「……ここに来てもう二週間か……」
誰にともなくつぶやいた。
たった二週間、されど二週間……ここに来るまでの灰色の日常とも言えるあそことは全く違う、常に死の危険がある戦いが日常の世界。
元の場所に戻る手立ては未だ見つからないものの、この世界で俺は今も何とか生き残っていた。
あれから俺はほぼ毎日艤装を装備して海上での訓練に励み、さらに長くても三日おき、短いとほぼ毎日深海棲艦との実戦を経験していた。しかも艦娘とはいえ空母の本来の役割は遠距離から航空機を発艦させて航空戦の筈なのに、艦載機妖精から『何があっても対応できるように』と言われ高頻度で接近しての戦闘を行わされた。
当然被弾したことは一度や二度ではない。その都度痛みに耐えながらなんとか切り抜けることはできたのは、ひとえに死にたくないという死への恐怖からだろうなぁ。何度死ぬかと思った事やら。
はたしてその甲斐あってか、俺の戦闘での動きは元々格闘技を習っていた土台もあったとはいえ明らかによくなっていた……と思う。とは言え実行に移した妖精Bからすればまだまだヒヨッ子レベルだそうだが。
「おっと、そう言えば朝練の時間だ」
ここに来てから、ブラック企業に就職していた時はその忙しさ故に出来なかった朝のトレーニングを再開していた。まあ、やることは軽いランニングと簡単な型をやる程度なのだが。そのことを思い出し、俺はベッドから出て寝間着からトレーニングウェアに着替えて部屋を出る。
さてさて今日も一日生きるとしようか。
朝のトレーニングを終え、汗を流し終えて朝食―――食堂妖精が作ってくれた―――も食べ終えて服装を初日に着ていたものに着替えて俺は工廠へと向かった。初日にケストレルの艤装が置いてあった場所こそがその工廠で、主任妖精からの説明ではここで艦娘の艤装を作ったり武装を開発したりしているらしい。
その工廠に入り俺は主任を探す。目当ての妖精は少し探したらあっさりと見つけた。
「主任、おはよう」
『あ、おはようございます圭さん』
俺の挨拶を聞いて主任―――俺がこう名付けたら凄く嬉しそうにしてた―――は振り向いて笑顔で挨拶をしてくる。
「調子はどう?」
『大丈夫ですよ。圭さんのおかげで新しい艦娘用兵器の開発に目途が立ちましたので私達も張り切ってますよ』
主任は目をキラキラさせ、「ふんすっ」と気合を入れている。ほんっとうに嬉しそうだなぁ。
少し前に俺が開発を手助け―――何でも艦娘が妖精と共同で開発すると投入資材にもよるがある程度艦娘が装備する武装を限定できるらしい―――したことによってどうやらこの工廠で終戦後の近代兵装の開発が可能となったらしく、他の工廠妖精達もえらく張り切っていたのを覚えている。
とはいえこの開発用の機械類、これは以前の深海棲艦の攻撃により大打撃を受けてたらしく俺がここに来てから数日してようやっと復旧したらしい。
「後は建造用の機械を修理すれば本格的に基地として復活する訳か」
『そうですね。とはいえこちらはかなり先になるでしょう。最悪二ヶ月はかかるかもしれません』
俺と主任は開発用の機械類から別の機械を挟んで、少し離れた場所にある未だ壊れたままの機械類を見る。
その機械こそ艦娘を艤装と共にこの世に生み出す建造機械との話だそうだ。実際に動いている姿を見たことが無いため本当かどうかは分からないが。
何でも艦娘とは本来船の形として存在しているものを人の器として再現、ダウンサイジングして船魂を現世に呼び出して器に定着させ、生み出しているらしい。
その艦娘を呼び出したり艤装を製作、修理したりする資材は開発用機械と建造用機械の間にある精錬機械で精錬される。
精錬機械に深海棲艦の残骸の機械部分を投入して浄化、再構成して燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトの4種類に分けているとのこと。
で、その4種の資材を建造機械に特定のパターンを投入することによって、確率に左右されるがある程度艦娘のタイプを選んで建造可能とのことだそうだ。まあ先ほど言ったように現在破壊されて使用不能なので本当かどうかは現状分からずじまいだ。
「どれくらいかかかるは分からないか」
『そうですね。先ほど最悪二ヶ月とは言いましたが物資の集まり次第では短縮もできなくはないです』
「それでも艦娘を呼び出しての戦力増強はまだ当分先かぁ」
『申し訳ありません……圭さんはやはり一人では厳しいですか?』
俺の表情を見て察したのか、主任が心配そうに俺に視線を向けたので俺は無言で頷く。
「正直一人ではどうしてもできることが限られてくるからな。空母の問題として相手に接近を許したらかなり不利になる。現状は敵駆逐級から軽巡級しか相対したことないから俺一人でもなんとかなるけど、この先それが続く訳もないし、護衛戦力が欲しいとは思ったんだ」
だけど現状その護衛が望めない以上は俺一人で何とかするしかない。とはいえ現時点で制空権の問題は無いからそっち方面では安心できるのが幸いか。
「まあ今の所戦力増強が望めない以上高望みはしないよ。機材が壊れているのは主任達のせいじゃないから。無理のない範囲で直してくれて構わないよ。それまでは俺もなんとか頑張るさ」
『……やはりあなたは以前ここにいた司令官とは違いますね。我々のような妖精にも平等に接してくれる』
まるで遠い方角を見るかのように主任は呟く。成程、どうやら前任者は俺が就職した先のブラック企業連中みたいな奴だったんだろうなぁ。
俺は単にあんな連中のようにはなりたくないって思考で発言したんだがね。
「そうか。まあ俺も頑張るから主任も頑張ってくれ」
『あまり無茶はしないでくださいね。あなたはこの基地に必要な人材ですから』
「ありがとう」
そういう風に言ってもらうと悪い気はしないな。
さてさて現在午後1時を少し回ったところ。俺、永瀬圭は現在ケストレルの艤装を装備して海上にて待機している。
現在の俺は艤装の後ろにトロッコのような船を紐で曳航している状態だ。そして俺の周囲にはミニチュアサイズのヘリコプターが複数飛んでおり、そのすべてにどす黒い物体が紐のようなもので吊るされている。
妖精曰くこの物体が深海棲艦の残骸で、これを後ろで曳航している船に入れて持ち帰り、精錬機にぶっ込んで資材に変換するそうだ。
とはいえ……
「何か薄気味悪いというか気持ち悪いというか。触れただけじゃ冷たいわけでもない普通の金属みたいだが、近くにあるだけで寒気のようなものを感じるな」
『深海棲艦とは怨念の塊のようなものですからね。残骸だけでも生半可な怨霊を凌駕するレベルの負の思念が詰まっています。それこそ霊感のない人間でも圭さんみたいな症状が出るほどですね』
妖精Cが律儀に説明してくれる。成程そういう訳か。
因みに俺の今の装備は電子戦機のグラウラーを今俺の周りを飛んでいる対潜ヘリのSH60Kに交換し、ハープーン艦対艦ミサイルを新しく装備している。
両方とも工廠での開発で主任が作り上げた代物で今日はコレのテストも兼ねてたりする訳だ。ハープーンに関しては以前のファランクスとの持ち替え式となっていて、ミサイルランチャーのような発射筒を肩に担いで発射する奴だね。平時は背中にかけていたりするけど、少し重い。
ハープーン装備の理由としては今後出てくるであろう重巡級や戦艦級に相対する時に航空戦力以外でも対応できる手段が欲しいというのもある。これから俺が単騎でそいつらと戦わない保証なんてどこにもないからな。
対艦ミサイル何て空母に装備していいものなのかどうかは分からないんだがな。
(しかし、こうやって武器を持ち替えたりすると陸の方のACを思い出すな)
っていかんいかん。余計なことを考えたらまた奇襲を受ける可能性がある。
「さて、これでこの辺りの残骸は回収完了か。<ホークアイ、そっちの周囲に機影や敵影は無いか?>」
資材の回収作業を終えた俺はインカム越しに予め発艦させていた偵察機のE-2ホークアイに連絡を取る。ややあってホークアイ妖精から連絡があった。
≪こちらホークアイです。ちょうどよかった。ケストレル、そちらに進軍している敵影を発見しました。数は2。両方とも駆逐イ級です。ただ、問題が……≫
<問題?>
相手は駆逐イ級なのに何かあるのか?
≪問題なのは相手がフラグシップクラスの金色のオーラを出しているんですよ。さらにはケストレルが普段戦闘している駆逐級達よりもサイズがひとまわり以上違います≫
<サイズが違う駆逐イ級フラグシップ個体ぃ!?>
≪はい≫
聞き間違いかと思いたい。が、どうやら事実らしい。
フラグシップ級個体は聞いた話では南西諸島海域の最深部、或いは北、西、南方海域の遠方にのみ生息する強力な個体だ。それも駆逐級のフラグシップ個体はこの辺ではまかり間違っても出現が確認されるような個体では無い……無いはずと聞かされている。
それが今、この近海にいて接近して来ている。しかも普通のよりもサイズが違うらしい。
「ええい糞!また厄介な事態になったな!」
『戦場にイレギュラーは付き物だからなぁ』
「それは分かってるよ。初日のあんたや今まで戦った駆逐級や軽巡級から嫌と言うほど教え込まれた」
唐突に出て来た妖精Bの言葉に俺は返す。
俺は足を止めゆっくりと深呼吸を行い精神を落ち着かせる。
焦りは油断を生む……戦場での油断は命取りと前々から言わされた。生き延びはしたがそれが原因で痛い目も見た。ならば焦るな。血気にはやるな。冷静に周りを見て行動しろ。第六感を含むすべての感覚を極限まで研ぎ澄ませ。
そう、
「よしっ!」
覚悟完了!後はやるだけだ!
「敵艦見ゆ……確かにでかいな。ひとまわり、或いは倍近くあるかもしれん」
やがて俺の視界に移ったその姿は確かにホークアイ妖精が言っていたようにサイズが明らかに違っていた。それに、フラグシップ級のシンボルでもある滲み出る金色のオーラが見える。それがかなり早いスピードでこちらに接近して来ている。何というか、こいつらえらい遠距離から来るけど艦娘を感知するセンサーみたいなのでもつけているのかね?
まあいいさ。やって来た以上戦うしかない。こっちもむざむざ死ぬわけにもいかないからな。
「先手必勝……攻撃隊、発艦始め!」
ボウガン型の発艦ユニットから艦載機をちょうど相手駆逐級2体の中間に向けて発艦させて、ついでにハープーンを背中から取り出し肩に担ぐ。
相手は艦載機の軌道を見て即座に散開、左右に散らばり俺を挟み撃ちにするように動いていく。
ちっ!今までの駆逐級達よりも動きがいい!いつもなら慌てて進路を変えてバラバラに行動してくるはずなのにこいつらはチームワークの概念でも存在しているのか、殆ど変らない速度で並走して来ている。しかも相手も艦載機の攻撃をすり抜けて空母を狙えばとでも思っているようだ。
ならば!
<攻撃隊は右に移動した奴に攻撃を集中!左の奴はその後でも構わん!くれぐれも対空攻撃には気を付けろ!>
≪り、了解!≫
艦載機妖精たちは俺が相手と一対一で勝負をつけようとする姿に一瞬正気を疑ったようだが、俺が肩に担いでいるものを見たのかあっさりと従う。
そのまま俺は残った一体に意識を向ける。相手はこちらに何か手があると判断したのか速度を下として探りを入れているみたいだったが、やがて再び速度を上げて接近して来た。俺は特に何もしないままゆらゆらと左右に動きながらしかし決して足を止めずに相手の動向を待つ。
と、大型イ級が減速しながら主砲を構え、砲撃を開始した。やはりこっちの動きに付き合うつもりはないよな。
俺は移動するスピードを上げて砲撃を回避。途中で移動方向を変えたり減速したりしてフェイントを織り交ぜ相手のペースを乱す。
相手の砲撃が着弾する度周囲に水柱が上がるが気にしている場合じゃない。
やがて砲撃が当たらないことにしびれを切らしたのか、イ級が一気にこちらに突っ込んでくる。
これを待っていた!
「チャンス!」
俺はすかさずミサイルランチャーを構えてハープーンミサイルを発射する。
さすがのイ級も想定していない攻撃だったのか、呆気にとられたまま動くこと叶わずハープーンが直撃し、爆発した。よしっ!
「どうやら向こうの駆逐級も倒せたようだな」
撃破を確認してもう一体の方に顔を向けるとミサイルの直撃を喰らい爆発してるイ級がいた。こちらもミサイル砲火に対応できず直撃を貰ったのだろうかね。
さて、残骸を回収するとしようかね。
<とりあえず60Kは2機ほど発艦始め。周囲への警戒を行ってくれ>
≪了解しました≫
俺は艦載機を着艦させてから60Kを発艦させて偵察にあたらせ、それから万に一つの可能性も考えて警戒を緩めず撃破したイ級に近づく。
イ級とはいえ普通の奴よりも結構でかいからな、手に入る資材は多いんじゃないd……
「………………は?」
思考が、止まった……
俺が想定すらしていない物体を見てしまったがために……
『どうしました圭s…………えっ?』
妖精Cが問いかけてくるが、俺と同じものを見てしまったためか、彼も動きが止まる。
視線の先にあるのはイ級の遺骸。連中の頭部と思われる部位が爆散して、体内が見えている。それだけの物体なのだが、問題はそこじゃない。問題なのはイ級の「体内にいる物体」だ。
これは…………これは…………
ナ ン ダ コ レ ハ ?
「どういう……ことだよ……」
『……』
「何なんだよこれは……何でこいつらの「体内に人が入ってる」んだよ」
誰も、答えない。妖精達にも理解しえない事態なのか全員が沈黙している。
大型イ級の体内にいた「それ」は……人だった。
体内に溜められた液体のような物にうつ伏せに近い状態で体を浸けられた人間。体の凹凸からして少年か、少女の類だろう。漬けられている液体は消化液か或いはそれに近い物体なのだろうか、その人間は一部消化が始まっているかのようにも思える。
≪け、ケストレル!あっちのイ級にも同じように少女と思われる人が……≫
<え……あ、ああ。分かった>
様子見の為発艦していたSH60Kの妖精からの報告を聞くも頭が満足に回転しない。
『流石に冗談きついな。こんな風に人を体内に入れたまま活動する個体なんて聞いたことないぞ……』
「あー……その……何だ。と、とにかく回収するぞ」
『……(コクリ)』
『あ、ああ』
妖精AとBの二人も思考が追い付いてないのかややあってから了解する。
イ級の残骸に近づき、恐る恐る人に手を伸ばし、触れる。妙な液体が体中についているが関係ない。
触れた手の先からゲル状とも取れない液体の感覚が気持ち悪いが、少女(?)の体には体温はまだ残っている。極僅かだが恐らく呼吸の為に体が規則的に動いている。という事は彼女はまだ生きているという事だ。
「この子、まだ生きている」
『何ですって!?』
「と、とにかく回収して基地に連れ帰ろう!この子たちの扱いはその後で考える」
『分かった』
『了解です』
俺の言葉に妖精達は行動を開始する。と言ってもイ級の遺骸と俺を紐で結んで曳航するだけだが。
少女達は現状そのままだ。どうやら液体は消化液の類ではないらしく短時間で溶ける可能性は無いとは妖精の談だ。とはいえかなりの時間漬けられていたらしく皮膚はふやふやになっていたが。
というか深海棲艦の専門知識のない俺がもし余計な事をして彼女達の命を奪うなんてことになったらシャレにもならない。液体から出したら即死とかなったらもう何も言えん。という事で現状維持としているわけだ。
一つ目の遺骸と紐でつなぎ終えてもう一つの方へ。ついでにもう一人の方―――こっちは少女だな。胸の部分の膨らみが見えたから……見てしまったからな―――の状態も確認しておく。
威力が俺のハープーンより低かったのか、或いは単にさっきの奴の当たり所が悪かっただけなのかこちらはかなり原型をとどめており、見えている少女の体もうつ伏せ状態で上半身が出ていたさっきの方とは違い此方は仰向け状態で顔と胸部が見えている。その少女の肩に手を触れて確認。うん、体温や呼吸の為であろう動きもあるし、こちらも多分まだ生きている。
「よし、曳航開始。急いで帰ろう」
『はい!』
妖精達に伝え、俺は真っ直ぐ基地へと戻っていった。時々イ級の遺骸の方を見て異常がないかの確認をしながら……
Q:どうしてフライ級?があっさりやられたの?
A:初見殺し
さてさてイレギュラーな存在と遭遇です。
イ級?の中にいたのが誰なのかは次回をお待ちください。
では次回「#4 艦娘-Ship Girl-」にてお会いしましょう。
日向「60だと!?」(ガタッ
あなた装備できないでしょ?お帰り下さい。