Fleet Combat -Dawn of the horizontal line-   作:大川静真

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どうもみなさんおはようございます、こんにちは、こんばんは。
任務でカタパルトを手に入れたはいいものの設計図も勲章も無い状態だった為EX海域攻略までお預けとなった作者です。
天城に使うんじゃなかった……orz
自分の近況はこの辺にして、それではどうかお付き合いください。


#6 計画を打ち砕くもの-Story of Razgriz-

 あれからまた2週間ほどが経過したが、俺達は変わらず演習と出撃を繰り返して練度を只管に上げていった。演習と言っても時雨と白露のタッグ対俺(艦載機使わない縛り)だったり、時雨と白露の1対1の模擬戦ばかりだな。

 集団戦闘もやってはいたもののこちらは深海棲艦相手に実戦とかなり荒っぽく、轟沈の危険性も存在している危険なものだ。

 本来なら他の所の艦隊と演習を行えばいいのかもしれんが、以前の基地放棄時に長距離通信手段が再起不能なレベルまで破壊されているらしく本土と通信不可能となっている為仕方ない。

 

 最初の方はぎこちない動きをしていた時雨と白露の2人も、戦闘に慣れていき動きもよくなって来たそんなある日の事。

 出撃しようとして3人で工廠に向かった時に主任から2人の艤装の改装を行いたいと言われたのだ。

 何でも同型艦娘の艤装は多少の性能ダウンはあれどある程度共有可能らしいのだが2人の艤装をそれぞれに調整、個別化させることによって艤装の性能を上昇させられるとのことだ。

 

 最近の主任はあの不穏な笑みを見せていなかったため、完全に油断していた俺は二つ返事でGOサインを出した。

 

 否、出してしまったと言ったほうがいいだろう。

 

 それが2日前の出来事で、その間出撃はせず各自基礎訓練等を行っていた。工廠の方へは主任から完成まで入っちゃダメと言われたのでそちらに足を向けることは無かった。

 

 

 

 今思えば少しでも顔を出して様子を見ておけばよかったのだ……

 

 

 

 そしてその結果……

 

 

 

「……さて主任。こうなった経緯をきっちり説明してもらおうか?」

『あ、あの……圭さん。目が怖いんですけど……落ち着いてください、ね?』

「そうか?俺はいたって平常心を保ってるぞ」

『あのあのあのあのええっとええっと……やりました。テヘペロ♪』

「……」

 

 腹立つ笑みを見せた為俺は無言で主任の脳天に手刀を叩き込む。もちろんある程度の手加減はしたよ。

 しかし、そんな手加減状態でも主任にとっては大ダメージだったらしく「へべっ」などという妙な悲鳴を上げて一発で地面に突っ伏した。

 

『い、痛い……』

「まあ痛くしたんだからな。手加減してもらっただけでもありがたく思え」

『ひ、酷い……横暴だ……暴君だ……私はただ白露さん達の艤装を改造しただけなのに……』

「あーあー確かに艤装の改造はしたな!だがなぁ!ここまでやれと誰が!いつ!どこで言った!!」

「圭さん……これって……」

「これって……僕達の……艤装だよね?」

 

 起き上がり、頭を押さえながら愚痴る主任に向けて俺は段々と感情を前面に出しながら叫びつつビシィ!っと艤装を指さす。その横で「改造」の施された自分達の艤装を見て顔をひくつかせている白露達2人がいた。

 うん……お前たちの気持ちは完全には分からないが今回ばかりは同情せざるを得ない。

 

 工廠内の駆逐艦用艤装保管ハンガーにかかっているのは、以前までの白露型駆逐艦の艤装の面影を少しは残してはいたが、殆どが原形を留めないほどに改造されていた。

 

 手持ち式の主砲は以前の12.7cm連装砲からオート・メラーラ76mm砲に変更され、背部の艤装にはMk.48 mod.4とMk.41 mod.9のミサイル発射機が煙突の両側に装備。煙突の後ろにはヘリコプター発着場と格納庫と思われるミニチュアが付いている。ただし、時雨の場合は艤装装備時に置けるちょうどスカートの辺りにそれがある。

 それ以外では白露はバッグ状にかけられていた主砲が俺の装備しているミサイル発射筒でもある90式艦対艦誘導弾発射筒に変更。

 時雨の方は背部の主砲が無くなった代わりに白露のと同じ90式艦対艦誘導弾発射筒を左右の主砲塔の代わりに装着。

 魚雷の方は2人とも以前の酸素魚雷発射管から69式3連装短魚雷発射管に変更されていた。

 武装はすべて主任から手渡されたスペック表に書かれたものだ。うん……武装がどんなものなのかは分からないが、対艦ミサイル標準搭載の時点で酷い魔改造である。

 とは言え武装の内容的に予想できるのは白露はバランス型で時雨は対艦攻撃特化型か?といったところだけだ。

 

『改造とはそんなに酷いものなのか大将?戦力アップは嬉しいことではあるが』

「世の中にはやり過ぎという言葉があるんだよ!なんだよ対艦ミサイルを装備した駆逐艦の艤装ってのは!?」

『OK全部理解した。主任、いくらなんでも今回はあんたが全面的に悪い』

『そ、そんなぁ!せっかく圭さんの艤装から得られたデータを元にして、腕によりをかけてむらさめ型護衛艦の艤装を極限まで再現したんですよ!!白露さんや達にも気づかれないようにこっそり艤装の拡張性を強化までしたのに!!』

「『それがやり過ぎっていうんだ!限度を考えろ!』」

『しょぼーん……』

 

 主任のフォローをしていたが俺の言葉にこちら側に回った妖精Bと俺の台詞がものの見事にハモり、しょぼくれる主任がいた。落ち込む主任には悪いが今回ばかりは言わなきゃならん。

 ケストレルの艤装を装備している俺が言うのも何だろうが、艦娘達の艤装としてはオーバースペックにも程がある気がするぞ。つーかむらさめ型護衛艦って事は自衛隊の船なのかね?

 

「というかお前、言っちゃ悪いが俺以外の艦娘に近代兵装は使えるのか?」

『大丈夫です!問題ありません!ちゃんと艤装装備時に使用方法をインプットできるようにしてますから!』

 

 俺の疑問にあっさりと復活した主任は答えた。嫌な予感を感じるのは俺だけだろうか……

 

『どうするんだ大将?さすがにここまでやるとは思ってなかったから主任の魔改造には頭を抱えるしかないが、先も言った通り戦力アップとして考えたらかなり嬉しい事ではあるぞ』

「そうなんだけどなぁ……」

 

 妖精Bの意見も尤もではある。あるのだが……

 俺は顎に手を置いて考えながら未だ艤装を見たまま固まっている2人に視線を送る。外野の俺から見ても完全に放心状態に見えなくもない。

 さてさて……俺個人の意見としては……

 

「2人とも、どうする?」

「あ、えっと……」

 

 慌ててこちらに振り向きながら言いよどむ時雨だったが、俺は続ける。

 

「まあ突然の事で困惑しているだろうが、これは紛れもなく改装したお前たちの艤装だ。だが、正直に言って俺としてはあまりこれを使ってほしいとは思わない『おいおい大将』少し黙っててくれ」

 

 妖精Bが何か言おうとしたがそれを止めて続けた。

 

「だが、同時に純粋な戦力アップとしてこの艤装を使ってくれると楽になるとも俺は考えている。俺の負担が少なくなってある程度の余裕を持つことが出来るだろうと予想もしているからな。ただ、2人にとっては少し事情が違ってくる。簡単に言ってしまえばこの艤装を使えば2人はある意味かつての白露型駆逐艦の2人じゃ無くなるって事だ」

「んんー?何が言いたいの?」

 

 白露が首を傾げながら問いかけてくる。

 

「まあ何というか、結論を言えばかつての自分達の白露型駆逐艦としての己やその力にこだわりがあるならばこの艤装を装備せずにいてもいいって俺はそう考えている。勘違いしないでほしいのは2人を艦娘として解任させるんじゃなくて白露型駆逐艦の艤装を新しく作らせるって事だ」

「でも、新しく作り直すって圭は大丈夫なの?仮に以前の艤装を装備した僕達と一緒に戦闘を行ってると、その分負担が多くなるんじゃ……」

「確かにきついと言えばきついが……な」

「?」

「昔な、あるお話を見ていた時にこういう言葉がそのお話にあったんだよ」

 

 そこで俺は一旦区切り、時雨たちを真っ直ぐ見据えてから、言った。

 

「「大きな力には、大きな責任が問われる」って言葉がな。その言葉を言った人の真意は俺は分からないけど、個人的に解釈するなら持つ力が大きいほどに、力をふるう際にかかる責任は大きくなるって思ってるよ」

 

 誰も、何も言ってこない。ただただ俺の言葉を聞いている。

 

「この主任開発の艤装は確かに強力だ。それこそかつての2人の駆逐艦としての力を凌駕するほどにな。だからこそこの力を使う際にかかる責任は大きいんだよ。もしも討つべきでない相手にこの力を振るってしまった際に、或いはこの力を振るって望まない結果を得た時に、2人はその結果を受け入れ責任を取る覚悟はあるのかい?」

 

 

 

 皆に言い聞かせながら思い出すのはかつての自分。両親が死に、親戚をたらい回しにされていた高校時代の事。

 ある時俺はいじめの現場を偶然にも見てしまった。5人の明らかにガラの悪い不良と呼べる生徒達にいじめられていた生徒は全身をリンチされていて、あまりいい状態とは言えない程であった。

 その時の俺は少々虫の居所が悪かったために睨みを効かせつつ不良達を静止した。

 しかし、会話の後に来たのは相手の手だった。言ってしまえば相手は俺が気に入らないという理由で殴って来たのだ。

 俺の方も頭に血が上り、喧嘩の末に幾らか攻撃を貰うも不良5人全員を叩き潰したのだった。

 だが、その後いじめを止めたと優越感に浸っていた俺へと学校側から下されたのは停学処分だった。後に聞いたところによると不良の1人が1か月近く入院する程の大怪我を負っていたらしい。

 その時の俺のショックはかなりのものだった。どうして俺がこんな事になるんだと。自分はいじめを止めたのだと。だが誰も俺の意見を聞くことは無く、ついに俺が別の親戚に送られる日まで俺の言葉が通じることは無かった。

 

 その後、しばらくしてある時彼女達に言った言葉を聞き、理解したのだ。

 結局あの時の俺は無責任に力を振りかざしていただけだったんだろうなと、なんとなくではあるが俺は理解したのだった。

 

 2人に魔改造艤装を装備させるのに二の足を踏んでいたのはこれが理由だ。そして、そんな過去があったからこそ俺は今この場でこの言葉を伝えねばならないと思ったのだ。

 

 

 

 話し終えてから数十秒ほど経っただろうか、白露と時雨の2人はお互いに顔を向けて無言で頷きあい

 

「私やるよ!圭さんの言う覚悟はどんな事をすればいいか分からないけど、頑張る!」

「僕も、圭の力になりたいって気持ちがあるからいいよ」

 

 笑顔で決意を述べて来た。

 正直今も躊躇してはいるが、2人がこうも言ってくれた以上はその言葉に応じるしかないな。

 

「2人の意思は分かったよ。だったら俺もこれ以上は言わない」

 

 俺は少しだけ笑みを見せながら頷いた。

 

 

 

 艤装装備による実地での訓練は翌日に持ち越しとして、俺と妖精Bの2人(?)は主任にかなり強めに釘を刺してその日は解散となった。

 

 

 

 それからその日の夜。食事も終えて後は寝るだけの自由時間に、俺は1人で工廠内のケストレルの艤装の前に来ていた。

 周りには妖精達の姿もなく、完全に俺1人だけの状態。昼間は未だ残ってる破壊の跡を修理する作業の音が聞こえていたが今は完全に沈黙しており、物音ひとつ聞こえない。

 

「結果を受け入れ、責任を取る覚悟……か」

 

 あの言葉は俺にも言えるでもある。事の成り行きが興味本位の行動というしょうもない理由とはいえ、こうやってケストレルの艤装を操れるようになったのだ。

 艦娘達は第2次世界大戦の船の力を持つと知識にはある。だが、俺の手に入れた船の力は架空世界のものとはいえ彼女達が持つ力よりもはるかに強い力なのだ。

 

 あの妖精3人の力も一緒に使おうものならそれこそ全てを喰らい尽くさんが如くに……

 

 だからこそ、その責任は彼女達の艤装を扱うそれより大きく、重い。

 

 深海棲艦相手に圧倒できるような力を仮に人に振るえば……そんなことを時々考えてしまうのだ。そして同時にそれは決して行ってはいけないことだと自分の中で言い聞かせている。

 

 

 

 だが、仮にそれを本当に行ってしまったら……そして、その光景を他者に見られ、恐れられたら……

 

 

 

「……っていかんいかん。こんなんじゃ延々と考えて頭がパンクする」

 

 かぶりを振り、思考をクリアにする。これ以上は考えないようにしよう。

 と、そこへ、カランと何かが地面に落ちるような音が聞こえた。

 

「っ、誰だ!?」

 

 慌てて音のしたと思われる方へ体を向けると

 

「「あ、あはははははは……」」

「……お前ら……」

 

 物陰から身を乗り出した状態で固まっている白露と時雨の2人がいた。よく見ると2人の足元付近に何か金属製の部品のような物が落ちている。先ほどの音の原因はこれか。

 

「ごめんね圭。工廠に1人で向かう姿が見えたから、気になって白露と一緒に隠れて見てたんだ」

「そういう事か……」

 

 まあ別に減るような物でもないし、構わないんだがな。

 

「もしかして、圭さんは今日の昼の事を思い出してたの?」

「よく気付いたな白露。まあ正解だ」

「えっへん!私が一番お姉ちゃんだからね!」

 

 何故そこで自慢げに語るんだか……というか関係ないだろ。

 そこまで会話して俺はケストレルの艤装へ向き直る。2人もまた物陰から出て来て俺の横で止まり、艤装を見る。しばらくの間、誰も喋ることなく沈黙が続く。

 

「ねぇ、圭」

「どした?」

 

 沈黙を破ったのは時雨だった。彼女は俺の言葉を聞いて続ける。

 

「圭は、このケストレルって船の記憶を持ってるのかな?」

「それがどうかしたのか?」

「うん。このケストレルは一体どんな戦いを経験してどんな最後を迎えたのかなって……少し気になったんだ」

「んー……」

「あ、私もちょっと気になるなー」

 

 2人に迫られ俺は悩む。ケストレルの追った物語を彼女達に伝えるべきか否か。プレイしたエースコンバットのシリーズは4,5,ZEROで、6をストーリーだけ動画で見た程度だ。そのうちにケストレルが出て来たのが5とZEROの2作品だけだ。

 しかも主人公はケストレルではなく航空機パイロットなため主人公がいない間何をしていたのかの仔細は分からない。俺がケストレルの軌跡を教えられる部分はかなり限られてくる。

 これは、ある程度というかかなり端折るしかないな……

 

「ほんの一部だけだがな。俺自身がケストレルの艦娘って訳でも無いし、記憶も……全部引き継いだわけじゃない。それでもいいか?」

「いいよー」

「僕もそれでいいよ」

「……分かったよ」

 

 俺は頷き、そして話し始める。要点だけをまとめつつ、時に当時のケストレルのいた世界の情勢を加えつつ、その数奇ながらも波乱に満ちた生涯を……

 

 

 

 時間にして十分程であろうか、それとももっとかかったかは分からない。だが俺はケストレルの戦いを話し続けた。

 

 公試運転中にも拘わらず発生した戦争に参加させられた事。その時は同盟国の航空師団の援護によって大事無く戦線を突破でき、作戦参加はその1回だけだったようだが無事に戦争を乗り切った事。

 それから特に何事もなかったが、先の作戦参加から15年後に起きた戦争に参加した事。奇襲を突破し艦隊を編成しようとしたところに相手の強力な兵器の攻撃を受けて自分の姉妹艦や艦載機達を目の前で失った事。

 その後は艦載機の補充すらさせてもらえず作戦に参加することは無かったが、それが功を成したのか自国であるオーシアと相手国であるユークトバニア、二つの国の戦争を裏で操り泥沼化させている人間の存在に当時の艦長が気付いた事。その後、彼らの手によってスパイ容疑をかけられたとあるエース部隊を撃墜を偽り救出した事。

 それからしばらくして泥沼化させている人間たちによって平和を望んでいたオーシアの大統領が幽閉させられている事実を知り、先に救出したエース部隊の力を借りて大統領を救い出した事。

 さらにその後ユークトバニアの元首もまた平和を望んでいたがクーデターによって人知れず監禁されていたことを知り、ユークトバニアのレジスタンスとともに救出した事。

 その元首が侵攻の為に接近していた自国の艦隊に呼びかけ、それによりユークトバニアの艦隊は和平派と好戦派の二派に分裂したが、ケストレルの艦長は和平派を助ける為にエース部隊を出撃させた事。その戦闘中オーシアの艦隊の一部がケストレルを反乱軍と断定し攻撃を開始した事。

 エース部隊の奮闘もあってケストレルや戦争の終結を望んだ両国艦隊は無事に生き残るも、その時に戦った自国艦隊に自身の姉妹艦がいて仕方なく撃沈した事。

 最後はユークトバニア好戦派の潜水艦が放った対艦ミサイルの直撃を貰い、撃沈した事。その時はダメージコントロールよりも彼らエース部隊の射出を優先した事。退艦した乗員たちが見守る中でその生涯を閉じた事。

 所々しどろもどろになりながらも兎に角必死に話した。2人に分かりやすく伝わるように……

 

 

 

「とまあ、俺の分かるケストレルの生涯はこんな所だ。記憶が無い部分もけっこうあったから正直2人にうまく伝わったか分からないが……」

「そんなことないよ圭さん!すっごい戦いだったのは分かったから!」

「うん、そうだね……」

 

 椅子に座って話を聞いていた2人―――長話になりそうだったから話す前に持って来て、俺の両隣に2人が座っている―――は上手く言い表せなかったのだろう率直な感想を述べて来た。

 

「でも、どうしてケストレルの艦長はダメージコントロールよりも部隊の発艦を優先させたの?僕はそれが少し気になったかな」

「俺もよくわからないが、恐らく時間が無かったんじゃないかと思う。どうやら俺の頭にはケストレルの戦い以外の記憶もある程度あるみたいでな。それだとケストレル沈没の前後にどうやら両国のトップ同士がテレビの前で終戦の放送を行ったらしい」

「どうして?」

「そうやって大々的に放送することで民衆や前線で嫌々戦っている兵士たちが戦争の終結を実感できるからな。で、裏で糸を引いていた黒幕達はそれを望んでないだろうから、どんな手段を使うか分かったものじゃなかったんだと思う」

「そっか」

 

 時雨は納得したように呟く。彼女達にはよくわからないとは言ったものの、ストーリー展開上ある意味必然とはいえあの連中は遠慮なくSOLGという切り札を使ってきたからな。

 

「それに、そのエース達はケストレルの危機を悉く救ってくれた部隊でもあってな、彼らならやってくれるって確信が艦長にあったんだと思う。事実、彼らの戦いのおかげで黒幕達の思惑を打ち砕いたらしいからな」

「かっこいいねその人達!」

「うん。えっと、その人たちの部隊名は……ラーズグリーズ隊だっけ?」

「ああ」

 

 俺は時雨に向けて頷く。

 

「昔目にすることがあったんだが、ラーズグリーズとはヴァルキリーの称号の一つで「計画を壊す者」って意味らしい」

「すごい偶然だね!その名前の通り戦争を望んでいた人達の計画を壊したってのは。凄くかっこいいなぁ!」

「そうだな」

 

 白露はどうやらラーズグリーズ隊がお気に入りらしくハイテンションになってる……何故に?

 

「ただ、オーシアにはどうやらラーズグリーズというのはお伽噺に出てくる者の意味があるらしい」

「「お伽噺?」」

 

 偶然か2人がハモる。うん、こういう時にハモるとはやっぱりお前達は姉妹艦だな。根本の思考が似ているんじゃなかろうか。

 

「ああ。そのエース部隊の1人がそのお伽噺の本を持っててよく読んでたから、ケストレルの記憶に残ってたみたいだ」

 

 俺は「話すぞ」と2人に言って一区切り置き、続けた。彼女―――ケイ・ナガセ。俺と同じ名前を持つラーズグリーズ隊の2番機―――がよく読んでいたお伽噺の中に出てくる伝説の存在を。

 

 

 

 ―――歴史が大きく変わるとき、ラーズグリーズはその姿を表す。

    始めには漆黒の悪魔として

    悪魔はその力を持って大地に死を降り注ぎ、やがて死ぬ

    しばしの眠りののち、ラーズグリーズは再び現れる―――

 

 

 

「……てな」

「「へぇー……」」

「とまあ、俺が分かるケストレルの軌跡はそのぐらいかな」

「ありがとう圭。僕の我が儘に答えてくれて」

「構わないさ。それにこのくらいは我が儘とは言わんよ」

 

 俺は時雨の頭に手を置き、軽く撫でた。ひいおばあちゃんが存命中に俺によくやってくれた時の事を何故か思い出し、つい真似をしてみたのだが……何をやってるんだ俺は……

 というか女の子の頭を勝手に撫でるって、何か不味い気がする……ほら、事案の類になりかねないような……

 

 だが時雨は一瞬だけ何かを思い出したかのような顔をしたが、すぐに笑顔になり俺の手の感触をあっさりと受け入れた。

 

「さて、今日はこの辺で寝ようか。俺は他にすることがあるから2人とも部屋に戻ってていいぞ」

「うん。お休み、圭」

「圭さんお休み―♪」

 

 2人に別れを告げて俺はまた艤装のあった場所に戻る。

 2人が去って少しした後に、隠れていた妖精Bが現れた。やっぱり盗み聞きしてたか。会話中に視界の隅に姿が見えたから何となくそんな感じはしていたんだよ。

 

『大将』

「よう。それで、何時ぐらいから聞いてたんだ?」

『まあ、ケストレルの会話が始まって少ししてから、だな』

「そうか」

『大将、ラーズグリーズ伝説のお伽だが、最後の1文言ってなかったな』

「ああ、言っちゃ悪いがわざとだ」

『何故言わなかったんだ?』

「まあ、ちょっとな……」

 

 首を傾げる妖精Bだったが、俺は意味ありげに含ませる。

 

『何を考えているんだか全く……』

「すまんすまん。まあ悪気があるわけじゃないから安心しな」

『了解だ。だがいずれは最後の1文があることを教えたがいいと思うぞ』

「そうだな。さて、俺も寝るとするかね」

 

 そうして俺はそのまま寝室へと向かっていった。

 

 最後の1文。「英雄として現れる」

 ……ラーズグリーズ隊、いやウォードッグ隊はまさにラーズグリーズ伝説の通り漆黒の悪魔となり、一度死に、そして英雄として現れた。

 

 俺は……あの時海に沈み、一度死んだんだと思う。それが何故か生きてここにいた。

 まさか、運命とやらは俺に英雄になれとでも言ってきてるんじゃないだろうかと……ふと思った。

 

(ハン……バカバカしい)

 

 心の中で否定する。仮にそうだったとしても俺に英雄なんてなれる訳が無い。かつてみだりに力を振るい、その責任とまともに向き合う事すらできなかった俺が英雄になれるとは到底思えない。

 エースコンバットシリーズの作中で英雄となりえた「彼ら」と俺は違うのだから。




いかがだったでしょうか?
チョッパーの最後とケストレルが沈む時は無意識のうちに敬礼してた作者です。
エスコン5はホント映画のようなストーリーだわ……(ソフトが手元にないため動画で復習しながら)
因みにラーズグリーズ伝説の所はPVから。自分は中古で購入した人間ですが、発売当時あのミスリードに引っかかった人間はいるんじゃないでしょうか?
それではこの辺で。次回でまたお会いしましょう。
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