Fleet Combat -Dawn of the horizontal line- 作:大川静真
しかし放り投げる訳にもいきませんね。エタらないよう頑張っていきます。
翌日に新しくなった2人の艤装を装着しての訓練を予定していたのだが、朝から生憎の雨模様となり仕方なく室内で任意訓練と相成った。
現在は昼食を終えて午後。俺は基地の資料室にて艦娘についての資料の類がないか調べていた。
軍事機密なのに資料室に残っていたりして大丈夫なのかと疑問に思ったが、どうやら以前は別の場所に厳重に保管されていたらしいのだが襲撃による基地放棄時に資料を持ち出されたり処分されることが無かったらしい。
それでその後妖精達が状態のよい資料類を整理を兼ねて資料室にまとめたという事だ。
しかし、基地の放棄時に廃棄を行えない程に指揮機能が混乱していたのか、或いは別の理由でもあったのかね……
まあ、俺にとってはこうやって調べる機会があったためラッキーではあるが。
「しかし、見当たらないな……」
パラパラと流しで見てはいるが大体書かれてるのは戦況の類や資材管理状況、艦娘の状態や参入状況等々……俺の目にかなうそれらしい資料は一切見当たらなかった。
(そもそも俺は艦娘の何を調べようとしてたんだろうか……)
艦娘とはどのような存在なのか。どんなふうに生まれたのか。何故深海棲艦に唯一対抗できるのか。そもそもどうして女性体しか存在しないのか……疑問は尽きないがどんな内容を俺は望んでいたんだろうかと、ふと疑問に思ってしまった。
そのまま変な疑問がどんどん浮かんでいき、あまつさえ今夜の晩飯は何だろうかなどという関係ない疑問まで浮かんできてしまい、頭を整理することすらままならなくなっていく。
「……ええい!」
こんな状況で調べ物なんてできるか!次碌なものじゃなかったらここで中断だ!
俺は勢いよくかぶりを振り、最後と決めた資料を取り出した。
「……んん?」
取り出した資料はどうやら報告書の類だったらしい。日付は去年の10月、俺の来る1年近く前。だが問題なのはそれだけではなかった。
「「確認された外観の違う深海棲艦個体について」……どういうことだ?」
これはひょっとしてひょっとすると当たりの類か?
内容を読んでみるとどうやらこの報告書がまとめられる少し前から艦娘達が航海中に突然深海棲艦の襲撃を受けるという事例が散見され始めたという事だそうだ。
襲撃して来た個体数は多い時でも3体、少ないと単艦での襲撃との事。ただ、どうやらその襲撃して来た深海棲艦の個体が確認されている個体とは大きく違う部分が確認されているらしい。
例としては誤差範囲だと深海棲艦の武装ユニットの位置やサイズが違ったり、一部が異常に肥大化していたりらしいのだが、果ては体格が倍以上違ったり姫クラスがフラグシップ個体の特徴である金色のオーラを纏っていたという冗談と思いたくなるような報告も上がっている。
そして、すべての個体で報告に上がっているのはどうやら他の個体とは一線を隔する機動力や性能を持っているらしい。どうやらこの深海棲艦相手に壊滅させられた、或いは遠征中に遭遇して半壊させられ撤退せざるを得なかった艦隊も決して少なくないらしい。
「おいおいおい……大きい体格の個体って言えば」
思い当たる節が1つある。というかほぼあれで確定のような気がする……
「あの時戦った特異個体……」
俺の中で浮かんだのは時雨と白露の2人が再生液剤に漬けられていたあの駆逐イ級特異個体……しかもこの報告書にはそれ以外の個体も存在していると書かれている……
さらには深海棲艦を束ねる存在でもある姫クラスの特異個体まで確認されているとなると、非常に厄介なことになるな。
艤装装着時に知識として得た程度ではあるが姫、或いはその下のクラスである鬼クラスは深海棲艦の中でも上位に位置する存在らしく、自ら意思を持ち人語すら理解すると知識にはある。それこそ彼女達がいる場合、下位クラスの深海棲艦達が戦術的行動や編隊機動を取れるようになるともある。
ただ、現在鬼や姫クラスは西方海域や北方海域の最深部、或いは南方海域や中部海域に居を構えてはいるが、人類側の大規模作戦を察知すると現れるとも知識にはある。
どんな理由があるのか分からないがその姫クラスが単独で遊撃にあたっているとなると……かなりまずいな。下手をすると俺自身も姫クラスと遭遇する可能性がある……
仮にそうなった場合、現状の戦力で勝利をつかむ可能性かなり低いだろう……
「あいつら」を直掩隊じゃなく攻撃隊に使えば敵の艦載機は問題なくなるんだろうが……
「これは主任に見せたほうがいいな……しかし主任は現在機械類のメンテで忙しいみたいだからなぁ……うーん」
今日の朝に主任から工廠に入らないように釘を刺されたのを思い出して俺は頭を抱える。何でも開発機械と精錬機のメンテナンスだそうでその間武装の開発はお休みだそうだ。
それを告げられた時に俺はその辺の対応は専門家に任せるのがベストと判断して二つ返事で了承したのだ。
……仕方ない、これは俺が保管して後日主任に見せる事にしよう。
調べ物を終了させて、俺の寝泊まりしている部屋に資料を置いてから特にやることの無くなった俺はぶらぶらと基地の廊下を歩いていた。
外で空手の型などで体を動かしたくもあったが、窓の外では今もなお雨が降り続いており、外出ができそうもない。
一応雨の中でも行動はとれるが翌日に風邪でも引こうものなら笑えない事態になる。
まあそんな訳でただいま絶賛暇を持て余し中なのだ。
時刻は既に午後3時を回っているが、空は完全に雨雲に覆われている。
「どうするかね……ん?」
廊下を1人歩いていると前方に窓の外を見ている時雨の姿が見えた。何か外にあるのだろうか。
「時雨」
「圭?どうかしたの?」
「いや、暇だったんで辺りをぶらぶらしてたらお前の姿が見えてな。そういうお前は何か見てるのか?」
「僕は外を見てたんだ」
そう言って時雨は窓の外を向く。俺の方もつられて外を見やるが外は相変わらずも雨模様である。
「いい雨だね」
「そうなのか?」
「うん……圭は雨は嫌いなのかな?」
「そうだなぁ……」
時雨の言葉に俺は顎に手をやり考える。確かに雨はあまり好きではない。正直俺は外で体を動かすことの方が多かったしそれが出来ない雨天というのは正直あまり好きではない。
「すまんが正直雨はあまり好きじゃないな。俺としては外で体を動かすことが出来ないってのが痛い。時雨は雨が好きなのか?」
「うん。僕はこんな風に優しく降る雨が好きだな」
「そうか……まあ、雨が嫌いな人間も普通にいるが、雨が好きな人間がいたっていいさ。その辺はその人の感性だしな」
「僕は人間じゃなくて艦娘だけど……」
「確かに一般的には艦娘だけどな、俺からしたらお前達は船の力を使えるだけの人間だと思ってるよ」
「…………うん」
少し長い沈黙があったが時雨は小さく頷いた。
そして再び時雨は窓へと向き直り、外を見る。俺もつられて窓の外を見る。
誰も、喋らない。俺も時雨も言葉を発すること無く外の雨をただ見るだけで時間だけが静かに過ぎていく。
「圭」
「ん?」
唐突に時雨に呼ばれたので俺は時雨に顔を向けた。時雨は何やら真剣な眼差しで外を見ていたが、やがて俺に向き直った。
その時の時雨の表情は何か……俺の全てを射抜かんとしているかのように、鋭い。
「さっきの言葉。船の力を使えるだけの人間って言葉だけど……」
「ああ」
「どうして圭は、そういう風に僕達艦娘を一人の人間って思えるの?」
「ふむ……」
聞かれて俺は考える。何故そう思えるのか……ねぇ。
どういう意味を持ってそう問いかけてきているのかさっぱり分からん。
悩む俺にしびれを切らしたのか時雨は付け加えて来た。
「僕達の存在がどんなものなのかは圭は分かるよね?」
「ああ」
「今は太平洋戦争や大東亜戦争って呼ばれてるあの戦いで戦い、沈んでいったかつての船達。それが船としての力はそのままに人の器を与えられたのが僕達艦娘」
「確かにそうだな」
時雨の言葉に俺は頷く。その辺りはケストレルの艤装を付けた時に与えられた知識から知っている。
「僕達は「見た目は」確かに人間かもしれない。だけどその中身は、この体の中に持つ力は人のそれとは大きく違うんだ。確かに艤装を装備していない時は身体能力が多少高いだけの人間と大差ないよ。だけど、人の範疇から逸脱した、船としての力である艤装を使い、既存兵器で碌にダメージを与えられない深海棲艦と渡り合う。それが僕達艦娘なんだ」
「……」
「圭の言っている事はそんな僕達をただの人間と同じ扱いをしている事なんだよ……」
「それが、問題でもあるのか?」
「あるよ」
きっぱりと、時雨は断言した。
「圭、さっきも言ったけど君はどうして僕達を1人の人間って思えるの?僕達は人とは明らかに違う力を持っている筈なのに……それこそ、今世界の海を席巻している深海棲艦とベクトルは違えど非常に近い力を持っている僕達だよ?そんな僕達をどうして圭は普通の人間として思えるの?僕達が……怖かったりしないの?」
時雨は、先ほどと変わらず鋭い目で俺を射抜いている。それこそ嘘偽りやはぐらかしを許さないと言わんばかりに、だ。
俺は溜息を吐いてワンテンポ置いてから、続けた。
「時雨達も、時雨達が持つ力も俺は全く怖いとは思わないよ。力の強さで言うんだったらむしろ俺の持つケストレルと艦載機の性能のそれがもっと恐ろしく感じるよ」
「どうして?」
「だってなぁ……お前達艦娘は第2次世界大戦のそれの筈だろ?だが俺の艤装は近代に近いそれなんだ。分かるだろ?ミサイルだのジェット戦闘機だの果てはコンピューター制御による防空システムだ。大戦期に存在していたか疑わしいレベルの代物を自由自在に扱えるんだよ」
「……」
「それこそ、深海棲艦じゃなくお前達に向けたとしても蹂躙しかねない程の力だからな。時々それを考えて慌ててそれがいけない事だって否定したりしてるよ」
「もしかして、昨日圭が考えていた事って……」
「ああ……考えてしまったからなぁ……それを考えた時ってのがすごい怖いんだよ。みだりに力を振るって、恐れられたら俺はどうなるんだろうかってね」
俺は、さらに続けた。
「それにだ、自分達が怖くないのかって思ってくる相手には恐怖は感じないよ。そうやって自分の力が恐ろしいと思える奴は、力の振るう事の意味を理解しているようなものだと俺は思ってるからな。だから俺はそういう風に考える事ができる時雨が、時雨達艦娘が怖くはないよ」
「そっか……」
俺の言葉に納得したのか時雨はどこか安堵したかのように肩の力を抜いた。
「あーーーーー!圭さんに時雨、2人で何かしてるーーーー!!」
そんな雰囲気を思いっ切りぶち壊す声が廊下に響いた。誰が大声を出したかは振り向かずとも分かる。
「うるさいぞ白露。単に雑談してただけだ」
「ほうほうほほうほう……なーんか怪しいなー。私を除け者にして内緒話ですかー?」
納得がいかない白露は近くまでヅカヅカと歩いて来てジト目で俺の顔色を窺ってくる。
「ま、まさか猥談!?「それはない」あいたっ!」
とんでもない発言をしてきたのでとりあえず軽い手刀を喰らわせて黙らせる。白露は涙目で無言の抗議を見せてくるが無視だ無視。
時雨の方も苦笑いしてるし……全くこいつは……元気なのはいいことだがハイテンションもほどほどにしてもらいたいものだ。
「さて、俺は部屋でゆっくりしておくから2人も自由にしてていいぞ。何かあったら遠慮なく呼んでくれ」
「うん、分かったよ」
「はーい!」
そのまま俺は2人と別れ、部屋へと戻っていった。
それにしても……どうして時雨は「自分が怖くないのか?」何て問いかけて来たんだろうか?
ジェット戦闘機は大戦後期にはドイツのMe262、イギリスのグロスターミーティアがいましたし日本でも橘花が2機だけとはいえ完成してましたね。
ミサイルの方も有名どころではドイツのV1やV2、誘導爆弾のフリッツXとかも実戦投入されてましたね。後者はミサイルと言っていいのか分かりませんが。
さてさてちょっとした伏線を張ったというかそうでもないような今回の話ですがいかがだったでしょうか?
ではではこの辺で。次回「#8 エスコート-Escort-」にてお会いしましょう。
???「ドイツの科学は世界一チィィィィ!!」
作品違いますよ。お帰り下さい