アクセル・ワールド〜星の白金〜   作:冴え渡る

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花京院からアプリをインストールしてもらった彼はその夜、《加速》を体感する事になる。
現実の自分など関係の無い、新しい自分と向き合う事を決めたのだ。


プラチナの煌き

花京院の家から帰った夜の事、彼はとても悲しい夢を見た。

いつもと同じように独りでいるクラス。

周りの生徒は自分を避け、教師もこちらを見ない。

少し離れた場所にいる花京院はこちらを見ているが、その視線はとても憐れみを含んでいた。

周りの人間はどんどん増えていく。

そして自分を大きく囲める程の人数になると、全員で手を繋いで自分を囲んだ。その顔はもはや憐れみを含んではなく、嘲笑しかなかった。

自分もあの中に混ざりたい。

孤独は嫌だ。独りの世界は嫌だ。

 

強く、硬い、煌めくような絆が欲しい。

 

『俺の、俺の望みはーーー』

 

 

 

次の日、彼は花京院の教え通りに連絡を入れる事にした。

前日、花京院は彼に『絶対に自分に連絡を入れる前にグローバル接続をするな』と言われていたのだ。理由は分からないが、彼が言うなら間違いは無いだろう。

「………………花京院」

『…………あ、おはよう。いい夢は見れたかな?』

花京院の物言いに少しイラッときたが、その鬱憤は今度会った時に腹に撃ち込んでやろうと決め、とりあえず話しを続ける事にした。

「その言い方、昨日の夜に何を見たのか検討がついてたんだな?」

『悪く思わないでくれよ?その夢は君のアバターを決める為に必要なものなんだ』

「んなゲーム聞いた事無ぇぜ」

『だとしても実際にそうだから仕方がないね。………それで?どんな夢を見たんだい?』

「……………………嫌な夢だった」

『迫害された……は無いね。君に危害を加えていた奴は全員、君自身がぶちのめしていし。失恋……も無い、トラウマ………なら孤独かな?』

「……………この質問も必要なのか?」

彼は触れて欲しくない部分に触れられて、無意識の内に声を低くくし、少し口調が荒くした。

花京院も流石にまずいと思ったのか、直ぐに謝罪をして話を変えようとする。長年の付き合いでこういう時の対処は慣れていた。

『………悪かった、この話はやめるよ』

「ゲームについて教えてくれ」

『分かった』

花京院はゲームの内容と操作方法について教える。

こういう時の花京院は説明がとてもうまく、理解しやすいので彼は気に入っていた。

『このゲームはオンライン格闘ゲームだ』

「……………昔ジジイの家でやった事のある『鉄拳』みたいな奴か?」

『あれは戦闘を画面越しに見ていただろ?このゲームは自分が戦うんだ』

「それは珍しいな」

『昨日教えた《加速》があるだろう?あれを行う為に必要なポイントを貯めるには、戦闘で勝つしかないんだ』

「《加速》………確かにかなりの技術ではあるが、どの程度のポイントなんだ?」

『初期のポイントは100。同レベルに勝つと10貰えて、負けると10奪われる。そして加速には1必要になるんだ』

「レベルやスキルの概念は?」

『レベルは10まである。数人しかいないらしいけど………僕はまだ5だからね』

「スキルは?」

『スキル、というよりは必殺技があるね。スキルじゃなくてアビリティだけど………かなり珍しい』

「お前の必殺技とアビリティは?」

『必殺技は『エメラルドスプラッシュ』、アビリティは『結界』だね』

「まんまじゃねぇか。…………とにかくやってみるぜ」

『くれぐれも負けないでくれよ?このゲームは再インストール出来ない』

 

彼は花京院との会話を打ち切り、グローバル接続をした。

その瞬間、思考が加速した。

 

 

出現したステージは《墓地》。

その名の通り辺りには西洋風の墓がたくさん設置されており、地面から今にも動き出しそうな死体の腕が飛び出ていた。

近くにある割れた窓ガラスを覗き込み自分の姿を確認してみる。

リアルの自分よりも大きい2mはある体格、プラチナ色のラインの入った金属のような筋肉のような肌、身につけている衣服は、褌と殴る事に特化したグローブ、そして淡いオーラのようなものを纏った髪の毛、まるで古代ギリシャの戦士のような外見。

それは祖母から見せてもらった《空条承太郎》のスタンド、《スタープラチナ》にソックリだった。

「確か………殴るのは」

花京院からさわりだけ教わった動きをしてみる。

ビュオォォン!という拳圧が触れてもいない目の前の窓ガラスを粉々に吹き飛ばした。

「…………」

どうやらこのアバター、かなり力があるようだ。

 

自らのアバターの強さに驚いていると、後ろの方角から何者かの気配がした。

なぜかこのゲーム、というか恐らくこのアバター、周囲の環境の変化にかなり敏感らしいのだ。風の向きから建造物の影の位置の些細な変化、地面の死体の動きまで鮮明に見えるし聞こえるのだ。

先程のパンチとこの視界から察するに、パワーとスピード、そして動体視力はかなり高いのだろう。

上の体力ゲージのようなものには《プラチナム、スター》、反対側には《ターコイズ・スナイプ》と書かれていた。

タァン!という銃声がした後、ほんの一瞬だけ時間を空けて銃弾が飛んでくる。

「⁉︎、うぉぉお!」

咄嗟の判断で拳で銃弾を殴りつけた。

最初は拳が吹き飛んだと思い確認をしてみるが拳には傷一つ付いていない。

それどころか銃弾を掴んでいた。

「まじかよ!」

かなり離れた場所からそう聞こえた。

恐らくこの《ターコイズ・スナイプ》という名前、自分の対戦相手なのだろう。

名前から察するにスナイパー、そしておそらく自分に近づく意思はない。

このアバターのステータスが気になり、色々と試してみる。

「……………とりあえず」

相手に向かって全力で駆けてみる。

「く、くんのかよ⁉︎」

相手はかなり焦っているようだ。かなり的外れな場所に銃弾を放ってくるし、隠れているくせに声を荒げている。

「…………次は」

銃弾を連続で弾いてみる。

わざと相手が撃ってくる場所を予測し、その場所に移動して銃弾を拳で弾いてみる。

銃弾が拳に当たる直前、銃弾がスローモーションで見えた。

少し力の向きを工夫して弾いてみると銃弾を狙った方向に、狙った弾き方で弾くことができた。

(かなり精密な動きもできる、パワー、スピード、動作、視力、聴力、後は………)

耐久力、そして持久力

それを計測するために銃弾をわざと受けてみる。

ガスッ!ガスッ!と銃弾が自分の体を削ってくる。

体力バーを見てみるとおよそ1割程度、火花を散らしながら自分のゲージが削られていた。

連発の出来ないタイプの威力が高い銃弾を数発、防御もせずに喰らっているのにこのダメージ、恐らく耐久力もかなりあるのだろう。

 

なら最後は

 

「悪いが、ぶちのめさせてもらうぜ」

相手の銃弾を避け、拳で弾きながら進むと、相手の懐まで辿り着いた。

初心者(ニュービー)の癖になんだよその強さ…………」

相手はすでに諦めたような声で、銃を地面に落としていた。

「?俺は強いのか?」

「………………銃弾を弾き飛ばすとか、この距離を数秒で縮めるとか……どんな性能だよって感じだよ、そのアバター」

「………やっぱ強いのか」

やはりこのアバターはかなりの強さがあるようだ。先程の性能から強いのではと思っていたが、実際に相手からそう言われると確信めいてくる。

「早いとこやってくれよ………もう抵抗する気力も起きねぇ」

「………………じゃあな」

 

全力で相手の腹に拳を叩きこむ。

すると相手の胴体に穴がぽっかりと空き、相手はその場に崩れた。

 

 

 




アバターの初期必殺技は《突き》。
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