激しくぶつかり合う拳と拳、闘争本心むき出しの30分間の剣闘士の世界に彼は酔いしれた。
現実世界では曝け出すことが許されない思い、蓄積された周りへの鬱憤、全てを吐き出すことができた。
久しぶりに晴れ晴れとした気分で登校することが出来た。
「ふぅ…………」
流石に連続でのゲームは疲れが来る。
彼は最初の戦闘の後、1時間でリアルでしておくべき事を消化し、その後に朝まで連続で《加速世界》へダイブした。
ポイントは400近く溜まった。……………このポイントの使い道はわからないが。
そろそろ登校しないと時間的にまずいので身支度をして家を出る。
いつもは煩わしく感じる太陽が、今日はとても親身に感じた。
久しぶりに熱くなれるゲームと出会えたのだ。
それも
いつもよりも軽い足取りで学校へと向かった。
学校に着くと何やら色んな話でいっぱいだった。
なんでもあの《黒いの》が誰かに振られただとか、1学年下の煩かった馬鹿が問題を起こしただとか。
数多くの話題は今時の中学生を騒がせるのに最適だった。
(………バーストリンク)
口の中でそう唱えた後、自分以外の全ての動きが停止した。まるで時が止まったかのように。
実際は1000倍の速度で自分の思考が加速しているのだが。
この手の話題には興味が無いので、自分には関係無いという顔で静かに昨日のように加速をした。
そしてこの学内ローカルネットでネームリストを見る。
すると自分以外にバーストリンカーがいる事が分かった。ネームリストに二人、《プラチナム・スター》以外に《シルバー・クロウ》《ブラックロータス》がいるのだ。
「銀、黒…………確かメタルカラーはレアとか言ってたな」
自分の《プラチナム・スター》の特徴、それは『熱に強く、打撃に強く、斬撃に強く、重く、不変である。そして金よりも貴重なカラー』つまりはほぼチートである。
昨日の戦闘でわかった事、それは《腐食》は完全には防げないという事だ。
貴金属である白金の特徴とほぼ同じの特徴を持つ自分のアバターは、殆どのステージギミックや攻撃を無力化するがするが、腐食だけは完全には防げない。だがそれでもチートである。
速度はかなり早い。
戦闘相手が全力で逃げてもすぐに追いつくほどだ。四肢の動きも早く、銃弾を連射してくる相手の銃弾を全て弾き落とせた。
まるで腕が何本もあるかのように見えたほどだ、明らかにこのゲーム全体から見ても上位に位置するのではないだろうか?
力もそうだ。
聞いた話では青に近いカラーほど近接攻撃力が高くなるようだが、昨日の最後の戦い、コンビニに買い物に行った時に戦った青い侍のようなやつと取っ組み合いをしたが難なく勝てた。
ステージの厚い壁もぶち抜けたし、力もかなり高い。
精密性に関しては本当に恐ろしいほど高い。
銃弾を弾く時、ほんの少し集中するだけで狙った方向の狙った場所まで弾けるのだ。とにかく思い通りに動かせる。これに関しては本当にトップレベルのステータスなのではないだろうか?
アビリティ《
基本動作であるパンチを連続で繰り出せるのだ。その間、オラオラと煩く言わなければならないのは目を瞑る。
必殺技は無いが、このアビリティがあれば問題ないだろう。
実際、この半日でどっぷりと《加速》を用いたゲーム《BB》に嵌っているのが分かる。
校内でここまでテンションが高くなったのは久しぶりだ。
気分も良くなり今すぐにゲームをしたくなったので、普段はあまり近づかないラウンジで遊ぶ事にした。
久しぶりにラウンジに行くと、本来ならあまり来ないはずの丸っこい1年があの《黒いの》と同じテーブルにかけているのが見えた。
あの人物が誰かと同じ席にいるのは珍しかったが、関係の無い事なので少し離れた席に着き、食事をしながら合間に加速をする事にした。
(バーストリンク)
瞬間、彼を除くその場の全員が動きを止めた。
筈だった。
「………⁉︎他のプレイヤーか!」
「えっ?」
「バーストリンカーだと!」
なんとその場にいたあの二人も加速者だったのだ。それも同じタイミングで加速したようだ。
「その外見………《黒いの》か」
「………そういう君は《番長》じゃないか」
「えっ、ちょ、えっ?」
《番長》と呼ばれた彼と侮蔑を込めて《黒いの》と呼ばれた彼女は大体の状況を飲み込めたようだが、その場にいる一年だけがこの状況についていけていないようだ。
「まさかこの学内に私以外のバーストリンカーがいるとはな………どうやってネームリストから………⁉︎ネームリストにいるだと⁉︎」
「昨日始めたんでな」
「き、昨日、?」
「なぁ、そこの一年。俺と勝負しないか?」
「ぼ、僕ですか?」
「いや、今暇でな?対戦相手を探していたんだが………この学内には他にいないらしい」
「待てッ!そんな勝負は認めないぞ!彼にはまだ戦闘説明をしていない!」
「あぁ?ひょっとしてお前がこのゲームをその一年に教えたのか?」
「………………あぁそうだ」
「じゃあお前でもいい、戦おうぜ」
「………私は戦わん」
「はぁ?」
彼はその言葉を聞くととても残念そうに肩を落とした。せっかく学内で見つけた数少ないバーストリンカーは二人とも戦わないというのだ。
これでは久々に見つけたゲームも楽しめない。
「……………はぁ、じゃあいい」
「………は?」
「戦わないんだろ?………バーストアウト」
そう言うと彼は加速世界から抜け出して、現実世界で食事をし始めた。
原作突入です。