「どっどどどどうしよう……やっぱりブラックジャックでも精製したほうが……」
「だからダメだってば!ていうかあの人の手術代高いんだよ⁉︎」
「ダメよー!私は慶を助けるんだからー!」
「あーもう!面倒なんだから!」
(でもカナちゃんがここまで取り乱すなんて……どんだけけーちゃんのこと好きなんだろう……。姉弟の関係なのに……)
なんて考えてると、栞が下からトタトタとやって来た。
「栞?」
「これ…お兄様に……」
持ってきたのは濡れたタオルだった。
「あ、ありがとう栞。でもごめんね、お姉ちゃん今このお姉ちゃん抑えるので忙しいから栞が乗せてきてくれるかな?」
「分かった」
そのままガチャッと扉を開けて、栞は中へ入った。
「い、今……出すからね、慶!」
「もうっ!お姉ちゃん!そんなものでけーちゃんが治ってもこの国が破産しちゃったらけーちゃんは喜ばないよ⁉︎」
「っ! ………そ、そうかもしれないけど……」
「それにただの風邪なんだから、ほんと冷静になってよ」
「ごめんなさい、取り乱したわ……」
「とにかく、中で看病してあげようよ。あと大人しく寝かせてあげよう?ね?」
「ええ。そうね」
そのまま二人で部屋に入った。中では、真っ白な布を顔に被せた慶がベッドの上で横たわっていた。その横では栞が俯いて下を向いている。
「け、慶……?」
「そんな、けーちゃん!」
2人が涙目で慶に駆け寄った。だが、
「なんだようるせーな」
ひょいっとタオルを取って慶は起き上がった。
「栞!タオルの掛け方違うわよ!」
「それは亡くなった人にかける奴でしょ⁉︎」
「ご、ごめんなさい……」
シュンっとする栞。その2人に慶は不機嫌そうに言った。
「ったく、頭に響くから黙ってろよ……」
「ほんっとに風邪引いてても態度だけは変わらないのね」
奏にじと目で睨まれる。
「まぁとにかく、辛かったら言いなさいよ」
「辛くないから平気。なんならこの状態で町内一周でも……」
「やめなさい!わかった!平気なのは分かったから!」
そう奏が言うと、慶は布団にもぐった。
「あーあ……昔はカナちゃんとか呼んでくれてて可愛かったのになぁ……」
「人は成長する生き物なんだよ。てか、今の俺にカナちゃんって呼ばれて嬉しいか?」
言われて顎に手を当てて考える奏。
『カナちゃん、コーラ買ってこい』
「………それはそれでありかも」
「あ?なんか言った?」
「なんでもないわよ!それよりお腹すいたんじゃない?お粥作ってきてあげる」
「サンキュ」
慶が礼を言うと二人は部屋を出た。すると、栞も部屋を出た。
「栞?」
「どうしたの?」
「栞も、作る」
「うん。分かった」
そのまま三人でクッキングした。その頃、慶。
「あー。頭痛い。まぁ自分の好きなことしてれば治るよな」
そんなこと言いながら慶はPSPを付けた。ネクプラだ。
「うー懐かしい。ユニコーンにしよう」
出撃。アーケードでボスルートしかない奴を選択した。
「バナージ・リンクス。ユニコーンガンダム、行きます!」
そう言って出撃した時だ。扉の開く音がして急いで布団の中に潜ってPSPを隠し、電源を切った。
(やっべぇ〜……作んの速すぎだろあいつら……!)
「お兄様」
「ん、栞?どした?」
「おかゆ」
「しおりの手作り?」
「うんっ」
「それだけで心がピョンピョンするわ」
「うんっ?」
「なんでもない。いただきます」
慶はそう言うと、手を合わせてありがたくいただいた。
*
そんなこんなで、翌日。
「治ったー!」
慶が元気よく手を挙げた。
「良かったね、お兄様」
「もう、心配かけさせないでよ」
栞、茜と声をかけられる中、慶は微笑みながら会釈した。すると、三人のいる部屋に奏が入ってきた。
「お、カナちゃん。治ったよけーちゃん」
「良かった」
「………………」
「? どうかしたか奏?」
顔色悪い奏がどんよりとした声で言った。
「……なんか、頭痛い……」
「「「…………」」」
無限ループって怖い。
長かった割にオチが微妙になってしまった……。