俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第14話

 

季節はぶっ飛んで、クリスマス。葵の誕生日となった。で、櫻田家は思いっきりクリスマスの準備をしている。もちろん、それはカモフラージュで葵の誕生日をサプライズでやるつもりなのだが、

 

(私の誕生日も一緒に祝ってくれるのね)

 

てな具合にモロばれていた。

 

「手伝おうか?」

 

と、葵が気を利かせても、

 

「間に合ってるから!」

 

と、光が断っている。そんな様子を見ながら慶は立ち上がった。

 

「や、葵。悪いけど買い出し手伝ってくれ」

 

「ち、ちょっとけーちゃん⁉︎」

 

いきなり振り返って光は慶に耳打ちした。

 

「どういうつもり⁉︎内緒にするんだよ⁉︎」

 

「ああ、わかってる。だからこそある程度手伝わせないと不自然だろうが。買い出しならクリスマスパーティのってことにもできるし勘付かれる事もないだろ」

 

慶が言うと、目からウロコ!って感じで「なるほど」と呟く光。

 

「ま、ここは俺に任せろ。岬、買い出し手伝え」

 

「えっ⁉︎な、なんで?」

 

「何買うのか俺知らんし。葵も知らねーと思うから頼むわ」

 

「わ、分かった!」

 

「いいよな葵?」

 

「うん。いいわよ」

 

そのまま三人で出掛けた。

 

「じゃ、まずはプレゼント交換用の物でも買いに行くよ!」

 

張り切って岬はそう言うと、葵と慶の少し前をタタタッと走る。

 

「元気ね、岬ったら」

 

「ああ。悪いな葵。もう少しだけ気付いてないフリしててやってくれ」

 

「あら、何のことかしら?」

 

うふふっと微笑む葵。それを見て慶は思わずため息をついた。

 

「嫌な姉だ」

 

「嫌な弟ね」

 

二人は岬の後を追った。どっかのデパート。岬は必死に葵のコートを選んでいた。

 

「岬様、こちらはどう……」

 

「全然ダメ」

 

店員さんの勧めを見もせずに一蹴すると、岬は別のコートを取る。

 

「つーかさ、」

 

と、慶が口を挟んだ。

 

「クリスマスプレゼント交換のプレゼントを選ぶんだから、三人ばらけた方がいいよな」

 

慶がそう言った瞬間、岬がまた耳打ちした。

 

「何言ってんのよ!葵姉さんのプレゼント選ぶんでしょう⁉︎」

 

「バーカ。んなことしたら不自然だろ」

 

「でもサイズとか分からないじゃない!」

 

「その位テメーで考えろ。いいな?」

 

「むぅっ……分かったわよ」

 

そんなわけで三人ばらけた。

 

「さて、何を買うか……」

 

慶はとりあえず、一階に降りておもちゃ屋のガンプラコーナーへ向かった。

 

(さて、葵が好きそうなモビルスーツ……葵、グフ、いやそれは安直過ぎる。それに葵が鞭を持つタイプには見えない。と、なるとズゴックとか?や、それ俺が好きなだけだし……ハンブラビ?ダメだ、葵のオッパイデッカいし……)

 

などと思考を巡らせた結果、ダブルオーガンダムに決定した。そのMGを買って慶はおもちゃコーナーを出て、ブラブラ歩き回ると、視界を塞がれた。

 

「あ?」

 

「だーれだ?」

 

「ババァ」

 

「このまま目、潰しとく?」

 

「冗談ですごめんなさい」

 

言うまでもなく葵だ。

 

「どしたの?」

 

「私は買い物終わったから。って、慶も終わったのね」

 

「ああ。今欲しいか?」

 

「後にするわ」

 

二人はテキトーに近くの店に入った。暖房入ってるから。二人はエスカレーターの足元のベンチに座ると、慶がすぐに立って近くの自販機で缶コーヒーを二本買いに行った。

 

「ほい」

 

「あら、ありがと」

 

「誕プレなそれ」

 

「あら、ありがとう」

 

なんて言い合いながら二人はコツンと乾杯して一口飲む。

 

「慶はさ、選挙はどうするの?」

 

唐突に葵が聞いた。

 

「参加しないよ」

 

「へ?そ、そうなの?」

 

「当たり前だ。俺は王様なんて器じゃない」

 

「そうかなぁ、頭もいいし……」

 

「頭良くて王様になれるわけじゃないだろ。農業・牧畜業、水産業、林業、狩猟業、鉱業。第一次産業だけでこの数だ。それだけじゃなくて第二次、第三次とまだまだまとめなきゃいけないものはあるし、これらは内政の一部でしかない。他にも他国との貿易だの外政だのなんだのって考えただけで頭が痛くなる。そんなんやりたがるやつの気が知れんわ」

 

「………」

 

「なんだよ」

 

「ううん、ちゃんと考えてるんだなって思って」

 

「当たり前だろ。仮にやるとなったとして、革命が起こるような政治には出来ない。全国民の生活を俺がまとめなきゃならないんだ。税金にしてもなんにしてもな。そんなの俺には合わないよ」

 

「うーん……むしろそこまで考えてるのって慶以外にいないと思うし、慶こそお似合いだと思うんだけど……」

 

「とにかくやらない。俺はせいぜいサポートするまでだ」

 

「じゃ、質問を変えるね。慶を除いた9人で、誰の力になりたい?」

 

「栞」

 

「」

 

と、即答した時だ。店の中央のレジで悲鳴が聞こえた。

 

「?」

 

「なに?」

 

真ん中には拳銃を持った覆面の奴が5人ほどいた。

 

「出口は抑えた!」

 

「動くな!全員、妙な真似したらぶっ殺すぞ!」

 

強盗だった。

 

 


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