『第5位は……』
そう言うと、みのもんたバリに引っ張る司会。そして、口を開いた。
『岬様です!』
「遥に負けたぁー!」
岬がうがぁー!と絶望的な声を上げた。そんな中、慶は遥の胸ぐらを掴んだ。
「おい……。てめぇは俺より上なんだろうな……」
「えぇ?いや知らないけど……」
「上じゃなかったらマジで許さんぞ」
「そんなこと僕に言われても困るよ!」
「お前のその歪みを断ち切る」
「むしろ歪んでるのは兄さんの方だよ!」
『第4位、遥様!』
「よし、殺す」
「待って待って!ぼ、ボルシチ!」
「ごめんなさい」
「ほんと弱いね……」
『では、第1、2、3位は纏めて公開したいと思います!』
その声が響き、全員がテレビを見た。葵か、奏か、慶か。
「おい、まじ頼むぞ。一位なんてなった暁には暴動が起こす」
「やめなさい。猫を飼うわよ」
「やめとくわ」
「猫を飼うわよって……斬新な脅迫だな……」
修が呆れた時だ。テレビにランキングが映った。
一位 慶様!
二位 葵様!
三位 奏様!
「ちょっと自爆テロ起こしてくる」
「待って待って!落ち着い……ボルシチ!」
「落ち着く」
「なっ、なんで⁉︎」
ボルシチを使った慶と茜の心温まる茶番の後、奏が声を上げた。それに応えるように司会が解説を始めた。
『えー今回は慶様のものすごい快進撃でしたが何があったのでしょう?』
『それなんですがね、彼は少し前まで喧嘩や校則違反などで一番人気がなかったのですが、その喧嘩の理由のほとんどが苛められそうになっていた人を助けるとかだったようですごく支持を集めていますね』
「ち、ちげーから!俺別に助けたわけじゃねーから!た、たまたまボコったら結果的に助けになっただけだから!」
『それと、アイドルの米澤紗千子さんからですね。ストーカーに追われていたところ、助けていただいた、ともあります』
「ち、ちげーから!お前なんて助けてねーから!あの時は肩ぶつかって買ったばかりのファンタ落としてブチギレただけだから!」
「あー……最近さっちゃんがけーちゃんのこと顔を赤らめながら聞いてくるのってそういうことだったんだー」
光が声を漏らした。
『他にも定期テスト毎回トップ、バイクに乗ってる姿がカッコイイ、アレはツンデレの素質有り、などありますね』
「おーい最後の。誰だ殺すぞ本当に」
「ツンデレ……慶……」
そう呟くと奏は妄想する。
『べ、別に奏を助けたとかそんなんじゃないからな!ムカつく奴がたまたまいたってだけだからな!勘違いすんなよ!』
「…………イイ」
「カナちゃん鼻血!」
「ふえっ?」
なんて馬鹿やってる中、慶は炬燵に頭を打ち付ける。
「どうする……どうやって順位を下げる……」
なんてブツブツ呟いてると、父親が部屋に入ってきた。
「おーう、みんないるなー」
「どうしたの?」
茜が聞いた。
「今回、こんな感じの結果が出たと思う。ポイントが高いのも低いのもいたな。だから明日、逆転のチャンスを与えようと思う」
「へ?」
*
そんなわけで、外。ルールは二つのチームに別れて写真のペットを捕まえるようだ。先にとらえて勝利したチーム全員に100pt渡し、そのポイントを譲渡できる。さらにそのポイント1につき一万票の価値があるようだ。
「重要な事前情報として1.この一枚の写真、2.目標はこの街から外には出ていかないだろうということ、3.名前はミケだそうだ」
と、父親が言った。そんなわけで、クジでチーム分け。
A:茜、慶、岬、遥、輝
B:葵、奏、修、光、栞
となった。
「よーっし、じゃあさっそく探しに行こう!」
と、岬が言ったのだが、その襟を慶が掴んだ。
「待てバカ」
「んげっ!」
潰れたカエルみたいな声を出す岬。
「何するのよ!」
「お前ら、今回のターゲットがこの鷹だと思ってるバカは何人いる?」
手を挙げたのは四人だった。つまり、慶以外全員。
「どこまで素直な奴が多いんだよ」
「何よ、違うの?」
茜が聞いた。
「ちげーよ。写真の左下あんだろ?ここに猫がいる。こいつがミケだ。鷹にミケなんて名前付けるわけないだろ」
「な、なるほど……」
「向こうも葵いる以上、この事に気付いているはずだ。だから、栞を誘拐する」
「えっ……」
「おい引くな岬。ロリコンじゃないから。シスコンだから。俺は。あいつと遥がいれば俺たちに負けはない。だけど栞の誘拐に夢中になれば先手を打たれる。岬の分身二人と輝、頼む」
慶が言うと岬は分身し、三人は走って行った。
「茜、携帯の通話入れっぱなしで飛べ。遥が場所を指示する。お前なら建物を避ける必要はないだろ」
「う、うん」
「残った岬は全員バラて探す。俺と遥は一緒に行動する」
「なんで?」
「俺が向こうのチームならまず遥を消すからな。向こうには修がいる。地球の裏側に飛ばされるかもしれない。まぁお前は俺が守るさ」
「兄さん……少し気持ち悪い」
「ホモじゃないぞ」
「その前に一つだけ聞かせてくれる?」
「なんだよ」
「どうしてそんなにやる気出てるの?」
「は?」
遥が聞くと、茜が言った。
「そんなの、決まってるじゃん。誰かにポイントを譲渡するためでしょ?」
「違う。俺はやるからには勝つ男だ。特に奏に負けるのはなんか腹立つ」
「ああそう……」
「じゃ、行くぞみんな」
行動開始した。