俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第21話

 

 

 

 

3月になりやがった。葵は卒業し、春休みに入り、それぞれの学年が一つずつ上がろうとするこの頃、奏は張り切っていた。

 

(慶の誕生日プレゼント……何がいいかな)

 

そんな事をかんがえながら街を歩いている。

 

(あの子の喜ぶもの……まず鞄や衣類は論外ね。ゲームかガンプラ、漫画の大人買い……)

 

すると、見掛けたのはブックオフ。

 

(いえ、中古品はやめておきましょう)

 

そう決めるととりあえずヤマダ電機に入った。ここなら本もガンプラもゲームもある。とりあえずガンプラコーナーへ。正体が奏だとバレると選挙に響くので、帽子と伊達眼鏡をかけている。そして、メモ帳を開いた。慶の持ってるガンプラを全て記入してある。

 

(…………ダブらない様に選ばなきゃね)

ちなみにこの日のためにガンダムシリーズのアニメを全て見た奏である。で、改めてメモを見直した。

 

(………なるほど。慶は実弾系の武器を使うモビルスーツが好きなのね。と、なると……)

 

奏は候補の中にハイゴッグを入れておいた。

 

(次はゲームね)

 

ゲームコーナーへ向かった時だ。奏の携帯が鳴った。

 

「もしもし?」

 

『あー俺。慶』

 

ギョッとする奏。

 

「なっ、何⁉︎」

 

『いやーもうすぐ茜の誕生日だろ?だから誕生日プレゼント買うの手伝ってくれ』

 

(ほっ……そっちか。良かった)

 

と、思いつつ言った。

 

「別に構わないわよ。何処にいるの?」

 

『駅前のスタバ』

 

「分かった。今行くわね」

 

そのまま通話を切った。

 

(慶とデート♪)

 

とか考えながら。

 

 

 

 

だが、待ち合わせ場所に着いた瞬間、奏は固まった。慶が知らない女……いや知ってるけど知らない女と一緒にいたからだ。

 

「つまりねけーちゃん。もう春になるから冬物より夏物の方が……」

 

「なるほど……。あ、奏来た」

 

慶がそうつぶやくと手を振ってくる。それに対して奏は氷の微笑で返した。

 

 

 

 

「「で、どういうこと?」」

 

2人にジト目で睨まれる慶。

 

「いやだからどういうこともなにも2人に手伝って欲しいんだって。茜へのプレゼント。俺、女心とか皆無だし」

 

「「そのようで」」

 

声を揃える2人。心底ビビりつつも慶は言った。

 

「あー……とりあえず紹介するわ。さっちゃん」

 

「…………さっちゃん?」

 

その紹介を聞いてさらに機嫌の悪くなる奏。

 

「で、さっちゃん。こっちのおっぱい魔人が奏」

 

「…………どうもです」

 

「失礼ですが、」

 

と、奏が口を挟んだ。

 

「慶とはどのような関係で?」

 

「お友達です。ね?けーちゃん」

 

「え?あ、ああ。まぁ」

 

「…………けーちゃん?」

 

声を低くしてそう復唱する奏。

 

(えっ、俺今なんかマズイこと言ったかな……)

 

「けーちゃんったら優しいんですよ。今日もここのお金奢ってくれるみたいで」

 

「そりゃ、まぁ付き合ってもらってるわけだし……」

 

「なら私の分も出してもらおうかしら?」

 

「いやお前は姉だろ。そうだ、むしろお前が俺の分奢れよ」

 

「……………はぁ?」

 

ギロリと睨む奏に心底ビビる慶だった。

 

「お、奢らせていただきます……」

 

そんなわけで、修羅場になった。

 

 


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