3月になりやがった。葵は卒業し、春休みに入り、それぞれの学年が一つずつ上がろうとするこの頃、奏は張り切っていた。
(慶の誕生日プレゼント……何がいいかな)
そんな事をかんがえながら街を歩いている。
(あの子の喜ぶもの……まず鞄や衣類は論外ね。ゲームかガンプラ、漫画の大人買い……)
すると、見掛けたのはブックオフ。
(いえ、中古品はやめておきましょう)
そう決めるととりあえずヤマダ電機に入った。ここなら本もガンプラもゲームもある。とりあえずガンプラコーナーへ。正体が奏だとバレると選挙に響くので、帽子と伊達眼鏡をかけている。そして、メモ帳を開いた。慶の持ってるガンプラを全て記入してある。
(…………ダブらない様に選ばなきゃね)
ちなみにこの日のためにガンダムシリーズのアニメを全て見た奏である。で、改めてメモを見直した。
(………なるほど。慶は実弾系の武器を使うモビルスーツが好きなのね。と、なると……)
奏は候補の中にハイゴッグを入れておいた。
(次はゲームね)
ゲームコーナーへ向かった時だ。奏の携帯が鳴った。
「もしもし?」
『あー俺。慶』
ギョッとする奏。
「なっ、何⁉︎」
『いやーもうすぐ茜の誕生日だろ?だから誕生日プレゼント買うの手伝ってくれ』
(ほっ……そっちか。良かった)
と、思いつつ言った。
「別に構わないわよ。何処にいるの?」
『駅前のスタバ』
「分かった。今行くわね」
そのまま通話を切った。
(慶とデート♪)
とか考えながら。
*
だが、待ち合わせ場所に着いた瞬間、奏は固まった。慶が知らない女……いや知ってるけど知らない女と一緒にいたからだ。
「つまりねけーちゃん。もう春になるから冬物より夏物の方が……」
「なるほど……。あ、奏来た」
慶がそうつぶやくと手を振ってくる。それに対して奏は氷の微笑で返した。
*
「「で、どういうこと?」」
2人にジト目で睨まれる慶。
「いやだからどういうこともなにも2人に手伝って欲しいんだって。茜へのプレゼント。俺、女心とか皆無だし」
「「そのようで」」
声を揃える2人。心底ビビりつつも慶は言った。
「あー……とりあえず紹介するわ。さっちゃん」
「…………さっちゃん?」
その紹介を聞いてさらに機嫌の悪くなる奏。
「で、さっちゃん。こっちのおっぱい魔人が奏」
「…………どうもです」
「失礼ですが、」
と、奏が口を挟んだ。
「慶とはどのような関係で?」
「お友達です。ね?けーちゃん」
「え?あ、ああ。まぁ」
「…………けーちゃん?」
声を低くしてそう復唱する奏。
(えっ、俺今なんかマズイこと言ったかな……)
「けーちゃんったら優しいんですよ。今日もここのお金奢ってくれるみたいで」
「そりゃ、まぁ付き合ってもらってるわけだし……」
「なら私の分も出してもらおうかしら?」
「いやお前は姉だろ。そうだ、むしろお前が俺の分奢れよ」
「……………はぁ?」
ギロリと睨む奏に心底ビビる慶だった。
「お、奢らせていただきます……」
そんなわけで、修羅場になった。