そのまま三人でヤマダ電機へ。
「おいお前ら。茜の誕プレでなんでヤマダ電機だ」
「いいじゃない、意外と喜ぶかもよ電化製品」
奏がしれっと答えた。
「いや意外性狙いですか……」
「いいから黙って付いて来なさい」
「俺が付き合ってもらってるはずなんだが……」
納得いかない顔ながらも慶はついていった。で、到着したのはガンプラコーナー。
「ってお前ら!誰の誕プレ買いに来てるか分かってんの⁉︎」
と、いうツッコミも無視して二人は選んだ。すると、慶は「おっ」と声を上げる。
「へぇ、ガーベラじゃん。もう発売してたんだ」
「? それなに?」
紗千子が聞いた。
「ああ、これはガンダム試作4号機。カッケーだろ」
「そうね。でもガーベラって何処かで聞いたような……」
「おっ。お前ガンダムいける口か?そのガーベラはガーベラテトラじゃない?」
「確かキララの機体だよね!」
「あーそっち選んじゃったかー……」
ガッカリする慶。すると、奏が口を挟んだ。
「ガーベラ・テトラ。元々はガンダム開発計画においてガンダム試作4号機。強襲、突撃、白兵戦用というコンセプト。ガンダム開発計画が漏れた後に外観をジオン系MSであるかのように仕様変更してある」
と、ポケモン図鑑のような説明をした。
「………でしょ?」
「お、おう……。奏って、ガンダム好きだったの?」
「ちょっと興味出ただけよ」
「いや絶対嘘ですしおすし」
紗千子も少し引いていた。
「で、何よ。これ欲しいの?」
「あ、あー。いや別にそういうわけじゃないんだが、俺は今はほら、サイサリスかドーベルウルフが欲しいし……」
「ふーん……分かった。もういいや。行こう」
「は?もういいの?」
「うん」
そのまま奏と慶が去ろうとした時だ。
「ま、まって!少しだけようあるから!」
「は?ガンプラコーナーで?」
「い、いいから待ってて!」
そう言うと紗千子はガンプラの方へ。
「ガンプラ買うのか?」
「ほら慶はこっちに来なさい」
「は?いや待ってろって……」
「だからこっちで待つわよ。乙女心くらい考えてあげなさい」
「はぁ?」
「早く」
「わ、分かったよ……」
仕方なく慶は離れた。
*
そのまま三人でしばらく買い物をした。結局、慶が茜に買ったのは鞄とGNアーチャーのMGだった。ちなみに少し前の奏と修の誕生日にはセラヴィーとアリオスをプレゼントしている。
今は帰宅中。
「いやーいい買い物したわ」
「慶、せっかくだから米澤さんを送って行ってあげなさい」
「!」
「はぁ?いやいいけど……」
「じゃ、なるべく早く帰ってこないでね」
「なにそれ、俺に帰らぬ人になれってか?」
「だいたいあってる。じゃ、またね」
そのまま別れ、慶はまた紗千子のマンションの前。
「じゃ、またなさっちゃん。今日はマジ助かった。サンキューな」
「う、うん。それでさ、けーちゃん」
言うと、紗千子はバッと手に持っていた紙袋を慶に突き出した。
「はいっ」
「あん?」
「誕生日、おめでとう」
「…………えっ?これ俺に?」
「中、開けてみて」
言われて慶は紙袋を受け取り、中を見るとドーベンウルフが入っていた。
「おおおおお!ドーベンウルフじゃないか!マジでくれんの⁉︎本当に⁉︎」
「うん」
「マジかァァァァ‼︎俺お前大好きだわ!」
「ふえっ⁉︎」
「や、マジでサンキューな!今度絶対なんかお礼するから。じゃな!」
言うだけ言って慶は帰って行った。
*
慶は帰宅していた。家に帰ったら茜の誕生日会だから少し楽しみにしていた。ケーキが食い放題だからだ。
「ただいまー」
と、家に入ると、茜がリビングの前で待っていた。
「おう、茜」
「あ、けーちゃん……」
「どした?何してんの?」
「また準備できてないって締め出された……」
「おい、それ茜に言うのかよ。葵の時に比べて雑過ぎるだろ……」
「とにかく大人しく待つことにするよ……」
「じゃ、俺は中に入ってるぞ」
「なんでよ!けーちゃんも誕生日でしょ⁉︎主役だよ⁉︎」
「待機、怠い」
「ちょっ……ダメだって……!」
だが、茜の静止を無視して慶は部屋に上がり込んだ。そしたら、パンパンパーンッ!とクラッカーが鳴った。
「…………あ?」
『茜、慶。誕生日おめでと〜!』
「「…………へ?」」
二人して間抜けな声を出す。
「ふふ、大成功ね」
葵が微笑んだ。そして、遥が解説する。
「葵姉さんは、慶兄さんが待つことをしないことを予測して茜姉さんを待機させたんだよ」
「なるほど………」
「まぁ驚いてたし、サプライズにはなったんじゃない?」
奏がまとめると、まぁそれもそうだねーみたいな空気になった。そんな中、栞が一歩前に出た。慶の方だ。
「どうした栞?結婚する気になった?」
「修お兄様がよろこぶって言ってた、栞から、誕生日ぷれぜんと」
で、手招きする栞。頭に「?」を浮かべながら慶はしゃがんだ。すると、
「んっ」
「」
頬にキスされた。その時だ。慶はうごかなくなった。
「うれしい?」
「」
「おにいさま……?」
返事はない。隣にいた茜も不審に思い、慶の肩を掴んだ。
「ちょっと、慶?………死んでる」