俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第24話

 

とある日。葵が自室にいると、ノックの音がした。

 

「葵、入っていいか?」

 

慶の声だった。

 

「いいわよ」

 

「失礼しまーす」

 

珍しく礼儀正しく入ってきた。と、思ったらポテチの袋とか抱えていた。

 

「どうしたの?一緒に食べたいの?」

 

「あーまぁそんなとこ」

 

「あら素直」

 

「少し聞きたいことあってさ」

 

「なぁに?」

 

「葵の本当の能力って何?」

 

その瞬間、ギクッとする葵。

 

「な、なんのこと?」

 

「ウソ下手だなーお前。ってことは、本当の能力じゃないって俺の勘は正しかったってことだな」

 

「いいえ。私の能力は完全……」

 

「見たことは全部覚える……だったか?だが他の兄弟の能力は学力にはプラスにもマイナスにも支障は出ない能力ばかりだ。だが完全記憶だけは明らかに異質だ。やろうと思えば誰でもできる」

 

「そうかなぁ?私は3年前の今日のお昼とかも覚えてるけど?」

 

「そんなもん、テキトーに言えばどうとでもなる。誰も覚えていないことだからな」

 

「…………」

 

「まぁどれも俺の推測だけど。違うか?」

 

「…………お姉ちゃん悲しい。そんな疑い深い弟になっちゃって……」

 

「うるせーバカ。まぁ俺にとっては能力なんてどうでもいいことなんだけど」

 

「じゃあなんで聞いたのよ」

 

「気になったから?もしかしたら俺と同じで能力ないんじゃないかなーっと」

 

「残念な理由だったのね……。でも残念ながら私は能力あるわよ」

 

「ケッ、ツマンネ。じゃあいいや、なんでもない」

 

そのまま慶は部屋を出ようとした。だが、扉が開いて鼻に直撃した。

 

「オゴッ!」

 

割とモロに直撃したらしく、鼻血を抑えて悶える慶を無視して入ってきた茜は葵に土下座した。

 

「葵姉様、高校ご卒業おめでとうございます」

 

「えっ?あっ、いやうん」

 

「これからは私はお姉ちゃんの手を借りず、一人で登校しなければなりませんね」

 

「あ、ああ。うん。そっか…」

 

「うっ……うぐっ、ふぐううううううっっ」

 

「ちょっ……茜⁉︎本気で泣いてる⁉︎」

 

「うええええええええっっ‼︎」

 

「お、落ち着いてよ!ほら、そこにいる慶もいるんだし……」

 

「葵、いい歳して鼻血出ちゃった……ティッシュない?茜は後で殺す」

 

「はい」

 

慶がティッシュを鼻に入れている中、茜は言った。

 

「今のままではお姉ちゃんに心配をかけてしまうことでしょう……。しかし私にはお姉ちゃんに頼ることなく登校を成し遂げる覚悟があります。その証明として今からお買い物に行ってきます」

 

「一人で⁉︎大丈夫なの⁉︎」

 

「丁度いいな。オイ茜、テメェ俺に鼻血出させた詫びとしてついでにガンプラ、ドラクエ、モンハン、黒バス全巻、劣等生全巻、あとトイレットペーパー買ってこい。もちろんお前の金でな。一つでも忘れたら町内全裸でうさぎ跳びな。5兆周」

 

「慶、やめなさい」

 

葵に止められたのだが、慶は止めない。

 

「いやいやぁ、ハードルは高いほうがいいでしょう」

 

「高過ぎよ、いくらなんでも」

 

「分かった!けーちゃん、私頑張る!」

 

そのまま行った。

 

「慶」

 

「何」

 

「鬼」

 

「知ってる」

 

 

 

 

そのまま慶は葵の部屋を出た。が、すぐに遥にMS図鑑を借してることを思い出し、部屋に向かった。

 

「遥、はいんぞ」

 

「ふぁっ⁉︎」

 

返事を待たずに入った。すると、高速でパソコンを閉じる遥。で、恐る恐る慶の方を見た。すると、真顔だったのだが、目を閉じて顎に手を当てる。そして、目を開くと、目玉だけで遥を見た。で、

 

邪悪にニヤリと口を歪ませた。

 

一発で嫌な予感のする遥。その瞬間、慶が飛び掛った。

 

「ちょっ……!やめっ……!」

 

「遅いな」

 

いつの間にか慶はパソコンを奪っていた。

 

「ちょっ!見るなよっ……!」

 

「黙れ」

 

軽く腹パン決めて黙らせると、お腹を抱えて苦しむ遥を無視してパソコンを開いた。映っていたのは茜の写真だった。で、さらに口を歪ませる。

 

「へぇ、何これ?」

 

「い、いや……それは、その……」

 

「もしかして、茜お姉ちゃんの観察日記的な?うわあ、シスコンもそこまで度を超えるとちょっとキチィわぁ〜……てか普通に引く」

 

「ち、違うよ!ていうかパソコン返せよ!」

 

「残念ながらその願いは叶わない。これは茜に上納する」

 

「それはやめて!お願いだから!」

 

「だが断る!」

 

「んなっ……⁉︎」

 

なんてやってると、ガチャッと扉が開いた。

 

「何してるの?」

 

茜が入ってきた。遥の世界が終わる音、確かに聞こえた。

 

 


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