「と、いうわけだ茜。この弟はパソコンで茜の写真を見ながらハァハァしていた」
と、慶が宣言したものの、茜は遥のお腹をさすっている。
「腹パンされたんだって?大丈夫?」
「平気だよ……。痛いのは一瞬だったから」
「まったく、酷い兄もいたものだよね」
言いながらジロッと慶を睨む茜。どうやら、写真の件はなかったことになりそうだ、と遥が一息ついたときだ。
「で、なんで私の写真なんて見てたの?」
全然助かってなかった。
「そうだぞ遥。オカズにするんならこんなペチャパイより奏とかのがデカいぞ」
「あんたは黙って死んでて。で、なんで見てたの?」
「死ん……⁉︎そこまで言うかね普通……。てかお前買い物は?」
「遥に付いてきてもらおうと思ったらこんな事になってたから……」
「一人で行くんじゃねーのかよ」
「お、お姉ちゃんの手を借りないって言ったんだもん!」
「てか俺のお使いも含んでんだからマジ早く行けよ」
「あんなにたくさん買ってこれるわけないでしょ⁉︎」
「さっきは威勢良くうなずいてたくせに……」
「あ、あれはその場のノリで……」
「男に二言はねぇだろ!」
「私は女だよ!」
「男らしい胸して何言ってんだ。俺の方がおっぱいデケェぞ!」
「けーちゃんのは大胸筋でしょ⁉︎」
で、茜は遥に抱き着く。
「遥ぁ〜。けーちゃんが私の胸バカにする〜……」
「う、うん………」
「で?写真はなんなの?」
「このタイミングで⁉︎」
「ふーん……言わない気なんだ?」
「ま、待って!そんなこと言ってない!……いや言うとも言ってないけど……」
すると、慶が携帯を開いた。
「あーもしもし岬か?実は遥が……」
「待って待って!もう少しだけ考えさせてください!」
「どーぞ」
「………………」
「タァーイムアァーップ」
「早過ぎない⁉︎」
「もしもし岬……」
「わかった!言う!言いますから!」
遥が言うと慶は携帯をしまった。
「実はこれ、僕たち王族のファンサイトなんだ。これに茜姉さんの写真とかが色々はっ付けられてて。僕はそれを遠回しにやめさせようとしてたんだよ」
「なんだツマンネ」
「ふ、ファンサイトって……どんなこと話すの?」
恐る恐る茜が聞く。
「それは、可愛いとか、なんだとか……見えただの、見えてないだの……」
「見えたって、何が?」
「そんなん決まってんだろ。パンツだよ」
慶があっさり言うと茜は一発で顔を真っ赤にする。
「おっ、この茜パンツ見えてね?ほらっ」
「やめて!見ないでぇ!」
「あ、これブラスケしてる。てかお前いまだにスポブラしてんのかよ……」
「やめてってばぁ!」
顔を真っ赤にしてパソコンを奪おうとする茜だが、慶はものともせずに躱す。
「まぁ別に俺に見られるくらいならいいじゃねぇか。中2くらいまで一緒に風呂入ってたんだし、その頃から体型変わってないし」
「一々、私の体をバカにしないと会話出来ないわけ⁉︎」
涙目でそう言うと茜は泣きながら「おねえちゃ〜ん!」と部屋を出て行った。
「兄さんってさ、」
「ん?」
「ドS?」
「まぁ、『ド』が付くほどかどうかは分からんが」
「あっそう……。でもあんま茜姉さんを虐めないであげてね」
「おっ、なんだ。浮気か?」
「いや彼女いないから僕」
「岬」
「違うから。茜姉さんが慶兄さんに虐められて泣き付くのって大抵は僕か葵姉さんなんだから」
「あー……そういやそうか。大変だな。お前の姉と妹は」
「岬は姉だよ」
「へ?そだっけ?」
*
ある日の学校の図書室。慶が本を取ろうとした時だ。別の人と手が重なった。
「「あっ」」
横を見ると、佐藤花が立っていた。
「あっ、修の彼女」
「かっかのっ彼女だなんて……まだそんな関係じゃないですよ!保留って話だし!」
「そうすか。これどうぞ」
ひょいっと本を渡した。
「えっ?け、慶くんも読みたかったんじゃ……?」
「いや、彼氏の分のお弁当作ろうと頑張ってる人がいるなら譲りますよ」
「なっ、なんでわかったの⁉︎………じゃない!違いますから!」
「いや遅過ぎますよ……」
「むぅ……先輩をからかうなんてぇ……。ていうか慶くんは料理とかするの?」
「それなりには出来ますよ。この前、栞のためにマルゲリータピザ作りました」
「よくそんなの作れるね⁉︎」
「ていうか俺は基本的に出来ないことありませんから」
「………そういえば修くんも慶くんは料理上手って言ってた気が……」
「修くんって呼んでるんですね」
「ちっ違っ……!だからからかわないでよ!」
「はいはい。じゃ、俺はこれで」
「あっ、待って!」
「はい?」
「この本、読みたかったんだよね?よかったら、一緒に見ない?」
「えっ、いいんすか?」
「うん。そうすれば慶くんもまた別の日にここに来ることもなくなるでしょ?」
「や、そういう事じゃなくて……。まぁ佐藤先輩がいいならいいんですけど」
「全然大丈夫だよ。ほらあっちの机空いてるし」
「は、はぁ」
そのまま慶は後ろをついていった。
「………あれは佐藤と……慶か?」