自宅。慶が茜とモンハンをやってるときだ。携帯が鳴った。
「悪い茜、電話だ。キャンプ戻る」
「ええっ⁉︎ジンオウガ亜種二頭は一人じゃ厳しいよ!」
「ならお前もキャンプ戻れ。………っと、もしもし?」
『あ、けーくん?』
「さっちゃんか、どした?」
その言葉に耳がピクッと動く茜。
『その、少し相談があるんだけど』
「相談?俺に?なんで?」
『詳しいことは会った時に話したいから。空いてればでいいんだけど』
「When?」
『明日とか……』
「いいよ。何処に待ち合わせ?」
『うーん……あまり人目の付かないとこがいいんだけど……』
「ならいいとこあるぜ。とりあえず○○駅前でいいか?」
『うん。じゃあまた明日ね』
「おー。変装忘れんなよー
『分かってるよー』
通話は切れた。
「…………アイドルってのも暇なのか?光とかなんかいつも家にいる気がするし……。っと、お待たせ。片方は角も尻尾もないからさっさと……」
「けーちゃん!」
「お、おう何?」
「今の電話の相手、誰?」
「あ?…………あっ」
やっべぇーっと頭に手を当てる慶。
「ねぇ、誰?誰なの?さっちゃんって言ってたよね?ねぇ、誰?誰?誰?」
「ヤンデレかお前は。落ち着けよ。そして少し待て」
慶は電話をかけた。さっちゃんにだ。だが、留守電になる。
「…………やっぱアイドルは忙しいみたいだ」
「ねぇ誰なの⁉︎」
「うるせぇカス。だーってろ」
少し悩んだものの、このままだとこいつしつこいなと思い、言うことにした。
「お前の思ってる奴だよ。米澤紗千子」
「えええええええええッッ⁉︎」
「うるせぇ!」
「知り合いだったの⁉︎なんで⁉︎どうして⁉︎」
「ストーカーとカツアゲをボコって知り合いになった」
「…………。あぁ、そういうこと」
「よくわかったな今ので」
「何年けーちゃんと一緒にいると思ってるの?」
「なんだろー。素直に喜べねー」
「それで、明日さっちゃんとデートなの⁉︎」
「はぁ?ちげーよ。相談受けてるから乗るだけだよ」
「相談なんて受けるような仲なの⁉︎」
「あーまぁそうなんのかな」
「私も!私も行きたい!」
「ダメ」
「なんでよ!」
「だってお前絶対めんどくさいもん」
「どういう意味⁉︎」
「1、監視カメラを避ける必要がある。2、さっちゃんに会うとお前は絶対暴走する。3、向こうはアイドルなのにお前はアホだからバラしかねない。4、王族二人と一緒になると向こうにも気を遣わせる。よってお前は連れて行かない」
「えぇー!そんなぁ……」
絶望的な声を上げて項垂れる茜。すると、慶の携帯がまた鳴った。
「もしもし?」
『ごめんね!電話くれた?今仕事終わったところ!』
また紗千子だった。
「あーいや大した事じゃないからいいよ。ごめんなわざわざ」
『ううん。あ、そういえばさ……』
と、2人が電話で楽しそうに話すのを恨みがましい顔で睨む茜だった。
*
翌日。慶はバイクに跨り出発した。その上空を茜と何故か遥が尾行する。
「行くよ遥」
「ちょっと待ってなんで僕……」
「いいから行くわよ」
飛んだ。で、慶は待ち合わせ場所に到着。
「おーい、さっちゃん」
「あ、けーくん!」
トテテと慶の元へ走る紗千子。
「五分オーバーだけど謝らない」
「何それー」
なんでやってる二人を上空で見ながら遥は呟いた。
「………バカップルか。吐きそう」
「うわあ!本物のさっちゃんだよ遥!」
「お願いだから能力解除しないでね。僕死にたくないよ」
地上でら慶がヘルメットを紗智子に被せている。そして、二人乗りをすると出発した。
「早かったり怖かったりしたら言えよ」
「うん」
言われて紗千子は、顔を赤らめて慶の腰に若干強く抱きついた。
「もっと飛ばすから」
「あれ⁉︎飛ばしちゃうの⁉︎」
なんて話しながら慶の向かった場所は小さなプラモ屋だった。
「着いたぜ」
「プラモ屋?」
「ああ、ここなら誰にも何も聞かれないだろ」
「いやプラモ屋で相談ってシュール過ぎだよ……。いいよ近くのカフェで」
「えー俺新しいガンプラが欲しいんだけど……」
「何しに来たのよあなた……。まぁいいわ。10分だけ待ってあげるから買っておいで」
「うーっす」
そのまま走って店に入った。その頃上空。
「ないわー」
「ないわー」
二人は声を揃えた。
*
そんなこんなで、どこぞのスタバ。
「で、相談してもいいかな?」
「ああ。どうしたんだ?」
「桜庭ライトって、知ってる?」
「知らない」
即答だった。妹なのに。すると、紗千子は話し始めた。
「聞いといてよかったわ……。私の後輩のアイドルなんだけどね?その子が、その……ライブに手を抜いているように見えるの。だけど、才能があるからプロデューサーとかはその子を伸ばすつもりでいる。でも、私は負けたくないの。私は才能とかじゃなくて、地道に努力してここまで来たから………」
「すいませーん!チョコパフェ一つ!」
「話聞いてます?」
「ああ。で、つまりどういうこと?」
「つまり、その……負けたくないの」
「あっそ。闇討ちでもすればいんじゃね?」
「真面目に聞いてるんですが」
「冗談だ。まぁ才能に勝ちたいってのは分かるよ。俺も努力はして来たからな」
「そ、そうなの?」
「ああ。俺だけ王族で能力ないだろ?だから比べられるのが嫌で勉強運動その他諸々努力してきたからなぁ……」
「なるほど……」
「けど、途中でやめたよ。努力するのを」
「な、なんで?」
「中3最後の剣道の大会。足の筋やっちゃって出場すら出来なくなった」
「っ」
「その時思ったんだ。俺は何のために努力してたんだっけって。で、周りに比べられたくないからってすぐに思い出した。けど、なんで周りに比べられたくなかったのかって思った。その問いに答えは出なかった。そして思ったんだ。別に他人は関係ないって。ていうか、他人と自分を比べたところで下らない優越感が劣等感しか感じられないんだ。競争原理とか言うけど、あれマジ意味分からん」
「……………」
「まぁ少なくとも俺の考えだけどな。だからそいつがライブで手を抜いてるのに売れようがどうだろうが関係ない。自分が頑張ればそれでいいんじゃねーの?」
「チョコレートパフェです」
「あ、ども」
そのまま慶はパフェを一口いただいた。
「そっか……。そういう考え方もあるんだ……」
「まぁ、あくまで俺のポリシーだけどな。お前も自分なりのモットーとかあったりすればそっちに従えばいいんじゃね?」
「ありがとう。参考になった」
「あんま参考にしないほうがいいと思うけどな。あ、ついでにその夜神ライトって奴見せてくれよ」
「桜庭ライトよ。ほらこの子」
携帯には光が写っていた。
「ぶふっ!」
「ちょっ、大丈夫⁉︎」
「ごめっ……平気」
光かよ……こりゃ家でなんか言っておこうと心に決めた時だ。目の前に封筒を渡された。
「あん?」
「次のライブのチケットです。良かったら見に来てね」
「ああ。行くよ(光が不安だから)」
そのまま慶は紗千子を送って帰った。で、自宅。
「ふぅ………」
一息つきながら自室に入ると、中には茜と遥がいた。
「「おかえりー」」
「おお。お前と遥に用があったんだ」
「えっ」
ギクッとする2人。慶は笑顔で言った。
「尾行してたろ?」
「「ごめんなさい」」
「殺す。40回殺す」
悲鳴が響いた。