飯の時間。必然的に慶と葵は隣になった。で、慶はお茶碗を左手で持ち白米をかっ込む。
「ちょっ……慶?」
「なんだよ」
「あなたが左手を使うと私がご飯を食べられないんだけど」
「なら食わなきゃいんじゃねー?」
「いやそうも行かないでしょう。少しジッとしてるか片手で食べてくれないと……」
「めんどくせーよ。俺が食い終わるまで待て」
「あなたねぇ……。分かったわよ」
言うと葵は左手で食べられるものから食べて行く。例えばほら、刺して食べられる物とか。
「お姉ちゃん。大丈夫?アレだったら私が食べさせてあげるけど……」
ぷかぷか浮いた状態で茜が言った。
「そんな状態でどうやって食べろって言うのよ……。パン食い競争みたいになるじゃない」
「ご馳走様」
慶が食べ終わった。
「はやっ⁉︎」
「ほら、早く食え」
「へ?」
「なんのために早く食ったと思ってんだ」
言うと慶は照れ臭そうに顔を背けた。
「あー!けーちゃん照れてる!」
「黙れ岬……どの岬だ今言ったの」
『へ?』
今日の家族の約半分は岬だ、その為、飯係の奏も大変だったので茜が手伝っていた。
「しかし、手錠が葵姉さんと慶で本当良かったよな」
「どういう意味?」
修の何気ない一言にさっきからとても不愉快そうにしていた奏が聞いた。だが、修の姿はすぐに消える。が、また現れた。
「い、いやほ」
シュンッ
「……他のと違っ」
シュンッ
「……えさんは外に干し……」
シュンッ
「……る能力じゃな」
シュンッ
「……じゃん?」
「ごめん。何言ってるかさっぱりわからなかった」
「だからこういうとだろ」
慶が改めて言った。
「葵とか遥とか岬以外の能力は他人にも干渉するだろ。だから下手したら俺もふわふわ浮いたり瞬間移動したり小さくなったり大きくなったりしてたかもしんないんだよ。輝とか栞は小さ過ぎて俺の腰死ぬし」
「あー確かに」
「てか遥はともかく、岬は嫌だわ。周りが喧しそうだし」
『どういう意味⁉︎』
「ほらうるさい」
なんてやりながら飯が終わった。
「さて、今日の金曜ロードショーってラピュタだったよな」
「嘘!ラピュタ⁉︎あたしも観たい!」
言いながら慶は葵とソファーに座る。その葵の隣に光が座った。手錠してるから仕方ないが、葵と慶の距離は近い。それを見ると奏は不機嫌そうに舌打ちするも、能力暴走期間のため石の生成をするために部屋に戻った。すると、ラピュタが始まった。
「………うーわ、懐かしい……」
「出たよ。ムスカ」
「あ、出た。ここ本当シータすごいって思うよねー。殴るとは……」
「あ、飛行石」
「おー。懐かしい」
などと話している時だ。隣の葵がモジモジし始めた。
「どうした?」
「う、うーん……ちょっと、トイレに行きたいなーなんて……」
『はぁ⁉︎』
その場にいた光と遥とその他岬が立ち上がる中、慶は呑気に言った。
「じゃあ行くか」
『ええっ⁉︎』
「早く行くぞー。もうすぐシータとパズーがめちゃくちゃ逃げるいいとこなんだから」
「ま、待ってけーちゃん!」
ぷかぷか浮いてた茜が顔を赤くして声を上げる。
「と、トイレって事はお姉ちゃんのまん……っ!あそこを見ることになるんだよ⁉︎」
「別に姉弟なんだから問題ねーだろ。それに繋がってんのお互いの片腕だけなんだから、見られたくなかったら俺はトイレからはみ出てればいいし」
「そ、そうだけど……」
「安心しろよ。動画撮って売ったりはしないから」
「うん。したら国外追放する」
(うわあ、怖ぇ……)
と、思いつつも慶と葵はトイレに行った。
「あっ、そういえば……」
「どうした?」
「トイレの紙って右側に付いてたなって思って……」
「あー俺入るしかないのか。てかうんこ?」
「殴るわよ?」
「ごめんなさい……。まぁいいじゃん、姉弟だし」
「姉弟だから問題あるとも思うんだけどね……」
なんて話しながら二人でトイレに入る。お互いに向かい合った。
「………………」
「………………」
「…………早く脱げよ」
「いや、見られてると脱ぎにくいなーって……」
「ああ、悪い。目、閉じてるわ」
慶は目を瞑った。ちなみに頭の中ではじゅげむを唱えていた。すると、自分の左腕が揺れた。
(…………ああ、紙か。つーかウンコしてんのに無音なのな。流石、葵様)
で、バシャアァァッッと音がする。流し終わったなと思い慶が目を開けるとズボンとパンツを履こうとしてる途中だった。
「あっ」
「えっ?」
若干、顔を赤くする葵。
「悪い」
まったく顔色を変えずに目を閉じる慶。少しイラっとする葵だったが、なんとか堪えてズボンとパンツを上げた。
「いいわよ」
「おお。じゃ、ラピュタ見るか」
「うん」
リビングに戻った。
*
「終わったー!」
「やっぱいつ見ても最後ラピュタ飛んでく時は切なくなるよねー」
「分かるわー」
「じゃ、お風呂入って寝るわよ」
葵が言うと、はーいっと全員が声を上げた。そのまま茜やら光やらは風呂に向かった。
「葵、今日風呂入んの?」
「うん。当たり前でしょ」
「…………そう。まぁいいけど」
なんとなく嫌な予感のする慶だった。