俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第29話

 

 

 

 

そんなわけで、風呂。上半身は修の空間移動で脱がしてもらい、下半身は自分で脱いで入浴。あ、一応言うけどタオルくらいは巻いてるからね。

 

「さて、入ろっか」

 

「ん」

 

二人で入浴。

 

「先に洗えよ。俺は後でいいから」

 

「そう?ありがとう」

 

特に気にした様子もなく、葵はシャワーの前に立ってお湯を出した。

 

「? けーちゃん?」

 

「なんだよ」

 

「なんか、顔赤いよ?」

 

「い、いやなんでもない……」

 

「あー、照れてるんだ?たかが姉弟なんだから欲情しないんじゃなかったの?」

 

「や、その……見る分には何も思わないんだけど……その、こっちが見られるのは……」

 

「………なるほどね」

 

言いながら葵は悪戯っぽく微笑んだ。普段、太々しい慶がタジタジしているのだ、こんな痛快なことは滅多にない。

 

「そうだ、慶。良かったら背中洗いっこしない?」

 

「はぁ?」

 

「ただ待ってるだけじゃ暇でしょ?」

 

「あー……まぁ、うん」

 

「じゃ、後でお願いね」

 

で、葵はシャンプーをする。無論、右腕には慶の左手が付いているから、なるべく右手を使わないように。で、洗い流すと、今度は慶が頭を洗う番。それも無事終わると、とうとう体を洗う。

 

「はい、お願い」

 

体を洗うスポンジを渡されて、慶はゴシゴシと洗った。

 

「気持ちいい」

 

「なんかエロいな」

 

「スケベ」

 

「男はみんなそうだ」

 

「きゃー。襲われるー」

 

「それはないかな」

 

なんて話しながら背中は終わった。で、葵が体の正面を洗っている時だ。事故は起きた。葵の右手にぶら下がってる慶の左手が葵の胸に触った。

 

「ひゃっ」

 

「あっ」

 

お互い、思わず黙り込む。

 

「…………えっち」

 

「事故だろ今のは」

 

「ふふっ、冗談よ」

 

その後も尻に触ったりとアクシデントはあったものの、なんとか洗い終わり、次は慶が洗う番。

 

「じゃ、お背中お流ししますね〜」

 

「そいつはどーも」

 

なんてやりながら背中を洗ってもらう。

 

「あーこれ確かに気持ちいいわ」

 

「でしょ?昔はこうして一緒に入ってたもの。なんか懐かしいわね」

 

「ああ。そういえば奏は今でもたまに誘って来るんだよな。なんなのあいつ」

 

「えっ、そなの?」

 

「うん。対応に困ってる」

 

「…………少し注意しとくわね」

 

「助かる」

 

なんて話してるときだ。葵はニヤリと笑って見せた。で、

 

「おっと滑った」

 

と、わざとらしく言って後ろから慶に抱き着いた。

 

「ふぁっ⁉︎」

 

予想以上に動揺した慶、思わず後ろにひっくり返った。

 

「えっ、きゃあっ!」

 

そのままどしゃっ!と葵が慶の上に被さるように倒れた。

 

「ってて……」

 

やらなきゃよかったと後悔しつつ、葵が目を開いたときだ。目の前にエリンギがあった。

 

「…………へ?」

 

顔が真っ赤になる葵。そして、慶の目の前にも多少ひじきが生えたダブルの穴が目の前にある。

 

「「あっ………」」

 

二人はしばらく固まった。

 

 

 

 

風呂から出て、睡眠の時間。当然、同じベッドに入った。が、なんか気まずい空気が流れている。

 

「………」

 

「………」

 

お互い、何も喋らない。ていうか何を言えばいいかわからない。なんとか葵が口を開いた。

 

「その、二人で寝るのも久しぶり……でもないか、この前ボルシチに虐められて一緒に寝たわね」

 

「あ、ああ。あの時はおっぱいで窒息させられそうになってびびったわ」

 

「今日はそんなことない様にするわね」

 

「まぁ手錠もあるしな。やるほうがむずいだろう」

 

「そうね……」

 

「そうだな………」

 

会話が止まる。気まずくなってお互いに離れるように寝返りを打った。だが、手錠で繋がれているため、ピンっと一瞬なった後、反動で逆に向かい合ってしまった。

 

「「あっ」」

 

葵の顔が赤くなる。葵なのに。

 

(か、顔が近い………)

 

心拍数が上がっていくのが自分でも分かった。

 

「あ、葵………」

 

慶が声を絞り出した。

 

「な、何………?」

 

「そ、その………」

 

「う、うん………」

 

で、気恥ずかしそうに慶が言った。

 

「………あの、うんこしたいんだけど」

 

ブチッとブチギレた葵は慶の腹を思いっきり蹴った。

 

 

 

 

慶は脱糞中。慶は左手に手錠がついているので、葵は廊下に出ていることが可能だった。待っている最中、考え事をしていた。

 

(私、さっき何を期待してたんだろう……)

 

 


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