そんなわけで、風呂。上半身は修の空間移動で脱がしてもらい、下半身は自分で脱いで入浴。あ、一応言うけどタオルくらいは巻いてるからね。
「さて、入ろっか」
「ん」
二人で入浴。
「先に洗えよ。俺は後でいいから」
「そう?ありがとう」
特に気にした様子もなく、葵はシャワーの前に立ってお湯を出した。
「? けーちゃん?」
「なんだよ」
「なんか、顔赤いよ?」
「い、いやなんでもない……」
「あー、照れてるんだ?たかが姉弟なんだから欲情しないんじゃなかったの?」
「や、その……見る分には何も思わないんだけど……その、こっちが見られるのは……」
「………なるほどね」
言いながら葵は悪戯っぽく微笑んだ。普段、太々しい慶がタジタジしているのだ、こんな痛快なことは滅多にない。
「そうだ、慶。良かったら背中洗いっこしない?」
「はぁ?」
「ただ待ってるだけじゃ暇でしょ?」
「あー……まぁ、うん」
「じゃ、後でお願いね」
で、葵はシャンプーをする。無論、右腕には慶の左手が付いているから、なるべく右手を使わないように。で、洗い流すと、今度は慶が頭を洗う番。それも無事終わると、とうとう体を洗う。
「はい、お願い」
体を洗うスポンジを渡されて、慶はゴシゴシと洗った。
「気持ちいい」
「なんかエロいな」
「スケベ」
「男はみんなそうだ」
「きゃー。襲われるー」
「それはないかな」
なんて話しながら背中は終わった。で、葵が体の正面を洗っている時だ。事故は起きた。葵の右手にぶら下がってる慶の左手が葵の胸に触った。
「ひゃっ」
「あっ」
お互い、思わず黙り込む。
「…………えっち」
「事故だろ今のは」
「ふふっ、冗談よ」
その後も尻に触ったりとアクシデントはあったものの、なんとか洗い終わり、次は慶が洗う番。
「じゃ、お背中お流ししますね〜」
「そいつはどーも」
なんてやりながら背中を洗ってもらう。
「あーこれ確かに気持ちいいわ」
「でしょ?昔はこうして一緒に入ってたもの。なんか懐かしいわね」
「ああ。そういえば奏は今でもたまに誘って来るんだよな。なんなのあいつ」
「えっ、そなの?」
「うん。対応に困ってる」
「…………少し注意しとくわね」
「助かる」
なんて話してるときだ。葵はニヤリと笑って見せた。で、
「おっと滑った」
と、わざとらしく言って後ろから慶に抱き着いた。
「ふぁっ⁉︎」
予想以上に動揺した慶、思わず後ろにひっくり返った。
「えっ、きゃあっ!」
そのままどしゃっ!と葵が慶の上に被さるように倒れた。
「ってて……」
やらなきゃよかったと後悔しつつ、葵が目を開いたときだ。目の前にエリンギがあった。
「…………へ?」
顔が真っ赤になる葵。そして、慶の目の前にも多少ひじきが生えたダブルの穴が目の前にある。
「「あっ………」」
二人はしばらく固まった。
*
風呂から出て、睡眠の時間。当然、同じベッドに入った。が、なんか気まずい空気が流れている。
「………」
「………」
お互い、何も喋らない。ていうか何を言えばいいかわからない。なんとか葵が口を開いた。
「その、二人で寝るのも久しぶり……でもないか、この前ボルシチに虐められて一緒に寝たわね」
「あ、ああ。あの時はおっぱいで窒息させられそうになってびびったわ」
「今日はそんなことない様にするわね」
「まぁ手錠もあるしな。やるほうがむずいだろう」
「そうね……」
「そうだな………」
会話が止まる。気まずくなってお互いに離れるように寝返りを打った。だが、手錠で繋がれているため、ピンっと一瞬なった後、反動で逆に向かい合ってしまった。
「「あっ」」
葵の顔が赤くなる。葵なのに。
(か、顔が近い………)
心拍数が上がっていくのが自分でも分かった。
「あ、葵………」
慶が声を絞り出した。
「な、何………?」
「そ、その………」
「う、うん………」
で、気恥ずかしそうに慶が言った。
「………あの、うんこしたいんだけど」
ブチッとブチギレた葵は慶の腹を思いっきり蹴った。
*
慶は脱糞中。慶は左手に手錠がついているので、葵は廊下に出ていることが可能だった。待っている最中、考え事をしていた。
(私、さっき何を期待してたんだろう……)