俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第31話

 

期末テストが終わり、季節は夏となった。そんな中、慶はネカフェにいた。漫画をダラダラと読んでいると、自分の部屋のドアが開いた。

 

「お兄様、これ読んで?」

 

栞が入ってきた。手に持ってるのは魔法少女まどかマギカの漫画。

 

「う、うん……。そのアニメはやめとこうか……。気持ちはわかるけどリバースカートでミラーフォース潜んでるから……」

 

「…………分かった」

 

素直に従い、栞は引き返していった。慶と栞はネカフェに来ている。と、いうのも色々な行事が重なって、家には慶、栞、茜、岬しかいない。その分、家事とか全部四人でやらなければならないわけだが、栞はまだ出来ない。だから、慶はお得意の交渉術によって栞の世話係として一緒にネカフェに来たのだった。

 

「お兄様、これ」

 

戻ってきた栞が持っていたのはエンジェルビーツの単行本。

 

「………うん、なんかもう何でもいいや」

 

エンジェルの部分に唆られたんだろうなぁと思いつつ慶はパソコンで動画サイトを開く。

 

「アニメあるから、そっちでいいか?」

 

「うんっ」

 

そのまま栞にイヤホンを着けさせて、一話を視聴。その間に慶は銀魂を読んでいた。

 

(じゅげむじゅげむうんこ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生三分の一の純情な感情の残った三分の二は逆剥けが気になる感情裏切りは僕の名前を知ってるようで知らないのを僕は知っている留守スルメメダカかずのこ肥溜めメダカ……今のメダカはさっきと違う奴だから。池乃めだかの方だから。ラー油ゆうていみやおうきむこうペペペペペぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺビチグソ丸………懐かしいなオイ)

 

そんなことを考えながら慶が銀魂を読んでいると、栞が自分の胸前の襟を掴んでふるふる震えていた。

 

(なにこの子可愛い)

 

と、心底思いつつも慶はなんとか耐えて言った。

 

「どうした?」

 

「刺された………」

 

「は?」

 

見れば、音無が天使に刺されている部分だった。

 

(あっ、忘れてたわ)

 

エンジェルビーツは多少グロい。栞にはまだ早かったかもと思いつつ慶は頭を撫でて言った。

 

「あー……じゃあ、別のアニメにしとくか?」

 

「うんっ」

 

慶は銀魂を流して再び漫画に戻った。

 

 

 

 

帰宅。

 

「ただいま……」

 

「あっ、おかえりー」

 

テンションの低い慶がそう言うと、パタパタと茜が玄関に来た。で、栞の前にしゃがみ込む。

 

「栞もおかえりなさい」

 

「ギャーギャーやかましいんだよ。はつじょうきですかこのやろー」

 

「」

 

栞がそう言うと固まる茜。だが、栞はそれを無視して家の奥へ歩く。

 

「ち、ちょっと!」

 

茜は慶の耳を引っ張った。

 

「何教えたのよあの子に!」

 

「銀魂見せただけでああなった……。ああ、俺の栞たんが……」

 

「けーちゃん、冗談抜きで気持ち悪い」

 

 

 

 

「はぁ?茜を覆面ヒーローに?」

 

慶と奏が二人でポーカーしてると(慶24連勝中)、葵が入って来たのだ。

 

「そう。素性を隠せばきっと茜も積極的に人助けが出来るし、選挙前に正体を明かすことで人気も急上昇するはず」

 

「待てよ。あいつ王様になるの嫌がってなかった?」

 

「あら、知らないの?あの子、王様になって監視カメラを廃止するために頑張ってるのよ」

 

「うーわ……動機が不純過ぎるだろ……」

 

と、慶の呟きを無視して葵は奏に言った。

 

「茜の支持率を上げるにはこれしかないと思うの。特別な変装道具生成してもらえないかな……。お願……」

 

「嫌」

 

「奏〜!」

 

今回の話は俺は関係ないな、と判断した慶はトランプをシャッフルし、三人分配った。

 

「葵、やるか?」

 

「あ、うん。じゃあ、お邪魔します……」

 

で、ポーカーやりながら会話。

 

「茜と一緒に全国を回ってて思ったんだけど……」

 

「はぁ?全国回ってたの?」

 

「うん。それで、王様とか関係なくあの性格のままじゃこの先辛いことばかりだと思うの」

 

奏が黙って聞く中、葵は続ける。

 

「曲がりなりにも人前で堂々としていられたという実績でもあれば……」

 

「勝負でいいのか?」

 

「あ、うん。少しずつ自身もついていくと思うんだ」

 

「フルハウス」

 

「スリーカード」

 

「フラッシュ。だからお願い!」

 

「お願いされながら負かされたの初めてなんだけど……。まぁいいわ。話が長すぎて気が変わってしまったわ」

 

「奏っ!」

 

「ツンデレ」

 

「黙れ愚弟。ちょっと待ってて」

 

言うと奏は部屋を出た。数秒後、眼鏡を持ってきた。

 

「はい」

 

「ただ眼鏡を取ってきたように見えたけどこれは……」

 

「ジャミンググラス、掛けると周りから個人を特定されなくなる眼鏡よ。ただし、生成コスト削減のために効果は茜が装着した時のみ発動。更に、この性能を知っている人間には効き目が薄いわ」

 

「うーわっ……」

 

「……………」

 

慶も葵も目を腐らせる。だが、

 

「信じられないなら……」

 

「わっわぁ!ありがとう奏!」

 

「そんな事よりもっかいやる?次は大富豪とか」

 

てなわけで、借りることになった。

 

 

 

 

で、茜の部屋。

 

「と、いうことなんだけど……」

 

大体の事情を説明した葵はさっそく茜にジャミンググラス(笑)を渡した。

 

「私もできることなら人見知りは治したい。やってみる!」

 

で、メガネをパイルダーオン。

 

「ど、どうかな……!」

 

「う、うん。いつもと雰囲気違う…かな……」

 

「で、でも……正義活動って言っても、一人じゃ自信ないかな……」

 

「うーん、そうねぇ……」

 

葵は顎に手を当てて考えた。

 

(でも、茜の選挙のためでもあるんだし……他の人にやらせるわけには……あっ)

 

「いるわよ。もう一人協力者が」

 

「へっ?」

 

 

 

 

「絶ッッッ対嫌だッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

慶だった。

 

「まぁまぁ、茜を助けるためだと思って……………」

 

「なんで俺がこいつの人見知りのために正義活動なんかしなきゃなんねぇんだよ!」

 

「いいじゃない。ほら、ゲーム買ってあげるから」

 

「いいだろう。任された」

 

(チョロい)

 

と、思いつつも慶にも眼鏡が渡される。

 

「これはジャミンググラス改……」

 

「はいはいそれはもういいから。ジャミンググラスでも催眠ガスでもいいからさっさと終わらせようぜ」

 

すると、慶の腕を茜は握った。

 

「よろしくね!ナイト・ブルーム!」

 

「えっ、何それ」

 

「ちなみに私はスカーレット・ブルームだから!」

 

「ちょっ、名前とかお前が決めちゃったの?」

 

そんなわけで、バカ2人のバカ作戦が始まった。

 

 


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