そんなわけで、二人は早速翌日から正義活動開始。
「と、いうわけで早速パトロールね」
「おい待て……」
「どうしたの?」
「なんで俺の衣装までスカートなんだよ!」
慶は茜と全く同じ服を着ていた。
「男物まで用意するのはめんどいってカナちゃんが……」
「やっぱやだ!ゲームいらないから帰る!」
「ダメだよ!もう約束しちゃったんだから!」
ちなみに陰でこっそりと慶のスカート姿を写真撮ってる奏だったが、とにかく2人は出掛けた。片方は飛んでてもう片方はバイク。
「う〜……スカートってなんかヒラヒラする……」
「けーちゃん!そこの信号右ねー!」
「ヒーローをけーちゃんって呼んじゃうのかよ……」
イヤホンを耳に入れて携帯をいじりながら、そしてノーヘルでバイクを運転しているというヒーローにあるまじき行為をしている慶。すると、警察が通った。
「そこのバイク。止まりなさい!」
「………………」
「君!止まりなさいって!」
「……………あっ?何?俺に話しかけてる?」
「そうだよ!止まりなさい!道路交通法違反だっての!」
「何⁉︎聞こえないよ!」
「や、だから道路交通法違反だってば!止まれって!」
「無理!パトロール中だから!」
「いや何が⁉︎いいから止まりなさいって……!」
「信号変わるまで待てって!話ならいくらでも聞くから!」
「いやそれまでに事故起きたら危ないでしょ!止まりなさい!」
「何⁉︎聞こえねーよ!」
「都合の悪い時だけしらばっくれてんじゃねぇよ!」
「今忙しいから無理だ!オロチの覚醒にはベイツールが必要なんだよ!」
「いや知らねーよ!早く止めろって……!」
「馬鹿野郎ッ!時間が止まることなんてねぇんだぞ‼︎」
「なんの話⁉︎」
で、焦れったくなった慶はバイクを急ブレーキさせて、後輪を持ち上げて後ろの白バイの運転手の顔面にぶつけた。
「ブフッ!」
「うるせっつってんだろ!今いいとこなんだから邪魔すんな!」
すると、周りに白バイが三体ほど止まる。
「てめっ!よくもやってくれたな!」
「うるせーな!忙しいっつってんだろハゲ!」
「禿げてねぇよ!まだ毛根は死んでないはずだ!」
なんてやりながら殴り合いが始まった。
*
「茜様に免じて許しますが、次は逮捕しますからね」
正義活動初日から警察のお世話になった慶だった。隣にはジャミンググラスを外した茜がいる。
そんなわけで、二人はトボトボと警察を出た。
「まったく……正義活動1日目から警察のお世話になるなんて聞いたことないよ」
「いいじゃねぇか。新しいヒーローの形ってことで」
「良くないわよ!」
「とにかく、さっさと行こうぜ」
そんなわけでスタートは最悪だったものの、二人のヒーロー計画はスタートした。元々、重力を操る人と基本完璧超人の2人が手を組んでいたため、解決できないことは何もない。木の上の風船取るのもクジラ助けるのもその他諸々も難なくクリアした。
で、今は自宅。
「大活躍だな、二人とも」
修が言った。すると、慶が不機嫌そうな顔で答える。
「俺の正体はバレてないみたいだけどな。なんか本当に女の子と思われてるらしい」
ちょうど、ニュースで『スカーレットブルームとナイトブルームの正体に迫る!』みたいな特集をやっていた。
「確かに服装とメガネ掛けるだけでほとんど別人だからな。そこらの女の子より全然可愛い」
「修。殺すぞ」
ギロリと修を睨む慶。すると、テレビが言った。
『ではここで、ブルームヒーローズの決めポーズをお見せします』
「おお!来た来た!俺の考えたポーズ!」
「どんなの?」
「まぁ見とけよ」
奏に聞かれるも慶はニヤニヤしながらテレビを見た。そして、テレビでスカーレットブルームとナイトブルームが構えた。
『流派!』
『東方不敗は!』
『『王者の風邪よ!』』
『全新』
『系裂』
『『天破狭乱!見よ、東方は!赤く燃えているううううううッッッ‼︎‼︎‼︎』』
で、ビシィッ!と二人はポーズを決め、テレビの中の全員が拍手する。
「どうっ⁉︎」
「完ッ全にGガンパクってんじゃない」
ため息をつく奏。
「いいだろ。カッケーじゃん」
「そもそもブルームどこいったのよ」
「知らねっ。てかお前なにその鼻血」
「へっ?あっ、また出ちゃってた……」
急いで鼻血を止める奏を捨て置いてテレビは世論調査に移った。
「………あれ?なんで正体隠してるのに私の支持率が…」
「演説の効果が出てるんだよきっと!」
全力で誤魔化しに行く慶。
「でもなん……」
「茜、ケーキあるんだけど食べる?」
葵の援護射撃でなんとか誤魔化した。
「そういえば小さい頃の茜はやんちゃだったなぁ」
修が思い出したように言った。
「この街の平和は私が守るんだ!とかいってたぞ」
「本当ですか姉上!カッコイイです!」
「昔の話だから……」
輝の台詞に茜は顔を赤らめる。すると修が立ち上がった。
「流派、東方不敗は!って最近もやってるじゃないか」
「やめてよぉおおおっ!」
で、机に伏せた。
「もぉ〜こんなことなら家族だからって正体明かすんじゃなかったよ〜……」
「え〜?別にもう国中の人が……」
と、言いかけた光の顔面に慶の脚がめり込んだ。壁に減り込む光。
「ちょっ……けーちゃん⁉︎何してんの⁉︎」
茜がガタッと立ち上がる。
「……………蚊だ」
「脚で⁉︎」
すると、減り込んだ壁から光が鼻血を垂らして出て来た。
「ちょっと何するのけーちゃん!」
「っせーな!空気読め!」
「だってあたしのクラスの子達も言ってたよ!茜ちゃ……」
さらに後ろ廻し蹴りを顔面に叩き込んで、また顔面が壁に突っ込む。
「だからけーちゃ……」
「蚊」
言いながら慶は光の食べかけのケーキを齧った。