俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第34話

 

 

それから一週間くらい、ナイトブルームは姿を消した。活躍するのはスカーレットブルームのみとなっていた頃。

 

「どう?女装したいーみたいな衝動は収まった?」

 

「元々そんなにしたかったわけじゃねぇよ」

 

「ふーん?あんなに深刻そうにしてた癖に?」

 

「いや、一歩間違えれば変態だったからなぁ……。でもナイトブルームは辞めたくねぇ。せっかく合法的に暴れられてたのに」

 

「まぁコンビニ強盗で発砲って聞いた時にはビックリしたわね」

 

「仕方ないだろ。相手意外と落ち着いてたし」

 

「そっちじゃないわよ。怪我なくて良かったって意味よ」

 

「相変わらずお優しいお姉さまですね」

 

「ありがとう」

 

なんて話しながらテレビを見ていると、なんか臨時ニュースみたいな事をやっていた。

 

「お?なんや?」

 

『えーこちらの銀行です。ただいま、銀行強盗が入っている模様です。あか……スカーレットブルーム、いや茜様だっけ?ま、どっちでも伝わればいいや。茜ブルームが中にいるようです』

 

「えっ?」

 

「ていうか茜ブルームって何」

 

『目撃者の証言によると、銀行強盗やっているところを見つけた茜ブルームが中に入って行った瞬間、銃声が聞こえたそうで……』

 

「はぁ⁉︎」

 

「じ、銃声……⁉︎」

 

『腰を抜かして動けなくなっているところ、人質の一人にされてしまい、シャッターが閉まったそうです』

 

「「当たってねぇのかよ!いや当たってたら困るけど!」」

 

最後の部分まで完璧にハモらせて突っ込む2人。

 

「茜……とりあえず警察に……!」

 

「無駄だよ。警察に連絡したところで強盗の計画の内だろうし、つーか目撃者がいるんならとっくに連絡してると思う。ていうか、下手に刺激して茜を人質にされたら最悪だし」

 

「じ、じゃあ……どうするの?」

 

「………こういう時のための、ナイトブルームだろ」

 

言いながら慶は着替え始めた。

 

「ほ、本気⁉︎」

 

「ああ。ヒーローものは片方が捕まったらもう片方が助けるのが王道だろ。エースキラー然り、ヒッポリット星人然りれ」

 

「なんで両方ともエースなのよ」

 

「………ウルトラマン地味に詳しいのな」

 

「チョイス古くない?平成でも『ウルトラマンダイナ&ティガ、光の戦士たち』とか『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』とか……」

 

「うるせーな。いいだろ別に。てか言ってる場合じゃねぇ。ちょっと行ってくるわ」

 

「ちょっと慶……!」

 

が、無視して慶は自分の部屋へ入った。で、拳銃をスカートの下に隠し、部屋を出た。部屋の前では葵が心配そうな顔で待っていた。

 

「いいの?危ないし……それに、また女装したくなっちゃったら……」

 

「いいんだよ。茜のためだ」

 

「そう………」

 

「さて、じゃあ行くか」

 

そう言うと、ナイトブルームは出撃した。

 

 

 

 

銀行に到着。シャッターは閉められていて、周りは警察に取り囲まれている。慶は隣のビルに入り、屋上からバレないように飛び移った。

で、まぁなんやかんや上手いこと移動して銀行のトイレの中に入った。

 

「まぁ、まずはこんな感じか……」

 

言うと慶はトイレの入り口のドアを強く締めた。バタンッと音がして、金を集めてる強盗の一人がそれに反応する。

 

「おい、なんか音しなかったか?」

 

「そう思うなら見てこいよカス」

 

「カスって言う方がカスだ」

 

なんて軽く口喧嘩しながら1人が確認しに行った。で、トイレの中に入る。が、誰もいない。

 

「……………気のせいか」

 

そう思って戻ろうとした時だ。個室から慶が出て来て、一撃で気絶させられた。で、慶はそいつの服装を剥いで衣装の上から着て、武器だけ奪って、体を縛って顔面を便器にぶち込んだ。

 

「さて、行くか」

 

拳銃を一丁はポケットにしまい、最後に覆面を被る。中をそーっと覗くと敵は後四人。

 

(下手には動けないか……まぁ一応変装してるし大丈夫だとは思うが)

 

で、普通に出てきた。

 

(………なるべく口数は少ない方がいいよな)

 

「よう、なんかいたか?」

 

「ああ、花子さんだった」

 

「そいつは危なかったな」

 

なんとか誤魔化せたようで慶が銀行から出るときにこいつら裏切ろうと決めた時だ。

 

「慶!助けに来てくれたの⁉︎」

 

茜が大声で正体をバラしやがった。

 

 


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