バカがバラした時、慶は不敵に笑った。
「は、はっ。誰だ慶っていうのは?」
「いや、何カッコつけてんの⁉︎そんな場合じゃないから!助けてよ!」
「助ける?なんで強盗が人質を助けなきゃならねんだ?マジなめんのもいい加減にしろよ」
「そっちがなめてるんだよ!何惚けてんの?いいから助け……!」
「ああもうっ!なんでバラすかなぁお前!分かったよ!正体バラせばいいんだろ⁉︎へぇーんしんっ!トォウ!」
惚けるのを諦めて、慶は強盗の衣装を脱ぎ捨ててスカーレットナイトとなった。
「ナイトブルーム、行きまーす!」
言いながら見参し、スカートの下の拳銃とさっき奪った拳銃を構える。
「うおおおおおおお!」
「ナイトブルーム来たあああああっ!」
「何このウルトラマンダイナ&ティガ、光の戦士達的な展開!」
「懐かしいチョイス!」
などと声が上がる。そうそうこれだよ〜、と慶の内心も気持ち良くなってた。だが、
「てか、さっき男の声だったよね」
「なんでスカート履いてんの?」
「茜さ……スカーレットブルームさっき慶って言ったよね」
「慶様じゃね?」
「女装趣味?しかもコスプレ?うーわ……」
「そう言うなよ。助けに来てくれたんだからさ……」
などという声も上がってきた。正体がバレたことなど、恥ずかしさがすべて広がり、慶は天井に発砲した。
「テメェら……全員財布出せ」
強盗に参加することにしました。
『えええええええええええッッッ‼︎⁉︎』
当然のリアクションが強盗からも出た。
「ふざけんな!」
「何しに来たんだあんたは!」
「正義の味方だろ⁉︎ふてってんじゃねぇよ!」
「この女装癖が!」
などと声が上がる中、慶も声を上げた。
「うるせーうるせーうるせー!女装趣味じゃねぇっつの!誰がお前らみたいなの助けるか!いいから財布出せってんだよチンカスどもがァッ!」
言いながら慶は拳銃を人質の群れに向ける。
「と、いうわけで強盗。これから俺はお前らの仲間だ。金はお前らだけで分けていい。その代わり2万だけくれ。今月ピンチなんだよね」
「おう、いいぜ」
で、全員の財布を回収し、強盗たちは銀行を出ようとした。だが、
「待て。正面は警察がいる。屋上から逃げるぞ」
「そんなん人質使えば済む話だろうが」
「馬鹿たれ。奴らに気付かれずに逃げればその分だけあいつらをここに釘付けに出来んだろ。俺の侵入ルートを通るぞ」
で、全員でまったく気付かれないように抜け出した。
「車は?」
「近くのパーキングに停めてある」
「バッカお前あそこはどう足掻いても警官に見られんだろうが。全員着替えて人目のつかない道をを堂々と歩くぞ」
「それ堂々とって言うのか?」
「とにかく、行くぞ。この街は監視カメラで囲まれてる。ここから何人かは強盗服に着替えろ。そして、あえて監視カメラに映る道を通るんだ。その後に着替えて監視カメラの映らない道から集合場所に集まれ。いいな?」
もはや完全にリーダー格となっている慶だった。
「で、その集合場所ってのは?」
「監視カメラがない場所に決まってんだろ。監視カメラがない場所、学校だ」
「目立ち過ぎないか? 」
「今日は休日だろうが。ここに来る理由の奴は部活しかいない」
「な、なるほど……」
「まぁ目立ち過ぎるってのは本当だ。だからルートを絞る。あそこの一年棟の階段なら休日は誰も通らないはずだ。そこの屋上だ。いいな?」
『おう!』
この後、当然慶はそこを警察に教えて一網打尽にした。
*
その夜。ナイトブルームの正体は櫻田慶様だった!みたいなニュースがやっていた。
「…………死にたい」
「まぁまぁけーちゃん。大丈夫だよ」
光が慰めるが、慶は頭を上げない。
「死にたい……」
「同じこと二回も言わないの」
「うるせーバーカ。世間にゃ俺は女装趣味だぞ」
「そう思われてもおかしくないくらい可愛いもん」
「真顔で言うな。また蹴られたいのかカス」
「いや、真面目に」
「………………女装、か……」
「なんか言った?」
「や、なんでも……」
と、否定したものの慶の頭の中では女装の言葉が残っていた。