俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

36 / 82
第36話

 

 

 

学校の帰り道。慶はジャンプを買った。で、いつも通り読みながら帰宅してる時だ。赤信号なのに気付かずに堂々と歩いた。その結果、車にはねられた。

 

 

 

 

病院。慶の病室。

 

「修ちゃん!」

 

茜がやって来た。声を掛けられて振り返る修。

 

「けーちゃんは?」

 

「命に別状はないそうだが、意識は戻ってない」

 

「ジャンプ読みながら歩くなっていつも言ってるのに……良い薬よまったく……」

 

「カナちゃん」

 

「なぁに?」

 

「貧乏ゆすり半端ないんだけど」

 

「べ、べべべべつに焦ってないし!」

 

「いや聞いてないし」

 

なんて話してると、遅れて遥と岬が光、輝、栞を連れてやってきた。

 

「事故ったって?」

 

「大丈夫なのけーちゃんは⁉︎」

 

「死にはしないってさ」

 

「良かったぁ……」

 

岬が椅子に座り込む。

 

「お兄様……死んじゃいや……」

 

涙目で下を俯く栞。その栞に輝が言った。

 

「大丈夫だ栞!慶兄様は無敵のヒーローなんだ!交通事故くらいじゃ死なない。むしろ車を兄様がはねるんだ!」

 

「いや、意味わかんないから。ていうか死なないって言われたばっかじゃん」

 

輝の力説に冷たく突っ込む光。

 

「でも、トラックにはねられたみたいだし、骨折くらいはしてるかもしれないわね……。その時はみんなで慶を支えてあげましょう」

 

その葵の台詞に「おーっ!」と、全員が拳を突き上げた。すると、ベッドから「ん………」と、声が出た。

 

『慶⁉︎』

 

全員がベッドの上を見る。慶は兄弟達を見ると、目をパチパチさせた。

 

「…………だれ、ですか?」

 

「へ?」

 

「僕を、どうするつもりですか……?」

 

涙目で慶はそう言った。

 

「け、慶……?冗談よね?」

 

「けーちゃん?」

 

葵と光が冷や汗を流しながら言った。

 

「な、なんなんですかあなた達……」

 

警戒してるような声を上げる慶。すると、修が言った。

 

「とにかく、先生を呼ぼう。話はそれからだ」

 

 

 

 

「「「記憶喪失?」」」

 

話を聞いてる葵、奏、遥が声を出した。人数が多いから三人だけ聞いて、残りの人たちにはあとで説明することにしてある。

 

「ええ。事故で車に吹っ飛ばされた時に記憶も吹っ飛ばされたみたいで……」

 

「あらら……そうですか」

 

「まぁ彼にとって刺激になるものを見せれば戻せるとは思いますが、まぁ気長に行きましょう。戻るまでは私達も精一杯力を尽くします」

 

「はぁ、よろしくお願いします」

 

そのまま話は終わった。

 

「……困ったわね」

 

「大丈夫?奏姉さん」

 

「平気よ遥……」

 

とりあえず慶と他の兄弟達が待つ病室へ。

 

「ねぇ、本当にあたしのことも覚えてない?」

 

「ご、ごめんなさい……えっと、光さん?」

 

「さん付けなんてやめてよ。光って呼んで?」

 

「慶兄様!僕は輝です!」

 

「な、なんか似たような名前ですね……」

 

などと盛り上がってる中、修が葵に聞いた。

 

「どうだった?」

 

「それが、記憶喪失みたいで……」

 

「なるほどな……。まぁそういうことならさっそく家に連れて帰ろう。外傷はないんだろ?」

 

「ええ。トラックにはねられた癖に無傷」

 

「あいつってご飯にボンドでもかけて食べてんのかな……」

 

修と葵が話してる時に茜は奏に聞いた。

 

「カナちゃん、大丈夫?」

 

「平気よ。ねぇ、人の記憶っていくらくらいで買えると思う?」

 

「本当に大丈夫⁉︎」

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。