学校の帰り道。慶はジャンプを買った。で、いつも通り読みながら帰宅してる時だ。赤信号なのに気付かずに堂々と歩いた。その結果、車にはねられた。
*
病院。慶の病室。
「修ちゃん!」
茜がやって来た。声を掛けられて振り返る修。
「けーちゃんは?」
「命に別状はないそうだが、意識は戻ってない」
「ジャンプ読みながら歩くなっていつも言ってるのに……良い薬よまったく……」
「カナちゃん」
「なぁに?」
「貧乏ゆすり半端ないんだけど」
「べ、べべべべつに焦ってないし!」
「いや聞いてないし」
なんて話してると、遅れて遥と岬が光、輝、栞を連れてやってきた。
「事故ったって?」
「大丈夫なのけーちゃんは⁉︎」
「死にはしないってさ」
「良かったぁ……」
岬が椅子に座り込む。
「お兄様……死んじゃいや……」
涙目で下を俯く栞。その栞に輝が言った。
「大丈夫だ栞!慶兄様は無敵のヒーローなんだ!交通事故くらいじゃ死なない。むしろ車を兄様がはねるんだ!」
「いや、意味わかんないから。ていうか死なないって言われたばっかじゃん」
輝の力説に冷たく突っ込む光。
「でも、トラックにはねられたみたいだし、骨折くらいはしてるかもしれないわね……。その時はみんなで慶を支えてあげましょう」
その葵の台詞に「おーっ!」と、全員が拳を突き上げた。すると、ベッドから「ん………」と、声が出た。
『慶⁉︎』
全員がベッドの上を見る。慶は兄弟達を見ると、目をパチパチさせた。
「…………だれ、ですか?」
「へ?」
「僕を、どうするつもりですか……?」
涙目で慶はそう言った。
「け、慶……?冗談よね?」
「けーちゃん?」
葵と光が冷や汗を流しながら言った。
「な、なんなんですかあなた達……」
警戒してるような声を上げる慶。すると、修が言った。
「とにかく、先生を呼ぼう。話はそれからだ」
*
「「「記憶喪失?」」」
話を聞いてる葵、奏、遥が声を出した。人数が多いから三人だけ聞いて、残りの人たちにはあとで説明することにしてある。
「ええ。事故で車に吹っ飛ばされた時に記憶も吹っ飛ばされたみたいで……」
「あらら……そうですか」
「まぁ彼にとって刺激になるものを見せれば戻せるとは思いますが、まぁ気長に行きましょう。戻るまでは私達も精一杯力を尽くします」
「はぁ、よろしくお願いします」
そのまま話は終わった。
「……困ったわね」
「大丈夫?奏姉さん」
「平気よ遥……」
とりあえず慶と他の兄弟達が待つ病室へ。
「ねぇ、本当にあたしのことも覚えてない?」
「ご、ごめんなさい……えっと、光さん?」
「さん付けなんてやめてよ。光って呼んで?」
「慶兄様!僕は輝です!」
「な、なんか似たような名前ですね……」
などと盛り上がってる中、修が葵に聞いた。
「どうだった?」
「それが、記憶喪失みたいで……」
「なるほどな……。まぁそういうことならさっそく家に連れて帰ろう。外傷はないんだろ?」
「ええ。トラックにはねられた癖に無傷」
「あいつってご飯にボンドでもかけて食べてんのかな……」
修と葵が話してる時に茜は奏に聞いた。
「カナちゃん、大丈夫?」
「平気よ。ねぇ、人の記憶っていくらくらいで買えると思う?」
「本当に大丈夫⁉︎」