俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第37話

 

 

 

早速退院し、帰宅する。慶の腕に奏がしがみ付いている。その度に慶は顔を赤くしていた。

 

「あ、あの……奏、さん?」

 

「なに?」

 

「もしかして……僕と奏さんは恋人だったりするんですか?」

 

それに全員が噴き出した。

 

「なっななななんで⁉︎何言ってんの⁉︎」

 

「だ、だって……なんかベッタリくっついてますし……む、胸も、当たってますし……」

 

「や、それは………」

 

「もしかして僕って、奏さんに貰われて養子みたいになったみたいな感じですか?」

 

「そ、そんなわけっ……」

 

と、言いかけた奏だったが、「悪くないわね……」と、呟いた後、言った。

 

「ええ、そうよ」

 

奏以外の全員が噴き出した。

 

「や、やっぱりそうですか⁉︎なんか他の人と比べて距離近いしボディータッチ激しいしなんかあると思ったんですよ!」

 

「ま、まぁね。私、心配したんだからねけーちゃん♪」

 

誰だお前⁉︎と、全員が反応する中、慶は気恥ずかしそうに聞いた。

 

「じ、じゃあその……カナちゃんって、読んでもいいですか?」

 

「ゴッファアッ‼︎」

 

「カナちゃん⁉︎」

 

血を吐いて倒れた奏に慶が駆け寄った。その2人を捨て置いて残り8人は思った。

 

((((((((俺、知ーらねっ♪))))))))

 

 

 

 

そんなこんなで、自宅。

 

「ほら、ここが私達の家よ」

 

「大きいんですね……」

 

「その敬語禁止、家族なんだから」

 

「そうですか……そうだね、カナちゃん」

 

で、微笑み合う2人。

 

「ほら入るぞ」

 

修が言うと中へ入る。「お邪魔しまーす……」と、慶が小声で言った。

 

「けーちゃん!ほらほらこっち。リビング!」

 

光が手を引っ張って案内する。

 

「あれがテレビで、あれがソファー、あれが机だよ!」

 

「光、何かを思い出させるってそういうことじゃないぞ」

 

遥が冷たくツッコンだ。そして、そのまま提案する。

 

「とりあえず、みんなの能力を見せてみない?僕たちの能力を見たりすれば、何かしら思い出すかもしれない」

 

「なるほど……。じゃああたしから!」

 

光が前に出た。そして能力によって高校生くらいにまで成長して見せた。

 

「うわっ」

 

「どう?生命操作」

 

「光ちゃん……大人になっても可愛いですね……」

 

「えうっ⁉︎」

 

顔を真っ赤にする光を捨て置いて、今度は輝が前に出た。

 

「僕は怪力超人です!こんな感じで……」

 

言いながら輝はその辺のソファーを持ち上げた。

 

「おお……小さいのにすごいね」

 

「何か思い出しました⁉︎」

 

「いや皆目」

 

言われてショボンとする輝。次は岬だ。

 

「ほっ」

 

そう言うと8人に増えた。

 

「おお……これはまたすごいですね……」

 

「でしょー?」

 

「あら、本当に記憶がないのね」

 

言いながら岬の1人が慶の後ろから抱き着く。

 

「って、コラー!誘惑するなー!」

 

などと本体と分身による心温まる茶番の次に出てきたのは修だ。

 

「俺は瞬間移動。こんな感じ」

 

言うと修の姿が消えた。

 

「へあっ⁉︎」

 

そして、トッと上の階で着地する音がした。

 

「………なるほど。便利ですね」

 

みたいな感じで能力を紹介していった。全員終わったところで、「あっ」と修が声を漏らした。

 

「そういえば買い物してなくね?」

 

「そういえばそうね……。今日の買い物係誰?」

 

「あー!私だったぁー!」

 

大声で嘆く茜。

 

「な、なんですか?」

 

「あか姉は極度の人見知りでお出掛けが嫌いなんだよ」

 

「そうですか……。では、僕がお付き合いしますよ」

 

「本当に⁉︎」

 

茜がガバッと身を乗り出す。

 

「はい。義妹の為ですから」

 

ニッコリと微笑む慶。

 

「うん、ていうか私が姉なんだけどね……」

 

「いきましょう。お腹空きましたから」

 

「そうだね。カナちゃんは行く?」

 

「私はいいわ」

 

「そっか。じゃ、行ってきまーす!」

 

そのまま二人は出掛けた。その背中を見ながら奏は呟いた。

 

「…………どうしよう」

 

「私は知らないからね」

 

冷たく葵が言い放った。

 

 


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