早速退院し、帰宅する。慶の腕に奏がしがみ付いている。その度に慶は顔を赤くしていた。
「あ、あの……奏、さん?」
「なに?」
「もしかして……僕と奏さんは恋人だったりするんですか?」
それに全員が噴き出した。
「なっななななんで⁉︎何言ってんの⁉︎」
「だ、だって……なんかベッタリくっついてますし……む、胸も、当たってますし……」
「や、それは………」
「もしかして僕って、奏さんに貰われて養子みたいになったみたいな感じですか?」
「そ、そんなわけっ……」
と、言いかけた奏だったが、「悪くないわね……」と、呟いた後、言った。
「ええ、そうよ」
奏以外の全員が噴き出した。
「や、やっぱりそうですか⁉︎なんか他の人と比べて距離近いしボディータッチ激しいしなんかあると思ったんですよ!」
「ま、まぁね。私、心配したんだからねけーちゃん♪」
誰だお前⁉︎と、全員が反応する中、慶は気恥ずかしそうに聞いた。
「じ、じゃあその……カナちゃんって、読んでもいいですか?」
「ゴッファアッ‼︎」
「カナちゃん⁉︎」
血を吐いて倒れた奏に慶が駆け寄った。その2人を捨て置いて残り8人は思った。
((((((((俺、知ーらねっ♪))))))))
*
そんなこんなで、自宅。
「ほら、ここが私達の家よ」
「大きいんですね……」
「その敬語禁止、家族なんだから」
「そうですか……そうだね、カナちゃん」
で、微笑み合う2人。
「ほら入るぞ」
修が言うと中へ入る。「お邪魔しまーす……」と、慶が小声で言った。
「けーちゃん!ほらほらこっち。リビング!」
光が手を引っ張って案内する。
「あれがテレビで、あれがソファー、あれが机だよ!」
「光、何かを思い出させるってそういうことじゃないぞ」
遥が冷たくツッコンだ。そして、そのまま提案する。
「とりあえず、みんなの能力を見せてみない?僕たちの能力を見たりすれば、何かしら思い出すかもしれない」
「なるほど……。じゃああたしから!」
光が前に出た。そして能力によって高校生くらいにまで成長して見せた。
「うわっ」
「どう?生命操作」
「光ちゃん……大人になっても可愛いですね……」
「えうっ⁉︎」
顔を真っ赤にする光を捨て置いて、今度は輝が前に出た。
「僕は怪力超人です!こんな感じで……」
言いながら輝はその辺のソファーを持ち上げた。
「おお……小さいのにすごいね」
「何か思い出しました⁉︎」
「いや皆目」
言われてショボンとする輝。次は岬だ。
「ほっ」
そう言うと8人に増えた。
「おお……これはまたすごいですね……」
「でしょー?」
「あら、本当に記憶がないのね」
言いながら岬の1人が慶の後ろから抱き着く。
「って、コラー!誘惑するなー!」
などと本体と分身による心温まる茶番の次に出てきたのは修だ。
「俺は瞬間移動。こんな感じ」
言うと修の姿が消えた。
「へあっ⁉︎」
そして、トッと上の階で着地する音がした。
「………なるほど。便利ですね」
みたいな感じで能力を紹介していった。全員終わったところで、「あっ」と修が声を漏らした。
「そういえば買い物してなくね?」
「そういえばそうね……。今日の買い物係誰?」
「あー!私だったぁー!」
大声で嘆く茜。
「な、なんですか?」
「あか姉は極度の人見知りでお出掛けが嫌いなんだよ」
「そうですか……。では、僕がお付き合いしますよ」
「本当に⁉︎」
茜がガバッと身を乗り出す。
「はい。義妹の為ですから」
ニッコリと微笑む慶。
「うん、ていうか私が姉なんだけどね……」
「いきましょう。お腹空きましたから」
「そうだね。カナちゃんは行く?」
「私はいいわ」
「そっか。じゃ、行ってきまーす!」
そのまま二人は出掛けた。その背中を見ながら奏は呟いた。
「…………どうしよう」
「私は知らないからね」
冷たく葵が言い放った。