俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第42話

 

 

 

体育祭。ようやく慶の出番となった。障害物競走だ。障害物は平均台→ネット潜る奴→跳び箱→袋に足突っ込んでピョンピョン跳ねる奴→パン食い→最後に走って終わりという少し変わった感じ。

しかも、一位の組みは地味に高得点もらえるので本気を出す組も多いのだ。そこにまさに本気をぶち込んだ赤組。慶はアンカーだった。

 

「花蓮、出番になったら起こしてくれ」

 

「はぁ?ったく……しょーがないわね……」

 

一人一周なので、起こすことは可能である。そして、第一走者の花蓮がスタート位置に立った。

 

「けーちゃん!起きなさーい!」

 

茜が言うも無視して鼻ちょうちんを出す慶だった。なんてやってる間に、パァンッ!とスタート。それと共に第二走者の福品がスタート位置に立った。

 

 

 

 

「ほら、起きろっ」

 

花蓮にビンタされ、ようやく目を覚ます慶。

 

「お、おお……。何位?」

 

「ビリから二つ目」

 

ちなみに4クラスである。

 

「距離はどのくらい?」

 

「半周も半周弱かな」

 

「ならいけるな」

 

言いながら首をコキコキと鳴らす慶。そして、アキレス腱を伸ばしながらスタート位置に立った。丁度、後ろからクラスメートの女子が走って来ている。

 

「………行きますか」

 

バトンのタスキを受け取り、スタートした。最初の平均台。それを前にしてもまったく減速せずに一秒もしないうちに渡り終えると、ネットをスライディングでこれまた減速せずに潜り終えた。

 

「おお!」

 

「いいぞー!けーちゃーん!」

 

ちなみにこの様子をビデオカメラで全力で撮影している奏だった。で、次の跳び箱。声援が気持ち良かったのか、跳び箱の上でロンダートするアレをやってみせた。

 

「うおお!」

 

「スゲェ!」

 

「逆にキメェ!」

 

などと声が上がる中、修は「手加減しろよ……」と呟いた。で、袋に足を突っ込む奴で一人追い抜くと、パン食いを一発でクリアし、ラストの直線。前にはあと一人だけ。

 

「加速っ……!」

 

そう呟くと慶はさらに加速し、一気に追い抜いた。で、ゴールラインを切り、パンを齧った。

 

「美味ぇ」

 

拍手が起こる中、慶はそう呟いた。

 

 

 

 

「いやーすごかったねけーちゃん」

 

お昼休み。茜、慶、奏、修で飯を食べてるときに茜が言った。

 

「まぁな。差が差だったから少し本気出した」

 

「ふんっ。少しは加減しなさいよ」

 

「見てて一番興奮してたの奏じゃ……」

 

ボグッと奏が修を黙らせた。

 

「余計な事言わなくていいの」

 

「………だからっていきなり殴るってなくね?」

 

鼻血を垂らしながら言う修を無視して奏は聞いた。

 

「で、慶の次の競技はなんなの?」

 

「あー。クラス競技と二人三脚と最後の組対抗リレーだな」

 

その瞬間、奏の耳がピクッと動く。

 

「…………二人三脚?」

 

「ああ」

 

「……ああ、茜とよね。そうよね。そうでしょうね?」

 

「なんで確認から問い詰める形になってんだよ」

 

「ちなみに私じゃないよ?」

 

茜が言った瞬間に奏の目の色が変わった。

 

「…………誰とよじゃあ」

 

「花蓮とだよ。本当は茜と出るつもりだったんだが、どうしても茜が無理って言ってな」

 

「だ、だって恥ずかしいもん!あんな競技。リレー種目じゃないしぃ……」

 

「いやリレー種目のがよっぽど目立つと思うんだが……」

 

最後に修が言うと「あっ、確かに……」と茜が呟いたのはともかく、慶は聞いた。

 

「つーか、俺の競技なんて観てどうすんだよ」

 

「ビデオに収め……あっ、いや失敗するざまを見下して笑うのよ」

 

((言い直した))

 

修と茜はおにぎりを齧りながら同じ事を思ったが、慶はツッコまなかった。

 

「お前ほんと性格悪ぃーのな」

 

「あなたにだけは言われたくないわね」

 

「ま、そう思うなら見とけよ。俺と花蓮のコンビネーション見せてやるから」

 

「ふーん、そっ」

 

興味無さげに思わせておいてうずうずしながら奏は答えた。

 

「しかし慶。お前のクラスは二人三脚は男子に人気じゃなかったのか?」

 

「人気だったよ。俺はじゃんけんで勝ち上がったんだ。そういう修は負けたのか?」

 

「いや?俺はジャンケンしてない。佐藤と組めってほとんど決定事項だった」

 

「けっ、リア充爆死しろ」

 

と、会話していると茜が入って来た。

 

「ねぇ、なんで男子に人気なの?」

 

「あ?そんなん決まってんだろ。女の子との距離が近いからだよ」

 

「………けーちゃん最低。カレンに手を出したら許さないからね」

 

「ふはははは!合法的におっぱいが触れられる距離にまで近付けるんだ!これほどいい競技はない!」

 

高らかに笑う慶だった。

 

 


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