俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第44話

 

 

翌日。振り替え休日だ。てなわけで、約束の奏と慶のデートの日である。奏が鼻歌を歌いながら服を選んでると、服を決める相談役の茜が声をかけた。

 

「カナちゃんなんか機嫌良いねぇ〜」

 

「そう?普通よ♪」

 

「とてもそうは聞こえないよ……」

 

茜が呆れ気味にため息をついた。

 

「本当にカナちゃんはけーちゃんが大好きなんだねぇ〜」

 

と、何気なく茜が言った瞬間、ピタッと奏の動きが止まった。と、思ったら顔を真っ赤にして言った。

 

「ちっ、ちちち違うわよ!だ、だりゃっ……誰があんなヘンタイゴミバカクソ愚弟のことなんか好きになるもんですか!あんな奴を好きになるくらいならフナムシを好きになった方が100倍マシよ!」

 

「ふ、フナムシ……?」

 

「まったく……いきなり変なこと言わないで……。それより茜、やっぱり清楚系で行った方がいいかしら?」

 

「好きにすればいいじゃん……。ボディーラインを強調とか私はしたくても出来ないから……」

 

「それもそうね」

 

そのシレッとした反応にイラッとしつつもなんとか堪える茜。

 

「よし、これに決めたわ」

 

そう言うと奏は着替え始める。決まったのなら出て行こうと思って茜が立ち上がった時だ。ガチャッと扉が開いた。

 

「おい奏。あくしろよ」

 

慶が入って来た。茜は「あちゃー……」と言わんばかりに額に手を当て、奏は手に持っていたシャツで自分の身体を隠す。

 

「って、なんで半裸?露出狂の練しゅ……グホッ」

 

「出てけぇ!」

 

椅子を投げられた。

 

 

 

 

で、2人並んで駅へ向かう。

 

「あー……いてぇ」

 

「わ、悪かったわよ……」

 

「椅子投げられたの初めての経験だわ。ったく……」

 

「で、でも人を露出魔扱いしたんだからおあいこよ」

 

「へいへい。で、なんだっけ。遊園地?」

 

「そっ。たまにはいいでしょ?」

 

「まぁお前も生徒会で頑張ってたんだしな。いいんじゃねぇの?」

 

「へっ?わ、私頑張ってるように見えた?」

 

「なに、頑張ってなかったのかよ」

 

「い、いや?すごく頑張ってたよ。うん」

 

「へぇ、ほんとに頑張ってたんだ。俺は見てなかったから知らんけど」

 

「なにそれテキトーに言ってたの⁉︎」

 

「まぁな」

 

「なんか喜んで損した……」

 

そんな事を話しながら歩いてると、駅に到着した。てか、めんどいからもう遊園地到着でいいよね。約束通り慶の奢りでチケットを購入。

 

「ほら、奏。チケット」

 

だが、奏は受け取ろうとせず、顔を赤らめてモジモジしながら言った。

 

「ね、ねぇ。慶……」

 

「あん?」

 

「き、今日だけでいいからさ……わたしのこと、昔みたいにカナちゃんって、呼んでくれない?」

 

「カナちゃん」

 

「いやそうじゃなくて。永続的に」

 

「なんでまたそんなめんどいことしなきゃなんねんだよ。大体、俺が中三の時に馴れ馴れしく呼ぶなっつってきたのそっちだろ」

 

「い、今はいいのよ!」

 

言われて慶はため息をついた。で、改めて呼んだ。

 

「行くぞ、カナちゃん」

 

「! うん、けーちゃん!」

 

「それはやめろ。なんかお前に呼ばれると鳥肌立つ」

 

「どういう意味よ!」

 

そんなこんなで、デートスタートである。

 

 





リクエストがあれば、まぁできる範囲なら答えようと思います。できる範囲なら。

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