帰宅してから。奏はまだ顔を赤くしていた。
(慶とキスした慶とキスした慶とキスした慶とキスした慶とキスした慶とキスした慶とキスした慶とキスした慶とキスした慶とキスした慶とキスした慶とキスした慶とキスした慶とキスした慶とキスした慶とキスした………)
頭の中がそればっかだ。
(というか……あいつはどう思ってるんだろう……。いやだったのかな……。や、でもあれ事故だし……)
と、思考を巡らせていると、ノックの音がした。
「おーい奏ー。ご飯だぞー」
「えっ⁉︎う、うん!」
修の声で急いで下に降りる奏。そういえば慶はどうしてるんだろうと気になり、なんとなくそーっと足音を殺して下の様子を覗くと、慶はいつも通りに3DSをいじっていた。
「バカ、光!死ぬ!死ぬから早く回復しろ!」
「え、えっと……回復薬グレート、回復薬グレート……ど、どこ?」
「知らねーよ!もういいから、エリア移動しとけ!」
慶が言うと、光は急いで移動する。
(なんであいつはいつも通りなのよ……私だけ悩んでバカみたいじゃない……)
「えー嘘ぉ⁉︎なんでアオアシラがこっちにいんのよ!」
「そいつ大して強くねーだろ!てか回復薬グレート飲んだらさっさとこっち来いよ!」
「死ぬ!カヤンバ!」
光と仲良くゲームしてるから余計に腹が立つ。その2人に葵から声がかかった。
「二人ともー。食器運ぶの手伝いなさーい」
「「はーい」」
で、食器を運ぶ。すると、茜が声をかけた。
「あっ、カナちゃんも手伝ってよー」
「………はぁ?」
「な、なんで怒ってるの?」
「別に」
「いや明らかに怒ってるじゃーないですかー」
「イントネーションむかつく」
そのまま奏は不機嫌そうに手伝った。すると、茜は慶の服の裾を引っ張った。
「ちょっと、カナちゃんと何したの?なんかすごく不機嫌だよ?」
「ん?ああ、キスした」
「はぁ……それでかぁ……いや待って、今なんて?」
「や、だからキスした」
その瞬間、カッシャーンッと食器の割れる音がした。葵がコップを落としたのだった。気が付けば、全員が固まっている。
「いやー二人で観覧車に乗ってたら奏が俺の頬の米粒取ってくれてさ。その時に観覧車がガタンッと止まっちまって勢い余ってキスしちゃったんだよね」
と、能天気に解説する慶の両肩を掴む葵。
「ってことは、事故なのよね?姉弟の中で起こってしまった間違いとか禁断の恋とかじゃないのよね?私がお父さんとかお母さんに怒られることはないのね?」
「そ、そうだけど……てか指が食い込んでる痛い痛い痛い」
すると、ホッとした雰囲気が流れる。
(そうだよね……慶にとってはそんな認識だよね……)
と、奏は少し自虐的にフッと微笑んだ。
*
体育祭が終わったと思ったら文化祭である。二学期というのは切羽詰まってるのだ。修学旅行もあるし。HRの間、慶はずって寝ていて起きたら文化祭実行委員になっていた。
「あの、なんで……?」
もちろん、奏→茜の根回しによるものだった。