そんなわけで、文化祭実行委員として委員会へ。ちなみにクラス委員の茜も一緒だ。そのまま席に着く。
「ったく、なんで俺がこんな事を……」
「いいじゃん別に。私はけーちゃんと一緒に仕事できて嬉しいよ?」
「ていうか、お前クラスであんま仲良くない人と一緒に組むくらいならって思って俺にしたろ」
「うん」
「家帰ったら殺す」
「そ、そんな怒らないでよ……」
なんて話してると、奏が前に出た。
「えーでは、そろそろ始めたいと思います」
と、場慣れした声。そのまま文化祭の目的だの何だのとのお利口さんにも程がある内容を話して今日は終わりになった。
「あー。つっかれたぁ……」
「じゃ、帰ろっかけーちゃん」
「おー」
そのまま二人は教室を出て、廊下を歩く。
「あ、ごめん。ちょっとトイレ行っていい?」
「どーぞ」
茜はそのままトイレへ。慶は暇だったので鞄から監獄学園を取り出した。すると、ペッタペッタと廊下を歩く足音がした。なんとなくそっちをみると、奏が歩いている。
「……………」
別に隠れているわけでもないが、「こっち気付くかなー」みたいな感じで奏を見ていた。が、奏はそのまま自分の前を素通りする。
(………意識はこっち向いてた、よな)
なんとなく分かる慶だが、今は素通りされた。無視されたということになる。いや、もしくは用がないから特に話しかけなかっただけかもしれないが。
(俺なんか嫌われるようなことしたっけ……)
なんて考えてると、後ろから声がかかった。
「おっまたせー。帰ろっかけーちゃん」
「お、おう。うんこか?」
「殴るよ?」
「ゴメンなさい」
で、そのまま二人はまた帰宅した。
*
帰宅。
「たっだいまー!」
茜が元気良く帰宅し、リビングに入る。慶はその後に続いてダルそうに。で、鞄をソファーに放って手洗いうがいをしようとした。が、鞄を放ったソファーから「痛っ」と声がした。
「あん?」
が、ソファーには誰もいないし、ほかの誰も気付いてない。何より、聞き覚えのない声だった。不審に思って慶はそのソファーの方へ向かう。が、誰もいない。
「……………」
そこにパンチをしてみた。が、当然空を切る。
「何してんのけーちゃん?」
岬に聞かれた。
「や、ここに誰かいなかった?」
「はぁ?いないと思うけど」
「………………」
慶の頭の中に「霊」の一文字が浮かんだ。
「ちょっ、なんか汗凄いけど」
「い、いやいやいやいや。なーい。ありえなーい。もう21世紀だよお前。そんな時代に霊なんてバカ言っちゃいかんよ君。確かに宇宙世紀になっても霊見えるどころか飛ばしたりする奴も一部にはいるけど、それはあれな連中だし、人類の革新だし、俺に先読み能力とかないし、ファンネル飛ばせないし、総合するとないっ。絶対ないっ。認めないっ。サイボーグゼロゼロナイっ」
「な、何言ってんの?本当に大丈夫?」
岬が割と本気で心配そうに声をかけた。だが、その後ろに白い着物を着た半透明の女が見えた。
「」
「けーちゃん?」
「岬、後ろ………」
「へ?」
言われて振り返る岬。側から見たらバッチリ目が合ってる。だが、
「? なんもないじゃん」
「はえっ?」
「ほんとどうしたの?」
「落ち着け岬」
「その台詞、そっくりそのままピッチャー返し」
「よく見てみろ」
「いや、だから何も……」
「あれ?」
確かにいなくなっていた。さっきまで岬の後ろにいた女はいない。
「な、なんだ……気の所為か……」
「ほんとにどうしたの?」
「や、何でもない。大丈夫だ」
「ならいいけど………」
なぁんだ、気の所為かぁ……と、慶がホッと息をつく。そして、栞でも見て癒されようと思った時だ。味噌汁の味見をしようとしてる栞の口から半透明の手が生えていた。
「おっふぁぎゃぎゃっ!」
腰を抜かしてひっくり返る慶。
「ちょっとけーちゃん?ほんとどーしたの?」
「栞ィィィイイイイッッッ‼︎‼︎手がァッ!とんでもねーところからから手がァァァアアッッ‼︎‼︎‼︎」
「? な、なにいってんの?」
「ペってしなさいペッて!ばっちぃから!」
「ちょっと慶?どういう意味」
にっこり微笑んで怒る葵だったがそれどころじゃない。ていうか、よく見ると葵と栞の間に半透明の白い着物の女が立っていて、栞の後頭部から口にかけて腕が貫通していた。
「ホッギャオアアアアアッッ‼︎‼︎」
悲鳴をあげる慶。
「な、なんか尋常じゃないよ慶兄さん……ついに壊れたみたい……」
遥がドン引きしながら言った。
「言ってる場合か!栞が死………」
と、言いかけた慶の後頭部をガンっと修が殴った。
「落ち着け」
「修!いやだっ……」
「いいから、一度顔でも洗ってこい」
「や、だから……」
「いけ」
瞬間移動で飛ばされた。で、洗面所。顔を洗う慶。
「あー……クッソ……何なんだあれ」
「本当何なんだろうね〜」
「あ?」
聞き覚えのない声がかかって、みると半透明の白い着物の女がいた。
「」
「やっほ〜」
「ギャッ……!」
悲鳴を上げかけた慶の声が止まる。
「っ………」
「ゴメンね〜。少し黙っててねぇ〜」
霊気的な何かで黙らせられ、呼吸が止まる。
「このままだとあなたが死んじゃうから手短に言うね〜。私はあなたのお婆ちゃんのお母さんでぇ〜す」
「」
「あなたに遊園地で見つかっちゃったから、しばらくあなたに憑くことにするね〜」
「」
「以上でぇ〜す。終わり〜」
「」
そのまま気を失った。