俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

49 / 82
第49話

 

 

 

夜中。慶は気絶からようやく目を覚ました。どうやら誰かが部屋で寝かせておいてくれたようだ。

 

「あ、起きた〜?」

 

目の前に半透明の女。

 

「アギャッ……!」

 

が、また呼吸を止められる。

 

「いい加減慣れてよ〜。もうみんな寝てる時間よ〜?」

 

「ッッ」

 

「叫ばないって言うなら解放してあげるけど〜?」

 

すると、コクコクと頷く慶。で、プハァッと解放された。

 

「ハァ……そ、それで……ひいばあ様?」

 

「咲ちゃんでいいわよ〜」

 

「じゃあ咲ちゃん。まずなんであんたそんな若いんですか?」

 

「それはもちろん、若い時に私が死んじゃったからだよ〜」

 

いきなり踏み込んだ質問をしてしまったような気がして、つい黙り込んでしまう慶だった。

 

「なんかごめんなさい……」

 

「気にしないで〜」

 

「で、もう一つ。なんで俺に咲ちゃんが見えるんですか?もしかして……」

 

「能力じゃないわよ〜?ただあなたの霊感がニュータイプバリに強いだけよ〜」

 

「あの、その最後の語尾の間延びした感じのやめてもらえませんか?なんか身震いするんで」

 

「お化けの宿命だから、勘弁してね〜」

 

「そうすか……。てか霊感強いって……」

 

「だから相手に霊を飛ばして金縛りさせたりも出来るのよ〜?」

 

「マジでか!」

 

「その代わり、飛ばされた相手は幽体離脱しちゃうから気をつけてね〜」

 

「ていうかこれほとんど能力だろ!霊感強いなんて次元じゃねぇぞ!」

 

「だから言ったでしょ〜?ニュータイプばりに強いって」

 

「カミーユじゃねぇか!」

 

すると、隣のベッドから誰かがムクリと起き上がった。

 

「もぉ〜……どしたのけーちゃん……?夜中に……ていうか、洗面所で何してたの?」

 

「あ、いやなんでもない。つか何もしてない」

 

「そう……。晩御飯下にあるから、食べといてよ」

 

「おお、すまん」

 

そのまま茜は再び寝た。で、慶はリビングに向かう。で、サランラップに包まれてる飯をかっ込んだ。

 

 

 

 

それから3日くらい経った。文化祭実行委員会が終わり、今日も茜と慶は一緒に帰宅。

 

「茜、少しいいか?」

 

「へっ?」

 

慶はマックの中に入り、茜も後に続く。

 

「奢るから」

 

「ど、どうしたのけーちゃん。頭でも打った?」

 

「いや違うから。ちょっとな……」

 

で、二人でポテトのMとジンジャエールを買い、席に着いた。

 

「で、どうしたの?」

 

「実はさ、奏とデートしてから一回も話してないんだよね」

 

「へ?そ、そーなの?」

 

「いや話してないっつーか、マトモな会話が無いんだよね。話し掛けてもなんか理由付けられて逃げるし」

 

「ふーむ………」

 

「なんでかなーって思って」

 

「そんな事、私に聞かれても……」

 

「だから聞いてきてくんない?なんかあいつと話せないとつまんないから」

 

「へっ?そ、それどういう……」

 

「あれくらいプライド高い方がからかい甲斐がある」

 

「ああ、やっぱりそういうこと……」

 

「とにかく聞いといてくれ」

 

「うーん……タダでっていうのはなぁ……」

 

と、キャラに合わずニヤリと笑う茜。

 

「いや、だから前金払ってんだろ」

 

「へ?」

 

ポテトとジンジャエールを指差す慶。「読まれてた……」とばかりに茜は膝をついた。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。