夜中。慶は気絶からようやく目を覚ました。どうやら誰かが部屋で寝かせておいてくれたようだ。
「あ、起きた〜?」
目の前に半透明の女。
「アギャッ……!」
が、また呼吸を止められる。
「いい加減慣れてよ〜。もうみんな寝てる時間よ〜?」
「ッッ」
「叫ばないって言うなら解放してあげるけど〜?」
すると、コクコクと頷く慶。で、プハァッと解放された。
「ハァ……そ、それで……ひいばあ様?」
「咲ちゃんでいいわよ〜」
「じゃあ咲ちゃん。まずなんであんたそんな若いんですか?」
「それはもちろん、若い時に私が死んじゃったからだよ〜」
いきなり踏み込んだ質問をしてしまったような気がして、つい黙り込んでしまう慶だった。
「なんかごめんなさい……」
「気にしないで〜」
「で、もう一つ。なんで俺に咲ちゃんが見えるんですか?もしかして……」
「能力じゃないわよ〜?ただあなたの霊感がニュータイプバリに強いだけよ〜」
「あの、その最後の語尾の間延びした感じのやめてもらえませんか?なんか身震いするんで」
「お化けの宿命だから、勘弁してね〜」
「そうすか……。てか霊感強いって……」
「だから相手に霊を飛ばして金縛りさせたりも出来るのよ〜?」
「マジでか!」
「その代わり、飛ばされた相手は幽体離脱しちゃうから気をつけてね〜」
「ていうかこれほとんど能力だろ!霊感強いなんて次元じゃねぇぞ!」
「だから言ったでしょ〜?ニュータイプばりに強いって」
「カミーユじゃねぇか!」
すると、隣のベッドから誰かがムクリと起き上がった。
「もぉ〜……どしたのけーちゃん……?夜中に……ていうか、洗面所で何してたの?」
「あ、いやなんでもない。つか何もしてない」
「そう……。晩御飯下にあるから、食べといてよ」
「おお、すまん」
そのまま茜は再び寝た。で、慶はリビングに向かう。で、サランラップに包まれてる飯をかっ込んだ。
*
それから3日くらい経った。文化祭実行委員会が終わり、今日も茜と慶は一緒に帰宅。
「茜、少しいいか?」
「へっ?」
慶はマックの中に入り、茜も後に続く。
「奢るから」
「ど、どうしたのけーちゃん。頭でも打った?」
「いや違うから。ちょっとな……」
で、二人でポテトのMとジンジャエールを買い、席に着いた。
「で、どうしたの?」
「実はさ、奏とデートしてから一回も話してないんだよね」
「へ?そ、そーなの?」
「いや話してないっつーか、マトモな会話が無いんだよね。話し掛けてもなんか理由付けられて逃げるし」
「ふーむ………」
「なんでかなーって思って」
「そんな事、私に聞かれても……」
「だから聞いてきてくんない?なんかあいつと話せないとつまんないから」
「へっ?そ、それどういう……」
「あれくらいプライド高い方がからかい甲斐がある」
「ああ、やっぱりそういうこと……」
「とにかく聞いといてくれ」
「うーん……タダでっていうのはなぁ……」
と、キャラに合わずニヤリと笑う茜。
「いや、だから前金払ってんだろ」
「へ?」
ポテトとジンジャエールを指差す慶。「読まれてた……」とばかりに茜は膝をついた。