そんなわけで、二人は帰宅。茜は奏の元へ歩いた。
「ねぇ、カナちゃん。けーちゃんと最近話してないけどなんかあったの?」
ブッフォ!と慶は噴き出した。
(安直!安直過ぎる!ガーベラストレートか!)
案の定、奏は不機嫌そうにジロリと睨んで聞き返した。
「………急に何?」
「えっ、あー……いや………」
案の定、びびりまくる茜。慶は速攻で自分の部屋に逃げた。
(もうあいつはダメだ。別の奴に相談しよう)
で、着替えて葵の部屋へ。あいも変わらずノックなしで入ると、葵が着替え中だった。が、全く無視して慶は部屋のベッドに腰を下ろした。
「なぁ葵、ちょっといいか?」
「………その前に何か言うことは?」
「綺麗な体してるね、とか?」
「そ、そう………」
許された。で、着替え終わって葵は若干顔を赤らめながらもコホンと咳払いして言った。
「それで、どうしたの?」
「や、奏の事なんだけどさ。ここ最近一回もまともに話してないからどうしたんかなって思って」
「うーん……それは私には分からないけど……。そういえば、キスしたって言ってたよね?あれほんとなの?」
「ガチだよ。事故だけど」
「それだね」
「はぁ?あんなんで?大体、ガキの頃はよくしてただろうが。お前も」
「子供の頃の話でしょ?」
「いや、子供でも立場は家族で変わらないだろうが」
「じゃあ、今私が慶にキスしたら?」
「状況が違うだろ。お前がやろうとしてるのは故意的だ」
「ひねくれ者」
「普通だろ」
で、困ったわねぇと顎に指を当てる葵。
「で、どうすればいいと思う?」
「うーん……。とりあえずその鈍感さをどうにかしたらどうかしら?」
「はぁ?つい最近ニュータイプみたいって言われたばっかだぞ」
「いやそういうことじゃなくて……」
本当にどうしましょうと考えてると、コンコンとノックの音がした。
「あ、どうぞ〜」
「入るわよ」
「きゃなでっ⁉︎」
「キャメラみたいに言わないで!」
と、そこを訂正しておいて奏は言った。
「慶。話があるの」
「あ?」
で、奏は慶の前に座った。
「なんだよ」
「その、茜から話聞いてね。ごめんね、別にあんたを避けてたわけじゃないのよ」
「いや避けてたよね完璧に」
「いや、だから……この前、遊園地でさ。その、しちゃったじゃない……?」
「キスのことか?」
「オブラートに包みなさいよ!」
「なんで?」
「………もういいわ。とにかく、その……しちゃったから……」
「『しちゃったから……』って意味深に言った方がよっぽどエロいけどな」
「いいから聞きなさいよ!」
で、コホンと咳払いして言った。
「と、とにかく、その……あの時にキスしたのが、恥ずかしくて……慶の顔を見ると、顔が赤くなっちゃうから……それで」
「今赤くねーじゃん」
「今はね⁉︎決心したからね⁉︎」
「いや決心するほど恐ろしい顔なのかよ俺……今のちょっと傷付いたぞ……」
言いながら慶は葵に抱き着いた。葵は葵で苦笑いしながら慶の頭を撫でた。
「と、とにかく!それだけだからね!じゃあね!」
「で、本題は?」
「話聞いてなかったの⁉︎もういい!」
そのまま奏は立ち上がり、部屋を出て行こうとする。その奏の背中に慶は言った。
「でも良かったよ。嫌われてたわけじゃなくて」
言われて少しどきっとする奏。で、
「私が慶を嫌うわけないでしょ、バカ」
と言って出て行った。