俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第51話

 

 

 

そんなこんなで、文化祭当日となった。あれから奏はいつも通り復活し、文化祭の準備も良く進み、ゲストでさっちゃんと光も呼ぶ事になった。

 

「いいですか、皆さん。我々は文化祭実行委員として裏方で動かなければなりません。楽しむ時間はないかもしれませんが、それでもその他生徒たちのために頑張りましょう」

 

奏が言うと、「おーっ!」と全員が拳を突き上げた。

 

「それと、空き時間の方はなるべくクラスの方を見てあげて下さいね。それでは、解散!」

 

と、言うと全員がそれぞれの持ち場に着く。そんな中、茜が奏の袖を引っ張った。

 

「ねぇ、カナちゃん。けーちゃんは?」

 

「…………いないの?」

 

「うん」

 

言われて全員の背中を見る。ほんとにいなかった。奏が慶の存在を見逃すはずもない。

 

「………サボりね。見付けたらただじゃおかないんだから……」

 

「けーちゃんの担当は確か……私と一緒に見回りだよね」

 

「探すわよ茜」

 

「うん」

 

 

 

 

美術部による体験お絵描き会。そこに慶はいた。

 

「〜♪」

 

「さ、櫻田くん……。随分と上手いね……」

 

声をかけたのは二年生、つまり慶と同い年の部長だ。

 

「ん、おお。まぁ絵くらい家でも描いてるからな」

 

「や、それにしても上手すぎ……本当に素人?」

 

「おう。………っと、描き終わった」

 

慶が描いたのは奏と栞が気持ちよさそうに寝ている絵。

 

「なぁ、この絵その辺に飾っといてくれる?」

 

「へっ?い、いらないの?」

 

「後で欲しがりそうな奴が来ると思うから」

 

「わ、分かった」

 

そのまま慶は出てった。

 

 

 

 

その5分後。ガララッと美術部の扉が開かれた。

 

「あっ!さ、櫻田先輩に茜ちゃん!」

 

「ごめんなさい。慶はいる?」

 

奏が聞いた。

 

「ほんの5分ほど前に出て行きましたが……」

 

「一歩遅かったか……」

 

茜が悔しそうにつぶやいた。すると、奏が「あっ」と声を漏らした。目線の先には栞の絵。

 

「あ、それ櫻田くんが描いていったんです。上手ですよね〜」

 

「あんの野郎……余裕まんまでメッセージ残してやがるわね……」

 

「でも5分前ってことはまだそんなに遠くに行ってないよ!追うよカナちゃん!」

 

「ええ!でもその前に、」

 

クワッと美術部の部員に言った。

 

「この絵、袋に入れてくれる⁉︎」

 

 

 

 

続いて家庭科室。お菓子作り体験会と販売をやっている。そこに慶はいた。

 

「お、美味しい!何これ!」

 

家庭科部員の一人が声を上げた。作ったのは慶である。

 

「そうか?普通だろ」

 

「そんなことないよ!おーい、みんなちょっと来て!」

 

「おいおい……まぁたくさん作ったから食ってくれていいけど……」

 

で、その場にわらわらと集まってくる部員達。

 

「あ、部長さん。これ奏と茜が来たら渡しといてくれ」

 

「へ?う、うん」

 

そのまま慶はその場を後にした。

 

 

 

 

その6分後。奏と茜が到着。

 

「こんにちは」

 

「あっ!奏先輩!こんにちは」

 

「茜さんもこんにちはー」

 

部員全員が2人を見る。

 

「ここにけーちゃん来なかった?」

 

「来ましたよー。すっごく美味しいクッキー作ってほんの6分前にどっか行っちゃいました」

 

「そっかー。ありがと。カナちゃん、クッキー一つだけもらって行こ?」

 

「そうね」

 

と、茜が言った時だ。

 

「あっ、そうだ!2人に櫻田くんから渡してくれって」

 

「「へっ?」」

 

言われて出されたのはクッキーだ。

 

「このクッキー。すっごく美味しいんですよ」

 

「………慶の手作り?」

 

「はい」

 

「残りある分全部頂戴。買うわ」

 

 

 

 

音楽室。そこでも体験コーナーをやっていて、トランペット、ピアノ、ギターの中から好きな楽器を選んで演奏出来る。慶はピアノで機動戦士ガンダムUCの『RX-0』を演奏している。

「う、上手っ……何この人……」

 

「この曲知ってるかも……」

 

などと声が上がり、中には歌ってる奴もいる。そして、終わったところで曲が切り替わった。曲名は『Unicorn』。

 

「キタァァァァァァッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

「『ここから、ここから、出て行けェェェェッッ‼︎‼︎』」

 

などと声が上がる。最早、ライブ会場とかしていた。

 

 

 

 

「目撃情報によるとこっちにいるわね……!」

 

「そうだねカナちゃん」

 

と、さっき全部買ったクッキーを二人で食べ歩きながら歩いてる時だ。

 

「おーい!奏ちゃん、茜ちゃーん!」

 

声がして振り返ると、光と栞が立っていた。

 

「あっ、光に栞⁉︎どうしたのこんなところで」

 

「ゲストで呼んだのはそっちじゃん!」

 

「だから時間早くない?」

 

「そりゃ、兄弟の文化祭だもん。少しくらい見廻りたいよ!で、栞も行きたいって言うから一緒に」

 

「そっかー」

 

と、茜と話してるときだ。

 

「茜、早く行くわよ」

 

「あ、うん。ごめんね二人とも。今急いでるから」

 

「? どうかしたの?」

 

「けーちゃん探してるの。音楽室に」

 

「けーちゃんが演奏してるの⁉︎あたしもいく!」

 

で、4人でクッキーを食べ歩きながら、音楽室に向かう。そして、ガララッとドアが開いた。

 

「あっ、奏さんだ!」

 

「茜もいるよ!」

 

「って、光様まで!」

 

などと声が上がる中、二人はピアノの方へ。

 

「慶!サボってないで実行委員の仕事をしなさい!」

 

と、奏が言い切った時だ。曲がまた変わった。曲は『Ring Ring Rainbow!!』。全員、「なんの歌……?」みたいになっている中、光と奏が前に出た。

 

「「Ring Ring Rainbow‼︎」」

 

そのまま盛り上がりが最高潮にまで達した中、いつの間にか伴奏者である慶は姿を消していた。

 

 


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