そんなこんなで、文化祭当日となった。あれから奏はいつも通り復活し、文化祭の準備も良く進み、ゲストでさっちゃんと光も呼ぶ事になった。
「いいですか、皆さん。我々は文化祭実行委員として裏方で動かなければなりません。楽しむ時間はないかもしれませんが、それでもその他生徒たちのために頑張りましょう」
奏が言うと、「おーっ!」と全員が拳を突き上げた。
「それと、空き時間の方はなるべくクラスの方を見てあげて下さいね。それでは、解散!」
と、言うと全員がそれぞれの持ち場に着く。そんな中、茜が奏の袖を引っ張った。
「ねぇ、カナちゃん。けーちゃんは?」
「…………いないの?」
「うん」
言われて全員の背中を見る。ほんとにいなかった。奏が慶の存在を見逃すはずもない。
「………サボりね。見付けたらただじゃおかないんだから……」
「けーちゃんの担当は確か……私と一緒に見回りだよね」
「探すわよ茜」
「うん」
*
美術部による体験お絵描き会。そこに慶はいた。
「〜♪」
「さ、櫻田くん……。随分と上手いね……」
声をかけたのは二年生、つまり慶と同い年の部長だ。
「ん、おお。まぁ絵くらい家でも描いてるからな」
「や、それにしても上手すぎ……本当に素人?」
「おう。………っと、描き終わった」
慶が描いたのは奏と栞が気持ちよさそうに寝ている絵。
「なぁ、この絵その辺に飾っといてくれる?」
「へっ?い、いらないの?」
「後で欲しがりそうな奴が来ると思うから」
「わ、分かった」
そのまま慶は出てった。
*
その5分後。ガララッと美術部の扉が開かれた。
「あっ!さ、櫻田先輩に茜ちゃん!」
「ごめんなさい。慶はいる?」
奏が聞いた。
「ほんの5分ほど前に出て行きましたが……」
「一歩遅かったか……」
茜が悔しそうにつぶやいた。すると、奏が「あっ」と声を漏らした。目線の先には栞の絵。
「あ、それ櫻田くんが描いていったんです。上手ですよね〜」
「あんの野郎……余裕まんまでメッセージ残してやがるわね……」
「でも5分前ってことはまだそんなに遠くに行ってないよ!追うよカナちゃん!」
「ええ!でもその前に、」
クワッと美術部の部員に言った。
「この絵、袋に入れてくれる⁉︎」
*
続いて家庭科室。お菓子作り体験会と販売をやっている。そこに慶はいた。
「お、美味しい!何これ!」
家庭科部員の一人が声を上げた。作ったのは慶である。
「そうか?普通だろ」
「そんなことないよ!おーい、みんなちょっと来て!」
「おいおい……まぁたくさん作ったから食ってくれていいけど……」
で、その場にわらわらと集まってくる部員達。
「あ、部長さん。これ奏と茜が来たら渡しといてくれ」
「へ?う、うん」
そのまま慶はその場を後にした。
*
その6分後。奏と茜が到着。
「こんにちは」
「あっ!奏先輩!こんにちは」
「茜さんもこんにちはー」
部員全員が2人を見る。
「ここにけーちゃん来なかった?」
「来ましたよー。すっごく美味しいクッキー作ってほんの6分前にどっか行っちゃいました」
「そっかー。ありがと。カナちゃん、クッキー一つだけもらって行こ?」
「そうね」
と、茜が言った時だ。
「あっ、そうだ!2人に櫻田くんから渡してくれって」
「「へっ?」」
言われて出されたのはクッキーだ。
「このクッキー。すっごく美味しいんですよ」
「………慶の手作り?」
「はい」
「残りある分全部頂戴。買うわ」
*
音楽室。そこでも体験コーナーをやっていて、トランペット、ピアノ、ギターの中から好きな楽器を選んで演奏出来る。慶はピアノで機動戦士ガンダムUCの『RX-0』を演奏している。
「う、上手っ……何この人……」
「この曲知ってるかも……」
などと声が上がり、中には歌ってる奴もいる。そして、終わったところで曲が切り替わった。曲名は『Unicorn』。
「キタァァァァァァッッッ‼︎‼︎‼︎」
「『ここから、ここから、出て行けェェェェッッ‼︎‼︎』」
などと声が上がる。最早、ライブ会場とかしていた。
*
「目撃情報によるとこっちにいるわね……!」
「そうだねカナちゃん」
と、さっき全部買ったクッキーを二人で食べ歩きながら歩いてる時だ。
「おーい!奏ちゃん、茜ちゃーん!」
声がして振り返ると、光と栞が立っていた。
「あっ、光に栞⁉︎どうしたのこんなところで」
「ゲストで呼んだのはそっちじゃん!」
「だから時間早くない?」
「そりゃ、兄弟の文化祭だもん。少しくらい見廻りたいよ!で、栞も行きたいって言うから一緒に」
「そっかー」
と、茜と話してるときだ。
「茜、早く行くわよ」
「あ、うん。ごめんね二人とも。今急いでるから」
「? どうかしたの?」
「けーちゃん探してるの。音楽室に」
「けーちゃんが演奏してるの⁉︎あたしもいく!」
で、4人でクッキーを食べ歩きながら、音楽室に向かう。そして、ガララッとドアが開いた。
「あっ、奏さんだ!」
「茜もいるよ!」
「って、光様まで!」
などと声が上がる中、二人はピアノの方へ。
「慶!サボってないで実行委員の仕事をしなさい!」
と、奏が言い切った時だ。曲がまた変わった。曲は『Ring Ring Rainbow!!』。全員、「なんの歌……?」みたいになっている中、光と奏が前に出た。
「「Ring Ring Rainbow‼︎」」
そのまま盛り上がりが最高潮にまで達した中、いつの間にか伴奏者である慶は姿を消していた。