奏、茜、光の三人は音楽室から出た。
「また逃したわね……。逃げ足だけは早い……!」
「いや、純度100%でカナちゃんのせいで逃してるんだけど……」
「とにかく、三つに分かれて探すわよ。私は校舎、茜はグラウンド、光は体育館をお願い」
「了解」
(ていうかあたしはいつの間にこのパーティの一員に……)
と、不満を心の中で呟きながらも光も動き出した。
「………あれ?栞は?」
*
その頃、慶はグラウンドにいる。右手にたこ焼き、左手に焼きそば、ブレザーの左ポケットに学園祭のしおり、同じく右ポケットにジンジャエールをはみ出させて、頭の上に栞を乗せて歩いていた。
「どこで食べよっか栞?」
「お兄様と、落ち着けるところ」
「ラブホ行くかラブホ?」
「なあにそれ?」
「なんでもない」
なんて話しながら歩いてると、休憩所とかかれた場所を見つけた。
「おっ、あそこでいっか」
「うんっ」
で、二人で席に座り、机の上にたこ焼きと焼きそばとジンジャエールを置いた。ちなみに全部、二人で半分ずつである。
「おっ……学祭のたこ焼きにしちゃ美味いな……」
「おいしっ」
二人で口元に青海苔を付けながら食べる。
「さて栞、次はどこ行きたい?」
「うーん……ここ!」
栞が指差したのは慶と茜の教室の出し物だった。
「あの、それ俺も茜も出ないよ?」
「そうなの?」
「おう。実行委員で忙しかったからな」
サボってる奴の口から出た台詞である。
「うーん……じゃあ、お兄様と一緒ならどこでも良い」
「そうか?じゃあとりあえずここ行くか」
慶が指差した先は校舎のおばけ屋敷。本物の霊と知り合ってる慶はもはや恐怖の対象ではなくなっていた。
「怖いか?」
「へーき」
「うしっ、じゃあいくか」
「うんっ」
そのままふたりで飯を食った後、再び栞を肩車してお化け屋敷に向かった。
*
途中、わたあめとソーセージを買い食いしながらもお化け屋敷に到着。
「さぁーて、行くぞー栞」
「うんっ」
と、中へ入ろうとした時だ。ガシッと腕を掴まれた。
「あん?」
振り返ると、奏が立っている。
「あっ、やべっ」
「仕事。なさい?」
だが、慶は急いでお化け屋敷の中に入った」
「あっ、コラ待ちなさい!」
奏も入ろうとしたが、中々凝ったようなお化け屋敷に怯む。
「っ……」
が、なんとか勇気を振り絞って突入した。
その頃、前の慶。
(咲さん、咲さんいるか⁉︎)
(どうしたの〜?)
テレパシーである。
(後ろの奏の足止めを気付かれない程度に頼む!)
(どうして〜?)
(あとで板チョコ一枚でどうだ?)
(行ってきまぁ〜す)
そのまま慶と栞は急いで突破した。その瞬間、お化け屋敷の中から「ヒィヤァァァァァァッッ‼︎‼︎‼︎」とすごい悲鳴が聞こえた。
「………やり過ぎだろあの人……というか霊」
と、思いつつもなんとか逃げた。