慶は再びグラウンドにいる。栞に食べ物だの何だのを奢り歩いていた。
「ほーら栞。クレープだぞー」
「ありがとう、お兄様」
「ほら、あーん」
「あー、んっ」
で、パクッと食べた。
「おいしっ」
(天使)
ほっこりする慶。すると、手刀が慶の脳天に直撃した。
「って」
「やっと見つけたよけーちゃん」
「って、茜か。なんだよ」
「サボってないで仕事!見張りでしょあんたは!」
「あーそういやそうだな。でもパスだ。今は栞とデートしなきゃならない」
「そんなの理由にならないわよ!」
「まぁ落ち着けよ。とりあえずお前の分のクレープも奢ってやるから」
「そ、そんな食べ物で釣ろうとしたってダメなんだからね⁉︎チョコレートでお願いします!」
「はい契約成立な」
(ふんっ、口約束に決まってるじゃない。奢らせたら即逮するからね)
と、薄く笑う茜。で、三人でクレープの列へ並んだ。
「何がいい?」
「あのなんとかショコラって奴」
「うい」
で、バンシィが絵柄になってる財布を出す慶。
「あれ?けーちゃん、財布変えた?前までDXじゃなかった?」
「あー……まぁな」
「ふーん……」
で、クレープを奢った。
「あーんっ。んー!美味しい。ありがとうけーちゃ……」
だが、慶の姿はどこにもなかった。
「茜お姉様、慶お兄様が『あばよ』って……」
「また逃げられたァァァッッ‼︎‼︎」
*
校舎にいる奏。涙目になりながらお化け屋敷から出た。
(まったく、慶の奴は後で殺す)
そんなことを考えながら歩いていると、「生徒会長!」と自分を呼ぶ声がした。
「どうしたの?」
「それが、スリがあったみたいで……」
「スリ?」
「ええ」
で、そのスリのあった場所へ。そこでは女の子が一人泣いていた。
「大丈夫?何があったの?」
「か、奏様……。そ、その……グラウンドでかき氷のお店に並んでたら……いつの間にかなくなってて……」
「…………そう。どんな財布なの?」
「その……弟がくれた黒いガンダムが柄の財布で……」
「分かったわ。先生に連絡しましょう。あなたも一緒に来てくれるかしら?」
「はい……」
*
慶は一人で体育館で暇つぶししていた。このステージで紗千子と光がライブをやるのだ。今は合唱部の歌をやってるけど。とにかく、その様子を眺めていた。
「………移動するか」
そう思って立ち上がろうとした時だ。隣に座る女の子がいた。
「よっす、けーちゃん」
奏に頼まれたことなどすっかり忘れている光だった。
「よう。お前もここにいたのか」
「うん。誰かに何か頼まれてここに来たはずなんだけど……忘れちゃった」
「お前そんくらい覚えとけよちゃんと……。それよりなんか食いたいものがあるなら奢るぞ」
「ほんとに⁉︎ありがと!」
「おう」
で、二人は外に出た。
「で、何食うんだ?」
「じゃあ、一番高い奴!」
「りょーかい」
「え?いいの?」
「臨時収入が入ったからな」
で、二人はお好み焼きを買った。
「ほらこれ」
「おおおー!美味しそう。いただきまーす!」
で、光が美味しそうに食べる中、慶は学園祭の様子を見ていた。
*
「あ、カナちゃん」
「ああ、茜」
茜と奏はたまたま校舎内で出会った。
「慶はいた?」
「ううん。グラウンドにいたけど逃げられちゃった」
「そう……。それより茜、気を付けなさい」
「? 何が?」
「さっき、女子生徒がスリにあったわ。多分、まだ犯人はこの学校内にいる」
「ええっ⁉︎ど、どんな子がやられたの⁉︎どんな財布⁉︎私も探すの手伝うよ!」
「黒いガンダムの柄の財布みたいよ」
すると、ピクッと茜は反応する。
「黒いガンダム……?」
「ええ。どこかで見たの?」
茜は言おうかどうか迷ったが、口を開いた。
「その財布、持ってる人がいたよ」
「ほんとに?誰?」
「…………けーちゃんだよ」
「えっ………?」