俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

53 / 82
第53話

 

 

 

慶は再びグラウンドにいる。栞に食べ物だの何だのを奢り歩いていた。

 

「ほーら栞。クレープだぞー」

 

「ありがとう、お兄様」

 

「ほら、あーん」

 

「あー、んっ」

 

で、パクッと食べた。

 

「おいしっ」

 

(天使)

 

ほっこりする慶。すると、手刀が慶の脳天に直撃した。

 

「って」

 

「やっと見つけたよけーちゃん」

 

「って、茜か。なんだよ」

 

「サボってないで仕事!見張りでしょあんたは!」

 

「あーそういやそうだな。でもパスだ。今は栞とデートしなきゃならない」

 

「そんなの理由にならないわよ!」

 

「まぁ落ち着けよ。とりあえずお前の分のクレープも奢ってやるから」

 

「そ、そんな食べ物で釣ろうとしたってダメなんだからね⁉︎チョコレートでお願いします!」

 

「はい契約成立な」

 

(ふんっ、口約束に決まってるじゃない。奢らせたら即逮するからね)

 

と、薄く笑う茜。で、三人でクレープの列へ並んだ。

 

「何がいい?」

 

「あのなんとかショコラって奴」

 

「うい」

 

で、バンシィが絵柄になってる財布を出す慶。

 

「あれ?けーちゃん、財布変えた?前までDXじゃなかった?」

 

「あー……まぁな」

 

「ふーん……」

 

で、クレープを奢った。

 

「あーんっ。んー!美味しい。ありがとうけーちゃ……」

 

だが、慶の姿はどこにもなかった。

 

「茜お姉様、慶お兄様が『あばよ』って……」

 

「また逃げられたァァァッッ‼︎‼︎」

 

 

 

 

校舎にいる奏。涙目になりながらお化け屋敷から出た。

 

(まったく、慶の奴は後で殺す)

 

そんなことを考えながら歩いていると、「生徒会長!」と自分を呼ぶ声がした。

 

「どうしたの?」

 

「それが、スリがあったみたいで……」

 

「スリ?」

 

「ええ」

 

で、そのスリのあった場所へ。そこでは女の子が一人泣いていた。

 

「大丈夫?何があったの?」

 

「か、奏様……。そ、その……グラウンドでかき氷のお店に並んでたら……いつの間にかなくなってて……」

 

「…………そう。どんな財布なの?」

 

「その……弟がくれた黒いガンダムが柄の財布で……」

 

「分かったわ。先生に連絡しましょう。あなたも一緒に来てくれるかしら?」

 

「はい……」

 

 

 

 

慶は一人で体育館で暇つぶししていた。このステージで紗千子と光がライブをやるのだ。今は合唱部の歌をやってるけど。とにかく、その様子を眺めていた。

 

「………移動するか」

 

そう思って立ち上がろうとした時だ。隣に座る女の子がいた。

 

「よっす、けーちゃん」

 

奏に頼まれたことなどすっかり忘れている光だった。

 

「よう。お前もここにいたのか」

 

「うん。誰かに何か頼まれてここに来たはずなんだけど……忘れちゃった」

 

「お前そんくらい覚えとけよちゃんと……。それよりなんか食いたいものがあるなら奢るぞ」

 

「ほんとに⁉︎ありがと!」

 

「おう」

 

で、二人は外に出た。

 

「で、何食うんだ?」

 

「じゃあ、一番高い奴!」

 

「りょーかい」

 

「え?いいの?」

 

「臨時収入が入ったからな」

 

で、二人はお好み焼きを買った。

 

「ほらこれ」

 

「おおおー!美味しそう。いただきまーす!」

 

で、光が美味しそうに食べる中、慶は学園祭の様子を見ていた。

 

 

 

 

「あ、カナちゃん」

 

「ああ、茜」

 

茜と奏はたまたま校舎内で出会った。

 

「慶はいた?」

 

「ううん。グラウンドにいたけど逃げられちゃった」

 

「そう……。それより茜、気を付けなさい」

 

「? 何が?」

 

「さっき、女子生徒がスリにあったわ。多分、まだ犯人はこの学校内にいる」

 

「ええっ⁉︎ど、どんな子がやられたの⁉︎どんな財布⁉︎私も探すの手伝うよ!」

 

「黒いガンダムの柄の財布みたいよ」

 

すると、ピクッと茜は反応する。

 

「黒いガンダム……?」

 

「ええ。どこかで見たの?」

 

茜は言おうかどうか迷ったが、口を開いた。

 

「その財布、持ってる人がいたよ」

 

「ほんとに?誰?」

 

「…………けーちゃんだよ」

 

「えっ………?」

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。