俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第55話

 

 

 

「で、茜。なんで捕まってんの俺」

 

慶が言った。

 

「今、学園祭の中でスリが3件も起きてるの。そのうちの一人が黒いガンダムの柄の財布みたいで、それでけーちゃんもその財布持ってたからとりあえず話だけ聞こうとしたら、なんか三人目の被害者の財布をけーちゃんが空っぽで持ってきちゃったから、一応話を聞いてみただけ」

 

「疑われてんのかよ……」

 

「疑いたくなんかないよ」

 

そう言う茜の顔は少し真面目だった。だが、慶も真面目な顔をする。

 

「悪いけどな、俺はスリなんかやってねぇし、やるとしたら金だけ抜いて財布は戻す」

 

「うわあ……最低」

 

「とにかく、そんな下らないことで俺の文化祭を邪魔すんな。ゲーセン行ってくる」

 

「文化祭関係ないし!ていうか行かせないわよ。ここで捉えとけって言われてるんだから」

 

(確かにこの重力から逃げんのは無理だよなぁ……)

 

なんて考えてると、ガチャッと扉が開いた。

 

「連れてきたわよ」

 

中に入ってきたさっきの女の子。さっそく、慶の財布を見せた。だが、

 

「これじゃあ、ありません……」

 

「「へっ?」」

 

「ほら見たことか」

 

得意げに言う慶。

 

「そもそもな、黒いガンダムにも色々いるんだよ。Mk2、サイコガンダム、X2、マスガン、ブリッツ、ガイア、ダークハウンド、ダークマター、有名なのテキトーにあげただけでもこれだぞ。この上マイナーなの合わせたら……」

 

「ガンダム詳しいぜ自慢はいいから黙ってて」

 

奏にぴしゃりと言われて思わず黙る慶。

 

「仕方ないわね。また一から探すわよ」

 

「じゃ、俺はこれで用済みだな。今度は花蓮辺りと一緒に……」

 

「待ちなさい」

 

奏に引き止められた。

 

「なんだよ」

 

「これ以上、他の女の子とあなたを……あっ、いや、あなたをサボらせるわけにはいかないわ」

 

「お前俺の事好きすぎだろ。さすおにかよ」

 

「黙れ。だから、あなたも犯人逮捕に付き合いなさい」

 

「ええっ……」

 

「栞にあなたが仕事をサボってたことを言ってもいいのよ?」

 

「付きあわせていただきます」

 

茜と財布を盗られた生徒がドン引きする。

 

「と、いうわけで慶は逃げないように私と一緒に行動しなさい。茜は少し休憩でいいわ」

 

「う、うん……」

 

「じゃあ慶、捜査に行きましょ♪」

 

言いながら奏は慶の腕に飛び付いた。そのまま二人は生徒会室を出て行く。

 

「あ、茜さん……奏さんって普段はあんな感じなんですか?」

 

「見なかったことにしてあげてください」

 

 

 

 

で、グラウンド。

 

「で、奏。今まで被害にあった奴らはどんなところで被害にあったんだ?」

 

「えーっと……1件目がかき氷で、2件目がワッフル、3件目がたい焼きだったわよ」

 

「………全部グラウンドので店か。その時間帯で特に人の集まった店をテキトーに狙ったんだろうな。それが一番スリのしやすい状態だし……そうなると、今もスリをしてる可能性が高いのは今、一番客が集中してる店になるわけで……」

 

と、ブツブツ呟いてると、奏が裾を引っ張った。

 

「ね、ねぇ。私、あのワッフルが食べたいなーなんて……」

 

「買ってくればいいだろ。今、犯人について考えてんだ。邪魔すんな」

 

「んなっ……!」

 

(どうして私の時だけデートみたいに思ってくれないのよ!)

 

と、自分勝手なことを考える奏だった。だが、慶はそれらを全て無視して、チロッと時計を見た。

 

(さっちゃんのライブまであと30分くらい……それまでに間に合わせないとな)

 

改めて気を引き締める慶だった。

 

 


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