俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第57話

 

 

 

時には昔の話をしようか。てなわけで、12年前。

 

「じゃ、修。お出かけしてくるから、奏と茜と慶のことお願いね」

 

「はーい」

 

「それと、慶?」

 

「んー?」

 

「あなたは絶対に能力を使っちゃダメよ」

 

「分かってるよー」

 

そう言うと母親は出かけて行った。

 

「そういうことだから、大人しくしててくれよ」

 

と、言う修だった。だが、

 

「まだだ、たかがメインカメラがやられただけだ!」

 

「キャハハハッ!」

 

すでにガンダム大好きの慶と他の二人が遊んでいた。

 

「そこだぁ!迂闊な奴め!」

 

「当たらなければどうということはない!」

 

「奇跡を見せてやろうじゃないか!」

 

ほとんどカオスだった。なんか色んなキャラ混ざってて。

 

「おい、大人しくしてろよ。ていうかソファーの上で跳ねるなよ。あと一人だけ機体性能おかしいだろ。いくらアムロでもX1にはガンダムじゃ勝てないぞ」

 

だが、修を無視して慶は奏に言った。

 

「ねぇー、カナちゃーん。家の中飽きたー」

 

「そうね。けーちゃんがそう言うならお外で遊びましょ」

 

「ダメだよ」

 

修が止めた。

 

「母さんが留守番しててって言ってただろ」

 

「修ちゃんもいっしょにくればだいじょうぶですわっ」

 

「留守番の意味わかってる?」

 

言われて「ぐぬぬっ」と歯を食い縛る奏。

 

「カナちゃん、へーきだよ。きょーこーさくに出れば」

 

慶が言うとニヤリと笑う奏。

 

「そうですわね。来ないなら茜も連れて三人でいっちゃいますからねっ」

 

そう言うと奏は慶と茜の手を引いて家を出た。

 

「わかったから待てって奏ー」

 

「まちませんわーっ」

 

で、公園。そのまま遊びまくる。

 

「ぎゃははははっ!楽しいよなぁ、アレルヤ。アレルヤぁッ‼︎」

 

「けーちゃん!ハレルヤはダメってお父様に言われたばかりですわ!」

 

「そ、そーだったっけ?じゃあ、えーっと……えーっと……」

 

「まったくもう……」

 

「もう十分だろ」

 

すると、修が口を挟む。

 

「風も強いし、台詞のバリエーションも減ってきたし、帰ろう」

 

「一人で帰ればいいですわ」

 

「そうはいかない。俺はお兄ちゃんだからな」

 

「ぬうぅ〜〜」

 

「茜も慶も疲れただろ?」

 

「んー……」

 

「二人ともそんなやわじゃないですわっ!」

 

すると、茜のお腹がぐぅ〜〜っと鳴った。

 

「帰るか」

 

「だめですわーーーっ‼︎」

 

止める奏だが、修は無視して茜と慶に言う。

 

「帰ってラーメンでも食べよう」

 

「修ちゃんラーメンつくれるのっ?」

 

「おう、3分あればよゆーだ」

 

「すごい!」

 

「ちなみに帰るのはもっと速い。俺の瞬間移動があればな」

 

「すごーい!」

 

「ぬうううう〜〜〜‼︎」

 

そのやり取りを見て、奏が悔しそうに修を睨む。その奏に慶が言った。

 

「ねぇかなちゃん!ガンダムのーしんだいつくって!」

 

「えっ?」

 

「ほらはやくはやく!」

 

「は、はい!」

 

そのままボンッとガンダムをつくる。すると、

 

「すごおーい!」

 

茜がはしゃいだ。それを見て、パァッと嬉しそうな顔をする奏。さらにその様子を慶は見て嬉しそうに微笑んだ。

 

「おいおい……いくら使ったんだよ……」

 

修が軽く引きながら言った。

 

「おねーちゃん!こんどはザクがいい!」

 

茜がそうおねだりすると、少し困った顔をしたものの、奏は言った。

 

「任せなさいですわ!えーっと、ザク……ザク……」

 

「これだよ」

 

慶はポケットからザクのオモチャを出した。

 

「えーっと、えいっ」

 

ポンッとさらにザクの等身大が出てくる。

 

「できましたわ!」

 

「お前なぁ……お金使い切っちゃうぞ」

 

「どうですの?茜?」

 

「………あかくないの?」

 

「へっ?」

 

「あかいのがよかった……」

 

「で、できますわよ!」

 

「おい奏。もうお金……」

 

「えいっ!」

 

さらにシャアザクを作った。

 

「「おおおおおーーー!」」

 

目を輝かせる茜と慶。

 

「こんなものかしらっ」

 

「おねえちゃん、すごーい!」

 

(あとでぜったい怒られる……俺が……)

 

と、修が思った時だ。ザクの足が消えた。

 

「「へっ?」」

 

慶と修の声が重なった。そして、当然落ちてくるジオング状態のザク。

 

「あっ」

 

慶はたまたま位置がよかったが、残りの三人の所にザクは落下した。

 

「し、修ちゃん……?カナちゃん……?茜……?」

 

震えた声で名前を呼ぶ慶。だが、誰一人返事は返ってこなかった。本来なら、修と奏と茜の命はそこで終わるはずだった。

 

(お、俺のせいだ……。俺が、ガンダムなんか欲しがったから……)

 

で、慶は歯を食い縛る。そして、能力を発動した。慶の能力は死者蘇生(リザレクション)。自分の寿命を一年縮めて、死後30秒以内の死者を蘇らせる能力だ。もちろん、三人の生死を慶は確認したわけではない。だが、慶は死んだかもしれないと思ったから使ったのだった。

 

(これで、俺の寿命は………)

 

母親がこの能力を慶に使わせたくなかった理由は二つあった。一つ目はもちろん、慶自身に早死にして欲しくなかったから。二つ目は、慶の精神状態だ。自らの寿命を一年縮める。神経質の慶にその心の負担は大き過ぎた。今にも吐きそうになり、口を押さえて膝を着く。

 

(いいんだ……俺の一年が、みんなの一生に繋がるなら……)

 

だが、今ので三年縮んだ。そう思っただけで、慶は気絶した。

 

 

 

 

この事件がきっかけで、慶の能力は葵と同様、公式では発表されずになかった事にされた。慶自身には「能力を使い切った」と説明されている。

修、奏には「奇跡的に助かった」と説明されたが、二人はなんとなく理由は勘付いていた。

ちなみに茜はショックで事件前後のことは記憶から消えていて、能力が消えたことのみ話された。

 

 




結局、能力あんじゃねーか!みたいに思うかもしれませんが、なかったことにされたのでセーフですよね。
本当に思いつきでやってるのでどうもすいません。

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