時には昔の話をしようか。てなわけで、12年前。
「じゃ、修。お出かけしてくるから、奏と茜と慶のことお願いね」
「はーい」
「それと、慶?」
「んー?」
「あなたは絶対に能力を使っちゃダメよ」
「分かってるよー」
そう言うと母親は出かけて行った。
「そういうことだから、大人しくしててくれよ」
と、言う修だった。だが、
「まだだ、たかがメインカメラがやられただけだ!」
「キャハハハッ!」
すでにガンダム大好きの慶と他の二人が遊んでいた。
「そこだぁ!迂闊な奴め!」
「当たらなければどうということはない!」
「奇跡を見せてやろうじゃないか!」
ほとんどカオスだった。なんか色んなキャラ混ざってて。
「おい、大人しくしてろよ。ていうかソファーの上で跳ねるなよ。あと一人だけ機体性能おかしいだろ。いくらアムロでもX1にはガンダムじゃ勝てないぞ」
だが、修を無視して慶は奏に言った。
「ねぇー、カナちゃーん。家の中飽きたー」
「そうね。けーちゃんがそう言うならお外で遊びましょ」
「ダメだよ」
修が止めた。
「母さんが留守番しててって言ってただろ」
「修ちゃんもいっしょにくればだいじょうぶですわっ」
「留守番の意味わかってる?」
言われて「ぐぬぬっ」と歯を食い縛る奏。
「カナちゃん、へーきだよ。きょーこーさくに出れば」
慶が言うとニヤリと笑う奏。
「そうですわね。来ないなら茜も連れて三人でいっちゃいますからねっ」
そう言うと奏は慶と茜の手を引いて家を出た。
「わかったから待てって奏ー」
「まちませんわーっ」
で、公園。そのまま遊びまくる。
「ぎゃははははっ!楽しいよなぁ、アレルヤ。アレルヤぁッ‼︎」
「けーちゃん!ハレルヤはダメってお父様に言われたばかりですわ!」
「そ、そーだったっけ?じゃあ、えーっと……えーっと……」
「まったくもう……」
「もう十分だろ」
すると、修が口を挟む。
「風も強いし、台詞のバリエーションも減ってきたし、帰ろう」
「一人で帰ればいいですわ」
「そうはいかない。俺はお兄ちゃんだからな」
「ぬうぅ〜〜」
「茜も慶も疲れただろ?」
「んー……」
「二人ともそんなやわじゃないですわっ!」
すると、茜のお腹がぐぅ〜〜っと鳴った。
「帰るか」
「だめですわーーーっ‼︎」
止める奏だが、修は無視して茜と慶に言う。
「帰ってラーメンでも食べよう」
「修ちゃんラーメンつくれるのっ?」
「おう、3分あればよゆーだ」
「すごい!」
「ちなみに帰るのはもっと速い。俺の瞬間移動があればな」
「すごーい!」
「ぬうううう〜〜〜‼︎」
そのやり取りを見て、奏が悔しそうに修を睨む。その奏に慶が言った。
「ねぇかなちゃん!ガンダムのーしんだいつくって!」
「えっ?」
「ほらはやくはやく!」
「は、はい!」
そのままボンッとガンダムをつくる。すると、
「すごおーい!」
茜がはしゃいだ。それを見て、パァッと嬉しそうな顔をする奏。さらにその様子を慶は見て嬉しそうに微笑んだ。
「おいおい……いくら使ったんだよ……」
修が軽く引きながら言った。
「おねーちゃん!こんどはザクがいい!」
茜がそうおねだりすると、少し困った顔をしたものの、奏は言った。
「任せなさいですわ!えーっと、ザク……ザク……」
「これだよ」
慶はポケットからザクのオモチャを出した。
「えーっと、えいっ」
ポンッとさらにザクの等身大が出てくる。
「できましたわ!」
「お前なぁ……お金使い切っちゃうぞ」
「どうですの?茜?」
「………あかくないの?」
「へっ?」
「あかいのがよかった……」
「で、できますわよ!」
「おい奏。もうお金……」
「えいっ!」
さらにシャアザクを作った。
「「おおおおおーーー!」」
目を輝かせる茜と慶。
「こんなものかしらっ」
「おねえちゃん、すごーい!」
(あとでぜったい怒られる……俺が……)
と、修が思った時だ。ザクの足が消えた。
「「へっ?」」
慶と修の声が重なった。そして、当然落ちてくるジオング状態のザク。
「あっ」
慶はたまたま位置がよかったが、残りの三人の所にザクは落下した。
「し、修ちゃん……?カナちゃん……?茜……?」
震えた声で名前を呼ぶ慶。だが、誰一人返事は返ってこなかった。本来なら、修と奏と茜の命はそこで終わるはずだった。
(お、俺のせいだ……。俺が、ガンダムなんか欲しがったから……)
で、慶は歯を食い縛る。そして、能力を発動した。慶の能力は
(これで、俺の寿命は………)
母親がこの能力を慶に使わせたくなかった理由は二つあった。一つ目はもちろん、慶自身に早死にして欲しくなかったから。二つ目は、慶の精神状態だ。自らの寿命を一年縮める。神経質の慶にその心の負担は大き過ぎた。今にも吐きそうになり、口を押さえて膝を着く。
(いいんだ……俺の一年が、みんなの一生に繋がるなら……)
だが、今ので三年縮んだ。そう思っただけで、慶は気絶した。
*
この事件がきっかけで、慶の能力は葵と同様、公式では発表されずになかった事にされた。慶自身には「能力を使い切った」と説明されている。
修、奏には「奇跡的に助かった」と説明されたが、二人はなんとなく理由は勘付いていた。
ちなみに茜はショックで事件前後のことは記憶から消えていて、能力が消えたことのみ話された。
結局、能力あんじゃねーか!みたいに思うかもしれませんが、なかったことにされたのでセーフですよね。
本当に思いつきでやってるのでどうもすいません。