俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第63話

 

 

翌日の放課後。慶は帰宅中。欠伸をし、鼻くそをほじると、後頭部をガリガリと掻きながら歩いていた。

 

「ダッリぃ……。あーそういや今日、ゲーセンで音ゲーのイベントだったな。やっとくか。あと今日から格ゲーで新キャラ参戦だっけ。使っとこーっと。あっ、そういやジャンプの発売日土曜じゃね?買っとくか。あと……」

 

と、ぶつぶつと呟きながら歩いてるのをすれ違った街の人は全員見ていた。

 

「か、奏様が……」

 

「なんか、ルーズになった……!」

 

が、慶はまったく気にした様子なくゲーセンに向かっていた。その時だ。電話が鳴った。

 

『もしもし生徒会長ですか⁉︎』

 

「あーい、みんなの生徒会長奏さんですよー」

 

『今日は放課後に集会があるって言いましたよね⁉︎』

 

「えっ?そうなの?マジかー。じゃ、俺休みで」

 

『そういうわけにはいかないんですよッ!戻ってきてください‼︎もう全生徒集まってるんです!』

 

「いやめんどくせーよ。もう、ゲーセン着いちゃったよ」

 

『ゲーセン⁉︎奏さんがゲーセンってちょっと見てみたい気も………じゃない!とにかく来なさい!』

 

「わかった、わかったからあんま耳元で叫ぶなって……」

 

そのままブツッと切れた。

 

 

 

 

体育館。30分経っても中々始まらない集会に全員がイライラし出す中、茜が奏に声をかけた。

 

「ねぇ、けーちゃん。カナちゃん何かあったのかな……」

 

「さ、さぁ?」

 

生返事しつつも思った。

 

(何やってんのよあいつ……。流石にこれはヤバイわよ……)

 

すると、ようやく慶がやってきた。そして、マイクを握るとスウゥッと、息を吸い込んだ。

 

「えーただいまをもちまして、集会は終わります。お疲れ様でした〜解散っ」

 

全員が「えっ?」となった。奏はイラッとなった。

 

「い、いやいやいや。待ってくださいよ生徒会長」

 

「なんだー。副会長」

 

「いや私は庶務です。そんなわけにいかないでしょう?なんか話して下さいよ」

 

「あ?だいたいお前いつまで奏生徒会長に頼り切りになるつもりだ。いいか、俺……わたしももうすぐ卒業なんだ。これから先はてめーらだけでこの学校を盛り上げなきゃならねぇ、だから、今日は休みにする」

 

「言ってることメチャクチャですよ!」

 

「はい、全員休みぃ〜さっさと帰れ」

 

そんなわけで、解散となった。慶は再びゲーセンへ向かった。

 

 

 

 

その日の夜。自宅ではニュースがやっていた。『奏様!なんか変!』みたいな。それを他の兄弟が見てる中、奏は慶の身体能力を利用して慶を締め上げていた。

 

「ねぇ、なんなの?バカなの?死ぬの?どういうつもりなの?」

 

「ご、ごめんなざい……わざとじゃないんです……俺は俺らしくあろうと思っただけなんです……」

 

「だからその体私のだから!私が必死にあんたに合わせた口調になってあげてたってのに……!」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「とにかく、ちゃんとしてよ。私が変に思われるんだから!」

 

「うい……」

 

「で、何かわかったの?この現象のこと」

 

「なんとも言えん。ハッキリしてんのは二人同時に強い衝撃を食らわなきゃいけないってことだ」

 

(俺の体じゃないから霊能力も使えないし……さすがに咲さんの仕業とは思いたくないな……そうなると詰みだ)

 

考えながら話す慶。

 

「もう一度やってみれば戻るんじゃない?」

 

「嫌だ。今回は俺がお前をかばったから無傷だったけど、次もそうなるとは思わないだろ」

 

「うーん……」

 

「下手したら死ぬぞ」

 

「そうね。でもそしたらどうするのよ」

 

「それは最終手段として考えよう。それまではなんとか別の方法で……」

 

「やっぱりみんなに説明した方が……」

 

「証明できるわけねーだろ。信用されないと……」

 

「ボルシチよ!」

 

「は?」

 

「ボルシチなら証明できるんじゃない⁉︎あなたなら絶対ビビるじゃん!端から見たら私がビビってて慶は逃げない絵が出来るんじゃない⁉︎」

 

「やだよ!なんで俺がそんな怖い目に……!」

 

「いいから行くわよ!」

 

「ま、待って!ごめんなさ……!俺力つえーな!」

 

引き摺られた。

 

 

 

 

リビング。

 

「ボルシチを呼べばいいの?」

 

栞が聞いた。

 

「そうだ栞。頼めるか?」

 

「お兄様は大丈夫なの?」

 

「おう!これも俺の修行のためだ」

 

(奏には俺がどんな風に見えてるんだ……)

 

心の中で呆れつつもなんとか黙っていた。で、栞はボルシチを呼んだ。

 

「はい、お兄様」

 

(よし、これで私はビビらずに慶がビビってくれれば……!)

 

と、思った時だ。慶の体に鳥肌が立った。

 

(あっ、あれ?なんで?)

 

「お、おいい!なんで震えてんだカナ……慶!」

 

「わ、分からないわよ!体が勝手に……!」

 

「だ、大丈夫?お兄様……」

 

栞に心配された。

 

(ま、まさか……!体の方が恐怖の対象として怯えてるって言うの⁉︎ていうかむしろどんだけ猫にビビってんのよ慶!)

 

キッと睨みつけると、慶はいなくなっていた。すでに逃げていた。

 

「ち、ちょっと置いてかないでよー!」

 

慌てて後を追う奏だった。

 

「………なんか、二人とも変?」

 

 


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