温泉旅行から帰って数日。まだ冬休みが続く中、慶と茜はお城に呼び出された。
「と、いうわけで、お前たちにはヒーローショーをやってもらう」
父親に言われて二人は固まった。
「おい待て親父。どういうことだコラ」
「だから、遊園地でスカーレットブルームとナイトブルームのヒーローショーをやるってわけだ」
「なんで?は?なんで?」
「実は、遊園地の方から私に直接頼まれてな。『あなたなら、お二人の正体を知ってるでしょう』って」
それを聞いた瞬間、慶は悟った。
(茜にバレないようにするためか)
ジャミンググラスのせいで茜は周りに正体がばれてないことになってるが、もろバレてるので、こんな回りくどいことをしたのだ。
「ち、ちょっと待って!お父さんはなんでスカーレットブルームが私だって⁉︎」
「私は二人のパパだ。それくらい分かるよ」
で、ニヒッと笑う。
「お父さん……」
(うわあー。すっげえな……詐欺師の才能あるなこいつ……)
感動する茜と呆れる慶。
「まぁ、そういうわけだから、頼むぞ」
*
そんなわけで、自宅。リビング。
「ヒーローショー?」
「ああ。で、その脚本を考えたんだが……」
慶は葵に髪を数枚束ねたものを渡した。それをぺらっと捲り、中を見る葵。
悟空『俺は怒ったぞッ‼︎フリーザァァァッッ‼︎‼︎』
閉じた。
「最初からクライマックスじゃない!」
「いいだろ別に」
「ていうか悟空って何⁉︎スカーレットブルームの話じゃないの⁉︎」
「だから言ったじゃんけーちゃん。だめだって」
茜がため息をついて言った。
「やっぱりかー……てなわけで葵、なんとかしてくれ」
「うーん……なんで私なのよ……」
「そりゃ、葵だからじゃね?なぁ茜」
「うん。葵お姉ちゃんならなんとかしてくれるかなーって思って」
「最初から頼る気満々だったわけね……。まぁいいわ」
「あっ、ちなみにナイトブルームとスカーレットブルームの設定はこれな」
シュッと慶が新しい紙を出した。
『ナイトブルーム(18)
姉の葵をフリーザに殺された怒りと薄ら笑いによって目覚めた覚醒戦士。右手から放つ暗黒魔導砲は太陽系を破滅させる。
必殺技:→+↓+AorB暗黒魔導砲
A+B+Cバーストモード解放
武器:金属バットと木刀』
閉じた。で、震えた声で聞いた。
「や、あの、なんで?なんで格ゲー風?」
「や、なんか作ってる間に楽しくなっちゃって……」
「ていうかなんで私死んでるの?あと薄ら笑いって何?それから武器が親近感あり過ぎよ。あとその暗黒魔導砲っていうの、是非とも見てみたいんだけど」
「なんだよ文句ばっか言いやがって。いいだろ別に」
「駄目よ」
「ちなみにコッチが茜の奴な」
『スカーレットブルーム(18)
君がスカーレットブルームだ!』
「しかもテキトーじゃない!」
「けーちゃん!カッコいいのって言ったじゃん!」
今度は二人でキレた。
「どう?」
「よく聞けるわねあなた!」
で、葵はため息をつくと言った。
「はぁ……まぁ、このままじゃヒーローショーにならないわね。みんなで考えましょう」
てなわけで、会議開始。