俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第69話

 

 

 

そんなわけで、ヒーローショー会議。いつの間にか、高校生以上全員+遥が参加していた。葵によって6人にはルーズリーフが配られている。

 

「誰か案はある人〜?」

 

葵が全員に声をかける。それに茜が言った。

 

「あ、あまり私は目立たない奴で……」

 

「駄目よ」

 

一発で一蹴する奏。

 

「なんでよ!」

 

「あんたと慶が主役でしょ?目立たない主役なんて黒バスくらいしかありえないわ」

 

「むぅ……そ、それはそうだけど……」

 

「とにかく、どんな話にすればいいかを書けばいいんだろ?」

 

「ええそうよ」

 

修はそう確認すると、ルーズリーフにスラスラと何かを書き出した。

 

「こんな感じのタイトルでどうだ?」

 

『無気力クーデター』

 

「却下」

 

弾く奏。

 

「そんなどっかで聞いたことあるような曲のタイトルダメよ」

 

「お前よく曲のタイトルって分かったな……。俺はこの前、慶がニコ動で聞いてたのをたまたま見かけただけだけど」

 

「わ、私もニコ動で見たのよ!」

 

「………ああ。なるほど。慶の趣味と合わせたかっ……」

 

言いかけた修の頬をシャーペンが掠めた。無論、奏が犯人だ。

 

「お兄様?」

 

「や、ごめん」

 

「じゃあこんなのは?」

 

茜が出したルーズリーフ。

 

『薄命のナイトブルーム』

 

「だからダメだってば」

 

奏が拒否した。

 

「どうして⁉︎」

 

「何ちゃっかり自分を主人公から外してんのよ。ていうか慶が死んじゃってるし」

 

「こんなのは?」

 

遥がルーズリーフを見せた。

 

『ダブルブルームの誕生』

 

「悪くは無いけど……恥ずかしがり屋を治すためにやるっていうのが真実よ?」

 

「そこはほら、なんか脚色付けて……」

 

「どちらにしろ、長過ぎるのはダメよ。30分で終わらせなきゃいけないんだから」

 

言われて、「なるほど……」と顎に手を当てる遥。奏はジロリと慶をみた。

 

「ていうか慶。あんたはなんかないの?」

 

「おっと奏さん会話したいがためにわざわざ意見を求めるフリなんてしなくても……」

 

言いかけた修にシャーペンが突き刺さり、ドロリと血が広がった。

 

「で、慶。あんたなんかないの?」

 

「んっ」

 

ルーズリーフを見せる慶。そこにはシスター服の栞に学生服の慶が描かれていて、タイトルは『とある王族の物体会話』と書かれていた。

 

「今の短時間でそこまで描き込んだの⁉︎ていうかなんで栞がいるのよ!しかもちゃっかり自分ヒーローにしてるし!」

 

「その幻想をぶち殺す!」

 

「あんたの幻想をぶち殺したい!ついでにあんたもブチ殺したい!」

 

で、奏は葵を見た。

 

「なんか言ってあげてよ葵姉さん!」

 

「うーん……。そうねぇ、とりあえず真面目にやらないとみんな罰ゲームでどうかしら?」

 

「と、言うと?」

 

「それは……じゃあくじにしよっか。みんなで罰ゲーム書いて、それを箱に入れるの」

 

「それで私のツッコミが減るならそれでいいわね」

 

「ま、そういうわけだからみんな。真面目にね」

 

葵の一言で、ようやく会議が始まった。

 

 

 

 

箱が完成し、会議開始。

 

「じゃ、とりあえず確認するね」

 

葵の一言で全員が頷いた。

 

「狙いは小学生低学年以下の子供ってことだから、簡単なヒーロー物。悪者を茜と慶がやっつけていくタイプね」

 

それにも頷く5人。

 

「問題はその脚本だけど……何か意見ある人?」

 

「はいっ!」

 

手を元気よく上げたのは茜。

 

「とにかく私を目立たないように!」

 

「はい罰ゲーム」

 

「な、なんで⁉︎」

 

慶の冷酷な制裁に声を上げる茜。

 

「それはさっきだめだって言ったろうが。これは舐めた発言としか取れないよね」

 

「うっ……!」

 

「はいみんな判決は?」

 

慶が聞くと、全員が顔を伏せた。

 

「死刑だな。ほら、引け」

 

「ううっ……わ、分かりましたよー……」

 

箱から紙を一枚抜く茜。

 

『公開ディープキス』

 

「何よこれ!」

 

速攻で紙を机に叩きつける茜。

 

「誰よこれが書いたの!」

 

全員に気付かれないように顔を伏せる奏。どうやら、慶に引かせるつもりだったらしい。

 

「で、誰と?」

 

「茜が決めちまっていいんじゃないか?」

 

「そこの長男次男!勝手に話進めないでよ!まだやるなんて……!」

 

「ダメだろ。罰ゲームだし」

 

「そうだぞ茜。やると言ったからにはやらなきゃな」

 

「うう……」

 

で、茜はチラッと葵を見た。

 

「お姉ちゃん……」

 

「わ、私?」

 

「お願い…………」

 

「う、うんっ………」

 

そのまま二人は顔を赤くしながら顔を近付ける。修と慶以外も顔を赤くしていた。そして、口と口がくっ付いた瞬間、パシャッと音がした。携帯を構えた慶の姿があった。

 

「っし、激写」

 

その瞬間、葵と茜からプッツンと音がした。

 

「「慶、ちょっとこっち来なさい」」

 

「えっ?いやちょっ……たんま。ごめっ……ねぇ、聞いてる?ごめん!ごめんってば!てかごめんなさ……」

 

結局、話が進まなくなるので罰ゲームはなくなった。

 

 


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